独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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ふと気になって、雰囲気類似作品の項目をクリックしてみました。
…………見事に匿名じゃない作品が入ってました。
ぶっちゃけ隠してるわけでもないし、名前だってネタバレなんですけど、分かる人にはバレてるのだろうか…………?

仮に分かっても、生暖かくスルーしてくれるとありがたいです(汗)


砲火その13

 

「さっ、準備はできたな。流石俺、神器の調整に3分も掛からなかったぜ」

 

「自賛する癖はどうかと思いますが、流石ですねパパ殿」

 

「だからパパ殿言うなと…………」

 

こと神器の調整、改造、強化に関しては、この世の誰よりも…………堕天使共にも負けない自負がある! ま、まあ神器を新しく作り出す、人工神器の分野では劣ってる自覚はあるけれど。そもそもがみんなのじゃじゃ馬を馴らすための研究だったから、神器を増やすというのは厄ネタを増やすように思えて、趣味じゃないと余り手をつけたくない分野なのだった。

 

というわけで今俺達はイギリス、スコットランドにあるスカイ島……その最西端、ニースト・ポイントに来ていたのだった。

 

そして今此処にいるのは俺、コンラ、そして…………

 

「ったく、なんで俺が……」

 

曹操から俺の監視役を命じられた、本人の生まれ変わり(ガチ)のペルセウス……通称『ぺの字』も来ていた。

 

全く、別に監視の必要あったんかね? コンラ連れて影の国行ってくるって言ったら、ジャンヌに殴られるわ、ゲロリンは説教するわ、ヘラクレスとジークはそんな俺を見てゲラゲラと笑うわ、曹操は5分程凍りついてからめっちゃ問い詰めてきたし…………いや、コンラくん鍛えるだけなんだって。

 

「はぁー……ほんと我らがクソオヤジはなんというか…………」

 

「いや、理由ぐらいは分かるよ。影の国はケルト神話における冥界。それも他の冥府、冥土、冥界と違って、肉体が存在することすら許されない空間だからな。影の国に行くって言えば、死ぬことをオブラートに包んだ言い方だろうと受け取られるだろうさ。あとクソオヤジゆーなぺの字」

 

「そこまで理解して、なんであんな調子で軽く告げられるんだよお前は…………。あとぺの字って言わなきゃ考えてやる」

 

いやぁ、だって、うん。

 

「俺がそう簡単に死ぬタマに見えるか?」

 

「見えねーけど理由があったら簡単に死ぬぐらいはやりそうだって思われてんだよ、お前は!」

 

「あはは、やだなぁ。スペアボディぐらい遺してから逝くに決まってるじゃないか。つか今更だしねぇ…………今お前の目の前にいるのは三人目の伊達政矢だぞん?」

 

「嘘だろ!?」

 

「うん、嘘!」

 

ニッコリ笑って言ったら拳骨落とされた件、痛い。

 

「そういう洒落にならん嘘はつくな、殴るぞ」

 

「殴ってから言われても…………」

 

まあ、悪質な冗談だったのは確かにそうだ、反省。

 

「少なくとも、まだまだ目を離すには危なっかしい連中ばかりだからな英雄派…………仲間である内は、いや例え仲間じゃなくなっても、気掛かりなことがある限り摂理をねじ曲げてでも生き返ってテメーらをどつきまわしてやる。それは信じてくれ」

 

「…………それはそれで逆に問題があると思うがよ」

 

「ですが、頼もしいお言葉です」

 

まったく、問題児だらけでうかうか死んでられないぜ。確かに客観的に見ても俺は精神的支柱なのだろうし、自慢じゃないけど今の英雄派の雰囲気を作るにあたって一番頑張ったのは俺だから、消えるとロクでもないことになる。俺がいなくても問題なく組織運営出来るように一般構成員や幹部問わず良識を説いたり、マニュアルを作ったりしてる…………けれど、俺が何かしらの要因で───裏切り、死亡、拉致、等々───いなくなった場合、間違いなく今の英雄派の雰囲気は死滅して殺伐としたものに変わるのは確信を持って言える。それはきっと…………ううん、間違いなく良くないことだ。口で言うとは裏腹に、俺は自分の命を落とすことがないように気を張っている…………但し実験中の事故等は除く。

 

「しかし話は変わるが、オヤジ殿のコネは凄まじいな…………。表世界の要人を特別講師としてスクールに招いたりしてたから広いのは知ってたけどよ。まさか影の女王とのツテがあるなんて」

 

「ないよ」

 

「「…………え?」」

 

「ないよ」

 

空気が凍った。

 

「……すみませんペルセウスさん。俺の耳、どうやらおかしいようで」

 

「……奇遇だな、俺もだ」

 

「いや、普通に考えてみてよ。一応一般人装ってる人間と影の女王と、接点あると思ってるの?しかも俺は生きてるんだから尚更ないよ? それにそもそも、影の国に行くとは言ったし、教えられるヤツとのツテがあるとは言ったが、影の女王とは言ってねぇよ」

 

