俺が考えたアリーシャヒロインのゼスティリア   作:具志健

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ペンドラゴ、ゴドジンの加護を復活させた導師一行。災禍の顕主に対抗する秘力を得るため、水の試練神殿へ向かう。


第十七話 試練

水の試練神殿ルーフェイ

ス「ここは……」

 

ケ「まさか滝の裏に遺跡があったなんてね。知らなかったよ。これを発見した人とぜひお話してみたいね」

 

ア「マルトラン師匠に聞けばわかるだろう。師匠は過去の伝承を追って国内の遺跡の調査を進めているんだ」

 

ケ「ハイランドのマルトラン卿。噂には聞いているよ。ぜひ一度ご教授願いたいな」

 

ア「ああ。いつか必ず紹介する。師匠も歓迎するだろう」

 

ケ「それは楽しみしておくよ、アリーシャ姫」

 

ミ「滝にまったく浸食されていない。造られたばかりじゃないとすると……」

 

ス「天響術が使われている。アヴァロストの調律時代の遺跡だな」

 

「そう。ここは水の試練神殿ルーフェイ。導師の来訪は久しぶりだな」

 

ス「導師のスレイです」

 

ラ「主神のライラと申します。あなたは水の五大神アメノチ様の……」

 

アウトル「アメノチ様に仕える護法天族アウトルだ」

 

ス「さっそくだけど、水の秘力を授けてもらうにはどうすれば――」

 

「どこだっ!オレの剣はどこだ~~っ!!」

 

ア「スレイ、上だ!」

 

ス「えっ」

 

頭上から剣が落ちてくる

 

ミ「剣!?」

 

エ「上になにかいる」

 

アウトル「憑魔アシュラだ」

 

ラ「アシュラ……怒りを糧に永遠に戦い続けるといわれる強力な憑魔ですわね」

 

ス「そいつを鎮めるのが試練?」

 

アウトル「いいや。秘力を与える条件は、彼が憑魔になった理由を明らかにすることだ」

 

ミ「単に浄化するんじゃなく理由を探れと?」

 

アウトル「導師ならわかるだろう?その重要さが」

 

ス「はい。大変さも、ね」

 

アウトル「ふふふ、だから試練なのだよ。健闘を祈る」

 

ミ「水の試練……僕の番か」

 

ラ「大丈夫ですわ。痛くありませんから」

 

ミ「そういう心配はしてないよ……」

 

先へ進む一行。

 

ケ「あっ、そうだ。アウトルさん、一つ聞きたい事があるんですが――」

 

みなが先へ進んだのを確認して、ケインはアウトルに尋ねた。

 

 

 

道中

ケ「さすが試練というだけあって複雑な仕掛けだね。何度も入口に戻される」

 

エ「ちょー面倒。この仕掛けを考えた人は性格悪い」

 

ス「マルトランさんも、ここに来たのかな?」

 

ミ「入れたとしても、どうにもならないだろうね」

 

ケ「こんなトコ進めるのは導師ぐらいだよ」

 

ラ「導師か、もしくは……」

 

ス「でも、それが導師の試練って感じがしてワクワクするじゃないか」

 

エ「それは一部の人間だけよ」

 

ス「そうかな?オレは結構好きなんだけど」

 

ア「ふふふ、本当にスレイは遺跡が好きなんだな」

 

ケ「じゃあスレイくんもその一部の人間ってことだね」

 

エ「あなたがそれを言うのね……」

 

ケ「ミクリオくんもそう思うだろう?」

 

ミ「…………」

 

ス「ミクリオ、どうしたんだ?」

 

ミ「スレイ、これを見てくれ」

 

ス「これは何かの本?」

 

『コモン暦二十五年、賢者の月

導師になって三年。この活動は人生を賭けるに足るものだ

だが、穢れは果てしなく生まれてくる。なんとかしなければ。もっと多くの人を救いたい……』

 

ス「これって!?」

 

ミ「ああ、導師の日記みたいだ。所々ページが欠けている」

 

ラ「スレイさん、続きを」

 

ス「あ、うん」

 

『コモン暦三十一年、玉杯の月。輝光銀が手に入った。これで剣を打とう。オレに足りない力を埋め合わせるために。力を。力を。力を。ひたすらこの想いを念じて』

 

