独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》 作:cmVkem9uZSE=
「というわけで素材を調達したいのでちょいと案内してもらってもいいですか会長」
翌日の放課後、生徒会室で事務作業をしていたスカサハ会長に、そう言った。
「ん? 設計図の描き直しは昨日やったろう? これ以上何をするって言うんだい」
「魔獣クリードの頭蓋骨」
「…………それ、本気で言ってる?」
ちょっとアホの子を見るかの如く、彼女は呆れた様子でこちらに視線を向けた。
「単純に、素材が足りない。以前食った魔獣クリードが幼体だったからな」
「よく生きて帰れたものだ。今の学園の連中でも倒せるのはそういまい。成体なら、尚更だ」
「でしょうね。多分、成体相手だと俺では太刀打ちできないだろう。でも、素材が足りない。槍の部分を、あの魔槍と同じにしてやるには、あの魔獣を狩らねばならん」
「ハァ…………じゃあ私が狩ってやろうか? ではいけないのか」
そうなんだよね。多分このヒトなら楽勝でぶっ殺せるんだろうけど、それでも内容が内容だけに貸し一案件、向こうがこっちに恩義を感じているらしいのでそれでチャラだ。でもこれは、ここで使うカードじゃない。
「今の俺なら勝てない、でも勝算はある。そろそろ次のを実験したいと思ってたんだ、死んでも死ねない世界なら、安全に行える実験が」
『(ゲッ、またアレ使うのまさやん。僕それはどーかと思うんだけど)』
うるさいクロス、使わなきゃ問題点の洗い出しもできねーだろうが!
「その相手としても、魔獣クリードは丁度いい。成体であるとなお望ましい。素材は欲しいし実験もしたいので、そのためにモンスター・バスターさせてください!」
「いいよ」
『(いいんだ!?)』
確かに、呆れてた割にはあっさりと許可したなぁ…………。
「そもそも学校の課外活動でやってる行事だしね、クリードへの挑戦って。本来は成績優秀者だけが申請できるものだが、私からの推薦があれば問題あるまい。あきれこそすれど、挑戦の意思を、闘争への渇望を、否定するような輩はこの
そうやってニヤリと笑う姿を見て、すげー様になってるなーと思いつつ、あー…………肉食獣は望の好みではなかったなーと思い出した。口には出すまい。
「屍を晒したら、ちゃんと拾ってやる。明日、これを持って校門の前に来るといい」
そう言ってスカサハは、一枚の紙を俺の前に飛ばしてきた。なにか書いてあるようだけど…………読めない、勉強不足か。
「では、早々に退室したまえ。これから私はとあるミッションがあるからな」
「というと?」
「望に会いに…………ゲフン。ゲーム研究部への視察だ」
「職権濫用過ぎねぇかこの会長…………」
◆◆◆
そして夜。宛がわれた寮の部屋で、俺は例のブツを弄っていた。…………そう、ブレイクダウン・トリガーだ。
『こいつなー、神器のブラックボックスどころかシステム全体に強制介入してくるからなー、僕本体に被害はないけどいつ君が死ぬかひやひやするよ』
「だからこそ、死ねぬここでやるしかあるめぇ。制御装置とかロマン的に持っての他だが、死の危険性はなんとか抑えておかないとなぁ」
『暴走はロマンってか? 一定の理解はあるけど、君が酷く傷つくと僕は悲しいよ?』
「そう言ってくれるとは、嬉しいねぇ相棒」
だからと言って止めるつもりはほとんどありませんが。
そうやって会話しつつも、作業を進める手は止まらない。機械腕で、装置内部の配線やパーツを調整したり換えていく。
『実際のとこ、本気で勝算あると思ってんの?』
「どっちの意味で?」
『どっちもー』
「お前がクリードに勝てると言えるのなら、そっちは余裕」
『勝てるとも、あんな雑魚。邪龍見習ってこい』
流石、らしくなくてもドラゴン。傲慢さが滲み出た自信たっぷりの発言は見習わないと…………え、見習わなくてもお前は自信の塊だって? そんなー。
「ブレイクダウン・トリガーに関しては…………分からん。前回取ったデータから、俺らはトリガーに対しての耐性があるらしいが…………まあ思考は奪い取られなくとも、身体が言うこと聞かないパターンは想定して然るべきだろう。周りに監視を置かないように、スカサハ会長に言っておかなきゃ」
『さよか。あとスカサハ会長って言うのやめよ、さっきから腹筋がジャガーノート・ドライブなんだけど』
そう言えば目が覚めてからやけに声が震えてるなと思ってたけど、笑ってたんかいお前。
『だって笑いたくもなるだろうこの状況www あの、あのスカサハがwww 見事に色ボケでwww 学校の真似事どころか生徒とかwww 年齢考えろよあの魔女www』
「怒られても知らねーぞー? 神器切り離し位余裕でするからなー?」
『酷いな相棒! 血も涙もないのかい!?』
「今流れてるのは電気と油だけだよバカヤロウ、現在進行形でロボじゃねーか」
しかし、気になるのは…………
「…………お前、生前スカサハと面識あんのか?」
『あるよ。だから寝てたし挨拶もしなかった』
……つまり、会いたくない人物と。
『会いたくないね、うん会いたくない。知ってるもん、そもそも僕って元々『ファイアー・ドレイク』って火龍の一種だからね。このファイアー・ドレイクってのはイギリス辺りのドラゴン種なんだよ』
「今明かされる衝撃の真実!!?」
知ってるよ俺、ファイアー・ドレイク種ってあんまり強くない、自然現象と同一視されるドラゴンだって! 火龍とは名ばかりの、飛竜だって!
