独眼機龍の十字砲禍《クロス・ファイア》   作:cmVkem9uZSE=

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砲禍その8

 

戦いたくない相手と、まともに戦う? ははっ、ないない。だからあらかじめ、幾つかメタ張ってましたとも!

 

『神器外部装置No.21:お弾き』は、装着者の受けた物理的衝撃をエネルギーに転換し、その場で瞬間移動する機能を持ったアイテム! まあ、衝撃をその場でしか転換できない上に、エネルギーを溜めておくこともできないので、物理ダメージを無効化できるとはいえ戦闘の仕切り直しにしか使えないものなんだけど、こうやって強く殴ってくれたら簡単にその場から離脱できてしまえるのだっ! やー、つらいわー! 俺が天才過ぎてつらいわー!

 

『…………ないわー。いや、うん。ないわー。アレはもう、殴り合いで友情確かめ合う流れだったっしょ。ないわー』

 

「おっと卑怯卑劣と名高いらしいクロスさんらしからぬ発言ですなぁ?」

 

『やー、これでも一応ドラゴンなんだよ僕? 確かに生き残るための手段は選ばなかったけど、目の前の決闘から逃げたことはないよ?』

 

忘れそうになるけど、確かにこいつは名の知れたドラゴン一目置かれる程度にはドラゴンだったわ、確かに。

 

「でもさー、俺が戦わないって決めてるグレモリー眷属の括りに、彼も入ってるわけだし、むしろ前言撤回してないってところを評価して欲しいなー」

 

『全く、戦闘から逃げるドラゴンは君ぐらいのものだよ…………僕じゃなかったら大目玉だからな? 感謝してよね!』

 

「へーへー、感謝してますとも」

 

さぁて、今度こそ会場へのりこめー!

 

…………と、したところで目の前になんかがドッガァァアアアン! と墜落したんだが。え、もうこんな進んでるわけ? はえーよ、俺の出る幕もなく終わっちゃいそうなんだけど。

 

いや、しかし。好都合だったかもしらん。今、俺の目の前で墜落し、砂埃で姿が見えない奴さんはおそらく…………堕天使。それも、上級堕天使。感知に長けた、見えない左目がそれを教えてくれる。おそらくその人物は、

 

「…………チッ、この状況下で反旗か、ヴァーリ」

 

堕天使の集団、『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督、アザゼル。

 

ふむ、どうやら手筈通りに横っ面殴られたらしい。

 

「そして追い討ちをかけるようにィ!」

 

『Awaken!!』

『Create:Dragon breath cannon!!』

 

右腕を突きだし、武器創造。創られたのは、おおよそ弾丸を放てそうにない歪な十字の砲口を持つ、腕に装着するタイプの大砲。

 

「なっ!? 誰だお前!!」

 

「初めまして!! そして親の仇ィ!!」

 

『lock-on!! Cross・Fire!!』

 

照準を定めて放たれるは、赤黒く燃える十字。敵対者を十字に区斬る、元は罪を焼くための炎だったもの。

もっとも、今日の俺は誰も殺すつもりもないので区斬りもしない。ただ篦棒に熱くて衝撃がすんごいだけの炎弾である。

 

「グッ…………クロス・ファイアだと!!?」

 

吹き飛ばされつつも自身を腕で庇いながら、堕天使総督はその顔に驚愕を顕にした。まあそうだろうね、クロスは殺されたと思われてるらしいし。

 

うん、気持ちよく決めれたー! 上空からまっちろい鎧に身を包んだ某と痴女っぽい服装した女悪魔が現れた。というか白い方はアレだよね、白龍皇だよね? んでもって、痴女の方が旧魔王派に属してる旧魔王の一族の一人、カテレア・レヴィアタンだったかな?

 

「……英雄派からサポートが入ると聞いていたが、君がそうなのか?」

 

「Yes, I am. お初にお目にかかる、白龍皇にレヴィアタンの末裔。英雄派の食客、伊達政矢だ」

 

『そして僕がクロス・ファイア! んっんー、久しぶりだねぇシロくん、元気してたー?』

 

『相も変わらず、気が抜ける。幾年経とうと、お前は変わらんな、クロス・ファイア』

 

『…………いんや、変わったさ。此所にいるのが、その証みたいなものだよ』

 

『…………そうか』

 

そして二天龍と友達って言ってたのは本当だったのかよ、普通片方とかじゃないの? ねぇ?

