独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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しばらくは英雄派メンバーとのコミュ&強化パートです。

ツッコミ所多いのは大目に見てくださいなんでもしますから!


砲火その12

「…………ただの検診でも100人単位となると疲れるなぁ」

 

『うぅん、ごめんねまさやん。あんまりそっち方面は力になれなくて』

 

「いいや、十分楽させてもらってるよ」

 

英雄派は秘密裏に下位組織を運営している(禍の団内だと公然の秘密になってるけど)。大体構成員は孤児院などと呼んだりするが、一応の正式名称は『楽園(スクール)』。誰が名前をつけたか不明だが、中二ぽくあれど其処にどんな思いで楽園と名付けたのか、重すぎて未だに確認する勇気が湧かない。

 

このスクールには、ファンタジー絡み…………特に神器絡みで人に疎まれ、堕天使に狙われ、悪魔にたぶらかされ、教会を追われ…………などなど、色々被害にあった子供達を拾って、住んでもらっている。世間からの保護が主な目的だが、せめてなるべく普通の生活を送らせてあげたいという願望をこめて、『学校』なんだろう。…………いや、孤児院設立案出したのは俺だけど、こんな大事にしたのは俺以外の誰かだ。

 

大体全寮制の小中校、それに附属保育園が付いたようなもの。大体6歳位までは元気に遊んでもらって、そこからはお勉強の時間が入ってくる、という感じか。

 

保母に保父、教師役の人員は、英雄派の構成員で人当たりが良く、子供好きで、教師役に向いてる者が担当。

 

スクール卒業後の進路は幾つかある。基本的には、一般社会へと戻る進路と、教師役としてスクールに残る進路、そして英雄派へ所属を移す進路、この3つだ。

 

一般社会へ戻る場合こちらの方で各関係者などに根回しをして、卒業生の旅路を全力でサポートする。……無論、神器や異能の制御、隠蔽を完璧にさせた上でだが。二の舞で心に傷を負わせたくない。

 

教師役として残る場合は、所属はスクールだが英雄派に雇われる形になる。一年間は教育実習生としてまた勉強してもらい、翌年から教師役として、あるいは保母さん保父さんとして子供達の面倒をみる。

 

……そして頭が痛くなるのが最後の進路、英雄派への移籍。文字通り英雄派に所属して、適正に応じた部門で活躍してもらうことになる。別に仲間を増やしたくて…………いや、ただでさえ人手が足りないから来てくれるのはありがたいんだけど、組織に縛り付ける為にスクールを運営してるわけじゃないから、俺の心境としては複雑だ。……なにより、この進路を選ぶ子が多いことがとても複雑。

 

ちなみに俺は、非常勤の保健医みたいな形でスクールに携わっている。大体の子達が神器絡みで拾われているため、どの子もまず、俺の検診と神器の調整、講習を最初に受けるのだ。神器を持っていない子も、周りが神器使いばかりだからもしもの時の対応は知っておいてもらいたいしね。

 

そんなわけで、俺はスクールで『保健室のお兄さん』! …………などと呼ばれているわけではなく。皆が皆、俺のことを『パパ』だとか『おとうちゃん』とか…………ともかく俺を『父』ポジションとして認識しているようなのだ。何故だ…………どうして…………どこにそんな要素が…………否定すると泣かれるし…………

 

『此処に来るまでに培った保父さんスキルと…………あとやっぱ、安心感じゃない? じゃんぬーも言ってたじゃん、まさやんの存在は神器使いにとっては福音なんだって。ただただ疎まれて、狙われて、殺されそうになって…………でも「もう大丈夫」ってなんとかしてくれたら、それはもうこれ以上ない救いなんじゃない?』

 

「……お前、やっぱあんとき狸寝入りしてたな?」

 

『…………えへっ☆』

 

…………あれ? てことはもしかして英雄派への移籍希望の子達は…………いや、考えるのはよそう。胃がいたくなる。まさやん、誠実に対応し続けるだけー。

 

それにしても、7歳で親殺した俺が父役とか、皮肉っつーか、分不相応っつーか…………いかん、こっちも考えると精神的によろしくない。何故こうも俺の中には厄ネタが転がっている…………!