沈黙…………そしてため息。コンラもぺの字も、思い込みを反省したような、ばつの悪い顔をしていた。

 

「いや、すまん。結構な頻度でとんでもないことやらかしてるから、そのぐらいはあり得るのかと思っちまった」

 

「すみませんパパ殿…………パパ殿だって、人間なのですね」

 

「そうだよー、失礼しちゃうなぁ!」

 

いやまあ、そう思わせてしまうような言動をしたのは間違いない。そこは、反省。

 

「となると…………影の国の住人とのツテってことか?」

 

「それでも十分に驚愕すべき繋がりですが、現実味はありますね」

 

「イエス。まあ君らが思ってるような生前のツテ、とかそういうものではないぜ? 生前どころか、まだ生きてるしな、アイツ」

 

「「えっ?」」

 

「んー、しかし遅いな。そろそろ来てもおかしくないんだが…………」

 

そう言って腕時計を眺めていると、急速に体感温度が下がった。

 

「こ、これは……?」

 

「待ち人が来るということで……?」

 

「多分な、この心がざわつくような感覚が、影の国とこの世を繋ぐ瞬間に起こる現象なんだろう。俺も初めてだ」

 

その瞬間、ゴトン! と重いものが落ちた音が、俺達の背後から聞こえてきた。

恐る恐る振り替えると、そこにあったのは…………白い棺。ひたすらに白い棺。

見覚えのあるそれの蓋がずれ、中から何かが起き上がる。

 

「ふわぁ……ありゃ、時間設定間違えましたかね?」

 

中から出てきたのは、髪も肌も、身に付ける服装も、何もかもが白い青年。現実味のない容姿から、まるで死んでいるんじゃないかと思うが…………強ち間違いじゃない。

 

「相変わらず、死にそうな顔してんなぁ」

 

「あ、政矢さん、おはようございます。というか、死にそうというより()()()()()()()()()、死にそうなって表現はまちがいですよ?」

 

そして棺から這い出た彼は何度か背伸びをしたあと、こちらに向き直って、にこりと笑った。

 

「はじめまして、僕の名前は日之影 望(ひのかげのぞむ)。昔に、政矢さんに面倒を見てもらっていた神器使いです」

 

 

◆◆◆

 

 

望と初めて会ったのは、東北にあるとある病院の病室。

 

今とは違って髪の毛は黒く、しかし生気のない白い肌の少年は、たくさんの管を刺され、その中で静かに笑っていた。

 

『いらっしゃい。どちら様かは知りませんが、どう言ったご用向きでしょう?』

 

『不法侵入者を前に、随分と落ち着いていますね…………ナースコールは鳴らさないんです?』

 

『ええ。鳴らしたくても、ボタンを押すだけの力が湧かないのです。もっとも、鳴らすつもりもないんです』

 

齢10であった当時の俺が望に抱いた印象は、ただただ闇が広がっている。そんな風に感じた。今ならばそれに名前をつけられる。本人も、周りも、全てを俯かせるような諦感の空気だ。

 

『最近の死神さんは、随分とかわいいのですね。とうとう、僕の命を刈り取りに来たんですか?』

 

『死神ちがいます。俺はただ、俺が救える人を探しに来ただけだ』

 

『…………そう。でも、無理だよ。原因不明、名医でもお手上げらしい。それに、生きていても僕は喜ばれないみたいだから。失敗作って、あの人たちは言ってたかな?』

 

『それは、親にですか?』

 

『うん、そうだよ。でも僕は、義務感で格好だけ取り繕って延命させてるだけの人間を、親とは呼びたくないかな』

 

『そうですか。…………あまり良くはないですけれど、都合はいいです』

 

だから俺はその空気に逆らいたくて、手を伸ばしたのだ。

 

『死にたいのなら、死んだつもりで俺に命を委ねてください。絶対救って、その上で生きていて良かったと思わせてやります。その代わり、戸籍上のあなたを殺しますけど』

 

『…………ふ、ふふっ。なんだ、やっぱり君は、死神じゃないか』

 

そうして、俺の手の上に一つの命が載せられた。

 

 

◆◆◆

 

 

「……常軌を逸した衰弱の原因は、望の持つ神器にあった。俺が知る限り、一番神の無慈悲さに触れられる神器だった。その名も『死福の時間(ラスト・カウント)』」

 

「名前と話を聞く限り、ロクなもんじゃねぇな」

 

「うん。この神器は、能力の発現と同時にカウントを開始。所持者によって変わるが、一定期間徐々に生命力を削られ、最後には死亡する。原因が病であれ精神であれなんであれ、因果によって死ぬことを運命付けられるんだ」

 

「そ、そんな神器が存在していいのですか?」

 

「現世は修行の地、という考え方もある。だからその修行を条件無視で短縮できるんだ、死『福』というのも分からないでもない…………とかいうわけねーだろ当時の俺がどれだけブチ切れたか」

 

いやまあ現世が地獄なのは俺も思うけど、そうなってる一因は超常存在が原因だと思うんだ、反省してどうぞ。

 

