俺が考えたアリーシャヒロインのゼスティリア   作:具志健

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災禍の顕主に敗北したスレイ。仲間の天族も姿を消したまま、気を失ってしまう。彼らを救ったのは……。


第十一話 一緒には行けない

ティンタジェル遺跡

ス「うん……?ここは?」

 

ロ「よ!おはよう!」

 

ス「わっ!ロゼ!」

 

ロ「なんかスレイとはよく会うね」

 

ス「どうしてここに……」

 

ロ「どうしてって……ここがどこだかわかってる?」

 

ス「え、えーと……」

 

ロ「ここはヴァーグラン森林にあるわたし達の拠点。ティンタジェル遺跡?っていうみたい」

 

ス「俺たちは確か災禍の顕主と戦って――」

 

ロ「はっ!アリーシャは?」

 

ス「スレイの隣で寝ているよ」

 

ス「ロゼが助けてくれたのか」

 

ロ「……たまたまね。ローランスへ向かう途中で倒れていたから、ここまで連れてきて介抱してやったってこと」

 

ス「ありがとう、ロゼ」

 

ロ「いいって、お礼なんて。それよりケインは?一緒じゃないの?」

 

ス「……ケインは戦場で別れたんだ。ローランス陣営に向かったはずだけど、今はどこにいるか分からない」

 

ロ「なるほど……。おーい、トル~」

 

ト「はーい、およびですか~」

 

ロ「トル、これからラストンベルでしょ?」

 

ト「うん、新商品の件でね」

 

ロ「追加の仕事。ケインがその街にいるか調べてくれない?」

 

ス「ロゼ!?セキレイの風も忙しいでしょ」

 

ロ「そんなの気にするなって。ケインも立派な商売相手だし、勝手にいなくなっちゃ困る」

 

ト「そういうこと。今日中には戻るから」

 

ス「……よろしくお願いします」

 

ト「はいよ」

 

トル、去る

 

メ「相変わらずお前たちは忙しそうだな」

 

ロ「メ―ヴィンおじさん!こっちに来てたんだ」

 

メ「久しぶりだな。お嬢。そっちのは……今、話題の導師か」

 

ス「スレイっていいます。なぜ導師ってわかったんですか?」

 

メ「はっはっはっ。天然だな。その恰好見ればわかる」

 

ロ「この人はメ―ヴィン。ギルドの一員じゃないけど恩人なんだ。今時珍しい探検家よ」

 

ス「へぇ!」

 

メ「気ままに旅してこれの足跡を追うのが気に入ってるってだけだ」

 

ス「ケインと一緒だ」

 

メ「そりゃそうだ、ケインは俺の一番弟子だからな」

 

ス「えっ、そうなの!」

 

メ「あいつに考古学やら伝承を教えたのは俺だ。こいつを見せたら妙に食いつてきてな。少しばかり指導してやった」

 

本を見せる

 

ス「天遺見聞録!」

 

メ「お前さんも持っていたのか!ケインといい、導師といい、昔の事に興味を持つ若者が増えて嬉しいの」

 

ロ「おじさん、わたしに話があったんじゃないの?」

 

メ「おお、そうじゃった。お嬢、戦争が始まったと聞いて気になってたんだが……問題なさそうか?」

 

ロ「ハイランドもローランスもひとまず撤退したみたい。結果は引き分けかな。でもまだまだ臨戦態勢。戦争による物価の高騰を覚悟しなきゃね。今はまだ影響を受けてないけど、買いだめするなら早い方がいいよ」

 

メ「違う、もう一つの方の仕事だ」

 

ロ「…………。ぼちぼちなんとかやっていくしかないね。依頼もしばらく様子を見た方がよさそう」

 

メ「そうか」

 

ス「?」

 

メ「さて、俺はもう行くとするか」

 

ロ「え、もう?」

 

メ「あんまりのんびりしてるなよ、お嬢。導師の出現、戦争勃発……これから時代が大きく動くぞ」

 

ロ「うん。わかってる」

 

メ「導師、噂によるとケインはお前と一緒に行動していると聞いたが……」

 

ス「ちょっと戦場ではぐれちゃって、今どこにいるのか分からないんだ」

 

メ「そうか。…………。これをケインに渡してくれないか」サラサラサラ

 

ス「手紙……。わかった」

 

メ「頼んだぞ。スレイ、また会おうぜ。お嬢もな」

 

ス「うん。また」

 

