独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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いろいろ先取りした気がしますが気にしません(震声)
主人公がドラえもんぽくなってますが気にしません(震声)
いろいろ突っ込みがあると思います優しくしてね(懇願)


砲禍その6

 

当日、俺は別ルートで会談の会場である駒王学園に来ていた。何重にも張られた結界も、こちらを認識されなければ全く問題の無いものだ。普通に歩いて潜入できる。これも、『隠連防』の恩恵である。

 

学校の地図は頭に入っている。そして、どこで会談をやってるのかも。

 

『んでまさやん、今日のお仕事(メニュー)は?』

 

「宣戦布告、計画に組み込まれてしまったハーフヴァンパイア君の負担をなるべく軽減?」

 

今回の流れとして、学園の一室に閉じこもってる、『停止世界の邪眼』持ちのハーフヴァンパイアの転生悪魔くんの邪眼を強制禁手化し、時間停止を行ってその隙に…………とのことらしい。ぶっちゃけ俺の心情としては胸糞モノだが、確かにそうでもしないとただでさえ低い会談の破談確率が下がるので、一瞬だけ堪えることにする。まあ一度発動してしまえば後は問題無いのでさっさと誰かに助けさせるなり俺自身が助けるなりすればいいってことね。

 

いやしかし…………グレモリー眷属、過去がハードなの多くね? ハーフヴァンパイア君もさることながら、教会から魔女扱いされて追われた子に、聖剣計画の被害者に、母親を殺された半分堕天使の人、あの猫妖怪の子は確か実の姉が犯罪悪魔で、イッセーくんもついこの間殺されたばかりだし、あの元教会戦士の子は捨て子かつ真実を知ってしまったが故に教会を半ば追われたようなものじゃないか。え、なにこれ重過ぎ?

 

「これからテロるって時になんだけど、グレモリー一味に手出し辛い」

 

『仕方なくね? ちゅーか、積極的に狙わなきゃいいんだよ』

 

「それだ」

 

味方から疑われない程度に立ち回ろう。そうしようそうしようとウサギさんとカメさんも言いました!

 

とまあ、そんなおふざけはともかくだ。

 

『まだ止まってないねぇ。…………難航してる?』

 

「さあ…………なんでだろ?」

 

魔法使い連中にこっそり付けてた発信機から送られてくる情報から、校舎内にいることは確認できてるんだけど。

 

もしかして見つけられてないのかな?

 

「…………あ、そういえば」

 

『?』

 

「イッセーくんにあげた、隠蔽機能オンリーの隠連防…………」

 

『あ”』

 

…………静寂。

 

「流石俺、マジ天才。魔女の大群からハーフヴァンパイア君を隠せるなんて」

 

まさかイッセー君がアレを渡してるとは思わなかったけど。いや、なんにせよ超グッジョブ。

 

『自画自賛かよまさやん。いや、素直に凄いけど。で、どーすんの?』

 

そうだ、困った。このままでは計画が進まない。

 

「それにいくら隠連防が優秀でも、いつまでも隠しきれはしないよな。よし、こんな時は…………」

 

ポッケから、一つの巾着を取り出す。『神器外部装置No.12:緒荷擬(鬼ごっこ)』、ぶっちゃけ鬼ごっことは関係無いが、気分である。ちなみにお目当のブツはこれではなく、この巾着の中に入っているのだ。サラッと言うと、この巾着はとある国民的漫画に出てくる猫型ロボットのポッケと似た様な機能なのである。

 

腕を突っ込み…………、

 

「じゃじゃーん! 『神器外部装置ExNo.01:鏡の中の貴方に告ぐ(アバターメイカー)』(の○代ボイス)」

 

『わー、いきなり名前が厨二臭いぞー!』

 

それもそのはず、まだお披露目をしていない試作段階かつ規格外のExシリーズ! その記念すべき1作目なのだ! 見た目はただのデスマスクだけど。

 

『で、なんだっけそれ』

 

「忘れたのかよ。神滅具(ロンギヌス)級以外の神器なら、一回の起動だけコピれるってだけのブツだ。規格外は規格外なんだが、使い捨てなんだよなコレ」

 

『充分過ぎるわこえーよ。強ち天才の自称も嘘じゃねーな』

 

「充分じゃない。これ一つ作るのに諭吉殿が300人お亡くなりになるんだぞ。しかも成功しようと失敗しようと一回使えばもう終わりだという超絶使い勝手の悪さ。しかも神器を持っていなければ使えないという制限。…………まだまだ課題は山積みなのよ」

 

『そ、そうなんだ』

 

「ま、実は制作に掛かる費用を大幅に軽減させる目処が立ったから、英世1人で10枚生産できる目処が立ったけどな。次は神器持ってない奴にも使える様にするってところを目指してる」

 

『こいつきめぇ!!?』

 

キモいとはなんだ、日々努力と研究を重ねてるんだぞ。ラノベのために。

 

『なるほど、それは大事だね』

 

「……自分で言うのもアレだけどさ、お前重度だよな」

 

