俺が考えたアリーシャヒロインのゼスティリア   作:具志健

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刻遺の語り部メ―ヴィンの力を借りて、石碑に刻まれた『災厄の始まり』の記録を体験する導師一行。


第二十三話 災厄の始まりと導師の答え

石碑の記録 十数年前 カムラン

ス「……どうなったんだ?」

 

ロ「どこここ?見た事無いとこなんだけど……」

 

ミ「『災厄の始まり』を体験しているんだ。つまりここは……」

 

ス「始まりの村カムランか!」

 

ア「あそこに誰かいるぞ」

 

ケ「人が集まってるね。何かあったのかな?」

 

ザ「行ってみようぜ」

 

エ「反対の反対」

 

ラ「…………」

 

 

 

ミケル「将軍……こんな生活をいつまで続けさせるつもりだ」

 

「ハイランドの侵攻から守っているのだ。むしろ感謝して欲しいのだがな。導師よ」

 

ス「え!?この人が先代の導師!」

 

ミューズ「あなた方が来てからの半年……こんなのは守ってるなんて言いません!軟禁です!」

 

村人男「それにハイランド王国が動き出したのも、あんた達ローランス軍がこの村を接収したからだろう!」

 

ア「聞こえてないみたいですね」

 

ラ「これはあくまで石碑に刻まれている記憶が見せてるものですもの」

 

ロ「なんだか不思議な感じ……」

 

ザ「それにこの男……」

 

エ「この出で立ち、似ているわね」

 

ミ「まさか、こいつがあのヘルダルフなのか!?」

 

ヘルダルフ「……この村の戦略的価値を導師の興した村というだけで看過できはしない。それはどの国でも同じ事よ」

 

ミケル「時間の問題だったと?」

 

ヘ「ハイランドの台頭ぶりを思えばな」

 

ミケル「……もういい。行ってくれ」

 

ヘルダルフ去る

 

村人男「ミケル様!いいんですか!このままで!あいつら、マオテラス様の神殿まで砦みたいにしちまったんですよ!どれだけ天族を冒涜すれば気が済むんだ!」

 

ミューズ「兄さん……」

 

ミケル「ミューズ、案ずるな。カムランは確かにハイランド、ローランス両国にとって重要な位置にある。ここを抑えたら両国とも自在に首都に兵を進められる。彼らもないがしろにはしないはずだ」

 

村人男B「信じるんですか?あの将軍の言葉を!」

 

ミケル「彼らがどうであれ、私たちが信じるのを忘れてはいけません。先祖代々導師が守り継いでいた村を滅ぼさせはしない。導師の我が身が朽ちようとも、みなは私が守る。必ず……」

 

ス「始まりの村はヘルダルフに接収されたんだな」

 

ラ「そして戦禍に巻き込まれていったんです」

 

ロ「まぁでも、確かに放っとく訳ないよね」

 

ミ「これじゃマオテラスに悪意を向けてるも同然だな。加護が失われて当然だ。まだ先はあるだろう。神殿の方に向かおう」

 

 

 

村人女「ローランスはミケル様がマオテラス様を連れ出した事に気付いているんじゃ……」

 

村人男A「いや、ローランスとしてはハイランドへの牽制の意味の方が強い。開戦の名目が欲しいんだろう」

 

村人男B「バカげてる……」

 

エ「まったくだわ。でもそれが人間」

 

ザ「んだな。これだけはいつの時代もかわらないねぇ」

 

ア「マオテラス様を持ちだしたのは先代の導師様だったのか。どうしてそんな事を……」

 

ラ「戦争による穢れを危惧した導師ミケルは、保護する目的でカムランに器を移転したのですわ」

 

ケ「そうだったのか……。しかしこれでは……」

 

ラ「…………」

 

 

 

村人男A「おい、聞いたか!導師様の話だと、神殿が穢されて、村の加護がなくなりつつあるって……」

 

村人女A「……まさかマオテラス様が憑魔に!?」

 