ラ「この方は……」

 

エ「ずいぶん思いつめちゃったのね」

 

ス「…………」

 

ミ「スレイ……」

 

ス「先を急ごう」

 

 

 

神殿 最深部

アシュラが憑魔を襲っている。

「それを寄こせえっ!」

 

ス「あれがアシュラ!?」

 

「……これも違う!どこだっ!オレの剣はどこだ――っっ!!」

 

ス「オレの剣?」

 

ケ「憑魔が憑魔を襲うなんて……」

 

アシュラがスレイ一行に気付く。

 

「導師であるオレが!憑魔を倒すのは当然だろう!」

 

ミ「やっぱり!?アシュラは……!」

 

ス「憑魔になった導師!?」

 

「よくもオレの剣を盗んでくれたな!返せ……。オレの剣を返せ――っ!」

 

ラ「アシュラは怒りの憑魔です!怒りの源が憑魔化の原因のはずですわ!」

 

ミ「つまり剣を盗まれたせい!?」

 

ス「いや……それだけじゃない!」

 

「返せ……その剣は穢れを斬る力……」

 

「憑魔を……災厄を……汚い人間を斬る力……」

 

ス「人間を!こいつは……」

 

「オレは!穢れを生むすべてを斬り祓う!」

 

ミ「世界全部を斬るつもりだったんだ!」

 

ス「それがアシュラが憑魔になった理由!」

 

アウトル「正解だよ」

 

「この声……は……!」

 

スレイの体とミクリオの体が光る

 

ス「力が……水の秘力!」

 

「うおおおおっっ!!」

 

『ルズローシヴ=レレイ』

 

水の秘力を得てミクリオとの神威を実現。アシュラを倒す。

 

「……せ……ウ……ル……」

 

エ「まだなにか言っている」

 

「剣を返せ……アウトル……」

 

ケ「アウトル、だって!?」

 

浄化される。アシュラ、消える

 

ス「消えた」

 

ラ「遥か昔に導師だった方です。穢れを浄化しても肉体はもう……」

 

エ「怒りだけで動いてたのね」

 

ミ「問題はアウトルだ。あいつがアシュラの剣を盗んだのか?」

 

ア「アシュラが導師だったなら、ひょっとしてアウトル様は……」

 

ラ「はい。アシュラと契約した天族だったのかも」

 

ス「オレと、みんなみたいな関係だったのかな……」

 

ミ「スレイ……」

 

ス「戻ろう。本人に直接確かめる」

 

アウトル「わたしならここにいる」

 

アウトル、現る。

 

ス「……アシュラは消滅したよ」

 

アウトル「見ていたよ。手間をかけた」

 

ラ「アウトル様。あなたはもしかして――」

 

アウトル「察しの通り。私はアシュラを導師に誘い、器とした天族だよ」

 

エ「剣を盗んだのも?」

 

アウトル「私だ」

 

剣を見せる

 

ア「なんでこんなことを……」

 

アウトル「輝光銀と呼ばれるミスリルの剣だ。本当に世界を斬るほどの力を秘めている」

 

ラ「だから盗んで隠したのですか」

 

アウトル「そうだ。アシュラが一番斬りたかったのは私なのだろうね。彼は、ひたすら純粋だった。純粋故に悩み、いつしか赦す心を失ってしまった」

 

ス「だから、穢れたものを全部斬るためにその剣をつくった……」

 

アウトル「君にならこの剣を渡してもいい。使いこなせば、秘力以上の力となるかもしれない」

 

ス「……遠慮するよ。剣ならもう持ってるから」

 

ラ「スレイさん」

 

アウトル「うむ。心の試練も合格だ」

 

マルトラン「いらないのなら、私がもらおう」

 

突然現れたマルトランに剣を奪われる。

 

マ「世界を斬る剣……こんなところで眠らせておくのは惜しい。我が主にこそふさわしい」

 

ア「せ、師匠!?」

 

ス「マルトランさん……!?」

 

ラ「スレイさん、アリーシャさん!よく見て!」

 

マルトラン、穢れを発している

 

ケ「この人は、まさか……」

 

ス「……憑魔!」

 

