独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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砲禍その7

 

「…………うまくいった、か」

 

『だねー……』

 

鏡の中の貴方に告ぐ(アバターメイカー)』は、対象の神器の模倣をし、1度の起動だけ行える神器の外部パーツ。そして、その1度の起動をするまで接続した神器の機能は使えなくなる。これは欠陥というよりも、神器の能力模倣を出力するためのシステムのせいである。欠陥と言えば欠陥だが、バグと言うよりは神器システムのレベルの高さに追い付けてないから、というのが実情だ。

 

簡単に纏めると、対象の神器を解析し、そのデータを使って自分の神器を改造しているようなものだ。神器全てが独立した存在ならば不可能だが、同じシステムに管理された端末であり、同じ基盤を用いているからこそできる裏技と言うべきか。1度の起動しか持たないのは、使った時点で改造がばれ、修正を喰らうから、である。

 

まあ、自分の神器が使えなくなることのデメリットは大きいが、使ってしまえばなんとでもなるし、なによりメリットもある。改造しているとはいえ、相手の神器の能力を、自分の神器として使えること。そして、自分の神器に蓄積した情報、経験等が生きていること。

 

まあ何が言いたいかって言うと、自分の神器でできていた『機能』は使えるということ。『能力』じゃなくて『機能』。例えばそう、『禁手(バランス・ブレイク)』とか。

 

元々の計画だと、今いるこの駒王学園を覆ってる結界の中の時間を、ヴラディ君に止めさせるつもりだったらしい。力を譲渡する神器を使って、無理矢理暴走状態、疑似禁手化させることによって。

 

だから俺もそれに倣って、『十字砲禍(クロス・ファイア)』…………『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の能力へ改造した『十字砲禍』を『禁手』した。禁手したことで能力が変質、一定時間指定範囲内の任意の物体を止まっているも同じレベルまで減速、停滞させる。原因はデータを完全に解析できなかったからか。暫定で命名、仮称『停滞破滅の重時封禍(タイム・グラビティ・クライシス)』。

 

これによって厳密には停止させたわけではなくなったが…………まあ問題はないか。

 

『で、サポートはもう十分したと思うけど、こっからどうするの?』

 

「まだ宣戦布告してないし、多分すぐにこの今いる旧校舎にリアス・グレモリーやって来るだろうから、逃げる」

 

『んん? なんでリアス・グレモリーちゃんが?』

 

ちゃ、ちゃん付け…………? あーいや、こいつは精神年齢は最近の悪魔なんかと比べもんにならんか…………。

 

「時間を停止したってならったら、まず疑うのはヴラディ君が利用されたってことだろ? そうなると、誰かヴラディ君を取り替えそうと動くだろうけど、会談の会場にいる実力者達は最悪を警戒して動かないと思う。現に既に襲撃を始めた本隊の魔術師達が本校舎に張られた防壁に遮られてるみたいだから、動かない以上に、動けない」

 

『ふむふむ』

 

「そんでまあ、ヴラディ君奪還に立候補するのは間違いなくグレモリーさんで、周りもそれを承認する筈。リアス・グレモリーさんって中々の実力者みたいだし、なにより『キング』だから」

 

『キングぅ? なんでそれを強調するの……………………あぁ、そういうこと』

 

察してくれたらしい。そう、『キャスリング』だ。実際のチェスにもある、『王』と『戦車』の位置を入れ換える機能だ。情報だと、グレモリー眷属の戦車は今のところ一人、駒の管理を彼女の根城たるこの旧校舎でしているのだとすれば、比較的安全に、この旧校舎まで移動できるだろうさ。

 

というわけで、すたこらさっさー!

