俺が考えたアリーシャヒロインのゼスティリア   作:具志健

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復讐の時間


第二十話 復讐のはてに

グレイブガント盆地 ローランス陣営

ローランス兵「荷は確認した。さすがセキレイの羽、いい品だ。次も頼みたいが……」

 

フィル「申し訳ないけど、別の仕事が入ってて。またの機会にお願いします」

 

ロ「フィル、トル」

 

トル「ロゼ!」

 

ロ「約束の時間になっても待ち合わせ場所に戻ってこないから探しにきたよ。仕事?」

 

フ「そう。ちょっと手間取っちゃったけど、ローランス陣営への物資の運び入れ、無事完了したよ」

 

ロ「ご苦労様。それで例の件は?収穫あった?」

 

ト「うん。実は――」

 

フ「トル」

 

ト「……っと、ここじゃあマズイね」

 

フ「とにかくこっちへ」

 

ロ「了解」

 

 

 

セキレイの羽、風の骨のアジト(ティンタジェル遺跡)

ト「ローランス秘書官が接触してきた。仕事の依頼があるらしい」

 

デ「何だと?」

 

ロ「秘書官って皇帝付きの執事?」

 

フ「うん。それに気になる情報も入ってきたよ。妃殿下が病没した弟の子を自分の養子として迎えようとしているらしいって」

 

ロ「……たしか今のローランス皇帝は、前皇帝と別の女性の子だよね」

 

ト「そして妃殿下は、あの事件で自分の子と共謀して帝位を自分の直系に継がせようとした。秘書官はそれを忘れてはいないだろうね」

 

デ「ローランスのバックにはサイモンがいる。またあいつの仕業に違いない」

 

ロ「いいわ。あたしが処理する」

 

フ「受けるの?私たちの仇敵と言えるヤツからの依頼を、これはきっと罠よ」

 

ロ「忘れないで。あたし達の目的は復讐。そのためにどんな方法だって使ってきた。リスクを負わなきゃ団長の仇は取れない」

 

ト「頭領……」

 

フ「わかった。依頼を受けよう。依頼人とどう接触しようか?」

 

ロ「ペンドラゴの城に忍び込むよ」

 

ト「本気かい!?」

 

ロ「呼び出したって本当の依頼主はこないでしょ。代理人じゃ意味がない。奇襲をかけるんだ」

 

フ「わかった。城に行くならみんなを呼ばないと……」

 

ロ「……トル、フィル。二人は通常通りセキレイの羽の仕事を続けながら情報収集。この件はあたしとデゼルだけで行くよ」

 

ト「でも、頭領!」

 

ロ「表の仕事がちゃんと出来なきゃ、裏の仕事も上手くいかない。ハイランド、ローランス共に良好な関係を保つためにも大切な仕事。そんな大役を任せらるのは二人だけなんだ。お願い」

 

フ「……わかった。気を付けて、頭領」

 

二人が去る

 

デ「優しいんだな」

 

ロ「何が?」

 

デ「感じているんだろう?これから相手するやつのヤバさを。だから二人をペンドラゴから離れさせた」

 

ロ「相手はあのサイモンだ。あいつに対抗できるのはあたし達だけ」

 

デ「ああ。必ずあいつを地獄へ落としてやる!」

 

 

 

凱旋草海

ス「…………」

 

ア「スレイ、風の試練神殿を出てからずっとあんな感じだな」

 

ケ「おそらくロゼさんの事だろうね。言いたいことは伝えた。それでも彼女は復讐を止めない。万策尽きたといったところか」

 

ア「そんな、他人事みたいに!」

 

ケ「こういう時ほど冷静にならなくちゃならない。冷静にならなくちゃ、……やってられないんだ」

 

ア「ケイン……」

 

ラ「スレイさんは今すごく悩んでいますわ。現実から目を背けずに」

 

ミ「声をかけてやりたいが、なんて言えばいいか」

 

エ「なんだかチャラい匂いがするわ」

 

ラ「チャラい、ですか?」

 

ア「匂いなんてしませんが……」

 

ミ「そもそもチャラい匂いってなんなんだ」

 

ザビーダ「やっと来たか。待ちくだびれちゃったぜ」

 

ス「ザビーダ!」

 

ケ「ああ、なるほど。エドナちゃんの嗅覚も侮れないわね」

 

エ「今回ばかりは外れて欲しかったわ」

 

ミ「偶然……ってかんじじゃないね」

 