ア「マルトラン師匠が……憑魔……」

 

マ「やっと気づいたか、私の正体に」

 

ア「なんで……」

 

マ「私が信じる理想のためだ」

 

マ「湖の乙女よ、以前は挨拶もせず失礼した」

 

ラ「やはり見えていたのですね」

 

ミ「その剣をどうする気だ?」

 

マ「世界を斬るんだよ。アシュラの望んだ如く」

 

ス「なぜそんな……!?」

 

マ「逆に聞きたいな。なぜアシュラの想いに共鳴しない?ここまで穢れきった災厄の世と人間は、一度徹底的に壊さねば再生できはしないだろう?これは我が主、災禍の顕主のお考えでもある」

 

ラ「あなたはかの者の……」

 

ア「マルトラン師匠、師匠は本当に憑魔なんですか?何かの間違いでは……」

 

マ「これが現実だ、アリーシャ。お前はもう用済みだ」

 

ア「用済み……、私が……用済み」

 

ミ「アリーシャのことを利用していたのか!?」

 

マ「そうだと言ったら?」

 

ス「アリーシャは本当にあなたのことを信頼していたんですよ」

 

マ「戦争を起こすには、まず夢見がちな平和論者を暴れさせるのが効果的なのだ。皮肉なことにな。だが、すでにハイランドとローランスの全面衝突は時間の問題となった。もう小娘に……利用価値はない!」

 

剣を振り回すマルトラン。衝撃波。一行、なんとかよける

 

ス「むうっ」

 

この間に、マルトラン消える

 

ス「マルトランさん……」

 

ラ「領域を感じません。この場を離れたようです」

 

ア「そんな……マルトラン師匠は……ずっと私を励ましてくれて――。それが全部演技で、私は戦争を止めるために頑張って――」

 

ス「アリーシャ!?」

 

アリーシャ、その場で崩れ落ち倒れる

 

エ「大丈夫、気を失っただけよ。それほどショックが大きかったのね」

 

ケ「彼女がアリーシャの恩人だというマルトランさんか。まさかこんな事になるなんて……」

 

アウトル「すまない。私が油断したばかりに……」

 

ス「…………」

 

ラ「ミクリオさん、スレイさんが……」

 

ミ「多分アリーシャのことだ。一人で悩むなって言いたいけど……」

 

ラ「どうすべきか私たちにも……」

 

ケ「とりあえず安全な所でアリーシャを休ませよう。ここから一番近いのはレディレイク……いや、あそこに今戻るのは危険だ。少し遠いがマーリンドへ――」

 

ラ「おそらくマーリンドにもハイランド兵がいるでしょう」

 

エ「ハイランドでうかつに動くのは危険ね」

 

アウトル「ならばそこのお嬢さんが元気になるまでここにいるがいい」

 

ラ「アウトル様、いいのですか!?」

 

アウトル「導師のためとならば喜んでここを提供しよう。そのような迷いのある心では災厄には立ち向かえまい」

 

ラ「感謝いたします」

 

ス「…………」

 

ミ「スレイ……ともかく秘力は得たんだ」

 

ラ「マルトランも災禍の顕主に繋がる者。私たちの進む先に解決策があるはずですわ」

 

ス「……うん」

 

 

 

アリーシャを休ませる。

ミ「だいぶ呼吸が落ち着いてきた。奥でぐっすり眠っているよ。今はライラとアウトルがついてる」

 

ス「よかった……」

 

ミ「ただ精神のダメージは大きいだろう」

 

ス「……一番信頼していたマルトランさんが実は憑魔だったなんて……」

 

ミ「アリーシャにとって、とても辛い現実だろうね」

 

ス「ミクリオ、オレ、アリーシャになんて声をかければいいんだろう……」

 

ミ「スレイ……。難しいね。僕にもわからない」

 

ス「このままアリーシャと一緒に旅を続けていいのかな」

 

ミ「スレイ、それって……」

 

ス「マルトランさんが本当に災禍の顕主と繋がっているのなら、きっとマルトランさんとも戦うことになる。アリーシャには酷すぎるんじゃないかって」

 

ミ「それはそうかもしれないが、それでアリーシャは納得するのか」

 

