ウェストロンの裂け谷
ア「ここがウェストロンの裂け谷……」
ケ「まさに断崖絶壁。足元にお気を付けて」
ミ「ケイン、ここに遺跡と呼べるものはあるか?」
ケ「風の試練と思われるものは見当が付いている。もうそろそろ見えてくるはず……」
風の試練神殿ギネヴィア、発見
ス「すっげえ!こんな高い塔があるんだ」
ミ「遺跡としては相当古いな。少なくともアスカード以前なのは間違いない」
ア「これほど古い遺跡なら風の試練神殿で間違いないでしょうね」
エ「……完全に目的を忘れているわね。ここにはザビーダを捜しに来たんじゃなかったの?」
ア「そうでした」
ス「つい興奮しちゃって」
ラ「スレイさん!あそこ!噂をすればですわ!」
ザビーダ、発見
ス「ザビーダ!」
ミ「ちょっと待って。誰かと戦っているみたいだ」
ラ「しばらく様子を見ましょう」
ザ「お前らもしつこいな。しつこい女は嫌われるぜ、ロゼ」
ロ「うるさい。それをこちらに渡せ」
ザ「ああ、これか。やなこった、俺様はこれでやらなきゃなんないことがあんだよ」
デ「ざけんな!それなら力づく奪うまでだ」
ザ「威勢がいいねえ。デゼル、なんでお前はそれほどまでに力を求めるんだ」
デ「殺したい奴がいる。死ぬ程な」
ザ「そいつはいい。じゃあ、デゼル、なぜそこまで復讐に燃える」
デ「……何が言いたい?」
ザ「生きてりゃ世の中ムカつくことがいっぱいだ。それこそ死ぬ程な。それでも憑魔を殺そうなんていう物好きはそうはいねえ。お前は明らかに異常だ」
デ「それはお前もだろうが!」
ザ「興味があるんだよ、もしかしたら俺たちは根っこでは一緒なのかもしれない。あるんだろ、今も昔も体の中で渦巻いているクソッタレな悪夢が」
デ「それは……」
回想 数年前 ペンドラゴ 風の傭兵団拠点
団長プラドの元へローランス第二皇子コナンが訪ねてくる。
プラド「これはこれはコナン皇子、わざわざ拠点までいらしてどうなされたのですか」
コナン「依頼の完了の報告を受けまして参りました。こちらが謝礼です。心から感謝致します」
プ「こちらこそ依頼する人あっての商売です。今後とも風の傭兵団を御贔屓願います」
コ「それともう一つ。今回はお話があってきたのです」
プ「話?」
ロ「あっ、コナン皇子!来てたんですね。お久しぶりです!」
プ「こらロゼ。皇子に失礼だろ」
コ「いいです。女の子はこれぐらい活発なほうがいい」
ロ「さすがコナン皇子♪わかってる~」
コ「ちょうどいい。ロゼさんも聞いてください」
ロ「うん?何ですか?」
コ「あなたがたを正式にローランスに連ねたいのです」
プ「オレたちがローランスに、ですか。それはまたなんで?」
コ「ローランス帝国がハイランドと敵対関係になってからもう随分となります。今でこそ停戦状態ですが、また何が引き金で戦争が起こるかわかりません」
ロ「また戦争が起こるの?」
コ「まだ決まった訳ではありませんが……。国内情勢を見ても、次の皇帝の座を兄と私で争っている最中ということもあって、衝突が絶えません」
プ「なるほど、それでオレたちを配下に入れたいと」
コ「はい。大陸一と名高い、風の傭兵団と協力して帝国内外の治安維持に努めてもらいたい。
もちろん団員全ての生活を保障します。希望する者は帝国騎士団への推薦を私から口添えしましょう」
プ「ふむ、悪い話ではないな」
コ「それと……団長さん」
プ「なんですか?」
