独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》 作:cmVkem9uZSE=
怪獣大戦争のオチ、勝者は俺ということで幕を下ろしたが納得がいかないので、次また再戦するためにも契約を持ち掛けてクリードを一応仲間として迎い入れたのだった。
身体の問題は、俺が喰った死骸を十字砲禍内で解析、培養して新しく身体を新調させることに。それまでは、代わりの魂の容れ物として怪獣クリードの一部と機械を組み合わせたサイボーグボディを使ってもらうことに。大きいとあれなので、普段は柴犬程度の大きさでピョンピョンしてもらうことに。
名前はない、とのこと。ただ不便なのでとりあえず今は『リード』と呼べとは
とりあえずサンプルはしっかり手に入ったのでデータを取る分には不足なし、武器を作るには十分すぎるほど。本来の目的も込みで達成したと思われる。
…………だが、このクリード改めリード(仮)、クロスが言うには普通の個体よりも大分強いとのこと。もしかしたら別の種との交配で雑種強勢を起こした個体なのかもとの弁、心当たりがあるらしい。そして答えを知るスカサハオババは、意味深に微笑むだけで何も語らない。
『そんなことよりも、コンラくんが禁手に至ったって』
『──────!』(ピョンピョン)
『いや、そんなことだろ! 全く、大体まさやんもまさやんだよ、こんな得体の知れない小動物引き取るとか』
『───……………!』
「はいはい喧嘩しない喧嘩しない。長い付き合いになるかは分からないけど、それまでは仲良くしようぜその方が建設的だ」
『うわきものぉ! 実家に帰らせてもらえます!』
「あのなぁ、どう足掻いたって相棒枠はお前が嫌がらない限りお前で固定だろうが。あとネタに走るのやめろ、帰る実家何処だよ」
『あ、バレた? あとよくよく考えたら実家もうねーわ』
「お前もか! つくづく似てるな!」
「『あっはっはっは!』」
「────────!」(ペシペシ)
あーあーごめんごめん、放置したわけじゃないんだよ。ほら、チータラお食べ。
『それで、今から確認しに行くの?』
「だなー。ほら、元々1週間の予定で、今日6日目ですし。明日帰る為にも今日の睡眠時間をリリースしなきゃ」
『─────』
「そりゃ、会長はまあいい人だから少し延びたって構わないだろうけどさぁ…………なぁクロス、アイツら放置してて大丈夫だと思う?」
『ダメだと思います(白目)』
そういうことである…………連絡できたら連絡しますとは言ったが、此所は異世界影の国、電波なんぞ通じてるわけもなく、そういう研究はまだ進んどらんので放置も同然である。あ、繋がらない可能性が高いことは既に説明したけどな。
で、あるので早いとこ槍を作らなきゃ…………
「ちょっと待て、コンラが禁手になったァ!!?」
『反応が遅い!!?』
◆◆◆
「それで慌てて入ってきたと…………お疲れのところ申し訳ありませんパパ殿」
「いやぁ、寧ろその場に居れんですまんなコンラ。至ったらすぐに調整したいところだったのに」
今ならパパ呼びも甘んじて受け止められる。尤も家庭を省みない系ダメ親父的なあれだけどな!
そんなわけで既に空き教室で待っていたらしいコンラの下へ突撃、検査をしながらいろいろと話を聞くことにした。
「ちなみに、どんなタイミングで発現したのん?」
「会長にボコボコにされてるときです」
「やはりか…………」
元々手加減とかとは無縁だろう女だろうけど、コンラに対しては輪をかけてそれがなかったらしいからな、ペルセウスが言うには。
「俺が槍で応戦しようとした時点で、会長はルーン文字を飛ばし、魔槍を蹴り飛ばし、背後から切りつけて来るんですよ…………人手が足りないと思いました、切に」
『いや、人手の前にいろいろと問題があると思うんだけど僕』
…………うん、容赦ねぇな。分身かよ。
「いえ、分身はしてませんでした。というか、身体能力などは俺のレベルに合わせてたらしいので、いずれは俺にもできることなのでしょう、同時にそういうことをするのは…………先が全然見えませんけど」
「だろうね!」
「…………まあ、というわけで、俺は人手が足りないと心のそこから思ったんです。そしたらこうなってました。─────『禁手』」
コンラがそう言うと、ヤツの影が蠢いて…………そこから3人の、黒い人影が這い出てきて、俺に敬礼した。…………ホ、ホラーだな。
「『
「ふむ…………検査機器に繋いでるから大体のことはわかったぞ。確かにゲリラに向いた能力だ、これからの武器のことも考えるなら、パルチザンという名前も頷ける」
明らかに亜種の禁手だなこりゃ…………俺は正当な禁手の闇夜の大盾見たことないんだけど。
「まず、分身は禁手の前に操ってた影と同じ性質。攻撃の吸収、放出が可能。そして分身と自分が吸った攻撃は共用できる。あとは、単純に吸える攻撃の容量と影の強度がかなり上がってるな」
「流石ですねパパ殿。他にも、非生物の影を闇夜の大盾の様に使えたり、自分と非生物の影に分身も身を潜められる、でしょうか?」
「…………強いな」
「パパ殿程じゃありませんよ」
これは…………人数が増えたら大変だな。特に夜に相手をするときは…………。あれ、これ強烈な俺メタじゃね? 禁手使ってるとき俺明らかに非生物じゃん!? …………怒らせないようにしよーっと。
「んー……っと、大体データは取れたな。これで最終チェックも完了っと」
「わざわざすみません…………」
「いーのいーの、やりたくてやってることだし、そもそもコレがお仕事だからねー。あ、そだそだ、コンラとしては、なにか希望とかなかったの? 設計図見てもらったけど」
そう言うと、凄く困ったように唸り始めた。な、なにか問題でもあったのだろうか…………?
