独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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楽しく趣味全開に…………


砲禍その18

 

『────────────────ッ!』

 

最初に動いたのは、クリード。そして、初っ端から決めに掛かったらしい。空は黒雲で覆われ風が吹き荒れ、俺の身体を島だったモノの瓦礫と一緒に空へと巻き上る。そして海が意思を持ってるかのように波打ち、呑み込んでしまおうと全ての方角から襲い掛かる。

 

常人なら…………いや常人でなくとも、此所で詰みだろう。荒れ狂う風で身動きが取れず、そして必殺の大波が叩き付けられ、瓦礫で身体を削り磨り潰す。

 

だがクリードにとっては残念なことに…………俺は壁を越えた連中の一人だったということ。

 

『Hazard!! Hazard!! Hazard!!』

 

嵐が死んだ。俺を拘束し、死を待つ死刑囚を縛り付けるかのごとき嵐の枷は死んだ。風が存在するには、流れを作る空気が必要だ。だからこの地上から全ての気体を喰い尽くした。

 

『Hungry!! Gluttony!! I'm Predator!!』

 

波が死んだ。小さな小さな俺を潰そうと、大質量を以て襲いかかってきた津波は消えた。波が存在するには、波打つ場である海が必要だ。だから波を消すために海ごと飲み干し平らげた。

 

『Come on preys!! HA-HA!!』

 

瓦礫は消えた。そもそもただ俺よりも数倍デカいだけの石っころがたくさんあっただけだ。当たろうがどうと言うことはないが、目障りなので此方から喰ってやった。

 

Order:Predation(全覚補食権限)…………今この時だけは、俺の全身、俺の感覚全てが補食器官だ』

 

視覚で捉えたモノ、聴覚で聴こえたモノ、触覚で触れたモノ、味覚で味わったモノ、嗅覚で吸いとったモノ、第六感で認識したモノ、それら全てを思うままに自由に食べたいものを食べれる。それが十字砲禍の覇龍のデフォルト機能、全覚補食権限(オーダー:プレデーション)。感覚を広げていけば、星すらも補食できる…………とは流石にいかない。俺が絶対補食者になれる対象に対してでもないと、見ただけで食べられないからな。

 

しかし主導権は強引に手に入れられた、海獣として環境を弄る能力は使えないと見ていいだろうさ。強引? 力業? なんとでもいえ、できることをして何が悪い。

 

『─────────…………!』

 

『ふぅん? 驚いた、空気も喰ったのに『声』を伝えられるのか? 規格外だねクリード。でもこっちも規格外だ、あんな小細工なんぞ効くものかよ』

 

『─────────────ッッッッッ!!!!』

 

『[能書き垂れてねぇで掛かってこい!]……か。格好いいねェ海獣風情がッ!!!!』

 

今この場は、不毛の世界と化した。海も風もなにもない、地面と互いの身体だけがそこにある。なればやることは一つ…………ぶつかり合い、だ。

 

全身の至る所にジェットブースターを増設、心臓という名の炉心の出力を上げて、背部と脚部から赤黒いエネルギーが吹き出た。

 

先手必勝、まずその見下す目が気に入らねぇ、目が二つ揃ってるのも気に入らねぇ、その右目をぐちゃぐちゃに喰い荒らしてやる。跳びながら大きく振りかぶり、左腕を突き出し…………全身を隈無く棘で刺し穿たれた。

 

間接部、炉心、カメラアイ、増設したブースター…………的確に俺の身体の弱点、アキレス腱というべき場所を、クリードはその全身から突き出た蕀の様な突起を伸ばし、刺し穿ち、拘束した。

 

『機体がダメージを受けてマース!』

 

雑音混じりにクロスが言う、うるさいわかっている。損傷は見えない右目の奥のディスプレイに映してるだろうが、煽りか貴様。

 

カメラアイは潰されたけれど、隠してあるサブカメラは生きている…………頭脳体こそやられなかったけれど、今正にあの巨大な腕で潰されようとしてるこの状況、結構詰みなんじゃなかろうか?