コ「ローランス帝国と風の傭兵団が正式に同盟を組んだ暁には、お嬢さんを私にください!」
プ「は」
ロ「ええええええ」
コ「私は本気です。必ずロゼさんを幸せにしてみせます」
ロ「ちょっ、聞いてないよ」
コ「急な話ではございません。初めて会った時からずっと素敵な方だと思っていました。最近ではその思いが抑えきれず、あなたのことばかり考えてしまう始末。勝手な話だとは思いますが、私の妻となってもらえますか?」
ロ「…………はい、あたしでよければ喜んで」
コ「ありがとうございます」
プ「これはめでてえ話だな。若いっていいねえ」
ロ「ちょっ、茶化さないでよ。一応私も女の子なんだから」
プラド、席を立つ。
コ「団長さん、どちらへ?」
プ「団員を集めてくるんだ。なんだって今日はロゼと皇子の大切な婚約記念日だからな。盛大に宴を開くんだよ。もちろん皇子も参加だからな」
コ「ということは!」
プ「娘の旦那に剣は向けられねえよ。風の傭兵団はローランス帝国と正式に同盟を結ぶ」
コ「ありがとうございます」
ロ「あたしがコナン皇子と婚約?夢みたい!」
プ「こんなガサツな娘だが、どうかよろしく頼む」
その様子をを影で見ていた天族ラファーガとデゼル
ラファーガ「よかったな」
デゼル「ああ。ロゼもコナンのやつにだいぶ惚れ込んでいたからな」
ラ「ロゼのことだから無意識だったかもしれないけど」
デ「ふっ」
ラ「しかし、これで長かった旅も終わりか。少し残念だな」
デ「終わり?」
ラ「そりゃそうだ。ローランス直属になったら世界中を回ることもないだろう」
デ「そ、そうか」
デ(旅が……終わる……)
ラ「コナンとロゼが正式に結婚したらこの旅も終わりだ。名残惜しいが、そこで風の傭兵団とはお別れだな」
デ(……イヤだ)
ラ「みんなが幸せになってくれて、本当に嬉しい」
デ(……イヤだ。終わらないでくれ……)
数日後 ペンドラゴ城入口
城の前で、コナンと兵士が話している
コ「ぬかるなよ。行かぬか!」
兵士「はっ、かしこまりました」
兵士、その場を離れる
ロ「コナン皇子!団長が居ないんです」
デ「その子に近づくんじゃねえ!」
コ「私に指図する貴様は何者か」
ラ「こいつ……すでに憑魔に……」
ロ「え、誰に話して……?」
コ「貴様らのその旨そうな匂い……たまらんなぁ!」
コナン、穢れを発する。それに乗じてサイモン、登場。
サイモン「ゆっくりじわじわと蝕もうと思っていたが、思ったより早かったな……。何故これほどの短期間で憑魔と化したのだろうな?」
ラ「お前は誰だ!」
サ「我が名はサイモン。そこにいる出来そこないと同じ疫病神だ」
エギーユ「皇子!俺たちが第一皇子を殺しただと!?何の冗談だ!」
コ「衛兵!逆賊がここに!」
エギーユ、衛兵に捕まえられる
エ「罠にかけたな……俺たちを!」
ラ「なぜこんな事に……」
コ「風の傭兵団、団長ブラドは第一皇子レオンを殺害。身柄をペンドラゴ守警隊によって拘束された。よって貴様ら全員も拘束する」
ロ「コナン!うそでしょ、あたしたちはやってない!」
コ「気安く呼び捨てで呼ぶな!私は次期皇帝様だぞ!」
ロ「えっ」
ルナール「わからないのか。お前はオレ達に利用されたんだ」
ロ「ルナール!?」
デ「まさかルナールまで憑魔に……」
ロ「それってどういう……」
ル「この男は皇帝になるために、風の傭兵団に近づいた。その力を使い、戦果をあげたこいつは実の兄を失脚させ、帝国の権力を掌握した。お前たちは利用されていたんだよ」