「んでもって、当時はまだ知識も腕も足りず、封印することができなかった。摘出なんてもっての他だった。故に…………俺は神器の改造に手をつけた。初めての神器改造だ、おもわず手が震えたよ…………難病に挑む医者の気持ちがよぉく分かった」

 

神器の本質は変えられない。その根幹の能力は変えられない。死は、覆せない。

 

だから、『死ぬことができる』神器に変えてやった。

 

死復の一瞬(ロスト・オーバー)』、任意に死に、そして生き返ることのできる神器へと亜種改造してやったのだ。

 

「さらっと言ってるけど、それ…………」

 

「今にしてみれば大したものじゃあない。『死』という電球が灯る回路に、徐々に抵抗値が下がっていく半導体が付いてただけ。だからその半導体を魂で押せるスイッチに改造してやったのさ。元々神器は魂に密接に結び付くものだからな、その程度なら子供の工作の範疇。実際、10歳の俺にできたんだからな」

 

もっとも、工作に必要な道具、俺の場合『十字砲禍』がなければ難しかっただろうけど。クロスは自分のことを『災いを食んで新たな災いをもたらす災禍』と自重していたが、こうやって誰かの災いを食らってやることで誰かを救えることができるのだ。それを示してやれて、本当に良かったし、俺自身誰かを救えて嬉しかったのを覚えている。

 

「今ではこの神器を応用して死ねることを生かして、影の国にある七つの城壁の一番外側の門番として働いています。もっとも、一日おきに生き返らないと魂が抜けてる間の身体が腐っちゃうのでこーんな感じに戻って来てるんですけどね」

 

「それでもその棺ありゃ100日は持つだろう? その為に作ってやったのに」

 

「影の国の皆は基本武人ですけれど、娯楽に餓えてるんです。だから、頻繁に現世と行き来できる僕に、嗜好品の調達を頼んでいるのですよ」

 

もっとも、今回は政矢さんたちを迎えに来ただけですけどね、と笑う望。

 

「ところで、僕が聞いていたのは政矢さんともう一人、コンラさんという方だとお聞きしていたのですが?」

 

「はい、私がコンラです。今回は、よろしくお願いします」

 

そう言ってコンラが一歩前に出て一礼。

 

「俺はペルセウス。今回はこいつらの…………というより政矢の見張り役……性格には魂が抜けたあとの身体のお守りってところだな」

 

「あら、そうだったんですか。困りましたねぇ…………」

 

そう言って困ったように笑う望。どうしたんだろう?

 

「いえ、確かに影の国は肉体の存在を許さない魔境。ですが一週間までなら肉体を持った方の滞在が可能になるアイテムがあるのですよ」

 

「え、そうだったの?」

 

「ええ、まあ。もっとも影の国にも二つしかない秘宝に近い代物ですが。今回我らが女王から条件付きで許可をいただき、その一つを借り受けることができたので。コンラさんは、神器を使い影の国でも肉体を維持できるということなので、一つで十分だと思っていたのですが。申し訳ありませんペルセウスさん」

 

「あー、いいぜ気にすんな。イギリス旅行とでも思えば気楽なもんだ」

 

「ですが、折角お越し頂いたのにそれでは…………」

 

沈んだ顔で申し訳なさそうに謝る望に、気にするなと快活に笑うペルセウス。んー、どうしたものか…………。

 

「よし分かった。俺の身体が肉体じゃなければ解決だな?」

 

「「「えっ?」」」

 

「クロスー、起きてる?」

 

『……寝てたー。今起きたー。でもやりたいことは分かったー』

 

『Wake-up Calamity,Balance×Brake.』

 

寝起きだからなのか、いつもよりテンションの落ちる音声で禁手が起動、俺の身体が喰われていつもの機械の龍人へと変貌する。

 

『こうなれば死なないよ、生物的には……まさやん、まだちょっと眠いから操作権丸投げしとくのでもうちょい寝かせてー…………』

 

「あいよ、おやすみー」

 

ウェイクアップしてないよね、ゴートゥーベッドしてるよね。まあいいけどさ。

 

「で、これで問題解決だと思うんだけど」

 

「あー、悪いな政矢。負担にならないのか?」

 

「1ヶ月ぐらいの維持は余裕だぞ? 負担っつーほどの負担でもねーよ」

 

えっへん、俺は天っ才だからな!

 

「ありがとうございます政矢さん…………客人を放置したとなれば女王からの叱責は免れないところでした…………」

 

「いいよいいよ、昔馴染みのよしみだ」

 

…………んで、さっきからちょいちょい気になってたんだけれど。

 

「今回、お前が紹介してくれるのは、槍術の師範…………なんだよな? さっきからまるで、俺らが女王に会うような流れで話が進んでるような…………」

 

「ええ、そうですよ。それに紹介するのも女王のことですし。今回現世との門を開いてくれたのも女王なんですよ?」

 

「「「………………………………」」」

 

顔を見なくても分かる、今コンラとぺの字から猛烈に胡散臭いものを見る目で見られてる。

 

…………あっるぇ?

 

 




まさやんは言ってしまえば、神器に対する『正喰者』を持ってるようなものです。
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