それが…………それがどうしてクロス・ファイアみたいに成れるの…………?
『弱いのは我慢ならなかった。それに元々食べることが好きだったから、そりゃあもう何でも食べたのさ。その辺りは説明したろ?』
「いやまぁそうだけど…………」
噴火とか地震とか食べたとか吹かしやがるからなぁこのドラゴン…………いや、なんか本当な気がしてきたぞ、ついでに元々『龍の手』だったことも理由が分かった。なんで早く言わないかなぁ…………。
『言ったところで、何かあるわけじゃないじゃん』
「否定はしないけど」
…………んで、そのファイアー・ドレイク種だったクロス・ファイアが、どうしてスカサハと接点があったんだ?
『い、一時期オイフェに世話になってたことがあって…………実はリアルコンラくんとも面識も…………』
「そんな繋がりがあったの!!?」
『それにさぁ…………スカサハってコンラくんは大好きだったけど、オイフェのことだいっきらいでさー。んで、僕ってばオイフェの世話になってたから…………オイフェの一味とでも思われてるみたいでねぇ。いやぁ、当時の名前がクロス・ファイアじゃなくて、当時の面影が今の神器に残ってなくて本っ当によかったー!』
…………こわいなぁー! 知らなくてよかったー! 知ってたらどんな顔して影の国行けばいいのか分からなくなってたよー!
『あ、だからいざってときはトリガー使ってでも逃げたほうが─────』
ストン! と作業台の上に矢が刺さった。しかも矢文だ。
ため息つきつつ、ほどいて開き、読む。しかしどこから飛ばしてきたんだろうか…………すごいなぁ影の女王。
[知ってるからな、スティルくん]
「…………だとよ?」
『まさやん、今から逃げない?』
逃げませんからね、スティルくん。
◆◆◆
「おはようございます会長」
「…………ほう、わざわざ暗号にしたのに読めたのかい」
時間は朝の3時、場所は校舎から離れたところにある巨大な門。そう言えば時間の確認していなかったなーと思って、やっぱり解読する必要あるのかなーって、ルーンだらけの暗号文の解読をすることに。お陰で寝てねぇ。
「頭の良さで雇われてますし」
「さすがにそれは嘘だろう。まあ、研究者として優秀なのは疑いようもないけどな、君」
そう言ってスカサハは五回、扉を叩く。すると大きな音と共に門が奥に開いていく。
その先は闇。ぱっと見だと異空間だな、この先も。
「では、良い死合を」
「ええ、いってきます」
明らかに怪しい…………一寸先は闇どころか、なにも見えない先へ、一本足を踏み出そうとして、踏み外す。
いや、踏み外すという表現は正しくない…………踏み出そうとした先に、地面なんて無かったのだから。
体勢を崩し、重力に引かれて身体は前に投げ出され、そのまま闇の中に墜ちていく。上も下も右も左も何も見えない、正に暗黒。ただ、下に引っ張られることだけ分かる状況は、中々に恐怖…………なんてことはない。
「じゃあ、やろうか?」
『あー、なんかやらなきゃ脅されそうだしスカサハこえーし…………
「やったぜ! じゃあ、第二回ブレイクダウン・トリガー稼働実験の開始を宣言する!
《Switch-on!!》
《Level-3!! Danger!! Danger!! Danger!!》
《Connect:Cross・Fire!!》
『Unknown unit has connected!! System in jeopardy!! Recommending immediate termination of use!!』
『《Attention:Are you ready!?》』
「
『Approved!!』
《Out of control!! Break down booster!!》
『Awaken:Juggernaut Drive!!!!!!!!』
《Trigger level-3,How amazing!!》
ブレイクダウン・トリガーの作用でジャガーノート・ドライブの起動が完了したところで着地。その瞬間、闇が晴れ…………死の大地の上で蒼い月が輝く。
場所はスカイ島。しかし俺達が訪れたあの島ではなく、その裏、彼の世と此の世の境界を基準に反転した位置に存在する、影の国のスカイ島。
違うところはいくらでも見つけられる。荒れた地面に、眼前に聳える棘だらけの山。…………いや、山じゃない。俺は、アレに似たモノを見たことがある。
意識はしっかりしている…………思考の誘導は確かに働いてるため、調整の結果が出たということだ。
『制限時間は10分…………あともう9分30秒』
『上等だ、3分で片付けてやらァ…………グルゥォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!!!!』
雄叫びに、山になっていたモノが反応する。
地響きと共に島を砕き波を、嵐を起こし、蹲ったようになっていたソレは立ち上がった。
海を荒らし、竜巻を喚ぶ、ケルトの海獣…………クリード。
『────────────────────────────────ッッッッッ!!!!!!!』
鼓膜があったならば、それブチ破る様な鳴き声を上げてヤツは俺を見下ろす。
今ここに…………ケルト版怪獣大戦争の火蓋が、切って下ろされた。
英語の訳は意訳とか超訳ですらないなにかです、突っ込まないでください(泣)