独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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書いてる途中に文字が消えた回数→3回
消えた総文字数→約7000字

悲しみのあまり、底抜けに明るい話を書くつもりがシリアスの影が侵食しました…………


砲火その15

 

「…………。さて、まあいつものごとくフラれてしまったわけだけれど」

 

倒れたとおもったら直ぐに復活した件。…………つまりこれ、いつも茶番的なノリでやってるのねお二人さん。

 

「確かにノリは茶番かもね? だが私は望を好いているさ、真っ当にね」

 

真剣な表情で、スカサハは言う。気の迷いではない、本気で好きなのだと表情が雄弁に語っていた。

 

そして、その表情を見た望は…………苦しそうに、表情を翳らせる。それで、なんとなく察してしまった。俺が口出しすることではないわな…………当人同士でやってくれ、犬も喰わん。

 

「…………なるほど、だから俺に恩を感じていると?」

 

「ああそうだとも。望の命の恩人なんだろう?」

 

「皮肉か? 死人から半死人に変えただけだぞ、完璧に救えたわけじゃない。死者の国だろうにここ」

 

「それでも心は死ななかった、だろう? それに、ここは確かに死せる者達の戦場だ。戦い足りない死者がさらなる闘争を求める地獄だ。でも地域による管轄というものがあるからね…………望が救われなかったら、私と彼の因果が交わることはなかっただろう。その奇跡に、私は感謝しているんだ」

 

「さいで…………」

 

「それに、将来のお義父さんへの心象は良くしておきたいからねっ」

 

「お義父さん、だぁ…………?」

 

思わずグリン! と望を睨んでしまう。只でさえスクールではおとうさんコール、英雄派でも一部(という現実逃避)の連中はパパ殿だのお父さんだの呼んできやがる。だのに、またここで追加か貴様ァ…………!

 

「や、僕がそう言ったわけではないです。確かに『こういうことをしてくれるのが、お父さんなのかなー』みたいなことは思いましたけど、年下の男の子に精神的な面でもおんぶにだっこさせることを許容する程落ちぶれてはないです」

 

だが、実に心外そうに望は言った。うん、その言葉に嘘はないと思うんだが…………いやでも年下に父性を見るとか、年下の女性に母性を感じる赤い流星的ナニかといっしょくたにされても文句は言えんぞ。

 

「でも実際のとこ、育ての親みたいなものだろう?」

 

「まあそうですけど」

 

「じゃあやっぱお義父さんで問題ないね! お義父さん、息子さんを婿にください! 絶対に幸せにするので!」

 

「まず俺をお義父さんと呼ぶのをやめてくれ、話はそこからだ」

 

「いえ、全力で止めてくださいよおとうさん!」

 

「ええい、足元にすがるな気持ちわりぃ! 余計に無理矢理くっつけるぞ天の邪鬼が!」

 

…………あれ? でももし本当にそういう設定で考えると、父親が俺(17歳)、息子が望(20歳)、息子の嫁がスカサハ(???歳…少なくとも、4桁とかそういうレベル)。めちゃくちゃだろコレ、怖いわ。

 

英雄派(ウチ)に政矢より年上いたっけ?」

 

「結構いますね、流石に彼らはパパ殿のことを父扱いはしないですけど」

 

「俺だってクソオヤジ呼ばわりはするが、煽りで使ってる様なもんだしな」

 

「俺は割と真面目にパパ殿と。ほら、英雄派の父ですし」

 

「お前らはお前らでのんきに言ってんじゃないよ!!?」

 

今まさに齢(推定)4桁台の女子高生が義娘になるかもしれない瀬戸際なんだぞ!?

 

「「政矢(さん)なら割となんでもあり」」

 

「畜生日頃の行いのせいか!」

 

悪いことは大してしてないのに何故か因果応報という言葉がちらついたぞ糞が!