コ「お前たちは私のためによく戦ってくれた。褒美として、私の手で天国へ送ってやろう」
ラ「第一皇子殺害の容疑をブラドに被せたのか!」
コ「くっくっく」
ロ「コナン……、あたしの事が好きだって言ってくれたのは?あれも嘘だったの?」
コ「愚問だな。誰が好き好んで傭兵などやっている低俗の者を嫁に貰うか!」
サ「わかるだろう?コナン皇子が憑魔と化し、我欲に従い、邪魔者を除こうと考えたからだ。我はその手助けをしたに過ぎない。心の闇をくすぐり、穢れをより多く生み出すように助長した」
ラ「そのためにルナールも……」
サ「必要ならばそうせざるを得ないだろう。もっとも彼は心の底から望んでいたがな。キツネもよく働いてくれた。風の傭兵団からの使者として、第一皇子レオンに接触し、亡き者にしたのだから」
デ「この外道が」
サ「そんな事はどうでもいい。問題はどうしてこれほど早く二人が憑魔化したか、だ。その答えもわかるだろう?」
ラ「よ、よせ!」
サ「『彼』だ」
サイモン、デゼルを指さす。
デ「……俺のせい……だった?……俺の……?」
コ「お前も用済みだ」
ロ「なっ!」
コ「ぐふふ。人生最後の瞬間を次期皇帝と共に迎えられる!これほどの栄誉はあるまい!」
ロ「そ、そんな……。あんな優しかったコナンがどうして……」
コ「死ねえ!」
ラ「間に合え!」
コナンの攻撃に対して、ラファーガが間に入る
ラ「ぐ、うぅぅああ!」
ロ「えっ、な、なにが起こっているの?きゃあああああ」
発狂するロゼ。膝をつくデゼル。不敵な笑みを浮かべるサイモン。
サ「この悲劇は我とそして貴様の加護の賜物……。人はその力を持つものを何というか知っているか?」
サ「疫病神だ」
デ「違う……。違う違う違う!オレは疫病神じゃない!」
サ「哀れよのう。目の前の現実も受けとめられないか」
デ「ロゼ!おまえはこれでいいのか!」
ロ「えっ、声?どこから聞こえて……」
ル「何!?こいつ、霊能力が」
デ「コナンが憎いそう、だろう?」
ロ「ひっ、お、お前は」
見えないデゼルにおびえるロゼ。
デ「俺の事は今はどうでもいい。あいつにプラドが殺され、風の傭兵団が捕まったんだ!俺たちの事をバラバラにしたんぞ」
ロ「で、でもあたし、どうすれば」
デ「剣を構えろ!コナンを斬れ!」
ロ「えっ」
コ「私に剣を向ける気か。調子に乗るな!」
デ「俺を信じろ。プラドの仇を討つんだろ!」
ロ「団長の、仇……」
ロゼ、剣を構える。
コ「死ねえええ」
ロ「この野郎~!」
デ「はあああ!」
ロゼ、デゼル、コナンを斬る。
コ「ぐああああ!こん、なことは、許されぬ、わ、たしは皇帝に、な、るおと、こだ、ぞ」
コナン、倒れる。
ロ「こ、殺した……。あたしが、コナン、を。うわああああああああああん!」
サ「生死を分ける土壇場で霊能力に目覚めた。これもお前たちが干渉し続けた結果、か。面白い。これから娘にどんな不幸が訪れるのか楽しみで仕方ない」
サイモン消える
ル「くかかか、せいぜいその罪を苦しむんだな」
ルナール消える
デ「プラド……ラファ―ガ……、ルナール、オレたちの風の傭兵団が……。許さなねえ!あのサイモンとかいう天族、絶対探し出して殺してやる!」
回想終わり。現代。
ロ「しっかりしろ、デゼル!相手の挑発に乗るな!」
ロゼの呼びかけで、デゼル我に返る