ス「…………」

 

ミ「マルトランが憑魔だったら、穢れを祓って救ってやればいい。アリーシャもそれを願っているんじゃないのか」

 

ス「……でも、フォートン枢機卿のように浄化出来なかったら、マルトランさんは……」

 

ミ「スレイ!それ以上は言わせないぞ!」

 

ス「……ミクリオ、聞いてほしいことがあるんだけど」

 

ミ「なんだ?」

 

ス「……アリーシャは、戦争が終わるまでアウトルさんに匿ってと思う。それならマルトランさんから遠ざける事ができる」

 

ミ「何を言い出すと思ったらそんな事か」

 

ス「そんな事って……じゃあ他に方法があるっていうのか!?アリーシャを傷付けない方法が!」

 

ミ「そんなのわからないね」

 

ス「ミクリオ、お前!」

 

ミ「わからないから探しに行く。何か方法があるはずだ。スレイならこう言うと思っていた」

 

ス「えっ……」

 

ミ「キミはアリーシャの笑顔を守りたいんじゃなかったのか。一緒に夢を叶えるんだろう?」

 

ミ「火の試練の時、スレイはアリーシャに言ったな。あの頃の気持ちをもう忘れたのか?」

 

ス「ミクリオ……」

 

ミ「スレイ、キミはアリーシャと一緒で、一人で抱え込みすぎだ。もっと僕たちを頼ってくれ。僕でよければいくらでも相談ぐらいは乗る。一応これでも幼馴染なんだし、スレイのことを一番わかっているつもりだ」

 

ス「幼馴染か……。そうだよな、生まれた時から一緒だもんな。ありがとう、ミクリオ。落ち込むなんてオレらしくなかったな」

 

ミ「考える前に行動、それがスレイのいい所だからね」

 

ス「それ褒めてるつもり?」

 

ミ「もちろん」

 

ケ「スレイくん、ミクリオくん。ここにいたんだね」

 

ス「ケイン、どうしたの?」

 

ケ「キミたちを捜していたんだ。さっきアリーシャ姫が目を覚ました。その報告」

 

ス「アリーシャが」

 

ミ「スレイ、僕の言ったこと――」

 

ス「大丈夫。しっかり伝わった。ちょっと行ってくる」

 

スレイフェードアウト

 

ケ「スレイくん、元気になったみたいだね」

 

ミ「ああ。少し手間がかかったけどね」

 

 

 

ラ「食事を用意しましたわ」

 

ア「ありがとうございます、ライラ様。しかし、今は何も食べる気がしません……」

 

ラ「アリーシャさん……」

 

エ「これは相当重傷ね」

 

ス「アリーシャ!」

 

ア「スレイ、先ほどは取り乱してすまなかった。私のせいで旅を中断させてしまって――」

 

ス「たまには休憩も必要だよ。人間も天族も。……隣いい?」

 

ア「ああ」

 

ス「体調のほうはどう?急に倒れたからびっくりしたよ」

 

ア「全然平気だ。むしろぐっすり眠って気分がいいぐらい」

 

ア「それにしても火の神殿と言い、ここ水の神殿と言い、『天遺見聞録』にも載っていないような遺跡がまだまだ沢山あるのだな。今一度ゆっくり見学したいものだ」

 

ス「アリーシャ……」

 

ア「もちろんスレイも一緒に、だ。ミクリオ様もケインも喜ばれるだろう。エドナ様は退屈なさると思うが――」

 

ス「オレの話を聞いてくれ!」

 

ス「アリーシャ、なんか無理してない?」

 

ア「なっ、決して無理などは……」

 

ス「マルトランさんの事、気になるんでしょ?」

 

ア「…………。ショックじゃないと言えばウソになる。私がやっていたことが戦争に繋がっていたなんて」

 

ス「アリーシャはそんな事していない!誰よりも平和を願っていたじゃないか!」

 

ア「しかし、私はマルトラン師匠に利用されていたんだ。最初から利用するつもりで近づいて、まんまと私は……」

 

ス「アリーシャ……。オレ、もう一度マルトランさんに会って話してみようと思う」

 

ア「師匠は憑魔なんだぞ!」

 