村人男B[導師様を信じよう。命に代えてもそれだけは阻止すると言ってくださってる]

 

村人男A「……けどよ。導師様を失うぐらいなら、いっそみんなで疎開した方がいいのかもしれないぜ」

 

ラ「ミケル様にそんな事ができるわけがありませんわ……」

 

ス「ああ。導師だからね。マオテラスを穢れのさなか置き去りになんて考えもしないと思う」

 

ラ「スレイさん……」

 

 

 

ヘ「こんな片田舎の村がハイランド制圧の足かがりになるのなら、導師なぞにいくら疎まれても安いものよ」

 

兵士A「で、伝令、伝令~」

 

ヘ「何ごとだ?」

 

兵士A「敵の襲撃です!ハイランド軍のようです。大軍を引き連れこちらに迫っています」

 

ヘ「……なかなかに釣られぬものよ。兵をまとめろ。撤収する」

 

兵士A「反撃しないのですか?」

 

ヘ「こんな田舎での小競り合いに兵を失えと?愚の骨頂よ。こちらの兵はまだ整っておらん。来る時まで力を蓄える。カムランはそのための捨石よ」

 

兵士B「こうなってはこの村はただのゴミクズってことだ。撤収するぞ!伝令急げ!」

 

ア「ありえない!村の人たちの幸せをなんだと思ってるんだ!それでも民を導く為政者か」

 

ミ「この村が滅びたのはこんなくだらない理由だったのか……!」

 

ス「くっ!」

 

 

 

ハイランド兵が村人を襲う。

村人「ひぃ、助けてくれ!」

 

ハイランド兵「しねえ!ローランスのスパイども」

 

ハイランド兵「殺せ!こいつらはローランスに加担していた導師の仲間だ」

 

ス「やめろー!!」

 

ラ「スレイさん……」

 

ミ「干渉できないのがより虚しさを強めるよ……」

 

ミケル「こ、これは……。まさかハイランドが攻めてきたのか……。ヘルダルフは何をしているんだ!!」

 

村人「……ヘルダルフは……村を捨てて逃げ…た……」

 

ミケル「何だって!」

 

ミケル「どうしてこんな事に……」

 

村人「導師様、ミューズ様が神殿に!」

 

ミケル「なんだって!?」

 

村人「ローランス軍に救助を求めに……」

 

ミケル「けどヘルダルフはもう逃げてる!」

 

ライラ「ここは私にお任せを。ミケルさんは神殿へ」

 

ス「ライラ!?」

 

ア「しかしライラ様ならここに……」

 

ラ「これは石碑の記憶。あの者は昔の私ですわ。ミケルさんの主神だったころの私……」

 

ミケル「ああ。わかった」

 

ミケル「ミューズ無事でいてくれ!」

 

ス「神殿に急ごう!」

 

ミ「ああ」

 

ラ「お待ちください。同じ導師という立場からスレイさんがあのお方に感情移入することはわかりますわ。ですが、メ―ヴィンさんの言葉を思い出してください」

 

エ「これは昔の記憶。ワタシたちがどうあがいたって過去は変えられないわ。……悔しいけど」

 

ザ「こういう時ほど冷静に、だろ」

 

ス「…………」

 

ラ「ミクリオさんも」

 

ミ「……すまない。ただ……」

 

ス「結末に嫌な予感しかしないんだ」

 

ス「……それでも見届けなきゃいけないんだろ?」

 

ラ「はい」

 

ラ「……行きましょう。もうすぐ全てわかりますわ」

 

 

 

祭壇

ミューズ「いやー!!」

 

ミケル「ミューズ!大丈夫か!」

 

ミューズ「あの子が!あの子が!!」

 

ミューズ「ミクリオがまだ火の中に……」

 

ス「ミクリオだって!?」

 

ア「まさかあの赤子がミクリオ様……」

 

ミ「…………」

 

ミケル、ミクリオを火の海から助け出す。

 

