【完結】星のカービィ~社長秘書の独白~   作:FA-UMA

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社長秘書の経緯

 彼女は大人の女になるにつれて成長し始めている思考回路をフル回転させて、今の状況を打破する最高の手段を模索していた。

 使える手持ちの道具は三つだ。

 まず、自分が乗っている父の会社の商品だったインベードアーマーを真似て作った、両腕が付いて飛行能力が備わっているだけのロボット。

 二つ目は右手に持っている銃の形をした、引き金を引けば電気属性のエネルギー弾が発射される連射も可能な飛び道具。

 そして最後の一つ、護衛として連れて来た自立式のロボット、パワー満点のザンキブル。全てこっちの世界に来てから自分で作ったものだった。

 彼女、スザンナは非力だ。昔からハルトマンが過保護だったこともあって機械に頼り切りになってしまっていた彼女は、自分の力で何かをやるという能力が著しく欠けていた。

 工場の手伝いをしていた身としてそれはどうなのかと言いたいところだが、残念ながら彼女の役割は専ら指示を出すだけの現場監督だったのだ。十代前半でそれを任されている時点で、どれだけ将来有望だったのかは明らかだろう。

 しかし、非力なのを差し置いて知識はあった。データと素材、道具があれば何だって作って見せる。技術力は既に父に追従する程に育っていた彼女は、どのような劣悪な環境だって住み良いパーフェクトでビューティフルな場所へと変貌させることが出来るのだ。

 まあ、今の状態ではだから何だという話なのだが。

 

「うっそぉー!? こんなの聞いてな……ちょっとザンキブル、ザンキブルぅ!?」

 

 現在の彼女が何をやっているかというと、後ろから猛烈な殺意を伴って追いかけて来る三体の敵と必死の逃走劇を繰り広げているところだった。

 後ろに向かって銃を連射し、左手一本で飛行ロボを操作し相手の攻撃をかわす。どこぞのお金をかけまくったアクション映画さながらの動きは見せ物としてはこれ以上無いのだが、命の危機に瀕している本人にとってはたまったものじゃない。

 追っている敵の名前は、スフィア・ローパー。この異空間に生息するエネルギーを食べて生きる生命体だった。

 彼らがスザンナを追っている理由は簡単で、彼女が乗っているロボットが小脇に一体このローパーを抱えているからだ。

 研究材料として持って帰ろう、そう思い立っての軽率な行動だった。彼女の間違いは相手が知的生命体であることを考慮しておらず、ちゃんと仲間に対する意識も存在していることを知らなかったということだろうか。

 さて、割と唐突ではあるが、スザンナという女は所謂ドジっ娘である。

 技術があって頭も良い、行動力もあって性格も決して悪人というわけではない。しかし、残念ながらどこか抜けてしまっている。

 例えば頑張って連射しているこの銃、前述の通りにエネルギー弾を撃つのだが、相手がエネルギーを食料とする生き物の時点で効果があるわけがない。

 例えば彼女を必死に追いかけながらも健気にローパーズの相手をしているザンキブル、いかんせんパワーはあるが飛べずに足も遅いために相手に攻撃が当たっていない。それどころか無視されてほとんど何も出来ていない。あのままでは破壊されるのも時間の問題だろう。

 どうにか不意打ちで一体だけ撃破して連れ去ることには成功した。その後をどうするかなどは全く考えていなかったわけだが。

 

「ああ、もう! あのアホめー!!」

 

 悪態を吐き責任転嫁をしながらの逃避行は、彼女が迷いながらも次元の裂け目を発見するまで続いた。

 

 

     ☆

 

 

「あっ、オカエリ」

 

 何気ないお決まりの言葉でスザンナを出迎えた役立たずの同居人は、やる気無さげな様子で機械いじりを続けていた。

 脇には食べかけのかき氷が置いてある。どこから持って来たのか、本来ならばここにあるはずもないピンク色のシロップまでかかっているではないか。

 