ロ「じゃあね。おじさん」

 

メ―ヴィン去る

 

ス「ケインの師匠か……。きっと色んなこと知っているんだろうな。もっと話していたかったよ」

 

ロ「お互い旅しているんだし、どこかで会えるんじゃない」

 

ス「そうだな!」

 

ミ「スレイのやつ、またいつものスイッチ入ってる」

 

エ「仲間はずれが寂しいのね」

 

ラ「声が届かないって本当にもどかしいですわね」

 

ス「みんな!」

 

ミ「スレイ!元に戻ったのか?」

 

ラ「本当、よかったですわ」

 

ス「いなくなったのかと……すげー焦った!」

 

ロ「…………」

 

エ「スレイ」

 

ス「あっ……」

 

ロ「…………」

 

ス「ロゼ、これはその……」

 

ロ「……あたし、仕事思い出したから行くね。何かあったら知らせて」

 

ス「あっ、うん」

 

ロ「勝手にどっか行くなよ。まだ安全かどうかわかんないんだし」

 

ス「わかった」

 

ロゼ去る

 

ラ「なんとか誤魔化せましたわ」

 

エ「少しは警戒しなさい」

 

ス「ははは、ごめん」

 

ミ「あの獅子の顔の男、あの時一体何をしたんだ?」

 

エ「考えたことない?二つの領域が重なったら、どちらの加護が強く影響するか」

 

ス「どういうこと?」

 

ラ「スレイさんの導師としての領域がかの者のそれに打ち負けたのです」

 

ミ「そのせいでスレイの霊応力が一時的にマヒしたってわけか」

 

ス「みんなはずっとオレの側に……」

 

エ「目が覚めてからわね」

 

ミ「僕たちも獅子の男と戦った後、少しの間気絶していたみたいだ。で、気が付いたらここにいたってところ」

 

エ「しょうがないわ。ドラゴンよりも強く、穢れた領域を持っているんだもの」

 

ス「あいつが災禍の顕主なのか?」

 

ラ「まず間違いないでしょう。あれほどの穢れをまとうものは他にないと思いますわ」

 

ス「じゃあ、あいつがあれほどの穢れと力を持ったのは、何か理由があるって訳か」

 

ミ「当然だろうな。あんなのが自然に生まれてたまるか」

 

ラ「それを識り、スレイさんが答えを持ってかの者に挑まなければ……」

 

ア「ううん……」

 

アリーシャ、目を覚ます

 

ス「アリーシャ!よかった!目を覚ました!」

 

ア「スレイ?わたしは今まで何を?……はっ、戦争は!戦争はどうなったんだ!

 

ス「アリーシャ、落ち着いて。説明するから」

 

 

 

ア「なるほど、それでここに……。では天族の皆様もこちらにいらっしゃるのか」

 

ミ「そうか。もうアリーシャには天族が見えないのか……」

 

エ「従士契約を解除したんだから当然よね」

 

ラ「…………」

 

ス「ああ。みんなここにいる」

 

ア「先ほどは取り乱してしまい失礼しました」

 

ス「……アリーシャ、これからどうするの?」

 

ア「…………。わたしはハイランドへ戻る。戦争を進めようとしている大臣たちを止めなくては……」

 

ス「アリーシャは、大臣たちに命を狙われているんだよ!今戻るのは危険だ!オレたちと一緒に行こう!」

 

ア「これ以上、スレイたちに迷惑はかけられない……。わたしは一人で行く!」

 

ス「迷惑な事ない!オレはアリーシャの事が心配なんだ!」

 

ア「スレイ……」

 

ス「オレ、アリーシャが従士になってくれた時嬉しかったんだ。一緒に戦う仲間が出来たって。アリーシャがミクリオやライラやエドナと話しているのを見て、人間も天族と共存できるって思ったんだ」

 

ス「オレは、この世界の穢れを祓って災厄の時代を終わらせたい!そのためにはアリーシャの力が必要なんだ!きっとオレの夢とアリーシャの夢は繋がっているはずだから。だから、一緒に来てくれないか、アリーシャ」

 

ア「ありがとう、スレイ。わたしは……」

 

フェル「ちょっと勝手に入られたら困ります!」

 

タケダ「アリーシャ殿下がここにいるのは分かっている!ハイランドへ逆らうつもりか」

 

エ「なんだか騒がしいわね」

 

タ「アリーシャ殿下!ご無事でしたか!」

 