 

と、ともかく! 今日は授業と定期検診の為にスクールの本拠に訪れて、なんやかんやと仕事を終えて今に至る。疲れたが、スクールでの仕事が終わっただけでまだ今日の仕事は終わってないんですよねぇ!

 

『あとは確か、コンラくんとの面談か。『Compulsion B×B:β』も完成してないし、急がなきゃね』

 

「そだな」

 

さて、校門を出てとっとと本拠に戻って仕事だ仕事。研究ばかりしてられないのが雇われの悲しいところだねぇ。

 

「…………おとうさん」

 

と、ここで後ろから声を掛けられた。この声は確か…………

 

「レオナルドか。あと、おとうさんはやめてくれ」

 

「…………だめ?」

 

「……今回だけな」

 

『(今回だけ、が何回続くことやら)』

 

うっさいわ! つか、俺がおとうさんならお前はおじいちゃんだ!

 

っと、それはともかく。この子はレオナルド。神滅具『魔獣創造(アナイアレイション・メイカー)』を持って生まれてきてしまった少年。持ってるブツがブツだけに所属こそスクールだが、危険な時期の間は英雄派の本拠で預かることが多い。…………あと、俺らの手伝いをしたがる困ったちゃんでもある。やめてくれよぉ、『魔獣創造』持ってるだけに役に立ててしまえるのが分かってしまうのが尚更つらい。実際曹操はレオナルドにデータ収集用の雑魚魔獣作らせたみたいだしなぁ…………!

 

「で、どうしたんだレオナルド。今は昼休みの時間、友達と遊んだりはしなくて良いのか?」

 

「パズル、解けた」

 

「おっ?」

 

その返答を聴いて、少し思考が上向く。

 

レオナルドは、俺から見ても相当に頭の回転が早く、発想力に長けた少年だった。んで、普通の玩具じゃ遊び足りなさそうだったので、玩具代わりのパズル……知恵の輪だったり、組み木細工だったりを作ってはあげていたのだった。

今回は知恵の輪だったか…………うん、見事に外れてるな。お見事!

 

「良くできました!」

 

「…………ん!」

 

わしゃわしゃと頭を撫でて、さて次のパズルはどうしようかと心のなかで頭を抱える。子供ってスゴいね、砂が水を吸うようにいろんなことをすぐに吸収していくんだから。

 

…………少し早いけど、一段階上げようかな? そう判断を下して懐から白い野球ボールサイズの玉を取り出す。少し振るとカランカランと軽い音が聴こえる。

 

「じゃあ、次はこのボール。この中に入ってるものを、壊さずに出してみよう。で、今回からはちょっとルールを変えて、神器を使う以外なら何をしてもいいぞ」

 

「…………!」

 

おおう、目の色変えて喜んじゃってまぁ…………。やっぱ、子供は死んだ目させるよりもこんな風に生き生きしてた方が健全だよなぁ。

 

「あ、でもパズルにかかりっきりで友達を邪険にしたら、パズルは没収するからな! 時間が空いている時にしなさい。わかった?」

 

「……ん、わかった」

 

「よろしい。じゃ、行っておいで」

 

頷いて、トテトテと校門の中へと駆けていく彼の姿を見て、この後も頑張るか、と気合いを入れ直した。

 

 

◆◆◆

 

 

「お忙しいところ、お時間を頂いて申し訳ありません、パパ殿」

 

「いや、呼んだのは俺の方だし気にするな。あと百歩譲って、子供達がおとうさんとか言ってくるのは許そう。でも卒業生でもなんでもない君に、パパ殿などというふざけた呼称を許可した覚えはないぞ!?」

 

面談に入るなり、いきなりやる気を削いできたこの男の名前はコンラ。ケルト神話の大英勇『クー・フーリン』の息子の名前を継ぐ、神器『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』を持つ、一応一般構成員。何故一応なのかというと、彼には良く幹部連中と一般構成員との間を取り持つ中間管理職っぽいことをやってもらっているからだ。

 

「いえ、わりと真面目に貴方は英雄派の父みたいなものでしょう。貴方がいない英雄派は、大黒柱の折られた家みたいなものです」

 

「…………曹操居てくれたら充分じゃねぇの?」

 

「リーダーがいれば確かに英雄派は終わりません。あの人も英雄に足る魂の持ち主ですし、皆が恩義を感じているでしょうから、仮にパパ殿が英雄派を離れても空中分解は起こらないでしょう。ですが、雨風を凌げるようになるまでは時間がかかるでしょうね」

 

「分かりたくないが分かった。でもパパ殿は止めてくれ頼むから」

 

俺、ビックダディ的なにかに転職した覚えはなくてよ!?