『バカ言え、僕は精々ライトオタ止まりだ、ラノベ中毒だけに』

 

「三ヶ月禁読?」

 

『止めて、それはマジで死ぬ』

 

中毒なのは嘘じゃなさそうだなと思いながら、『鏡写しの貴方に告ぐ』と『十字砲禍』のパスを繋ぐ。

 

「そういえばこれ、もっと致命的な弱点あったんだ」

 

『え、なにさ?』

 

「これ繋いでる間、外部装置は大丈夫だけど本体の神器使えなくなるの」

 

『致命的ィ!? え、まさやん今繋いでたよね!? すぐ離せ!』

 

「あー無理無理、使い切るまで離れない」

 

『前言撤回だこのポンコツ! もーやだこのマッド!』

 

「じゃ、今からハーフヴァンパイア君探すぞー」

 

『スルーかよ!?』

 

 

◆◆◆

 

 

案外簡単に見つかった。というか製作者は俺なのだ、見つけられないわけが無い。

 

でも、見つかったんだけど…………その、

 

「う、ううぅぅぅぅ…………」

 

「あ、あのそこのキミ?」

 

「ひぃぃぃいいいい!!?」

 

声をかけると、物凄い勢いでダンボールが後ずさった。

 

…………そう、『ダンボール』である。

 

場所は駒王学園旧校舎一回の廊下。どっかの蛇さんみたいにスニーキングでもやってんのかと思いきや、隠れておどおどしていただけとは。いや、こちらとしては助かったけど。

 

「い、いやですぅぅぅっ! こっち来ないでぇぇぇぇっ!」

 

『……うーわ、これ重症だ』

 

呆れたクロスの声に、思わず同意する。いくら事情があるにしても、コミニケーションが取れないのは困る困る。

 

「仕方ない、『神器外部装置No.03:妖盗り』」

 

緒荷擬から糸の束を取り出し、神器とのパスを繋ぐ。

そして、ガタガタと震えるダンボールに向かって糸の端を飛ばし、くっ付ける。

 

「妖を産むのは負の感情なりけり。てなわけでその妖、盗ませてもらおうか」

 

瞬間糸に何かが伝い、長さが伸びる。疑念とか、恐怖とか、そういった感情を糧にこの糸は伸びる。ついでに伸びた糸は様々な意図に使えるのだが、それは置いておこう。

 

数秒もすれば、ダンボールからのガタガタも収まり、いつの間にかダンボールの中から1人の変質者が現れた。

 

…………そう、変質者なんだ。なんか、紙袋かぶってる。かろうじて目の部分が空いてるけど、逆に怖い。

 

「お、落ち着いてくれた様だね。俺は妖しい者だが、君に危害を加えに来たわけでは無い」

 

「……………………」

 

「信じてないな、まあ信じてもらえるとは露ほども思ってないから納得だけどネ!」

 

とまあそれはともかく、腕元を見る。…………確かに、隠連防が付けられている。

 

「ん、やっぱり流石俺。隠連防があって良かったろう、ハーフヴァンパイア君? いや、ギャスパー・ヴラディ君?」

 

「ぼ、僕の名前を……それに、この腕輪のこと…………もしかして、イッセー先輩の新しい友達さん、ですか?」

 

「つい最近友達になったばかりというならば、その通りと答えておこう。いかにも、俺は彼の友人であり、その腕輪の製作者だ。隠連防っていってね、その名の通り使用者をあらゆるものから隠す能力を持っている」

 

「あ、ありがとうございます。おかげで、怖い人たちから逃げることが…………あ、ごめんなさい! これ、イッセー先輩にあげたものなのに僕が使ってて…………!」

 

「いーや。イッセー君にあげた以上、どう使おうと、誰にあげようと彼の自由だ。だから、彼に託されたのならそれは君が自由に使えばいい…………、と言いたいところなんだけど、そいつの能力を持ってしても、完全に逃げ切るのは不可能だろう、ちょっと貸してくれるか?」

 

「あ……はい」

 

おずおずと差し出された隠連防を受け取り、緒荷擬から仕事道具を取り出す。

 

隠連防を開き、消した機能の為の装置の残骸を取り除き、補填する様に装置をはめていく。

カチャカチャといじること25秒、『隠連防verハイインビジブル』の完成だ。隠蔽能力全振りである。

 

「はい、どーぞ。これで多分問題はないでしょうおそらく」

 

「ありがとうございます……あの、どうしてここまで?」

 

んまあ、ヴラディ君の疑問ももっともである。はたから見れば、知らない怪しいお兄さんが、なんだか理由が分からないまま世話を焼いているっていう状況なのだから。すげぇカオスだなぁオイ。

 

「んー、特に理由はないかな。たまたま俺はここにいて、たまたま君は困ってた。だから助けた。それでいいじゃん」

 

そして、そのセリフの裏で俺は『鏡写しの貴方に告ぐ』を起動させた。懐の中のデスマスクは消え、『眼』に何かが覆われる感覚が。

 