ザ「おっと、俺様はデゼルに聞いているんだけど」
ロ「お前に話す事はない」
ス「『ルズローシヴ=レレイ』」
ス「はああああ!」
ザ「おっと、あぶねえあぶねえ」
スレイ一行、乱入。
ロ「スレイ。やはりここに来たか」
ラ「スレイさん、一旦様子を伺うと――」
ス「あの三人が戦っているんだ。ケガしてからじゃ遅い。早く止めないと」
ミ「スレイ、行くぞ!」
ス「ああ」
ラ「もう、困った方ですわ」
ア「それがスレイの持ち味です。わたし達も続きましょう」
ケ「同感だ」
エ「三人同時に叩いて一石三鳥、省エネ省エネ」
デ「ちっ、導師か。敵の数が多い。プランBに移行する」
ロ「だが、ザビーダがすぐそこに……」
デ「力を手に入れれば同じ事。塔を上るぞ」
ロ「…………わかった。頼む、デゼル」
デゼルと共にロゼが空を飛ぶ
ラ「ロゼさんとデゼルさんが塔を上っていきます」
ミ「なんだって!?」
エ「風の力で一気に頂上へ向かうつもりね」
ア「風の天族様はあんな事ができるのか!?」
ミ「感心しているのは後!追いかけるぞ」
ザ「ちょおっと待った!」
ス「ザビーダ、道を開けてくれ!」
ザ「やなこった」
ケ「キミは彼女たちと敵対関係にあったんじゃないのかい?それがなぜ急に……」
ザ「それはあいつらが勝手に思っているだけ。基本俺様は誰とでもフレンドリーなの」
ス「また殺すつもりか?」
ザ「ああ。言ったろ?憑魔は地獄へ連れてってやるのが俺の流儀ってな。あいつらがもし完全に憑魔になっちまったら、その時は俺の手で……」
ス「ザビーダが手を出す前に俺が浄化するよ」
ザ「それもどうだか。スレイももう知ってるんだろ?祓えないほどの穢れは殺すしかないことを……」
ス「それは……」
ケ「ザビーダ、キミが持っているそれ、ジークフリート、だよね?」
ザ「さあどうだか。グラマラスなお姉さん紹介してくれたら教えてやるぜ?」
ケ「……聞いていた通りの天族だな。ライラさんが苦手そうなタイプ」
ザ「なんか女の子が増えて華やかになったなぁ、導師殿。エドナちゃんも口説き落としてるとはやるじゃん」
ア「こんな天族もいるんですね……」
エ「あなた、変わらないわね」
ザ「はっはっは。なら……俺様がつぎに何するかもわかんだろ?エドナちゃん」
ザビーダ、ジークフリートの銃口を自身の頭に向ける
ラ「ザビーダさん?!」
ミ「戦おうっていうのか?!理由がわからない!」
ザ「この先何度もチャチャ入れられるのはごめんだ」
ザ「この際、ザビーダ先生がしっかり躾けてやるよ」
ス「お前が殺さなくても憑魔はオレたちが鎮める!だから……」
ザ「そうじゃねぇよ、スレイ。譲れないもんがぶつかったら……」
発砲。ザビーダの周りに気が集まる。
ザ「ケリはこいつでつける!それも俺の流儀さ!」
ケ「不思議な力が彼を覆っている。あれがジークフリートの力か」
ザ「さぁて!どれほどのもんになってるかな!」
ス「ザビーダ!話を聞いてくれ!」
ザ「やなこった!あとにしな!」
ザ「ぐあああ。ちょっ、タンマタンマ。その腕はやめ、うああああ」
神威ケインでザビーダを捻り潰す。
ア「ちょっと、エドナ様、ケイン!」
ケ「相手の力量が計れていないんだ。やむを得ない」
エ「ちょっとスッキリしたわ」
ザ「…………」
ミ「……動かないな」
ス「やり過ぎたかな……。手加減できなかったし……」
ザビーダ起き上がる