ス「それでもアリーシャの師匠だ。きっと穢れの中にも人を愛す心が残っていると思う。じゃなきゃ、アリーシャみたいな心優しい弟子は育たない。マルトランさんを穢れから必ず助け出す」

 

ア「師匠と戦うのか」

 

ス「場合によっては、そうなるかもしれない」

 

ア「わかった。私はスレイの従士だ。私も一緒に行く」

 

ア「ありがとう、スレイ。おかげで決心がついた」

 

ス「お礼ならミクリオに言ってよ」

 

ア「ミクリオ様に?」

 

ス「実はオレも迷っていたんだ。アリーシャを旅に連れて行っていいか。でもミクリオに「アリーシャと一緒に夢を叶えるんじゃなかったのか」ってガツンと言われて吹っ切れちゃった」

 

ア「そうだったのか」

 

ス「アリーシャ」

 

ア「ん?」

 

ス「絶対、この世界を救おうな!」

 

ア「ああ、もちろんだ」

 

ス「安心したらお腹が空いてきたよ。ゴハンにしよう。アリーシャも食べるよね」

 

ア「私も急にお腹が……」

 

ス「決まりだね」

 

エ「やっと話が終わったみたいね」

 

ス「エ、エドナ!?それにみんな!?いつからここに」

 

エ「ずっといたわよ」

 

ケ「すっかり自分たちの世界に入っていたみたいだね」

 

ラ「邪魔してしまいましたね」

 

ア「邪魔なんて、そんな……。ミクリオ様、ありがとうございました。またミクリオ様に助けられたみたいです」

 

ミ「スレイ、余計な事を。別にお礼はいいから」

 

ア「はい。ありがとうございます。あっ……、すみません」

 

エ「ミクリオ、あなたが素直に受け取らないからこんなビミョーな空気になるのよ」

 

ミ「僕が悪いのか!」

 

ケ「謙虚なことはそれだけで美徳だけど、時には相手の顔を立てないといけないこともある。ミクリオくん、「ありがとう」に対しては「どういたしまして」。草食系では競争社会で勝負していけないよ」

 

ミ「なんの話だ!」

 

ラ「みなさん、ゴハン準備出来ましたよ」

 

エドナ、ケイン去る

 

ミ「こら、エドナ!ケイン!逃げるな……行っちゃった」

 

ア「ミクリオ様、わたし達も……」

 

ミ「あ、ああ」

 

先行くアリーシャを呼び止める

 

ミ「アリーシャ!」

 

ミ「さっきは、その……タイミングを逃して言いづらいのだが、……どういたしまして」

 

ア「はい。どういたしまして」

 

 

 

食事を済ませる

アウトル「お嬢さんは元気になったようだな」

 

ア「アウトル様、大変お世話になりました」

 

アウトル「天族の同胞たちよ。私がこう言うのもなんだが、どうか導師を支えてやってくれ。私はがむしゃらに頑張る彼を導くことが出来ず、最後の最期で導師を信じてやれなかった。お主たちには悔いのない道を選び取ってくれ」

 

ミ「言われなくてもわかっている。僕たちはスレイを信じている」

 

ス「みんなが付いているから大丈夫!」

 

アウトル「ふふふ、要らぬ心配だったか」

 

アウトル「従士の少年、言われていたものをお見せしよう」

 

ス「言われていたもの?」

 

ラ「ケインさんが?」

 

アウトル「ドラゴンが描かれている壁画を見せてくれと頼まれたのだが、導師の望みじゃなかったか」

 

ス「ドラゴン!?まさかエドナのお兄さんを助ける方法を捜して……」

 

エ「…………」

 

ミ「ケイン、これはどういうことだい?」

 

ケ「ボクは行った先々でドラゴンに関することを調べてきた。ティンタジェル遺跡に火の試練神殿イグレイン、そしてここ、水の試練神殿ルーフェイ」

 

ス「そうだったんだ」

 

ア「なぜ黙っていたんだ?」

 

ケ「たまたま言う機会がなかった。結果的に黙っていることになってしまったことは謝る」

 

ス「とにかくその壁画を見に行こう。もしかしたらドラゴンを浄化する方法が見つかるかもしれない」

 

ラ「エドナさん……」

 