 

『──────────ッ!!!!』

 

捕まれ、棘が抜け、さらに機体がダメージを受ける。いつ爆発してもおかしくない…………Dead endまっしぐら、だろうね。

 

Scramble:Predation(緊急補食稼働)

 

まあそれも、俺じゃなければの話だが。

全身が、補食器官だと言った筈だ。それなのに警戒もせずに掴もうとしたお前の迂闊さを呪うといい。

 

『────────…………ッッ!?!?!?』

 

外殻を喰う、肉を喰う、体液を、骨を、髄を。掴もうと伸ばされた腕を、喰らった。

…………前も思ったが、あまり美味しくはないな。いや、率直にまずい。だが、素材としてこれは中々に悪くない、クリードの解析も進む。

 

『あーあーまさやん聞こえるー? どうもねー、奴さんの棘、なんか呪いでも付与されてたのか再構成が阻害されてるー』

 

『呪いは縛りの技術だ、今ある身体は再生することができない縛りだろうね。修復できないなら、新しく身体を作ればいい。幸い頭脳体は無傷だ』

 

『あい、さー! じゃあ古い身体は棄てようか…………あ、ぽいーっと!』

 

体外で同型の機体を製造、頭脳体の移植を瞬時に済ませ、古くなった機体を、左腕を失い、蹲るクリードに投下する。

 

Code:Suicide(最終変換指令)

 

そして棄てた身体が、瞬く間に端から赤黒い光に侵食され、消えていき…………

 

『[E=mc²]ってご存知? まあ知らなくても死ぬだけだけどなァ!!!!!』

 

喰らった質量を、全て『エネルギー』という武器に変換してそのまま放出させる。投下したボディの質量は100kgはある。それらが全て余すことなくエネルギーに変換された場合…………世界で初めて投下された核兵器の、大体14万倍のエネルギーになる。

 

シェルターの様に身体の装甲を増設させ、外界からの干渉をシャットする障壁を張り、目を焼かれない様にカメラを切り、対ショック姿勢。

 

蒼い月が照らす死んだ世界は、白い闇に包まれた。

 

 

◆◆◆

 

 

『…………おいおいおい、マジかよ。多分今使える最大火力ぶつけたんだぞ?』

 

カメラに接続して、周囲を確認した最初のセリフ。正直、星ごとぶっとばすつもりだったのだが…………死の大地は、抉れているわけでも、クレーターをこさえてるわけでもなく、変わらず、そこにあり…………

 

『────────…………────────────────────────ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!』

 

腕こそ持っていかれているが、それ以外の外傷が見当たらないクリードが、楽しそうにこちらを見ていた。

 

『ったく、僕のお株奪いやがったな。あのエネルギーの塊を喰いやがった』

 

『そんな性質あったっけ!!?』

 

『いや、ねぇ。でも僕も詳しいわけじゃないからな…………胃袋が暗黒世界(うちゅう)と繋げられるとかできるなら、対処は余裕だったんだろうさ。ともあれ喜べまさやん、クリードの様子見てみると、あのバカみたいなエネルギーをお返しされるわけじゃないみたいだぞ』

 

『十分脅威だけどな!』

 

『あと、残念なお知らせ』

 

『…………?』

 

『3分でカタをつけるどころか、5分経過』

 

…………チィ、これは単純に見込みの甘さと慢心だ。反省しなければ。

 

そんでもって、

 

『──────────ッッッ!!!!!』

 

慢心が消えたのは、あちらもそうらしい。目から見下す色が消えて、純粋に『喜楽』の感情が浮かんでいた。…………楽しいのか、お前。俺には戦闘を楽しむ癖はないから分かんないけれど。

 

『しかしトリガー使って通常覇龍の200%出力なのに…………あいつ強いなー。もしかしたら変異個体なのかもだぞ?』

 

『あのバ会長、わざと分かってあてがったな…………』

 

いやしかしさてさて、どうしたものかな。こうして悩んでられるのも、向こうが次は何をしてくれるのかとウキウキして待ってるからだろう。しびれを切らさないとも限らないが。

 

『…………ふぅ、やっぱねーまさやん。ドラゴンの戦いって、最終的に殴り合いに辿り着くんだよ』

 

『…あん?』

 

『一般的なドラゴン神器の行き着く果ては、鎧…………それも殴りやすさ優先のな。無論例外に例外を重ねまくってる十字砲禍はそんなことはなかったけれど、結果的に殴り合いにも対応できる様に全身ロボドラだろ?』

 