 

「あはは! まあ雑談と婿入りの件は後にするとして」

 

「「後にしないで下さい」」

 

「後にするとして! まず君らの適性検査をしなきゃなぁと」

 

続く話の内容が内容だけに、思わず口を閉じる…………くっ、これで義父だと認めると思うなよ!? あ、自由恋愛に関しては大いにやってちょうだい。

 

「というか、適性検査?」

 

「そっ。まあそちらでもそういうことはやってるとは思うので、私がするのは『隠れた才能』を見つけることかな。幸いにして、私はそういうのが大の得意でね」

 

そう言ってスカサハはまず、コンラの手を両の手で握った。

 

「ふむふむ…………基本的に器用貧乏。あ、でも空間認識能力と戦術眼は凄いな、部隊長としては申し分ない」

 

「きょ、恐縮です」

 

「そして…………ほお、これは無意識だろうな。並列思考が得意みたいだぞ、コンラ。よく事務作業などと平行しながら内職でもやってるんじゃないか?」

 

「…………赤丸先生というのを少々」

 

…………よくもまあ、触っただけで分かるものだ。軽いテンションとお義父さん発言でおもいっきりイメージが崩れたが、やはり彼女は影の女王スカサハ。戦士の育成はお手の物ってか。

 

「そりゃすごい。詳しくは知らないが、採点をして解説を詳しく書くだけでも大変だろうに、それを一度に多く捌いていると。実際に転用するには時間がかかるだろうが、それは戦闘でも大きな武器になる。槍だけやらすのは勿体ないな…………政矢クン、この『闇夜の大盾(ナイト・リフレクション)』というのは、どういう神器なんだい?」

 

「基本的には自分の影を操る神器だ。基本的に影の操作、防護、攻撃の吸収、放出が可能とされている。防御性能だけで見るなら、衝撃を徹す類いの、あるいは遮蔽できない類いの攻撃以外なら大体防げる」

 

「ふむ、今コンラがこの場で存在できているのは、影を操作して同化しているから、ということか」

 

そう言って、彼女は少し唸り、また俺に質問をする。

 

「ねぇ、君は武具を作るのは得意かな?」

 

「流石に貴女には負けると思うけど」

 

「できるんだね? つまり、神器と連動させる類いの武具が作れる。…………ああ、望の棺がまさにそれだろう?」

 

おっしゃる通り。寧ろそれが本職である。しかし、この魔女ならば普通にそういうのも作れてしまうだろうに、何故俺に対して?

 

「単純に、神器に対するノウハウが無いからだよ。一般的な知識はあるけれど、ここが死せる者達の戦場である以上、神器は例外除いて持ち込めないからね。ならば、本職に指示を仰ぐのが最適さ」

 

「ふむ…………それで、どうするんだ?」

 

そこでスカサハはニンマリ笑った…………穏やかのように見せかけて、面白い獲物を見つけたような、獰猛な光を目に宿らせて。

 

「我が学園の槍クラスにでも叩き込もうかとでも思ったが、やめた。特別カリキュラムを組む。そもそも彼に覚えさせようとしてるあの馬鹿弟子(クー・フーリン)に叩き込んだ槍術は、槍の扱いだけじゃなくてルーンへの深い理解もいるからな。……久々に、鍛え甲斐がありそうだ」

 

「わ、分かりました…………よろしくお願いします」

 

これは…………大丈夫なのか、な? いやまあ、大丈夫でしょうと信じたい。あと、何を作らされるんだろうか、俺。ああでも良いタイミングだ、β版を完成させるついでに埋め込んでしまおうか。

 

「じゃあ次、ペルセウスくん」

 

「お、おう!」

 

次にぺの字の手を握る。

 

「ほぉ…………君は分かりやすく戦士だな! 盾で攻撃を受け、時に上手く流し、的確に剣で致命の一撃を狙う。単純だか、基本がなっていないとできない王道の戦闘スタイルだ」

 

「お、結構好評価なのか俺?」

 

「ああそうだ。惜しむらくはそのスタイルは完成しているから、変に手を加えてしまうワケにはいかないということだ。必然、手伝えることがあるとすれば他の点だが…………」

 

そう言って、またもウンウンと唸るスカサハ。

 

「…………お? 君、魔法は使ってないのかい?」

 

「ん? ああ、俺ァどうも魔法との相性が良くなくてね、単純に複雑な計算が向いてねーんだよ」

 

「それは勿体ない! 素養自体は高いのに…………。ふむ、ギリシャの君に勧めるのはどうかと思うが、ルーン文字式の魔法を覚える気はないかな?」

 

「別にその辺りの抵抗はないけどよ、それって俺でも使えるものなのか?」

 

「寧ろ複雑な計算を必要としない分、簡単なルーン文字式魔法なら一文字で完成させられるから、君に向いていると思うよ。ルーンには、それ自体に意味が込められてるからね」

 

そこで、またもや俺の方にスカサハが向く。な、なんだよう?