ミ「ハイランド兵!?」

 

ア「どうした?」

 

タ「伝令です。急ぎローランスへ向かってください」

 

ス「なんだって!」

 

ア「わたしはハイランドへ戻って、戦争を――」

 

タ「こちらを預かってきました」

 

ア「これは?」

 

タ「バルトロ大臣からです」

 

ア「…………」

 

ス「なんて書いてあるんだ?」

 

ア「……すまない、スレイ。やっぱり一緒に行けなさそうだ」

 

ス「えっ、どうして!」

 

ア「それは……」

 

タ「殿下」

 

ア「……極秘任務なんだ。すまない……」

 

ス「アリーシャ……」

 

ア「わたしなら大丈夫だ。スレイも安心して旅を続けてくれ。失礼する」

 

ス「…………」

 

アリーシャ去る

 

ラ「追いかけなくていいんですか?」

 

ス「オレの伝えたいことは伝えた。アリーシャだって事情があるんだ。無理強いは出来ないよ」

 

エ「なんか胡散臭いけどね」

 

ミ「アリーシャのこと諦めたのかい?」

 

ス「そんなことはないけど……」

 

ミ「災禍の顕主を倒す方法を探しながら、行った先々でアリーシャの動向を調べてみよう。危険になったら助けに行けばいい」

 

ス「そうだな。今のオレに出来る事はそれぐらいか……」

 

ロ「なんかさっき急いでアリーシャ姫が出て行ったけど、どうしたの?」

 

ス「ロゼ。実は……」

 

 

 

ロ「なるほど。それでアリーシャ姫は行っちゃったと」

 

ス「うん」

 

ロ「で、スレイたちはどうするの?」

 

ス「オレたちもローランスへ向かいたい。そこで調べたいことがあるんだ」

 

ロ「ふーん……」

 

トル「ロゼ、今帰ったよ」

 

ロ「お疲れ。どうだった?」

 

ト「どうもこうもないよ。戦争のせいで新商品どころじゃないって、まったく」

 

ト「あっ、ラストンベルでケインを見かけたよ。ローランス軍と一緒にいて話しかけられなかったけど」

 

ミ「ケインがローランス軍に!?」

 

エ「あのバカ、捕まったのかしら」

 

ス「教えてくれてありがとう。ロゼ、行き先が決まったよ。オレもラストンベルへ行く」

 

ロ「ケインと合流するんだ」

 

ス「うん」

 

ロ「なら街まで一緒に行こう」

 

ス「えっ」

 

ロ「だいたいラストンベルまでの道知ってるの?」

 

ス「あっ」

 

ロ「スレイってホントおっちょこちょいだよね。いいよ、アタシが案内してあげる」

 

ス「ロゼ……ありがとう。みんなもいいよな」

 

ラ「好意に甘えさせてもらいましょう」

 

エ「道に迷うよりマシだわ」

 

ミ「そういうことだね」

 

ロ「決まりね。じゃあ出発は明日!」

 

ス「今から行こうって思ってたんだけど……」

 

ロ「着の身着のままはさすがにノーサンキュ!アタシは女の子、おーけー?」

 

ス「あ……」

 

ロ「…………スレイ」

 

ス「うん?」

 

ロ「本当に導師の力でこの世界を救えると思う?」

 

ス「どうしたんだ、急に」

 

ロ「ちょっと気になっただけ。わたしはもう寝る。じゃあ明日ね」

 

ス「あ、ああ。お休み」

 

 

 

朝になる

ロ「おはよう」

 

ス「おはよう、ロゼ」

 

ロ「準備はできた?」

 

ス「うん」

 

ロ「行こうか」

 

トル「じゃあね、スレイ」

 

ス「トル、本当にありがとう」

 

フェル「ロゼ、ラストンベルにはロッシュがいる」

 

ロ「分かってるって。出発!」

 

ラ「セキレイの羽のみなさんにはお世話になりました」

 

ミ「聞こえてないって」

 

ラ「声が聞こえなくても感謝の気持ちを持つことは大事ですわ」

 

ス「だよな」

 

ロ「なんか言った?」

 

ス「あっ、ううん。独り言」

 

ロ「変なの」

 

ス「ははは」

 

 

 

ラストンベルの門の前

兵士「列に並び、待て!従わぬ者は処罰する!」

 

一般人「勘弁してくれよ。時間がないってのに」

 