ミケル「生きている……生きているが……これではいずれ……」

 

ミケル「全てが失われた……。マオテラスが憑魔と化し、この子ももう……。一人の男のくだらぬ野心のせいで……」

 

ミューズ「兄さん?」

 

祭壇に向かって歩き出すミケル。ライラ、祭壇に到着

 

ライラ「これは……まさかマオテラス様が憑魔に……。間に合わなかった……」

 

ミケル「もうおしまいだ……。私にはもう何もない。愛すべき村の人々も……可愛い甥も……祈りを捧げるマオテラスも……。いっそのことこの世界なんて消えてしまえばいい……」

 

ミューズ「待って……」

 

ミューズ「やめて、お願い!兄さ~ん!!」

 

ライラ「いけません!それは禁術です!!」

 

ミケル「この災厄をもたらした者に……『永遠の孤独』を!」

 

ライラ「ミケルさん!」

 

ミケル、禁術発動。あたりは真っ暗に。

 

ミケル「ヘルダルフ……自らが生み出した地獄を背負え……。永遠に、な」

 

 

 

同刻某所

ハイランド兵「止まれ!」

 

ヘルダルフ「ちっ、もうカムランは落とされたか。導師も大したことないな」

 

ヘルダルフに落雷が落ちる

 

ローランス兵士「落雷だと?!将軍!」

 

ヘ「ぬ……」

 

ハイランド兵「ヘルダルフ!覚悟!」

 

ハイランド兵、ヘルダルフに斬りかかる。

 

ヘ「ぐはっ!」

 

効かない

 

ハイランド兵「な、何だとっ!?」

 

ヘ「効かぬ!獅子戦吼!!」

 

ヘ「ぐ、う……」

 

ハイランド兵「なんだ、この強さは……」

 

ハイランド兵「見ろ、あれを。ヘルダルフが……」

 

ローランス兵「将軍、お怪我はあり――、そ、そのお姿は一体……」

 

ヘルダルフ、災禍の顕主の姿に

 

ハイランド兵「く、来るな!化け物!!」

 

ヘ「ふん!」

 

ハイランド兵「ぐわああ」

 

ヘ「くっ、た、いしたことないやつらだ」

 

ローランス兵「将軍……、その力は一体……」

 

ローランス兵「に、逃げろー、将軍がバケモノに!殺されるぞ!」

 

ヘ「な、なぜ逃げる、おまえ、たち。ぐふ。ワシはお前たちの将軍だ、ぞ……」

 

 

 

ス「……」

 

ミ「……」

 

ザ「んなるほどなぁ」

 

エ「ひげネコは憑魔になったんじゃない。憑魔にさせられたのね」

 

ラ「……しかも最凶の呪詛をかけられた者として」

 

ケ「自業自得な部分もあるけど、こんな結末だったとは……」

 

ア「悲しい出来事だったな……」

 

ロ「そんで、それをやったのが先代導師、か……」

 

ミ「それじゃ僕は……」

 

 

 

ロ「ここは……広場辺り?」

 

エ「終わらないのはまだ先があるってことね」

 

ミ「……まだあるのか」

 

ス「ミクリオ……」

 

ザ「そろそろ全部だろ?ちゃっちゃと見て戻ろうじゃないの。な?」

 

エ「誰か来たわ」

 

ス「あれは!?」

 

ミ「ジイジ!それにイズチのみんなも!」

 

 

 

村の入り口

ジイジ「なんということじゃ……」

 

カイム「穢れがひどくて気分が悪くなってきた……」

 

ジイジ「このあり得ない程の強大な穢れは、やはり……」

 

マイセン「……ではマオテラスが……」

 

ジイジ「皆の者、村人の救助に当たれ。穢れが強いところは無理をするな。憑魔になっては元も子もない。必ず二人一組で行動するのじゃ」

 

「はい!」

 

倒れている女を見つけてジイジが近づく

 