ザ「聞き捨てならないな。それじゃ俺様が負けたみたいじゃねーの。あー、もういいって。それこそ無駄遣いになる」
ス「ザビーダ……」
ミ「待て!ザビーダ! 俺たちは災禍の顕主に対抗するための力を探している。そのためにはそのジークフリートが必要なんだ」
ザ「そんな名前かどうかは知らないが、こいつは力を撃ち出す道具だ。確かに俺はこいつで穢れに抗う力を得てる。倒してるのは俺の実力。お前らには渡せない」
ス「ザビーダ、お前は――」
ザ「またにしようぜ?導師殿。今、話してもまたぶつかるだけさ」
ザビーダ去る
ス「話はあとにしろって言ったくせに……」
ミ「相変わらずワケがわからない……」
ケ「つかみどころがない男だね」
ラ「あの方とお話ししているとどっと疲れますわ」
エ「チャラ男だし」
ア「評価が軒並み低いですね……」
エ「アリーシャはああいうワイルドな男が好みなの?」
ア「そう言う訳では……、どちらかと言うと苦手です」
エ「でしょうね」
ミ「とりあえずロゼとデゼルを追いかけよう。塔の最上階にいるはずだ」
エ「でもどうやって」
ケ「一層ずつ登る。調査の基本は足だからね」
ア「こちらに入口らしきものがあります」
ス「とにかく行くしかないね」
ラ「行き違いにならなければいいのですが……」
風の試練神殿ギネヴィア 頂上
護法天族ワーデル「だから何度も言っている。お前達のような無礼なものに、秘力を授けることはできん」
デ「ざけんな!導師に出来て、なぜ俺たちに出来ない」
ロ「あたしたちにはどうしても力が必要なんだ、あいつらを倒すために……」
ワ「事情は大方察しよう」
ロ「なら!」
ワ「だからこそ、なのだ。憎しみは憎しみしか生まない。復讐などもってのほかだ」
デ「俺たちは俺達の方法で仇を討つ。それだけだ」
ワ「人間、たしかロゼと言ったね。今の自分自身にどう思う?」
ロ「あたしは……」
ワ「本当にこれでいいのだろうか?他にやり方があるんじゃないかと……心の中で迷っているのではないか?」
ロ「それは……」
デ「てめえ!」
ワ「我が同胞、デゼル。そして人間ロゼよ。迷いある中、やみくもに剣を振るっても穢れに飲み込まれるだけだ」
ロ「それでも私は――」
ワ「おっと、来客のようだ。君たちとは違い、律儀に一段一段登ってきたみたいだね」
ス「ロゼ!デゼル!」
デ「ちっ、もう追いついてきやがったか」
ロゼ、デゼル、構える。
ス「ちょ、ちょっと待って。オレは話がしたいだけなんだ」
ロ「話?」
ス「うん。ロゼとデゼルの事もっと知りたいなと思って……」
デ「お前と話すことは――」
ス「聞いてくれ。オレさ、ロゼとデゼルってなんか好きなんだ」
ア「す、スレイ!?」
デ「はぁ?何を言ってる!」
ス「人と天族が一緒に旅してるなのなんて、オレたちだけだと思ってたからさ。なんだか嬉しくて」
ミ「何を言っているんだ、暗殺者に対して――うが」
エ「ミボは大人しく見てる」
ラ「ここはスレイさんに任せましょう」
ロ「それで?」
ス「ロゼとデゼルに昔何があったのか、オレには分からない。でも、それでも殺す事が救いになるなんて間違っていると思う」
デ「甘ったれるな!そんな事じゃあいつを仕留められな――」
ス「確かに今のオレでは浄化することは出来ないかもしれない。でも少しずつ力をつけつつあるんだ。きっとこの世界の穢れすべてを祓うことが出来る。人間も天族も、そして憑魔も救えると思うんだ」