ス「なんの検問?」

 

一般人「軍のに決まってるだろ。本格的な大戦になるかもしれないんだからな。……兄ちゃんはひっかかるかもな」

 

ス「えっ!なんで!?」

 

兵士「うしろ!騒がしいぞ!」

 

ロ「すみませーん!」

 

一般人「導師が出たって噂あったろ?」

 

ロ「あった。ハイランドでしょ」

 

一般人「それがな、ローランスにもいるらしいんだ」

 

ス「へぇ!ローランスにも」

 

ロ「……ローランス帝国は、導師をよく思ってない?」

 

一般人「ああ。騎士団は戦力と見て警戒してるし、教会は異端者として取り締まろうとしてる。おまけにペンドラゴじゃ、なんか不可解な事件が起こってるらしくて――」

 

兵士「次!」

 

一般人「おっと、オレの番だ。そういうわけだから、せいぜい気をつけな」

 

一般人去る

 

ス「大丈夫かな?不安になってきた」

 

ロ「通行証も持ってるし、任せとけって」

 

「マジかよ!エリクシールが売られてるって!」

 

ス(エリクシール?)

 

「ああ。ハイランドとローランスの貴族の間でエリクシールが流行ってるんだと」

 

「けど、アレは普通に出回るもんじゃない。教会が管理してるはずだろ……?」

 

「その教会のお墨付きで売られてるって話だぜ。けっこうな効き目でな、長寿の妙薬ってもっぱらの評判だ」

 

「すごいじゃねえか!」

 

「もっとすごいのは値段でな。金持ち貴族しか手が出せない代物だってよ」

 

「結局そんなオチかよ……」

 

ス「協会がエリクシールを売り捌いてる……?」

 

ミ「なんだか奇妙な話だな」

 

エ「ローランスも色々問題がありそうね」

 

兵士「次!」

 

ロ「スレイ、あたしたちの番。置いてくぞー」

 

ス「わかった。すぐ行く」

 

 

 

ラストンベル 入口

セルゲイ「自分は、ローランス帝国白皇騎士団団長セルゲイ・ストレルカである。帝国の安寧に資する検問への諸君の協力に、衷心より謝意を表すものである!」

 

エ「なにこいつ?堅苦し病?暑苦し病?」

 

ロ「はい、商隊ギルド発行の通行証。ここに来た目的は手形の回収ね」

 

セ「『セキレイの羽』か。手際がいいな」

 

ロ「期限がせまってるから気が気じゃなくて。取り引き元は、大通りにある酒屋の――」

 

セ「ああ、ポリス酒楼か。あそこは手広く商いをしてるようだな」

 

ロ「ウチも色々お世話になってます。他にはなにか?」

 

セ「ない。検問への協力、痛み入る」

 

ロ「お疲れ様です~!」

 

セ「次は、そちらの男だ。妙な身なりだが護衛か?」

 

ロ「っと……女の一人旅はぶっそうなんで」

 

セ「なぜ護衛が儀礼剣をさげているのだ?」

 

ミ「スレイの剣が儀礼剣って!?重心の差を見切ったのか」

 

ラ「かなりの手練れのようですわ」

 

ロ「えっと、もちろん理由があって」

 

セ「そちらの男に聞いている」

 

ロ「やば……」

 

ケ「あれ、スレイくん?スレイくんじゃないか!」

 

ス「ケイン!」

 

セ「ケイン、知り合いか?」

 

ケ「はい、ボクの友人です。……セルゲイさん、この男が例の導師です」

 

ミ「な!」

 

エ「何?裏切る気?」

 

ラ「ケインさん!」

 

ケ「ロゼさんも嘘をつくなら上手くついたほうがいいよ。今も昔もラストンベルにはポリス酒楼と名の店はない」

 

ロ「ちっ!」

 

ミ「ケイン、どうして?」

 

ケ「ここでは目立つ。詳しい話は後で。安心してくれ、悪いようにはしない。セルゲイさん、聖堂へ連れて行きましょう」

 

セ「しかし!あそこは……」

 

ケ「彼らに見せたいものがあるんです」

 

セ「…………長居はできんぞ」

 

セ「……スレイ、と言ったな。別室で話を聞かせてもらいたい」

 

ス「わかった」

 

ロ「大人しくついていくの!?逮捕されるかもしれないんだよ」

 

ス「ケインはオレの仲間だ。きっと何か考えがあるんだ。オレはケインを信じる」

 