ジイジ「この災厄が影響して早産となったのであろうか。母も子も報われんのう……」

 

赤ちゃんを抱きしめる

 

ジイジ「……これも縁か」

 

術をかける

 

カイム「人間の子ですよ!」

 

ジイジ「この世に生まれ落ちた瞬間にあるのは器の差だけの事よ」

 

マイセン「ですが、これほどの未熟児……持って数ヶ月では……」

 

ジイジ「……かもしれんのう」

 

ミューズ「ゼンライ様……!」

 

ジ「おお、ミューズ。それにライラか。何が起きた?」

 

ラ「…………」

 

ミューズ「詳しい話をしている時間はありません。穢れがイズチに流れる前に封じなければ……。その子は……?」

 

ミューズ「セレンの……?身籠っていたなんて……」

 

ジイジ「マオテラスをこの地に縛るため……イズチへの道を封ずる人柱になる気じゃな。だがの。大地を器とするマオテラスじゃ。ここに留める事はできても、それは気休めに過ぎん」

 

ミューズ「それでもこれは人間の……私たちが招いた事ですから」

 

ジイジ「導師は?」

 

ラ「わたしがいけないんです。主神であるわたしがついていながら、ミケルさんは……」

 

ジイジ「ライラ一人の責任ではない。そう気を病むな」

 

ラ「しかし……」

 

マイセン「導師……ついに絶えてしまうのか」

 

ジイジ「かもしれん……が、縁が希望を繋いだのう」

 

ミューズ「その子たちを導師と陪神となるよう育てると仰るのですか?」

 

ジイジ「人と天族の赤子が共に成長すれば……あるいはの。全てはこの子ら次第の事。希望……確かに預かった」

 

ス・ミ「ジイジ……」

 

ジイジ「ワシはこの子たちを大切に育てる。ライラ、お前は祭壇に戻り次の導師が現れるその時まで待つのじゃ」

 

ラ「しかし、わたしは導師であるミケルさんを……」

 

ジイジ「責任を感じているのは分かっておる。自分に自信がないのもな。だが、だからこそその反省を生かして、導師を導いてやってくれないか。こんな時にこんな事を言うのは、酷かもしれんが……」

 

ラ「ゼンライ様……」

 

ジイジ「今はまだ迷いがあるだろう。しかし、迷い苦しみながらも、それを乗り越えた先には必ず光がある。ワシらと共にもうひと頑張りしてくれんか」

 

ラ「……わかりましたわ。導師を正しき道へ導きます。今度こそ必ず」

 

ミューズ「ありがとうございます。ゼンライ様、ライラ様。さようなら、ミクリオ……私の坊や」

 

 

 

現代 ローグリン 石碑前

ス「ジイジ……」

 

ロ「スレイはあの村の生き残りだったんだ」

 

ザ「んで、ミク坊は奉じられて天族になったんだな」

 

ラ「すみません……。知っていたのにお話しできなくて」

 

ス「先代の導師やヘルダルフ、昔のライラの事が少しだけわかった気がする」

 

ミ「そしてボクたちのルーツもね」

 

ア「ミクリオ様……」

 

エ「泣いてもいいけど?」

 

ミ「泣く訳ないだろう。驚いたけど悲しいわけじゃない。マオテラスの居場所もわかった。あとはどんな答えを出すかだ」

 

ス「ああ」

 

ケ「で、答えは出たのかい?」

 

ス「どうしたいかは決まった。それが答えって言えるのかはわからないけど」

 

ラ「……では、メ―ヴィンさんにも聞いていただきましょう」

 

メ「で、どうだった?」

 

ス「……誰が悪いってくくれないけど、誰も正しくなかった、そう感じたよ」

 

メ「そうか。それがわかりゃいい。あとは……答えだ」

 

ラ「聞かせてください。スレイさんの答えを」

 