エ「さっさと行きましょう」

 

ケ「エドナちゃんは残っていてもいいんだよ?」

 

エ「これは私の問題よ。私が行かなきゃ意味ないじゃない。バカなの」

 

ケ「愚問だったね」

 

アウトル「いいかな?」

 

ケ「はい、案内よろしくお願いします」

 

 

 

壁画前

アウトル「ここだ」

 

ア「うわあ」

 

ミ「これはすごいな、部屋一面に壁画が描かれている」

 

ア「圧巻ですね……」

 

ス「感動するのは後!アウトルさん、ドラゴンが描かれている所って――」

 

ケ「…………」

 

ラ「ケインさん、どうしたんですの?」

 

アウトル「もう見つけたのだな。考古学者と聞いていただけのことがある」

 

ミ「これは!」

 

ス「導師がドラゴンから穢れを祓っている!」

 

ア「ではエドナ様のお兄様を元の天族へ戻せるのですね!」

 

ケ「…………」

 

ス「ケイン?さっきから黙ってどうしたの?」

 

ケ「その壁画の左部分を見てくれ……」

 

ミ「左?」

 

ア「これは天族でしょうか?導師の周りに集まっていますね」

 

ラ「はっ、これはもしや……」

 

アウトル「これは天族自らの命を捧げて、導師に穢れを祓う力を授けている様子を描いたものだ。天族の代償を得て、導師はドラゴンと対抗する手段を得る」

 

エ「!」

 

ケ「昔メ―ヴィン師匠から聞いたことがある。導師は天族の力を借りて穢れを祓ったと。歴代の導師の中には、友となった天族を殺して、その力を得た者もいたらしい」

 

アウトル「導師の武器に天響術を込め、浄化の力と共に憑魔に放つ。どんな強力な憑魔でも必ず隙ができる。術そのものとなった天族はその隙をついて相手の懐に入り、意志のある攻撃となって内部から穢れを断ち切る」

 

ミ「それからその天族はどうなるんだ」

 

ラ「そのような事をしたら確実にお亡くなりになるでしょうね……」

 

ス「生贄ってことじゃないか!?」

 

アウトル「その通りだ、導師殿」

 

ス「そんなことって!」

 

エ「スレイ、やめて。これが現実よ」

 

ス「エドナ……」

 

エ「お兄ちゃんを助ける方法がようやく見つかった。それだけで十分よ。さあ次行きましょう」

 

アウトル「次の目的地は地の試練神殿だったな。アイフリードの狩場の奥地にある。そこにも導師にまつわる壁画があるはずだ」

 

ス「ありがとうございます」

 

エ「そ、次は私の番なのね」

 

ケ「エドナちゃん……、変なこと考えてないよね?」

 

エ「…………」

 

ケ「必ず生贄を出さずに救う方法があるはずだ。地の試練ではきっと――」

 

エ「あなた、そればっかりね。気休めはいいわ。いいのよ、気をつかわないで」

 

ミ「エドナ、ケインはエドナの事を思って――」

 

ケ「いいんだ、ミクリオくん。ボクが軽率だった。すまない」

 

エ「…………。私こそ言い過ぎたわ。ごめん。少し一人にさせてくれない」

 

エドナフェードアウト

 

ア「エドナ様……。覚悟してはいたと思いますが……」

 

ラ「こうも辛い現実を突きつけられると、お辛いでしょうね」

 

ス「ケイン…………」

 

ケ「ボクは大丈夫だ。エドナちゃんの事は少し様子を見てみることにするよ」

 

ケ「さあ当初の目標通り地の試練へ向かおう。情報収集もそうだが、秘力を手に入れなくては」

 

ア「そうだな。そこでまた別の方法があるかもしれないし」

 

ス「一歩一歩出来る事からやるしかないか」

 




こんにちは、作者です。第十七話です。導師がようやく神威できるようになりました。長かったですね。どうせ秘力を得るために遺跡を回るのなら、圧倒的力=神威を習得するイベントにしたろう!と思った次第です。次回は地の試練神殿で修行します。地の天族エドナと余ってしまったアイツの試練です。不器用なやつらですが、どうか見守ってやってください。ではまた、第十八話で会いましょう。
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