 

「しっかし、禍の団の旧魔王派並びに魔法使い派は無能共ばかりですな、ハーフヴァンプ一人捕まえることができないなんて。俺がいなけりゃ計画頓挫ですよ? そこんところ分かってます?」

 

「その為の貴方でしょう? 人間の癖に、口の聞き方がなってないようね」

 

「蛇飲まなきゃ上級に食って掛かれない名前だけの癖に、プライドだけは肥太ってる、と。いやはや、醜いもんですなぁ?」

 

「…………(ピキ」

 

俺、旧魔王派ってだいっきらいなんだよねー。なんと言うか、夢想家の集まりというか、現実見れてないというか。いや、現魔王もツメが甘いというか、問題は沢山あるんだけれど、こいつらよりかはましかなーと。あと単純に戦争起こそうとしてるからきらーい。各陣営のこういうのが、俺らみたいな被害者を産むんだよ全く。

 

なのでいろいろ煽ってみるが、ヴラディ君見付けられなかったのは俺のせいである。隠蔽隠蔽っと。

 

「さて、俺にはまだ仕事が残ってるので、そろそろ行きます。では、あとはご自由に?」

 

そう言って俺はその場を後にしようとして…………止まる。

 

「そうだ白龍皇、一つ忠告」

 

「なんだ?」

 

「兵藤一誠を侮ってはいけない。…………もっとも、こう言っても君はあの男を嘗め腐るんだろうけど」

 

「……どういう意味だ?」

 

「回答を拒否します。んじゃ、生きてたらまた会いましょうや、生きてたら」

 

今度こそ、その場を撤退。突き刺さるような視線を感じつつも気にしないように…………。

 

うん、気にしないように…………。

 

…………うん。

 

「(こ、ここここ、こわかったーっ!! 白龍皇怖かったんだけど!! いつ狙われるかヒヤヒヤしてたんだけど!!)」

 

『(その上であんな対応してるんだから、まさやんってば超おバカさんだよねー)』

 

 

◆◆◆

 

 

…………さてさて、さて。

 

俺の堕天使に対する個人的な恨みは、さっき死なない程度に堕天使総督をぶっ飛ばしたことで一旦保留にしておく。まだ思うところはあるけれど、あの堕天使が戦争反対を掲げてるお陰で三大勢力での和平がしやすかったことを考えると、これからに期待、という面が強いのだ。他にも、今までは危険な神器を殺すことでしか抜き取ることができなかったのを、殺さずとも安全に摘出できるようになったりできるようにしたなどの、神器被害者を減らす研究はしてもらいたいしね。まあ後でまた遭遇するだろうし、その時に色々と言いたいこと言おうとは思うけど。

 

俺でもそういう研究は進めてるけど、『今は』神器摘出なんてできない。上司…………曹操の目が怖すぎる。ある程度落ち着いてからじゃないと、俺の目を盗んで変なことされちゃあ、俺が今テロリストの汚名をひっかぶってまで守りたいものが、台無しになっちまうし、なにより曹操達の為にならないからな。

 

まあだから、これからも堕天使に対する当たりは強いだろうし、ムカつくし、もしかしたら殺したくなるようなこともあるだろうけど、俺の両親を人質に取ったような連中以外は、殺しまではしないことを決めた。変に遺恨は遺さない、うん。

 

だから、()()()()()()()()()()

 

「ありがとう、クロス。お前のお陰で一つ、心に句切りができたよ。だから、次はお前の復讐に力を貸す」

 

『…………本当に、いいのかい?』

 

「それは、どんな意味で?」

 

『いろんな意味で…………具体的には、それだけでほとんど復讐を終わらせるようなものだけど、いいの? とか、僕の事情に巻き込まれていいの? とか…………』

 

ああ、そんなこと。

 

「変に恨みつくって、それが原因で俺みたいなのが出てきたら、そっちの方が許せない」

 

『でも僕は知ってるよ。まさやんが、どれだけあの日のことを悔いて、堕天使のことを憎んで生きてきたか。それが、僕にはよく分かる。よく分かってしまう。自分で殺したとは君は言うけれど、両親が死んで、一人になったのはあのド畜生の堕天使のせいじゃないか』

 

「一人じゃなかった。お前がいた」

 

『…………僕がいたから、目をつけられたようなものなのに?』

 

「おうとも。お前がいたから、なのが原因なのはそうだろう。でも、それはお前のせいじゃないし、お前がいてくれたから、最初の復讐は果たされたんだ。俺はお前に感謝してるし、過去現在未来において、お前は怨みの対象なんかじゃなくて、俺にとっての相棒以外の何者でもないよ、クロス・ファイア」

 

『…………そっか』

 

それにね、クロス。堕天使への句切りは一旦着けたけれど、復讐が終わったとは言ってないよん?