ス「……オレ、ヘルダルフを救いたい。オレが導師だから災禍の顕主を鎮めるんじゃなくて、先代の導師ミケルの後始末でもなくて、やっぱさ、穢れて憑魔になった天族は救うのに、穢れのせいで不幸になった人は自分の責任って放っとくの、なんか違うと思うんだ」

 

ラ「それが、スレイさんの……」

 

ス「答えになってるのかな」

 

ミ「……ヘルダルフのような人間はいくらでもいる。あの事件では全て悪い方向に繋がっていっただけだ」

 

ケ「……過去にあんな事があったとしも、それが今、酷い事していいってワケないと思うけど?」

 

ス「ああ。それは許せないよ、確かに。絶対止める」

 

メ「その上でヤツを救うってか」

 

ス「人と天族、両方とも幸せにするには、ヘルダルフみたいに憑魔にさせられた人も救えないとな!」

 

ミ「そうか……君は……」

 

エ「本当にバカね」

 

ロ「ん!そういえばスレイはこんなヤツだった!」

 

ラ「……はい。スレイさんはこんな方です」

 

ザ「そういうことらしいぜ?刻遺の?」

 

メ「あいつにとっての救い……そりゃ……孤独を終わらせる事だ。この意味がわかってるのか」

 

ス「……命を絶つって事かもしれないな」

 

ア「スレイ……」

 

ラ「……できますの?スレイさん」

 

メ「だな……重要なのは答えよりもむしろそっちだ」

 

ラ「はい。重要なのはもう迷わないか……。いえ、自分の導いた答えを信じぬき、それに至れるかですわ」

 

メ「そのために何が起きようが、どんな事になろうとも、な」

 

ミ「僕たちの天響術をジークフリートに込めて、それを放てば……」

 

メ「ないな。いくら天響術を込めて、ライラの浄化の力を合わせても、そんな生ぬるい方法でヘルダルフほどの穢れが祓えるものか。経験したろう」

 

ア「それでは!」

 

メ「ではどうすればいいか。わかっているだろう」

 

エ「ワタシ達自身が意志ある攻撃になるしかない」

 

ロ「……デゼルがやったっていう……」

 

ア「それでは、ライラ様たちが命を落としてしまいます」

 

ス「それじゃあ意味ないよ!」

 

メ「お前らは命を秤に乗せられると、途端に揺らいでしまう。仲間の命ならなおさらな。だがそのせいで迷い、迷って出した答えで失敗したら、二度と立ち上がれないだろう。それじゃ美徳が悪徳に変わっちまう」

 

ミ「…………」

 

ラ「ですが、信じた答えに殉じれば、もし失敗しても必ず再び立てます。恐れるべきは失敗ではありません。失敗を恐れ、答えを信じられない事ですわ」

 

ス「ライラ……」

 

ラ「さあ、スレイさん!」

 

ス「…………」

 

メ「……ライラ。残念だったな。こいつらわかっちゃいないみたいだ。無駄だったな……全て……」

 

ラ「いえ……もう少しですわ。時に自分の無力に怒りを覚えても、時に仲間を失って悲しんでも、道を惑わそうとする悪意に見えても、怒りから穢れに飲み込まれそうになっても、ちゃんとスレイさん達は自分たちのままここまで来たのです。みんなでここまで」

 

メ「たいした女だ」

 

エ「言っとくわ。ワタシは後悔したくないし、させたくもない」

 

ザ「スレイ。マヒしちゃったん?憑魔とやりあってるかぎり基本、命がけだろ?今更じゃね?」

 

ス「エドナ……ザビーダ……」

 

ミ「スレイ、レディレイクで僕が言った事、覚えてるか?僕は足手まといになるためについてきたんじゃない。そう言ったよな。改めて言った方がいいかい?」

 

ス「……いいや」

 

ラ「導師スレイが信じる答えはきっと災厄の時代に終焉をもたらしますわ」

 

ミ「さぁ、僕たちにも見せてくれ」

 