エ「本当に甘いのね」

 

ケ「信じてくれてありがとう、スレイくん。さあこちらへ」

 

 

 

教会前

ス「ここは?」

 

ケ「この街の教会だ」

 

教会の前にくると、ロッシュがロゼに接触。ロゼ席を外す

 

ロッシュ「『依頼』『ローランス教会』」

 

ロッシュ、ロゼに紙を渡す。

 

ロ「……了解」

 

ロ「ごめん、アタシ別の仕事入っちゃった。行ってもいい?」

 

ス「……彼女は無関係です。解放してあげてください」

 

セ「いいだろう」

 

ロ「ありがとうございます!じゃあね、スレイ!」

 

ス「ああ、また!」

 

ロゼ、去る。

 

 

 

教会

ス「ここは……聖堂だな」

 

ミ「年代は新しいけど、なかなか立派な造りだ」

 

ラ「こんにちはー!お邪魔しますー!」

 

ス「加護天族はいないっぽいな」

 

ケ「見ての通り。この街には加護天族はいない。マーリンドほどの強い穢れは感じないし、特に問題は起こってないけど、一応スレイくんに教えておこうかと思ってね」

 

エ「で、どうするの?加護する天族を探す?」

 

ス「けど、手がかりもないしな……」

 

セ「ケイン、もういいか」

 

ケ「はい」

 

セ「導師殿、わたしの話を聞いていただきたい」

 

ミ「いよいよ本題か……」

 

エ「いざとなったら逃げるわよ」

 

セ「導師スレイ。貴公の力を貸してもらえないだろうか、ローランス帝国のために」

 

ス「えっ!」

 

エ「ローランスは導師を警戒してるって聞いたけど?」

 

ケ「うん。騎士団はフォートン枢機卿同様の力をもつという理由で危険視し、教会は、フォートン枢機卿を脅かす存在として異端扱いしている」

 

ラ「枢機卿ということは、教皇に次ぐ教会のNO.2ですわね」

 

ケ「宗教だけではなく、政治にも強い発言権を持っていてね。幼帝の補佐として、実際に帝国を仕切ってる」

 

セ「いかにも。そして導師と同じ奇跡を体現するといわれている者だ」

 

ス「導師と同じって――!?」

 

司祭「どういうことですかなあ?騎士が勝手に聖堂に立ち入るとは!まさか、我が信者にフォートン枢機卿の悪口を吹き込んでおられるのか?」

 

セ「司祭殿、そんなことは……!」

 

司祭「問答は無用!出て行っていただきましょう」

 

 

 

教会の外に

ケ「こんなに早く戻ってくるとは、予想外だね」

 

セ「公園に来てくれ。話の続きはそこで。ケイン案内してもらえるか」

 

ケ「分かりました」

 

セルゲイ去る

 

ス「ケイン……」

 

エ「これはどういうことか説明してもらうわよ」

 

ケ「そう怖い顔をしないでくれよ。セルゲイさんは信頼できる人だ。先の戦いで、ローランス軍の撤退を進言したのは彼なんだ。ボクの話を聞いてくれたのは彼だけだった」

 

ラ「セルゲイさんとケインさんはどういうご関係なんですか?」

 

ケ「……昔、騎士団にいた時の上司かな」

 

ス「ケイン、軍にいたんだ……」

 

ケ「ひよっこのヒラの一兵に過ぎなかったけどね。あの頃は若かったし」

 

エ「今でも十分若いわよ」

 

ケ「これは失敬」

 

ス「ああ、そうだ。ケインへ手紙を預かっていたんだ」

 

ケ「手紙……?」

 

ス「メ―ヴィンからだ」

 

ケ「師匠と会ったのか!?」

 

手紙を読む。

 

ケ「…………。なるほど。さすが師匠だ。この方法なら或いは……」

 

ミ「何が書いてあったんだ?」

 

「…………。その時になったらちゃんと話すよ。さあそろそろ行こうか。セルゲイさんを待たせるのも悪いしね」

 

 

 

公園にて

ケ「セルゲイさん!」

 

セルゲイ「先ほどはすまない。みっともないところを見せてしまった」

 

セ「……教皇様がいらした時は、騎士団と教会もこうではなかったのだが」

 

ス「教皇様?」

 

セ「教皇マンドラ様は先代皇帝陛下も信頼された人徳厚き方だった。あの方の御命令なら、騎士団も喜んで従う」

 