 

『……んん?』

 

「俺、お前のことは相棒としか思ってないけど、『神器』なんて厄ネタを振り撒く神のシステムには、色々と思うところがあるし、教会だって一部神器所有者への当たりが強いじゃん。追放とか異端とか色々! 俺は忘れてないぞ、食べ物恵んで貰おうと立ち寄った教会で執行者連中に襲われたこと!」

 

『……そういえば、そんなこともあったね』

 

「だから、俺は俺の意思で、教会に楯突くぞ。勿論、お前の力になってやりたい気持ちはあるけれど、お前が自分の事情に巻き込むなんて思う必要はないんだ」

 

『…………うん、ありがと。ちょっと、水臭かったかな?』

 

「ああ、全くだ!」

 

よし、腹も決まったところで!

 

「開幕の号砲、派手に決めてやろうぜ!」

 

『あいさー!』

 

身に付けた、赤黒のグローブが脈動し、うすらと光り、歯車を軋ませる様な音を掻き鳴らす。

 

『Wake-up Calamity!! Balance×Brake!!』

 

禁手化(バランス・ブレイカー)』起動、グローブが…………否、能力として俺の中に存在している『十字砲禍(クロス・ファイア)』が、俺を…………俺という『災禍』を喰らって兵器として変成していく。

 

『十字砲禍』が喰らうのは、武器…………とそう周りには言っているが、嘘である。正確には、災禍をもたらす、もたらせるモノを喰らい、兵器として変成させる。

 

俺、伊達政矢と言う、『その気になれば世界を終わらせられる人間』も、その範疇に入る。

 

『Set Disaster:One eyed dragon!!』

『Crossload:Single Shooter!!』

 

身体が完全に置き換わる頃には、最早人間としての原型は残していない。片目の潰えた機械の龍人、『独眼機龍の十字砲禍(クロスロード・シングルシューター)』。今までに喰らったモノも混じり、実に醜い姿だ。まあ、全身兵器だしな。

 

「充填」

 

『Breath cannon setup!!』

『Fully change!!』

 

「照準…………狙いは、熾天使ミカエル」

 

片目に映る大天使に、近くにいる魔王と思わしき紅髪の美丈夫と共に結界を張り続ける大天使に狙いを定める。

 

「いくぞ、クロス・ファイア!!」

 

『応とも、まさやん!!』

 

「『ハザードブレスカノン!!』」

 

『Over kill:Hazard breath fire!!』

 

口部から、先程堕天使総督へと放ったのと同種の炎を放つ。今回は、結界をぶち破るのも兼ねてるので、そのまま当てると即死は免れないが、その辺りの調整もしっかりしてある。

 

交点から伸びる交差が、流星の尾の様に軌跡を描き、結界に着弾、貫通。硝子の割れるような音と同時に轟音が響く中、確かに狙い通りに当たったようだ。左目が、胸部を十字に焼かれるミカエルを捉えた。

 

再度結界を張られる前に背中のウイングスラスターを開き、穴の空いている校舎の一室に突撃。

途中飛んでくる魔力弾や斬撃などをかわしてたどり着くころには、ミカエルの火傷は治されていた。未だアーシア・アルジェントが停滞中であることを考えると、普通に魔術、ないし魔力で治して貰ったか。悪魔と天使が組む…………面倒な。

 

「やあやあ初めまして。テロリストの第三波目、皆さま方に忘れられた被害者の亡霊、今此処に推参ってね!」

 

おし、俺の仕事のノルマ達成!

 

そしてやはりというかその場にいた、俺の持っているモノに心当たりがある奴らは目を見開き…………ミカエルが苦しそうに俺を…………違う、俺を通して別の何かを見ていた。

 

「ま、まさか…………クロス・ファイア、いえ『フランソワ・プレラーティ』…………!! 貴方が、他でもない貴方が、テロに加担しているのですか!!?」

 

『黙れミカエル…………その名を呼んでいいのは、僕の半身と、僕の相棒。そして、お前らが殺したあの娘だけだ』

 

 




crossloadはあえての誤字、crossroadとoverloadの間の子。
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