ア「スレイ、私たちがみんなの気持ちに応えよう。迷わずキミの答えを聞かせてくれ」

 

ケ「ボクは誰かが死んで誰かを助けてハッピーエンド、なんてシナリオ求めていないから。どっちも救う。そうだろ、スレイくん」

 

ロ「アタシを説得した時の強気のスレイはどこ行った?これじゃあ信じてついてきたアタシがバカみたいじゃん。男見せろよ」

 

ス「みんな……」

 

メ「……いい仲間じゃないか」

 

ス「ああ」

 

メ「スレイ、改めて答えを教えてくれないか」

 

ス「俺はヘルダルフを永遠の孤独から救い出す。もちろんみんなを犠牲にせずに。マオテラスはヘルダルフに憑いているんだろ?マオテラスはグリンウッド大陸を加護している天族だ。たとえヘルダルフの穢れに侵されても、直後にマオテラスに大陸全体の加護をお願いすれば、みんな憑魔にならずに済むんじゃないかな」

 

ラ「スレイさん……」

 

メ「それがお前の答えか。失敗して命を落とすかもしないんだぞ」

 

ス「失敗はしない、絶対に。必ずヘルダルフもマオテラスも浄化する。これが答えだ。だからみんな、オレに力を貸してくれ」

 

ラ「もちろんですわ」

 

ザ「よく言った、スレイ」

 

エ「元々そのつもりよ」

 

ミ「スレイ、一緒に世界を救おう」

 

ス「おう!」

 

メ「……あの一瞬でここまで思いつくとはな。予想以上だ」

 

ス「オレ一人の力で考え着いた答えじゃない。みんなのおかげだ」

 

メ「みんなのおかげ、か……。そのみんなの中に、俺の教え子がいるのは、これまた運命か」

 

ケ「師匠……」

 

メ「俺の役割はこれで終わりだ。後はこの街と共にのんびり生きるとするよ」

 

ラ「メ―ヴィンさん……ごめんなさい」

 

エ「あなたもバカね」

 

メ「違いない……だが後悔はない」

 

ス「どうしたんだ?何言ってるんだ」

 

ケ「師匠?」

 

メ「禁忌を犯したからな……」

 

ザ「誓約で得た特別な力はそれを破れば消え失せる……そういうこった」

 

メ「語り部としての俺の役割は終わった。これからは天族として、この石碑を守りながら生きていかなくちゃならない。もちろん、ここを離れることもなく、永遠とだ」

 

ケ「それではこれまでのように遺跡調査は……」

 

メ「そんな顔をするな、ケイン。元々そういう決まりなんだ。本来語り部はローグリンから動けない。それを誓約を結んで外を出歩いていたんだ……。仕方のないことよ」

 

ア「そこまでして、なぜこんなことを」

 

メ「さあな。俺は長い間一人だったからな。人恋しかったのかもしれない……。誓約に縛られる俺に、家族なんて作れる筈ないのにな」

 

ミ「それじゃ最初から……」

 

メ「……ライラを責めるなよ。お前らのためにこれが正しいと信じたんだ……」

 

メ「俺も……自分で決めた……」

 

ス「オレも信じるよ。自分の答え……仲間を。そのためにやらなきゃいけない事を迷わない……後悔しないために!」

 

メ「俺も信じているよ。お前たちが災厄の時代を終わらせることを」

 

エ「雰囲気出し過ぎ。あなたも死ぬわけじゃないんでしょ。そんなにしおらしくしないで」

 

メ「はっはっは。その通りだな。スレイ、この街の加護、俺に任せてくれないか。この塔全体を器としてこの街を守っていきたいんだ」

 

ス「助かるよ。ありがとう、メ―ヴィン」

 

ケ「師匠……、ボクは……」

 

メ「……すまない。ケインと二人で話したい。席を外してもらえないか」

 

ザ「わかったよ。行こうぜ」

 

ス「メ―ヴィン、本当にありがとう」

 

メ「おう。頑張れよ」

 