 

「…………とりあえず、今日お前を呼んだのは、先日の質問への回答と提案だ。禁手に至れず悩んでるって件」

 

「本当ですか!!?」

 

おおう、身を乗り出すな怖い怖い。

 

「まあまあ落ち着け。…………つか俺が言えたことじゃないけど、禁手ってのはイレギュラーなシステムなんだぞ? 前にも少し触れたが、お前が至れないのは現状の『闇夜の大盾』の能力で事足りているってことでもあるんだ。周りがぽこじゃかと禁手に至ろうが、それと通常の状態で渡り合える方が禁手に至ることよりもよっぽど偉業だと思うけどな」

 

「ええ、それは俺にも理解できます。現状に満足しているわけではありませんが、英雄派の中でも腕の立つ方でしょう」

 

「だな」

 

「ですが、我々『禍の団』は正式に聖書勢力に反旗を翻しました。本格的に我々にとっての戦争が始まります。その時、俺は仲間を守れる盾でありたい」

 

「…………眩しいくらいに真っ直ぐだね」

 

曹操に拾われたころ、目を腐らせて心に傷を負っていた男とは思えない。英雄派が、曹操が、俺が、コンラを救う一助になれたのなら、それは嬉しいことだ。

 

…………本当は、完成版『Compulsion B×B』のテスターの御誘いを持ち掛けようと思ったが、気が変わった。今なら、理由がある。ならば神器はその想いに応えてくれる。問題は、蓄積した経験を爆発させるための、強烈な切っ掛け。

 

「コンラ……君、武器は使える方か?」

 

「西洋剣ならば、少々の心得が」

 

「例えば、俺が槍を使えと言えば?」

 

「パパ殿が、これまで神器絡みで無駄なことを言った記憶はありません。なので、すぐにでも修練を開始します」

 

「パパ殿やめい」

 

だがしかし、ならやりやすいか。

 

「コンラ、君が名前をもらった相手のことは知っているな?」

 

「勿論。ケルト神話最強の英雄、クー・フーリンの息子です」

 

「じゃあ、ケルトで槍と言えば?」

 

「…………ま、まさか?」

 

すぐに答えに思い到ったらしい、顔がこれでもかと本人の驚愕を伝えてくる。

 

「伝説では、それはとある獣の骨で造られた魔槍とも、それを用いた投擲術の名称とも言われている。真相は、その名前を冠した魔槍を使った槍術の総称。あまりにも危険な為に、槍の製法も、槍術も、歴史の波に流されてしまった」

 

無論、俺が槍を造ったり槍術を教えられるか、と問われたら、教えるのは無理じゃボケ、と言うしかない。

 

「だが俺は、それを教えられる奴に心当たりがある。というかツテがある。問題は、其処に行くまでが大変というか、常人が其処に足を踏み入れると亡者になる。だが運が良いと言っていいのか困るが…………お前には『影』の加護がある」

 

「『闇夜の大盾』…………!」

 

「そゆこと。まあ、今のままだとそれでも呑まれるだろうから、多少稽古と調整は付けるけどな」

 

俺が示した道はコンラにとって、とびきりの切っ掛けになってくれるだろう。そうでなくとも、仲間を守る盾として十分な力を身に付けることが可能だろう。槍に関しては、こいつ専用の神器外部装置として俺が作ってやれる。幸い材料の骨は、以前喰った分の残りがまだ俺の中にある。

 

「単に禁手を発現させるより、よっぽど辛いことをさせようと思うけど…………乗っかる?」

 

「是非ッ」

 

よし、そうと決まれば準備しないとな!

 

「じゃあ行こうか『影の国』、影の女王のおわす世界! 魔槍『ゲイ・ボルグ』修得のために!」

 

 

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