 

 

 

 

 

 

「なんで…………なんでお前が此所にいるんだよ、政矢」

 

 

 

 

 

…………とは、いかないらしい。玄関口まで来たのに、そりゃねーぜ。

 

 

◆◆◆

 

 

いやぁ、困った。想定外。見つかるにしても、リアス・グレモリーさんにだと思ってたから思わず固まってしまった。んー、でも、そうか。実際のチェスでのキャスリングとは違って、配置変更の人数を弄れるのか。盲点盲点。

 

「あははー、迷っちゃったんだー! …………なーんて言っても、きっと信じてくれないだろうね」

 

「…………ああ」

 

「俺の予想だと、君は主のリアス・グレモリーさんと一緒に、キャスリングでここまで来た。君の仲間であるヴラディ君を助けるために。それで手分けして探したら、俺を見つけてしまった。そうだね、イッセーくん?」

 

「なんで…………なんでお前が!?」

 

「おおっと待ってくれ、勘違いは止してくれ。本当に。俺は、ヴラディ君を魔法使い達から隠した上で寝かしつけただけ。本当、彼をどうこうするとかあり得ないから。彼も、神器の被害者みたいだし、優しくこそすれ、危害加えるとか、あり得んし」

 

本当のことを語る。しかし、イッセーくんは依然として俺を睨みながら構えを取る。信じられないのは分かるけれど。

 

「それを踏まえた上で聞いて欲しい。時間を止めたのは、ヴラディ君じゃない。俺だ」

 

「ッ!!」

 

「本来のシナリオだと、ヴラディ君は魔法使い達にいいようにされて、神器を暴走させて、同じようにここら一帯を停止させていただろう。それを見過ごせる俺と、俺の雇い主じゃなくてね…………彼の能力は計画には組み込まないといけないが、どうにか彼の負担を軽減できないか? ということで俺を此所に送り込んだ。結果、君がヴラディ君に『隠連防』を渡してくれたお陰で、俺達にとっても最悪を回避できた。ありがとうイッセーくん、皮肉にしか聞こえないかもしれないが、本心から、感謝している」

 

「ほ、本当なのか…………? いや、それにしたって、お前が時間を止めたってことは、お前もテロリストってことなんじゃないのか?」

 

俺の話は信じてくれたみたい。だが、そのせいで生まれた疑問が、更に警戒心を引き上げたようだ。

 

「確かに、それは否定できない。俺は今回のテロを引き起こした『禍の団(カオス・ブリゲード)』の一派閥に雇われてる。もっとも、君に話した内容に何一つ嘘はないんだぜ? 隠していることは多かったけどね。君を勧誘したくなかったことも、君に真っ当に生きて欲しいことも…………友達になってくれたことが、嬉しかったことも、全部本当だ」

 

「でも、じゃあどうして…………」

 

「復讐…………とはちょっと違うか。そんなことをしたって、どうにもならないことは知ってるし、此所に集まった連中は皆各陣営のトップ、である以上にクリーンな連中だし。だからそうだな…………俺は、俺の雇い主は、目を反らしている事実を突き付けに来たと言うべきか」

 

そう言うと、イッセーくんはピクりと反応した。思い当たるところがあるのか、あるいは同じ事を思っていたのか。

 

「三大勢力が和平を結ぶのは構わない。というか、そうしてくれた方が嬉しい。全力で支持したいし、賢明な判断だと褒め称えたい。奴らの小競り合いに巻き込まれる被害者が減るんだから」

 

「……………………」

 

「でも、なら『これまで』の被害者は? これまで奴らのせいで涙を呑む思いをしてきた連中は、一体どうすればいい? 多分、三大勢力のいずれかに属している被害者は、何かしらの謝罪、補填があるんだろうよ。じゃあ、それ以外は? 何か、あるのか?」

 

そこまで言って、肩を落とし、もう一度口を開く。

 

「無理、なのは分かってるんだ。そんなこと、しようがないって分かってるんだ。でも、だからって無視して言い訳じゃあない。奴らは、できうる限りの努力をすべきだ。でも奴さん達、どうやらすっぱり頭から抜け落ちてるのか、見て見ぬふりをしているみたいでね…………だから、トサカにキたわけよ。お前らの輪の中にいなけりゃ、どんな悲劇もなかったことになるのか、って」