 

 

メ「さてと、こうやった二人で話すのも久しぶりだな」

 

ケ「まさかあなたがここまで知っているとは……、必死に世界中の遺跡を走り回っていたのがバカらしいですよ」

 

メ「そう言うなって。……色々学ぶことがあっただろう」

 

ケ「はい。自分の見聞が広がりました。師匠のおかげです」

 

メ「お前自身が考え、学んだ事はお前だけの財産だ。大切にしろよ」

 

ケ「師匠、エドナちゃんが言っていたこと、もう忘れたんですか?」

 

メ「忘れてはおらんよ。これは言わば卒業試験だ。お前は立派な考古学者になった。俺が保証する」

 

ケ「師匠……。今までありがとうございました!」

 

メ「息子が出来たみたいで楽しかったぞ、ケイン」

 

ケ「世界中を回ってまたここに戻ってきます。旅の思い出と師匠を越える遺跡調査の成果をお土産に」

 

メ「俺を越える、か。大きく出たな」

 

ケ「たまには親孝行でも、と思いましてね」

 

メ「そうか……、俺にもいたんだな、大切な家族が、こんな近くに……」

 

ケ「何を言っているんですか、父さん……。……当たり前じゃないですか。息子の前で、そんな悲しい事言わないでください」

 

メ「お前ってやつは……。……楽しみにしているぞ、我が息子よ」

 

ケ「みんなを待たせています。もう行きますね」

 

メ「ああ。よろしく伝えておいてくれ」

 

ケ「はい」

 

 

 

ケ「すまない。待たせたね」

 

ア「もういいのか?」

 

ケ「ああ。また会いに来る約束をした。その時にでもゆっくり話すさ。今はやる事がある」

 

ス「だな。それじゃあ出発しようか」

 

ロ「カムランだね」

 

ス「ああ。マオテラスはそこにまだ居るはずだ」

 

ミ「とにかく、まずはイズチへ」

 

ス「カムランへ通じる道があるはずだ。村が崩壊した直後にジイジが駆けつけてたし」

 

ア「やはりカムランはイズチの近くだったのか」

 

ザ「やはり?」

 

ア「スレイと初めて出会った時、私はカムランを捜していたのです。マルトラン師匠があそこにある可能性が高いと」

 

エ「今思うと、うさんくさいわね」

 

ケ「マルトランさんはヘルダルフの配下。ヘルダルフもイズチの近くにあるという事はわかっているみたいだね」

 

ミ「おそらくね。それだとハイランドとローランスとって戦略的に重要という条件にも合う」

 

ザ「ま、そうだろうな。ただしカムランへの道は封じられてるみてえだが」

 

ミ「……僕の母によってね」

 

ア「ミクリオ様……」

 

エ「泣いても――」

 

ミ「泣かないって言ってるだろう!」

 

エ「ならいいのよ。ミボは声出し部長なんだから元気だしなさい」

 

ミ「そんな役職についた覚えはない!」

 

ス「ミクリオも大丈夫そうだな」

 

ラ「……いよいよ決戦ですわね」

 

エ「終わらせましょ」

 

ザ「だな」

 

ケ「行ってくるよ、師匠」

 

ケインは決意を胸に、ローグリンを後にした。




こんにちは、作者です。第二十三話です。突然息絶える原作メ―ヴィンに対して、不思議と何の感情を持つことが出来ませんでした。スレイも一言二言話をしただけだし、ロゼとメ―ヴィンとの関係もイマイチわからないまま。パーティキャラの中に彼と深いかかわりを持っているキャラがいなかったのが原因なのかなと。なので、当作はオリキャラであるケインをメ―ヴィンの弟子として描きました。当作はスレイ主人公の物語ということで、彼らの師弟関係の描写が雀の涙ほどしかありませんでしたが、機会があれば、外伝としてケインの過去の話も描きたいですね。……機会があればね。ではまた、第二十四話で会いましょう。
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