「アンタ、アンタ……どういうことコレ、全然効かなかったじゃない!」

「ソリャア、エナジースフィアが好キナ相手にエナジースフィアの弾を撃ち込んだッテ喜ぶだけだヨォ」

「何でそれを教えなかったのかって聞いてるの!」

「聞かれなかったかラネ。言う前に出てったシ」

 

 悪びれもせずにそう言う同居人、マスクと帽子で顔を隠した一頭身のマホロアは美味しそうにかき氷を口に含んだ。

 彼とスザンナの付き合いは彼女がこちらに飛ばされてきてすぐに始まり、既に数年が経つ。正直に言ってかなり胡散臭い奴ではあるのだが、言葉の通じる知的生命体がこいつしかいない現状ではどうしたって付き合っていく他に選択肢が無い。不本意ながらに協力し合って生活しているのだ。

 マホロアという男、本人曰くこのハルカンドラの出身なのだとか。確かに拠点第二号として二人が使っている元からあった工場であるエッガーエンジンズに関しての知識が若干ある以上、信憑性は高いのだろう。

 スザンナが飛ばされた先、ハルカンドラという名前を彼女は知っていた。父が執心していたあの憎き星の夢が作られたというところだ。星の夢によって星の夢が生まれたところに送り込まれるだなんて、なんという皮肉だろうか。

 

「で、エナジースフィアは?」

「燃料庫に放り込んでおいたわよ」

「オオ、ブラボーブラボー。流石だネ、あの装備で行ッタ時は死んじゃうカナって思ってたケド」

「あんた、それが協力者に対する態度!?」

「恩人ナノはボクの方だヨォ。ボクがいなかったらキミはどうしようもナカッタんだからネ」

「くぅ……ローパーの方は貰うわよ、研究してザンキブルを強くしてあげるんだから」

「そのザンキブルは?」

「……貴い犠牲だったわ」

「キミもイイ性格してるヨネ」

 

 実際のところ、協力者ではあるが立場はスザンナの方が弱い。

 ハルカンドラという土地はとてつもない技術力が災いしたのか既に荒廃して滅んでしまった後らしく、とても人が住めはしない劣悪な環境だったのだ。

 惑星の中央には巨大な火山が陣取っており、深く地面を掘り進めないと水なんて出ない。それどころか草木の一つも生えていない。工場らしき場所に逃げ込んでみても設備の使い方がまるでわからない。

 食料の確保にも一苦労する中で、助け船を出してくれたのがマホロアだった。

 この土地に一人で住んでいた彼は、最近になって発掘したという空飛ぶ船であるローアを復活させるためのエネルギーを集めているのだという。戦闘力が無いに等しい彼は協力者を求めており、生活の知恵と工場を使うための知識、更に完成した暁にはスザンナを元の世界へと送り返すと約束してくれた。

 勿論、ローアが完成したらの話だ。必死になるのは一刻も早く父の元へと帰りたいスザンナの方で、ムカつくことにマホロアは常にだらけている。それに文句を言いながらも逆らえないのが、今の彼女の立ち位置だった。

 このローアの中に電化製品全般を作ってやったのは誰だと思っているか。かき氷機は確かに趣味で勝手に作ってしまったものかもしれないが。

 

「コレでエナジースフィアは二十八個、マックスまで後九十二個だヨ」

「でも、ハルカンドラの手の届くところにはもう落ちてないんでしょ?」

「そうだネ、火山とかマデ行ってくれるなら話は別ダケド。だから異空間から持ってクルしかないヨォ」

「ええ、やだぁ……もうあんなとこ行きたくない……」

「装備が悪カッタんじゃないかナ。今のザンキブルじゃローパーの相手は難シイと思うヨ」

「わかってるわよ、そんなこと!」

 

 くすくすと憎たらしく笑うマホロアを一つ小突いてはみたが、問題はわかりきっていて早急に対応しなければならない。

 この数年間はハルカンドラを探索して生活環境を整えることに終始していた。これからは本格的にエナジースフィアの捜索に入れると思っていたのだが、こんなことではまた研究漬けの生活に戻ってしまうではないか。元の世界に帰れるのは、果たして何年後になるのだろうか。