ロ「この世界の穢れすべてを祓う?憑魔を救う?どうやってだ?」
ス「アリーシャにケイン、ミクリオ、ライラ、エドナ。みんなの力を借りる。もちろんロゼとデゼルも、だ」
デ「俺たちも、だと」
ス「そうだ。もちろん、二人に殺しなんてもうさせない。オレはロゼとデゼルも救いたいんだ」
ラ「スレイさん……」
ス「だから、力を貸してくれ、ロゼ、デゼル。オレ一人では無理なんだ。協力してほしい」
ミ「スレイ、それって……」
ス「ロゼとデゼルに従士と陪神になってほしいんだ」
エ「これはまた」
ケ「予想の斜め上をいったね」
ア「スレイらしい真っ直ぐな答えだ」
ロ「……話はそれだけ?」
ス「うん」
ロ「スレイの気持ちはよく分かった。でも、これはあたし達が選んだ道なんだ。今まで多くの憑魔を殺してきた。……今更後戻りはできないよ」
ス「でも今でもまだ間にあ――」
ロ「これはあたし達の問題。口出し無用!」
デ「そうだ、俺たちが決着をつけなくちゃいけないんだ。じゃないとあいつに顔向けできない……」
ロ「……スレイ、一応お礼言っとく。ありがとう。……違う形で出会えてたら、あたしたち、友達になれたのかもね」
ス「ロゼ……」
ロ「さよなら」
ロゼとデゼル消える。
ア「スレイ、追いかけなくていいのか?」
ス「オレの気持ちは伝えた。無理強いは出来ないよ」
ワ「導師の旅路はあまりにも苦難が多い。それがまた宿命か」
ラ「お久しぶりでございます、導師ワーデル」
ワ「久しいな。ライラよ」
ケ「導師って……この天族が?」
ワ「もう数百年も前のことだ」
ミ「……エクセオと同じと言うわけか」
ス「ワーデルさん、ロゼとデゼルに秘力は……」
ワ「授けておらぬよ。困難に立ち向かい、懸命に生きているのは伝わったのだが。惜しい存在だ」
ス「二人がもし殺しじゃなくて救いを求めたら……」
ワ「その時はまた考え直そう」
ス「オレ、絶対二人をここに連れてきます」
ワ「うぬ。その時を待っているぞ」
エ「いいの?相手は暗殺者なのよ」
ミ「僕も反対だ。信用ならない」
ス「エドナ、ミクリオ……」
ケ「ボクは仲間に入れても悪くないと思う。言っとくけど、スレイくんの考えとは別の意味でね。このまま牢に入れても、天族を味方についている以上、脱獄は容易だ。不審な動きをした時、身近にいたほうが対処しやすい」
ラ「私はスレイさんの意見を尊重しますわ。ロゼさんも根はいい人だと思いますし」
ス「アリーシャは?」
ア「私は……、どんな理由であれ、風の骨がやったことは許されない。将来的には罪を償ってもらいたい」
ス「それはそうだけど……」
ア「私としてもロゼを救いたい、しかし……」
エ「アリーシャの立場上、そうも言ってられないわね」
ア「はい」
ケ「ここに留まっていても仕方がない。一度ペンドラゴに戻ろう」
ラ「これからどうするか、ゆっくり考えましょう」
ス「うん」
こんにちは、作者です。第十九話です。デゼルが数年抱いていた復讐心は、ただのサイモンへの当てつけだったという、なんとも拍子抜けな展開に開いた口が塞がらない状態だった2015年冬。当作を書くに当たって、何回か周回プレイもしましたが、未だに風の傭兵団云々の例の事件のことは理解できません。なんとか、こういうことなのかな、と脳内補完しまくって殆ど原型が残らなかった回想編。楽しんでいただいたら幸いです。ではまた、第二十話で会いましょう。