ザ「時間が惜しい。単調直入に言う。ロゼとデゼルが、今まさに復讐を実行しようとしている」

 

ス「なんだって!」

 

ザ「場所はペンドラゴ。行くなら急いだ方がいいぜ」

 

ケ「キミはボクらの敵じゃないのか。いいのかい、そんな情報を伝えて」

 

ザ「だから言ったろ。基本俺は誰とでもフレンドリーなの。で、どうするの?導師殿」

 

ス「ロゼとデゼルを止める。そして穢れを浄化する」

 

ラ「行きましょう。ロゼさんとデゼルさんが再びあの天族と会い見えたら、憎しみと怒りが抑えきれず、今度こそ憑魔になってしまうでしょう」

 

エ「今でも憑魔予備軍なんだから時間の問題ね」

 

ア「急ぎましょう」

 

ザ「ちょっと待った!俺も連れて行きな」

 

ミ「は?」

 

エ「どういう風の吹き回し?ふざけてるの?」

 

ザ「ふざけてないぜ。特に今回はな。どうせ目的は一緒なんだ。ここは手を組もうぜ」

 

ス「ダメって言っても勝手についてくるつもりだろ?」

 

ザ「もちろん」

 

ス「わかった。一緒に行こう」

 

ザ「そうと決まればさっさと行こうぜ」

 

ス「ロゼ、デゼル、無事でいてくれ」

 

 

 

ペンドラゴに入る

エ「やっと着いた」

 

ザ「すっかり遅くなっちまった。もう真夜中だぜ」

 

ミ「しかし、なんだこの異様な雰囲気は……」

 

ラ「強い領域を感じます。枢機卿の時と同じものです」

 

ケ「ということは、二人の仇だって言うサイモンと名乗る天族が動き出しているってことか」

 

ス「加護天族は戻っているのに、穢れがこんなに……」

 

ラ「それほど大きな穢れということなのでしょう。間違いなく災禍の顕主の配下の者ですわ」

 

ア「ライラ様、あそこ……」

 

ロゼとデゼルが戦っている

 

ス「ロゼ!」

 

ロ「スレイ!なぜここに!」

 

ルナール「くっくっく、よそ見している場合かなあ」

 

デ「ちい」

 

ス「ルナール!ってことは……」

 

ミ「やっぱりこいつも災禍の顕主と繋がっていたか」

 

ル「これはこれは導師様。相変わらず美味しそうだなあ」

 

ロ「ルナール、今日という今日はけじめをつけてやる」

 

ル「けじめ?ああ、あのクソみたいなギルドの掟か。誰があんなものに従うか」

 

デ「ふざけるな!風の傭兵団に、プラドに拾われた恩義を忘れたのか!」

 

ル「おお、怖い。いい目だなぁ!」

 

ロ「もはや会話は必要ない。やるしかないんだ、あたしが」

 

デ「今てめえにかける時間はない!速攻ケリつけてやるからとっとと来い!」

 

ス「やめろ!ロゼ!デゼル!」

 

ル「はっはぁ。いいねぇ。怒りと憎悪で溢れている!」

 

ル「やっぱり喰いたくてしょうがない!」

 

ア『フォエス=メイマ』

 

ア「ライラ様、浄化を!」

 

ラ「この者は自らの発する穢れが強すぎる……」

 

ミ「それじゃ、枢機卿の時と同じだっていうのか?」

 

ス「……くっ!」

 

ザ「やっぱり導師でもダメなのか。ここは俺が……」

 

領域がさらに強くなり、穢れがさらに多くなる。

 

ケ「なんだ?この感覚……」

 

エ「領域がさらに強くなった」

 

ミ「気をつけろ……まだ何かいる!」

 

サイモン「余計なことはしないでもらおうか」

 

サイモン、姿は現さず、声だけが響く。

 

デ「この声は……!」

 

ロ「サイモン!」

 

ル「うるさい!俺の邪魔しようってか?」

 

サ「キツネ。おまえの役目は彼らを誘う事であろう。余計なマネをしてあの方の怒りを買ったらどうしてくれる!」

 

ル「うっ」

 

ルナール、逃げる

 

ロ「待て!」

 

デ「サイモン、どこにいやがる!出て来い!」

 

ザ「ロゼ、デゼル、先走るな!おい」

 

ロゼ、デゼル、ザビーダ、街の内部に

 

ス「オレたちも――」

 

サ「……導師がこんなに早く来るとは予定外であったが利用させて貰おう」

 

ルナールがいっぱい出てくる

 

ス「わ!なんだこれ!」

 