ス「だった……ってことは」

 

セ「一年前に行方不明になってしまわれた。その混乱に乗じたかのように、フォートンが台頭し、あっという間に権力を掌握してしまったのだ」

 

ケ「セルゲイさんは枢機卿が教皇になにかしたって考えてるんだ」

 

ス「証拠はあるの?」

 

セ「いや、騎士団の総力を挙げて捜索したが、手がかりはつかめなかった。だが、枢機卿の周辺を探った騎士が行方不明になっている。十八人も」

 

エ「怪しすぎね」

 

セ「認めたくないが、枢機卿に対するには、我らにない超常の力が必要らしい」

 

セ「悶々としていた時に、ケインから導師の話を聞いたのだ。導師スレイ、恥を承知で頼みたい。枢機卿の正体を探ってもらえないだろうか?」

 

ス「枢機卿がいるのってペンドラゴの教会だよね?普通の人が入れない神殿があるっていう」

 

セ「そうだ。立ち入りの許可については、こちらで手を回せる」

 

ス「わかった、枢機卿に会ってみるよ」

 

セ「おお、かたじけない!自分は先行して手はずを整える」

 

ケ「わかりました。こちらも準備をしてそちらに向かいます」

 

ス「ケイン?」

 

ケ「そんなに時間はかからない。少し調べたいことがあるんだ。きっとそれが枢機卿と対するときにも役にたつはずだ。上手くいけば、災禍の顕主の領域にも対抗できるようになるかもしれない」

 

ミ「なんだって!」

 

セ「わかった。ケイン、そなたには導師の護衛を任せたい」

 

ケ「任されました。言われなくてもボクはスレイくんと行くよ。ボクは彼の従士だからね」

 

ラ「ケインさん」

 

セ「ではペンドラゴで!到着したら騎士団塔まで足を運ばれたい」

 

セルゲイ去る

 

ケ「すまない、勝手に事を進めてしまった」

 

ミ「ケイン、災禍の顕主に対抗できる力って」

 

ケ「師匠からの手紙によると、スレイくんと師匠が出会った場所は天遺見聞録にも載っていない遺跡みたいだね。古い文献によると、そこには導師伝承が伝えられている。にも拘わらず全く発掘は進んでいない。なぜだと思う?」

 

エ「遺跡には興味はないわ。早く答えを言いなさい」

 

ミ「もしかして導師じゃないと進めない遺跡なのか!」

 

ケ「おそらくね。ボクもティンタジェル遺跡に行ったことがあるけど、奥に進める道を見つけることが出来なかった。それが何かしらの力で守られているとするならば……」

 

ス「もしかしたら災禍の顕主と対する方法が見つかるかもしれない!」

 

エ「そう都合よく行くかしら。いざ行ってみて、何もありませんでした、はごめんよ」

 

ラ「…………」

 

ケ「師匠がわざわざ手紙を寄越すぐらいだ。きっと手がかりがあるはずだ。ね、ライラさん」

 

ラ「ケインさん、占いをしましょう。紙を1枚選んでください」

 

ケ「じゃあ、これで。ところでさっきの話だけど――」

 

ラ「ケインさん、すごいです。今日の運気は絶好調ですわ!」

 

ケ「そうなんだ。それは良かった。ライラさんも絶好調だね」

 

ラ「あっ……」

 

ミ「ライラ……」

 

ス「ははは……」

 

ケ「エドナちゃん、これで納得かい」

 

エ「わかったわ。行けばいいんでしょ」

 

ス「よし、早速出発しよう!ライラもそれでいいね」

 

ラ「分かりました……」

 

ミ「ケインにやられたね」

 

 

 

?「災禍の顕主に対抗する手段か。まさかアジトにそんなものがあるとは……」

 

デゼル「やつらが移動する。俺らも行くぞ」

 

?「ああ。…………」

 

 

スレイ一行、ティンタジェル遺跡に向かう。風の骨頭領と天族デゼル、あとをつける。




こんにちは、作者です。第十一話です。スレイがアリーシャを説得する場面は、何度も書き直したことを覚えています。別れの場面を書くのは難しいですね。世の中の物書き、全員尊敬します。アリーシャにバルトロの指示を伝えたタケダというハイランド兵は、度々登場していますね。今後も度々登場するので頭の片隅に彼の事を覚えていてくれたなと思います。ではまた、第十二話でお会いしましょう。
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