 

「そちらの組織には、魔法使いの研究者はいたりするのかな?」

 

「一応俺もしてるけど、俺よりも余程優秀なヤツがいるよ」

 

ウチだとゲロリンだな、あと最近どこぞの白龍皇のところに行ったアーサーの妹が天才魔法使いなんだとか。

 

「ふむ、君もできるのか。なら、ルーン文字をギリシャ文字に処理し直す、なんてことは」

 

「意味も崩さず、相互の文字の齟齬を崩さず、なんてことは無理だ。そもそもが言語ちげーんだから。そこまでいくと、人外の領域。人間には知覚できない領域という意味で不可能かと」

 

「となると、それは私がなんとかやってみるか。ラテン文字使えばいけるだろう」

 

「やれるのか…………流石は影の女王」

 

俺も大概だと思ったけどさ、この女の方がよっぽどだと思うよ。脱帽しちゃうね。

 

「じゃあ君は、1年のルーン研究クラスで勉強するといい。追々こちらの方でギリシャ文字版を完成させるから、帰ったときに魔法使いに手伝ってもらいながら訓練するといい」

 

「あー…………すげーありがたいんだが、ここまでしてもらっていいのか?」

 

「いいんだよ、客人は盛大にもてなす。それが(将来の)お義父さんの仲間ともなれば張り切っちゃうってものさ!」

 

「だからお義父さんちゃうと…………」

 

しかし、これはこれでありがたいのも事実。少なくとも、影の国はいざというときに味方になってくれるということ…………利用するつもりはないけど、万が一英雄派が分解したときの受け皿になってもらうぐらいなら頼めそうだ。

 

「そして最後に、政矢クン!」

 

「…………ん? 俺、する必要あるか?」

 

「え、政矢クンは訓練していかないの?」

 

「いやだって、俺の本職は研究者。戦闘能力はあるけど戦闘員じゃありません」

 

「ふむ…………」

 

そう言って彼女は目を閉じて…………開いた。その右眼に、とあるルーン文字を光らせて。

 

その文字は、perth(パース)。解釈は人によって違うが…………真実を求めること。他には、文字のモチーフがダイスカップなので、賭け事とか、そういう意味…………だったような。

 

あまり、長くはなかったはずだ。しかし、永遠のようにも感じられた。それはおそらく…………彼女は、俺の未来を占った。だからだろう。

 

「…………そうか」

 

そして彼女はもう一度目を閉じて、開いた。もうその目にルーンの光はなく…………ただ、俺の行く末を案じる年長者のそれでしかなかった。

 

「……やはり、君もできうる備えをしておいた方が良さそうだ。詳しくは言えないが、近い内に大きな悲しみが君を襲う。運命を変えるにせよ、悲しみを乗り越えるにせよ…………備えが必要だ」

 

「それは、本当に言えない?」

 

「言えないな。私の問題じゃない、君の問題だ」

 

…………そう、か。うぅん、そいつは、困ったな。凄く困る。

 

「どういう風に対処すればいいかも?」

 

「…………済まない。私に力があれば、その靄を祓ってやれるのに」

 

そうか…………そうか。うん、そうなのか。

 

「わかった。すまないね、嫌なものを見せてしまったみたいだ」

 

「ううん、寧ろ勝手に覗いて申し訳ない。…………適性検査の必要はないよ、見てしまったからね。君は、3年のゲッシュクラスに行くといい。呪いやゲッシュなどの制約を学べる。君の知りたいことに、一歩でも近付ける筈さ」

 

…………日本から遠く離れた異界にやってきて、色々と度肝を抜かれたけれど。でも、一番驚くべき予言を俺は…………静かに、受け止めた。

 

脳裏に浮かぶのは、どこぞの■■が持つ■■の■■…………答えへの道を閉ざされているけれど、それでも俺は確かに、何かに近付いた。

 

 




コンラくんにはチャージスピア(GE)でももたせましょーか()
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