…………いやしかし、なんで再現率45%? 少なくとも前にも『停止世界の邪眼』はコピッたことあるけど、フルコピー余裕だったんだけど。……まあ、今気にすることじゃないか。あとできっちり解析だ。

 

「さあて、俺も危なくなってきたしそろそろお暇するよ。じゃ、ヴラディ君。気をつけてな」

 

なんにせよ、目的は達成できた。あとは借り物のこの眼を使い、予定通りの流れに修正するだけだ。

 

そんな風にランラン気分で振り返り、歩きはじめると、妙な感覚が頭の中を奔った。

 

「ま、待ってください」

 

気がつけば、目の前に眼も覚めるような金髪美少女がいた。間違いなくギャスパー・ヴラディ君だ。リアル男の娘とかマジかよ…………って言ってる場合じゃないな。

 

今、俺は確実に時を止められた。…………油断したつもりはないし、その対策はしてきた。なのに、どうして?

 

「腕輪のお陰で隠れきれているのはありがたいですし、助かりました…………でも、この日この時間にこの駒王学園にいるということは…………あ、貴方もあの魔女達と同じ目的で来てるんですよね?」

 

…………しまったな。冷静にさせてしまったせいで、頭がしっかりと回ってるみたいだ。ま、それにしたって怪しいから、遅かれ早かれといったところか。

 

「同じ目的…………と言われても分からないな。ただの通りすがりだぞ? …………と言っても信用はしてくれないだろうな。少なくとも結界をすり抜けてきてるのは間違いないわけだからな」

 

ただ、同じ目的と言われるのはいただけない。

 

「俺自身は、ちゃんと和平は結ばれてほしいんだ。少なくとも新世界だの新たな秩序だの、そんなものは望んじゃいない。君に手助けしたのは、現状が俺の自分ルールに反するからだ。ぶっちゃけると、あの魔女連中と同じ組織に属してはいるが、派閥は違う。仲間意識はないし、掲げる信念も違う」

 

正確には属してはいないのだが、この場では意味のないことだ。

 

「世界が一つ、優しくなるためにはこの3大勢力会談は必要なことだ。最終的には和平が実現するよう、それとなく動くつもりだ。…………そもそも、来なければ良いのでは、という疑問に関してはノーコメントだ。一つ言うことがあるとすれば、和平自体は文句はないが、奴らは忘れていることが、あるいは見て見ぬ振りをしていることがある。俺はそれを、思い出させる、あるいは眼をそらさせなくさせたいだけなんだ」

 

「…………イッセー先輩は、少しだけ僕と貴方が似ていると言ってました。つまり、」

 

「君程救いの無いものでは無いことを先に言っておこう。確かに俺は神器を持ったことで運命を狂わされ、親殺しをする羽目になったが…………まあその程度だ。一族に追われ、殺された君とは比べ物にならないくらいにマシだと自負しているよ」

 

さて、時間も押してることだし、そろそろ行かないと。

 

「どいてくれ、ヴラディ君。少なくとも俺は君の主人、仲間に振り下ろす拳は持たないし、君相手にも持たない。それを確認するために、ついて来ても構わない。…………神器の制御が問題ならば、ここで即席の制御装置を作ったっていい。もし裏切りを疑われることがあれば、人質にされたと言ってもいい」

 

しかし、それでもヴラディ君は動かない。

 

…………ガワだけは美少女だが、その眼は覚悟を決めた男のそれである。震えているのは…………妖盗りで吸い取りきれなかった恐怖心の残滓か。

 

「……逃げないのかい? 強さはともかく、本来の君ならおそらく逃げているのではないのか?」

 

「……確かに怖いです。今時間を止められて警戒した貴方を止めるのは僕には無理かもしれません。それ以上に、誰かを止めたくないという気持ちもあります」

 

揺らぐことなく、その眼が俺を射抜く。

 

「貴方の言葉に嘘は無いんだと思います。多分部長やみんなに手を出すつもりも無いんでしょう。()()()()、僕は止めようと思います」

 

「ン〜…………まあ理由は聞かんよ。想像付くし」

 

そこまで無粋にはなれないしね。

 

『(まさやん、解析完了)』

 

「じゃあ、不本意ながら君の屍を乗り越えていこうか。勿論比喩表現だけど」

 

「ッ!」

 

「そして、()()()()()()()()

 

「…………え、あ───」

 

グラリと崩れ、倒れるヴラディ君。それを抱きとめて、廊下の壁にもたれかけさせる。

 

「『神器外部装置No.31:斬り肢(切絵)』。操り人形の繰り糸を断つが如く、意識を断つってね」

 

『んー、後味わっるい。インスタントコーヒーの素を直で口に放り込んだみたい』

 

「やったこと無いくせによく言う」

 

そして俺は、その場を後にすべく歩みを始め、思い出したように口を開いた。

 

「…………出しゃ張ンじゃねーぞ、魔神の残骸(バロール)。俺にその子を手に掛けさせたくないのならな」

 

解析結果の発表は、思いの外効いたらしい。蠢く何かも無く、廊下には静寂とヴラディ君だけが残された。

 

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