 

「マア、ボクのタメにも頑張ってネー」

「またそんな他人事みたいに、無駄に年齢重ねちゃってていいの?」

「イイヨ。だってボクはもう千年ぐらい生きてるカラ」

「はいはい」

 

 こんなのが自分よりも圧倒的に年上だなんて、絶対に信じたくなかった。

 

 

     ☆

 

 

「対空戦試作機、ドゥビア!」

「オー」

「空中を自由に速く動き回れて、更に極短距離なら瞬間移動のようなユーフォー軌道が可能。小型機を二機搭載!」

「オオ!」

「攻撃方法も実に多彩で、電磁タックルに落雷、電磁スパーク。変速軌道から繰り出される攻撃は回避困難!」

「オオー! ……でもサァ」

「ん?」

「その電気ってエナジースフィア使ッテるんデショ、ローパーに攻撃出来ナイよネ」

「……試作だからいいのよ!!」

「アンマリ無駄遣いしないでネ、ローアの修理モ遅くなっちゃウンダカラ……」

 

 忘れていたとは言えないスザンナはヤケになり、妙なテンションのまま貴重なエナジースフィアを削りながら研究を続けていく。

 基本的に自分の身の周りこと以外には不干渉なマホロアは、ローアの燃料がもの凄い勢いで減って行くことに初めての危機感を覚えていた。

 あまり機械に強くもないマホロアがローアを修理する速度はかなり遅い。一度スザンナに手伝ってくれと依頼したが、自分のことで手一杯の彼女は頭を縦には振らなかった。

 ハルカンドラに来てからスザンナが作り上げた試作品は多岐に渡る。護身用の武器やロボット、ローアや研究室に設置するための生活用品、気まぐれで実験的に作ったものはエッガーエンジンズのセキュリティとして活用してみた。

 研究が進むにつれて、彼女はこのエナジースフィアというエネルギー体の有用性は凄まじいものだと気付き始めていた。

 莫大なエネルギーを作り出せるだけではなく、使い方によっては電気だけではなく炎や氷にも変換することすら出来る。言うなれば夢のようなエネルギーだ。ハルカンドラが発展したのも、ひとえにこのエナジースフィアのおかげなのだろう。

 これを持ち帰って自由に作り出せるようになれば、ハルトマンワークスカンパニーは大きな権力を手にすることが出来る。そう考えだしたスザンナは、何時の間にか帰ることよりも優先してエナジースフィアの研究に没頭するようになってしまっていた。

 時間の感覚が失われ始めている彼女は気付かない。既に、この世界に飛ばされて五年もの月日が経ってしまっていることに。

 

「護衛用ロボ、完成品。メタルジェネラル!」

「ヨッ、待ッテましタァ!」

 

 科学者としての血が騒ぐ。

 研究室に引きこもっていたスザンナが若干やつれた姿で外に出て初めて行ったのは、マホロアに対する商品の売り込みのような説明だった。

 まるでセールスマンみたいだと思いながらも、完成品だというそれが気になったマホロアは特に何をツッコむでもなく相手のテンションを更に上げさせてみた。

 

「何カ、戦闘機みたいだネ」

「その通り、モデルは戦闘機ですわ。ドゥビアのようなユーフォーを参考にした変態……変則軌道も良かったのですが、やはり物事はシンプルでないと。空中戦といえば戦闘機、物事の常識ですわ」

「喋り方おかしくナイ?」

「お客様に対する当然の言葉遣いですわ。今から元の世界に帰った時のために備えておきませんと」

「誰がお客様ナノカナ」

 

 癖なのか、こちらに来てからすっかり長くなった髪を掻き上げてドヤ顔を見せるスザンナの言葉は話半分にしか入って来ない。

 喋り方からして期待出来るような気がしないのだ。

 