ア「キツネ目がいっぱい……」

 

ラ「こんな術見たことないですわ」

 

エ「詮索は後よ。さっさと片づけるわ、ケイン」

 

ケ「了解」

 

『ハクディム=ユーバ』

 

エ「道を開けよ。晶石点睛!クリスタルタワー!」

 

神威ケイン、ルナールを蹴散らす

 

ミ「やったか……」

 

ケ「いやまだだ」

 

起き上がるルナール

 

ア「全然効いていない!?」

 

ケ「今の攻撃を受けても立ち上がってくる。異様に防御が固いのか、もしくは回復能力か。どちらにしても厄介な相手だね」

 

エ「ここはわたし達だけで十分。先へ行きなさい」

 

ラ「ですが……」

 

ケ「この大量のルナールの目的はおそらく時間稼ぎ。ならわざわざそれに付き合う必要はない。ボクたちが敵を食い止める。はやくロゼさんの所へ行け」

 

ス「エドナ、ケイン……」

 

ケ「ボク達なら大丈夫さ。片づけ次第すぐに行く。気をつけて」

 

ス「……わかった。ありがとう。ここは任せる」

 

ア「恩にきる」

 

ラ「行きましょう」

 

ミ「ああ。二人とも頼んだよ」

 

ケ「頼まれました」

 

スレイ、アリーシャ、ミクリオ、ライラ、ロゼを追いかける。

 

エ「で、対抗策はあるの?」

 

ケ「それはこっちの台詞さ。あるから足止め役を引き受けたんでしょ、エドナちゃん?」

 

エ「そんなものないわ。そういうの考えるのはあなたの仕事よ」

 

ケ「仕方ない、色々試してみるしかないか。エドナちゃんも一緒に考えてくれよ」

 

エ「足引っ張んるんじゃないわよ」

 

ケ「そっちこそね」

 

 

 

ロ「ルナール……」

 

デ「遊んでんじゃねえ!出て来い!」

 

サ「ふっふっふ。そう急ぐな。前座を楽しめ」

 

デ「ざけやがって!」

 

 

 

ミ「ライラ、気付いている?」

 

ラ「はい。この領域は穢れを持っていませんわ」

 

ス「前会った時もライラがサイモンは憑魔じゃないって言っていたけど……どうなってるんだ」

 

ラ「すみません。さっきの術といい、災禍の顕主の配下でありながら憑魔と化さない点といい、あの天族の事は分からないところばかりです」

 

ア「ライラ様でも分からない存在か……」

 

ス「ロゼとデゼルが危ない。急ごう!」

 

 

 

ロゼ、デゼル、ルナールに追いつく

ロ「ルナール!」

 

ル「ひぃ!」

 

デ「ちょこまか逃げ回りやがって……。もう逃がさねえぞ。サイモンはどこだ!?」

 

サ「吼えるなあ。私ならここにいる」

 

サイモン、姿を現す。

 

ロ「サイモン!」

 

サ「キツネ、ご苦労だった。今度は私の番だ。下がれ」

 

ル「ちっ」

 

ルナール、消える

 

サ「前座にしては有意義だった。娘よ。なかなか良い怒りだった。それが憎悪として芽吹けばあの方も喜ばれよう」

 

デ「待ちわびた……!」

 

サ「機は熟したろう?お互いにな」

 

ザ「待て、デゼル!こいつは憑魔じゃない!」

 

ロ「この日をずっと待ちわびてきたんだ。あの日からずっと……」

 

デ「てめえの命もここまでだ。ダチを憑魔にし、風の傭兵団を貶めたおまえは絶対殺す!」

 

ロゼ、デゼル、穢れが噴き出す

 

ザ「ちっ、また穢れが噴き出しやがった」

 

サ「いい。実にいい!最高のお膳立てではないか!」

 

サ「そして、この舞台の主役の登場だ」

 

ス「デゼル!ロゼ!やめるんだ!」

 

デ「うるさい!俺はこの時のためだけに生きてきた!」

 

サ「我が憎いのだろう。もっと怒れ、恨め、そしてその業に苦しめ」

 

ラ「挑発に乗ってはいけません。これは罠です」

 

ロ「なんだっていい。団長の仇がここにいる。理由はそれだけでいい」

 

デ「そうだ!貴様への復讐!そのために俺は全てをなげうつ!」

 

ア「二人を止めましょう」

 

ミ「同意だ!嫌な予感しかしない!」

 

ザ「待て。ここは俺が――」

 