『つまりお前は…………あの50mはあるだろうバケモンと、殴り合えと?』

 

『そういうことよん』

 

んなバカなことやってられっか…………とは言えなかった。解析が済んでないからハッキリしたことは分からんが、どうやら喰った方がダメージデカいのは今分かったことだし、となると俺はクリードに触れる必要がある。棘のこともあるし装甲厚くして殴り合いの方が安全とも言える、か。

 

じゃあ、もっと出力あげようか。

 

《Double-on!!》

 

『Over boost!! Limit breaker!!!!!』

 

『…………なにこれ』

 

『追加機能『リミットブレイクモード』、残りの制限時間半分にする代わりに出力4倍&後遺症も4倍』

 

『ハァ!!?』

 

『さあ、盛り上がってきたねェ!!! やるんなら本気でやろうぜ、張り切り過ぎて死んじゃうかも知れないけどサ!!!!!』

 

『Create:Monster!!! MMMMMonster!!!!!!』

 

自分の身体を核に、骨格フレームが、外殻フレームが、各種装備が製造→展開されていく。

 

大地を揺らしながら組上がっていくそれは、眼前のバケモノにも似た、二足歩行の巨大機龍。神経を外装に繋ぎ、自分の身体となる。

 

『こっから先はもう、考えるのはやめだ! 殴り合いだクリード…………グルゥォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!!』

 

『────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────ッッッッッ!!!!!!!』

 

叫び、右の腕を突き出す。相手もそれに乗っかり、棘を生やしに生やした右の腕を振り下ろしてくる。空気抵抗がない為か、お互いの頭部に直ぐ様互いの腕が迫る。

無音の世界…………本来なら耳障りな金属音や、肉を抉り取る音が響き渡るはずの一撃は、静かに各々の顔をブチ抜いた。

 

『グルゥアウッ!!!』

 

『──……ッ!!!』

 

互いに、よろめきそうになり…………両足で踏ん張る。大地は割れ、地震なんてめじゃないぐらいに揺れているが、そんなものは気にならなかった。

 

繋いだ神経が、外殻、頭部の損傷を痛覚信号として頭脳体に伝える。それがどうしようも痛くて、でも何故か片が削れて不格好になった口の端は吊り上がってしまう。

眼前のバケモンも同じだ、より強く喜悦を伝えるように目を光らせている。俺と違って生身で、すげぇ痛いだろうに、不細工になった顔で、それでも笑ってやがる。

 

鏡映しの様に、右腕を振りかぶる。狙う位置は定まらない。でも、そんなことは構わずに、ただ前に、拳を…………!

 

『グルァァァァアアアアアアアッッッ!!!』

 

『─────────────ッッッ!!!』

 

拳同士がぶつかった。衝撃はあれど、その程度はどうということはない。ただ目の前の敵に、負けたくない────────ッ!

 

『クリードォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!』

 

『───────────────────────────────────────ッッッッッ!!!!!』

 

◆◆◆

 

 

…………正直、触れた時点で俺の勝ちだったのだ。

 

ボコボコに空いた腕を晒して、俺は横たわるクリードの側に寄る。

 

正直、禁手を維持するので精一杯だ、ブレイクダウン・トリガーの後遺症の一つ、神器の機能停止が俺らには起きないとはいえ、ガタガタに調子を崩してしまうのには代わりない。

 

『俺の勝ち、か…………?』

 

『──…………』

 

息も絶え絶えといった様子で、クリードが肯定の意を示した。

 

『だが、納得はいかん。やはり相性の問題はあって、その上で俺はお前から地の利を奪い取ってたからな』

 

『────────……………………』

 

[それも死合なのだから仕方がない]と、クリードは言う。

 

『────、────────』

 

『まあ、それもそうか』

 

…………全く。素材にする気満々で戦いにきた俺を諭すとか。その上で俺の骸を持っていけとか。カッコ良すぎかこんちくしょう。いくら、俺もお前も死んだところで復活するとしても、な。

 

だが、やはり納得はいかない。だから…………

 

 

 

 

 

 

 

 

『Rise-up Overworld,Cross×Calamity』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「ということで、死骸は美味しくいただいたけど、友達として連れてきた」

 

「─────!」

 

「……ごめん、流石の私も何言ってるのかわかんねーや」

 

 

 

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