「このメタルジェネラル、見た目通りの空中性能に加えて実弾とエネルギーの両方を使った攻撃を完備。更に遠隔操作の電波によってエネルギーを補給するタイプなので、装置さえ生きていれば補給をする手間も省ける優れものですわ。量産も視野に入れていて、エッガーエンジンズに設置されている装置は複数体のメタルジェネラルにも対応出来るように作られています」

「ヘエ、遠隔操作」

「ええ、これを実現するのにエナジースフィアを十個も使ってしまいました」

「……エ?」

 

 聞き捨てならない言葉を耳にして、マホロアの頭が急速に冷える。

 

「チョット、燃料庫に残ってるエナジースフィアって後何個?」

「確か、後六個だったような」

「使い過ギィ!! エッ、何で。ツイ一年前まで二十八個だったヨネ!?」

「科学の進歩に犠牲は付き物よ。メタルジェネラルの力を持ってすれば、エナジースフィアの回収なんて簡単なんだから」

 

 確かに額面通りの性能を発揮してくれるのならば、ローパーなど恐れるに足りずだろう。だが、懸念事項が一つだけ。

 

「……チョット、気になったんダケド」

「はい?」

「エッガーエンジンズの電波ッテ、異空間に届くノ?」

「……………あっ」

 

 この後、スザンナは無理やり実弾を積み込んだドゥビアと大量のザンキブルを犠牲にしながらも、どうにかエナジースフィアの数を二桁にまで戻すことに成功した。

 さしものマホロアもエネルギーの枯渇によってローアの機能が制限され始めたことに危機感を覚えたのか、珍しくも異空間に出張って手伝っていたのが彼女にとっての唯一の救いだったのだろう。




 明日から暫く忙しくなってしまうために急ピッチで仕上げました。書き上がったら即時投稿のスタイルなのです。
 故に、次回は暫くお時間をいただきます。


=異空間スージー=
 思った以上にチートになっちゃったんだけど、何この子?
 あんなに荒れたハルカンドラor異空間で生きていられたことを考えたら、これぐらいの技術力が必要になるんです。
 仕事以外ではドジっ娘(あざとい)というのが公式設定で、試しに盛り込んでみたらマホロアが酷い目にあうという珍しいことに。
 そりゃあ、あんな場所で生きてたら強くもなるわ。

=マホロア&ローア=
 異空間に飛ばされたスージーがどうやって自分の世界に戻ったのかという話になると、どう考えてもこいつらが一枚噛んでいるとしか思えないんですよね。ロボボでも次元の裂け目にローアが映ったわけですし。
 クラウンを持っていないマホロアにさしたる戦闘力があるとは思えないので、誰かが協力してローアの修理やらエナジースフィアの回収などを行ったのではないかなと思ったのがこの展開にする切っ掛けでした。
 更にスフィア・ローパーのデータを持っていたことを考えれば、彼女が異空間で何かをやっていたのは明らかだったので。
 カービィ達相手には演技百パーセントで接していましたが、スージーに対しては素と演技が半々ぐらいの気持ちで書いています。
 流石のマホロアでも、何年も一緒に過ごして世話をしてくれていたら情の一つでも湧くでしょうし……
 あっ、でも現段階では基本的には超絶ゲス野郎です。デデデでデンZの時点では完全に改心してるようですけど。

=メタルジェネラル(セキュリティサービス)&ドゥビア=
 何で戦う必要があるんですか?(正論)
 などとWii発売当初から言われ続けてきたメタルジェネラルですが、やはりエッガーエンジンズの番をしていたからなんでしょうね。
 セキュリティサービスとして再登場した以上はスージーがデータを持っているのは明らかで、もしかしたら以前にスージーが作ったんじゃないかという思い付きが形になりました。
 ドゥビアも同じで、やはり初登場はハルカンドラ突入後で再登場はロボボ。なので同じ扱いにしておきました。

=ザンキブル=
 許してやってくれ、彼は不憫なんだ。
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