サ「させぬよ」

 

サイモン、憑魔を出現させる。一行、サイモンが憑魔になったと勘違いする。

 

ラ「突然憑魔に!?なぜ……」

 

デ「やっと正体を現しやがったな!」

 

ロ「二人で挟み撃ちだ、デゼル!」

 

デ「おう」

 

ス「やめろ」

 

サ「貴様の相手はこっちだ」

 

ス「おまえ?どうして」

 

ア「スレイ!ロゼとデゼル様が……」

 

ス「わかってる!」

 

サ「ふっふっふ……」

 

サイモン、分身を出現させる。

 

ミ「今度はサイモンが増えた!?一体これはなんなんだ」

 

サ「私は他者の感覚に作用し、惑わすことが出来る」

 

ラ「では突然憑魔になったように見えたのも……」

 

サ「察しの通り、あの憑魔は本物だがな」

 

ザ「敵が多すぎる。これじゃあ、援護に回れねえ」

 

ア「私とライラ様が相手をします。スレイとミクリオ様は二人の元へ」

 

ス「わかった」

 

『フォエス=メイマ』

 

ラ「アリーシャさん、行きますよ」

 

ア「炎壁、推現!カラミティフレア!」

 

何体か消える

 

ア「やったか」

 

ラ「アリーシャさん、後ろ!」

 

ア「えっ」

 

ザ「くらえ!」

 

アリーシャの背後から強襲しようとした分身サイモンを、ザビーダが倒す。

 

ラ「ザビーダさん」

 

ザ「ぼさっとするな、まだまだ来るぞ」

 

ア「はい」

 

デ「絶対殺す!それこそが俺の存在理由!」

 

サ「よくこれ程に自己肯定の幻に溺れたものだ……」

 

デ「何を言ってやがる!」

 

サ「なんとも憐れだ。理解はできるがな」

 

サ「憑魔を殺したあと、その穢れがどうなるのか……」

 

サ「それでも思惑通りの術で復讐を成し遂げると?」

 

デ「うるせえ!」

 

ロ「はっ!薙鎌!刺宴!刺宴乱牙!」

 

憑魔、のけぞる。

 

ロ「ひるんだ!デゼルとどめを!」

 

ス「デゼル、やめるんだ!」

 

デ「そうはいくか!こいつはぶっ殺すんだ」

 

ミ「デゼル!」

 

サ「おっと、最後までやらせてやりたまえ」

 

ス「おまえは何が狙いなんだ!」

 

サ「導師、貴様は知るべきなのだ」

 

ス「何?」

 

サ「見せてやろう。『彼』という天族の業を……」

 

サ「彼は自分の力で正しく加護を与えていたにすぎない。だが天族の加護とは人にとって幸であるとは限らない」

 

デ「やっとだ!やっと貴様を殺せる!」

 

デ「死ねえ!」

 

憑魔に友人の顔が映しだされて、デゼルの手が止まる

 

デ「ラファーガ……」

 

サ「ほら、隙だらけだぞ」

 

デゼル、憑魔に体を貫かれる

 

デ「ぐわああああ」

 

ロ「デゼル!」

 

ラ「デゼルさん!」

 

ロ「このー!」

 

サ「その程度の攻撃、効かぬよ!」

 

ロ「うっ」

 

サ「お前もただの人の子。天族の力を借りなければただの無力なガキだ」

 

憑魔、穢れを発しながらロゼを体内に取り込む

 

ラ「いけません!このままではロゼさんが憑魔に……」

 

ス「ロゼ!デゼル!」

 

ス「どけぇー!!」

 

『ルズローシヴ=レレイ』

 

スレイ、相手にしている敵を一閃

 

サ「くっふっふ。さぁ、ここからだ導師。括目するのだな」

 

ス「やめろ!」

 

デ「ロ……ゼ……」

 

ア「デゼル様!……ひどいケガ……」

 

ラ「今回復を……」

 

ミ「デゼル!ここを動くな。いいね!」

 

 

 

ス「こいつ!」

 

ザ「スレイ、止めろ!」

 

ザ「ロゼのあの負傷!たとえ穢れを浄化しても負荷に耐える体力は残っていない」

 

ミ「しかし、このままだとロゼは完全に憑魔に……」

 

ス「あの怪我じゃその前に命が尽きてしまうわ」

 

サ「導師は時に決断を迫られる……そうだろう?決めたまえよ。憐れな道化の命も尽きるぞ?」

 

ラ「お黙りなさい!!」

 