「い、いえ……武器に関しては何一つ問題ありません。ただ、分身にも使えるようにしようと思うと、人数分必要になるんじゃありませんか?」
「…………あー、うん」
分身は想定してなかったからそれは困る…………というわけじゃない。何とかする方法はあるんだけど…………。
「何人増えるか分からんから…………とりあえず、12人までは対応できるようにしておくよ。それより増えたらまたクリード狩りに行かなきゃ…………」
「流石にそこまでおんぶにだっこではいられませんよ。その時までには、独力で倒せるようにしておきます」
「さよか。じゃ、暫く寝ててねー。30分ぐらいで完成させるから」
そう言って、同意を得たところで意識を切った。さて、ここからは俺の時間である。
◆◆◆
『機械は友だち!』
「強ち間違いじゃない発言するんじゃないよ、あとウィング主将の作者に謝れ」
そんな軽口を叩き合いながらも、作業をする手は止まらない。精密作業だが、それこそ
「──────…………ッ!?」
「なにそこで戦慄してるんすかリード、いつかはできるようになってもらう、自分の身体ぐらい自分で整備してもらいたいしなー」
「─────!?!?」
「騙してなんかないぞー? ちゃんとご飯はあげるし、君の死骸に見合った環境は提供してあげる。だがなぁ…………自分の身体の整備は、生理学的反応への対処だ。例えば排泄とか。お前は自分のケツすら自分で拭けないようなおこちゃまか?」
「─────!! ───────!!」
「働かざる者、とかは言わないけどそのぐらいはやって頂戴よ。勿論できるようになるまでは大変だし、俺も全力で教えるから。それに、出来て損することはないぞ、応用が利く技術だし」
「──────…………?」
ええ本当ですよ、リードくん。今から君が暫く過ごす世界は、電子機器で溢れた世界なんだから。
「…………。────」
「……まあ、野生動物的には良くないか。分かった、なにも言わない」
『はぁー、甘いねまさやん。じゃあリード、チータラとチーカマはお預けだぞその理論だと』
「─────ッ!」
「『手のひら返しはやっ!?』」
何がリードをそこまで駆り立てるんだろうか、一体? そこまでして食べたいものか、チータラとチーカマ?
まあ、そんな漫才は置いといてだ。
「大体できたなー」
「───…………?」
リードが首を傾げて、できたものをつついては訝しげな声を出した。まあそれも納得だろう。パッと見、ただの2メートル程の長い棒、それもちょこっと変な装置がついてるだけの。設計図からは程遠いことだろう。
「そしてこれを、だ」
その隣においてある、細い腕輪を手にとる。今回、材料を除けば最も手間の掛かったシロモノだ。
「管制AI、名前は助言を意味するThorn(スリサズ)…………としておこうか。Hi,Thorn.How have you been?」
『英語で言わなくても結構です、創造主。回路は良好です』
「悪いね、近頃やった無双ゲームの影響を受けちゃってサ」
ちゃんと受け答えができたことを確認し、腕輪をさっきの棒に近付ける。
『本体の存在を感知しました。創造主、これを取り込めばいいのですね?』
「ああそうだ」
『承知しました、回収します』
そして棒は、腕輪の中に回収された。まあ、異空間に武器を収納しておく技術は普及してるし、別に珍しいものでもないだろう。
「じゃああとは、コンラが目を覚ますまで待つか…………」
『お疲れ様』
「────」
『お疲れ様です。それで創造主、本体の名前は?』
「名前、名前か。考えてなかったが…………」
そこで、適当な紙を引っ張って、ポールペンをその上に走らせた。
『神器外部装置ExNo.04-01:Compression B×B:Gáe Bolg/Silhouette』
「ゲイ・ボルク/シルエット、そのままでは槍の形どころか武器の姿ですらないが、神器と接続することで影を纏い、槍のシルエットを浮かばせる。そんな感じでどお?」
『承知しました。本体名を[Compression B×B:Gáe Bolg/Silhouette]で登録します』