 

「それは…………」

 

「ああ分かってる、分かってる! 仕方のないことだってあったに違いない! でも…………仕方がないってだけで、割りきれるかよ! 救われないだけなら、まだいい! だがな、汚い物に蓋をするように忘れられて、その上で、『LOVE&PEACE』なんて言われても、薄っぺらく聴こえて仕方がない! 俺達の中で未だ終わっていないものを勝手に終わらされて…………そんなの、ありかよ…………!」

 

「政矢…………」

 

「…………だから、思い出させてやる。奴らに忘れられた亡霊として、奴らの隠した罪として、俺は奴らの前に姿を現す。今日俺がしたいのは、それだけだ」

 

まあ向こうの対応次第では、それだけで済むとは思わないけれど。復讐ではないと言ったが、やはりどこかでその想いは捨てきれないし、妙なことされようものなら思わず手が出てしまうだろう。それに…………復讐したいのは、俺だけじゃない。

 

「だからイッセーくん、見逃しては貰えないだろうか? 誓ってもいい、俺はこれから先、グレモリー眷属には手を出さないと誓ってもいい。なんなら、今日に限れば悪魔にも手を出さないと付け加えてもいい。今日、俺に関しては、本当に、宣戦布告に来ただけなんだ」

 

頭を下げる。…………しかし、俺はなんとなく確信していた。イッセーくんは、多分見逃してはくれないと。

 

「…………ごめん、政矢」

 

だから謝ってもらっても、仕方ないなぁと思うしかなかった。

 

「少しは、その気持ち分かるんだ。俺、今が不幸かって言われたら、全然そんなことなくて、というかむちゃくちゃ幸せだ。でも、確かに思ったことはあるよ…………そんな滅茶苦茶な理由で殺されたのかって…………なんで俺だったんだって。俺が生き残って、でも部長に拾われなかったら、多分同じ事をしてたかもしれない」

 

「うん」

 

()()()、止めたい。ここで止めなかったら、お前は多分指名手配みたいなことをされるんだと思う。そうなったら、その上手く言えないけど、後戻りできなくなると思うんだ。…………少し、いやすんげえ驚いたけどさ。俺、今もお前のこと、ダチだと思ってんだ。だから、取り返しが着かなくなる前に、お前を止めたい」

 

「そうか…………優しいな、イッセーくんは。ありがとう、ぶっちゃけお前なんぞ友達でもなんでもねぇ! って言われてもおかしくないと思ってたから、余計に嬉しいぜ」

 

だが、まあ、うん。

 

「残念ながら、それとこれとは話が別。覚悟を決めて此所に来たわけだし? だから止めるなら…………殺す気で来な、遠慮無しで」

 

構えを取り、俺の手に『十字砲禍』の能力を起動させる為のグローブが装着される。

 

「…………分かった。じゃあ、力ずくでお前を止めるッ!」

 

『…………気を付けろ相棒、まともな方法で十字禍:クロス・ファイアは倒せん』

 

対するイッセーくんも、その左腕に赤い籠手を装備した。アレが、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。俺達の『十字砲禍』みたいな隠れ神滅具ではなく、正真正銘の『神滅具(ロンギヌス)』。その名の元になったあのクソッタレの槍とはまた違った恐ろしさが感じ取れる。

 

「よし、来いッ!」

 

「行くぞ、うぉぉぉおおおおおおおおッ!!」

 

『Boost!』

 

雄叫びと共に、おそらく倍加を知らせる音声が鳴り、イッセーくんが大きく振りかぶって俺に拳を…………

 

 

 

 

 

 

 

「なーんつって、『神器外部装置(ギア・アタッチメント)No.21:お弾き』」

 

 

 

 

 

 

俺はイッセーくんの拳が当たるその瞬間、その場から()()()()()()()消えた。

 

 

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