ケイン、エドナ、合流。

 

ケ「これは……」

 

エ「この穢れ……何が起こっているの?」

 

デ「スレイ、いったん下がれ!俺に策がある!」

 

ラ「デゼルさん!?」

 

ス「わかった」

 

エ「ケイン」

 

ケ「ああ。ボク達が時間を稼ぐ。早くデゼル様の元へ」

 

ミ「恩にきる」

 

エドナが結界を張って時間稼ぎ。スレイとミクリオがデゼルのもとへ

 

サ「自棄を起こす事だけはやめてくれ、導師よ!それではせっかくここまで整った舞台が台無しだ」

 

デ「……スレイ、聞け」

 

ザ「傷が深い」

 

ラ「回復が間に合いません!」

 

ア「デゼル様、無理して話さないでください。これ以上は命にかかわります」

 

ザ「デゼル……」

 

デ「いいから聞け……憑魔と……ロゼの結びつきだけを……破壊するんだ」

 

ラ「たとえ導師であっても、そんな奇跡のようなこと……」

 

ス「できるわけがない……」

 

デ「……ザビーダ……アレを貸せ」

 

ザ「アレ?ジークフリートのことか」

 

デ「これは力を撃ち出すもんなんだろう?俺がその力になる。俺自身を攻撃として撃ち出せ」

 

ス「なんだって?」

 

ミ「いくらジークフリートでも、その怪我では耐え切れない!それはただの特攻だ!」

 

デ「……この一撃に俺のすべての天響術を込める。俺の残りの力を振り絞って、スレイの浄化の力を合わせれば、きっと取り込まれずに繋がりだけをぶっ潰せる」

 

ア「しかし、それではデゼル様が……」

 

デ「……俺にもロゼにももう時間はない……わかるだろう。スレイ、頼む」

 

ス「デゼル……」

 

ザ「本当にそれでいいんだな」

 

デ「ああ、俺はロゼを助けたい」

 

ザ「……わかった。スレイ、これには天響術を集めてできた弾丸が一発だけ残っている。それも使え」

 

ス「いいのか」

 

ザビーダ、頷く

 

デ「恩にきる。ザビーダ、スレイ、一つ頼まれてくれないか……」

 

ザ「なんだ?」

 

デ「ロゼを頼む……」

 

デゼルがジークフリートで己の頭を撃つ

 

ス「デゼル!」

 

デ「頼むぜ……しくじるなよ!」

 

スレイ、ジークフリートを構え、憑魔に向かって、デゼルを放つ。

 

ス「うわぁぁ!」

 

銃声。弾は憑魔を貫く。

 

 

 

ロゼとデゼルの二人だけの世界 この世ではないどこか

デ「ロゼ!ロゼ!」

 

ロ「う、ううん」

 

デ「よかった。無事か!」

 

ロ「で、デゼル!?」

 

デ「良かった!良かった!」

 

ロ「きゅ、急にどうしたの。確かあたしは憑魔に飲み込まれて……。そうだ、サイモンは!あいつはどこ行った!?」

 

デ「ロゼ、もういいんだ!俺はもうお前が傷つくところを見たくない!」

 

ロ「デゼル、何を言って……」

 

デ「俺はもうダメみたいだ。これからは側にいられない……」

 

ロ「えっ、ウソ、だよね……」

 

デ「お前も見ただろ?腹を貫かれた。おまけに天響術を振り絞って穢れを祓った。もう長くはもたない」

 

ロ「そんな……」

 

デ「ロゼ……。オレは謝らなきゃならん。俺のせいでおまえを……、おまえたちを暗殺者にしてしまった」

 

ロ「そんなの、デゼルのせいじゃないよ」

 

デ「ずっと考えていた。もしあの時、俺がロゼに声をかけなかったら、ロゼがこんなに苦しむことがなかったんじゃないかって……」

 

ロ「そんなことない!五年前のあの出来事で、あたし達はバラバラになってもおかしくなかったのに、風の骨、セキレイの羽としてまた一緒に旅ができた。嬉しかった。感謝してるよ、あたしは」

 

デ「ロゼ……」

 

ロ「苦しかった時、辛かった時、ずっとデゼルがいてくれた。デゼルがいたから、デゼルが抜け殻になっていたあたしを励ましてくれたから、今こうして生きているんだよ。あんたがいなくなったら、これからどうすれば……」

 

デ「大丈夫だ。おまえに風の傭兵団の家族がいる。一人じゃない」

 

デ「……俺は半端もんだ。結局、何も碌にできなかった。けど、たったひとつだけ。ちゃんと出来たよ。そのたったひとつをやり遂げられた事が本当に嬉しい」

 

デ「俺も……感謝してる。サンキュな」

 

ロ「デゼル、あたしは……」

 

デ「俺の代わりに復讐を、とは言わない。これからはおまえの自由だ。やりたいことがあるんだろ?なら思いっきりやって、なし遂げればいい。暗殺なんてしなくていい。復讐なんかに囚われなくてもいい。ありのままのロゼで生きいけばいいんだ」

 

ロ「あたしのやりたいこと……」

 

デ「おっと、もう時間みたいだ。スレイたちにもよろしく伝えといてくれ」

 

ロ「待って!結局あたしはデゼルに何も返せてない。まだ何も……」

 

デ「そんなもの、とっくにもらったよ。……俺を家族と呼んでくれて、ありがとう。……それだけで充分だ」

 

ロ「デゼル……。今まで守ってくれてありがとう」

 

デ「じゃあな。そのままでガンバレよ」

 

 

 

ス「ロゼ!」

 

ロ「……スレイ……」

 

ラ「良かった……」

 

ロ「デゼルは!?」

 

ア「それは……」

 

ス「デゼルはロゼを助けて、それで――」

 

ロ「そっか……」

 

ザ「ほらこれ」

 

ロ「デゼルの帽子……」

 

ス「ごめん。オレ、二人を助けるって言ったのに……」

 

ロ「スレイは悪くないよ……。あいつだって……、言ってた。スレイに感謝してるって」

 

ス「デゼルが……」

 

ロ「だから……ありがとう、スレイ、デゼル……」

 

気を失うロゼ

 

ス「ロゼ!」

 

ミ「大丈夫、気を失っただけだ」

 

ザ「穢れも感じない。浄化が上手くいったみたいだな。さすが導師、お前の力を見くびっていたぜ。……あいつの覚悟もな」

 

エ「とりあえず一安心ね」

 

サ「なぜだ……なぜ彼が人に受け入れられる……。ありえない……こんなことはあり得ない!」

 

ア「まだやる気か!」

 

サ「彼は疫病神だ。加護を与えれば与えるほど人を不幸にする害悪。……存在価値のない存在」

 

サ「疫病神が人間に感謝される?ありえない!私たちは闇の中で生きていくしかないのだ……」

 

ス「サイモン……」

 

サ「なぁ、導師。彼の死をどう思う?彼のように、人に惹かれるほど……、加護を与えれば与えるほど人を不幸にする天族は存在してはならないのだろうか。彼の存在自体が悪で滅されるべきなのだろうか」

 

ス「そんなワケない!」

 

サ「ならどうすればいいというのだ!私や彼のような疫病神は何を生きる糧にすればよいのか!穢れを消すことがお前たちの正義なら穢れを生みだす我らは悪であろう。なぜ彼の死を悔やむ」

 

ル「おい、何をしてやがる!ここは一旦引くぞ!」

 

サ「キツネ」

 

ル「ヘルダルフの期待を裏切る気か!」

 

サ「ヘルダルフ様……。あのお方はこんな私の手をとってくれた。主のお役に立つのが私の存在理由」

 

ルナール、サイモン消える

 

ス「待て!」

 

ケ「深追いはよせ、スレイくん」

 

ラ「ロゼさんを宿屋で休ませるのが先です」

 

ミ「スレイ、気持ちはわかるが……」

 

ス「わかった。ロゼを宿屋に運ぼう」

 

ザ「……デゼル、お前の気持ちは伝わった……。無駄死にさせないぜ」

 

ザビーダ、帽子を拾い上げる。

 




こんにちは、作者です。第二十話です。色々迷った結果、デゼル死亡ルートを選択しました。デゼルが生存し、ロゼと共に改心。導師と共に穢れなき世界を目指すというルートも確かにあったと思います。しかし、そのルートでは改心をうまく描く事出来ませんでした。穢れに対する方法は殺ししかないと思い込んでいる二人は、導師スレイとは真逆の存在。おいそれと仲間になる図がどうしても頭に浮かばなかった。改心には劇薬が必要。そう判断してこのルートを選びました。デゼルが生存した世界を描けなかった私の力量不足をひしひしと痛感していますが、せめてもの報いとして、ロゼとデゼル、二人にとってもハッピーエンドな作品を目指していこうと思います。長々と失礼しました。ではまた、第二十一話で会いましょう。
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