キャメロット大陸橋
ザワザワザワザワ
エ「やたら騒がしいわね」
ミ「前通った時より人が多くなっているような……」
ス「どうしたんだろう?行ってみよう」
「おい、聞いたか!また戦争だってよ!」
「ああ。今度はローランスもハイランドも本気だ。すげえ衝突になるって話だ」
「戦場はまたグレイブガント盆地あたりか」
「こうしちゃいられねぇ!」
「ああ、食材に武器!」
「薬に、棺桶!稼ぎ時だな!」
ス「本気の戦争……!?」
ス「まずい!前以上に穢れが集まったら!」
ラ「それこそが狙いなのでしょう」
ザ「ヘルダルフの……か」
ケ「ハイランドにはマルトランさんが、ローランスにはサイモンがいる。兵を煽れば、戦争を引き起こす事は容易だろうね」
ア「マルトラン師匠……」
ス「グレイブガント盆地へ急ごう。戦争を止めなきゃ」
グレイブガント盆地 ローランス陣営
物陰で様子を伺う。
「青嵐騎士団の被害報告!負傷118!死亡30!」
「衛生兵!包帯が足らんぞ!」
「気をつけろ……人間と思えない力を持った女騎士が……」
「伝令!敵部隊に死傷約50を与たり!」
ケ「くっ……」
ア「間に合わなかったか」
ス「…………」
ミ「決着したのか?」
ザ「冗談だろ」
ラ「多分、先発部隊の小競り合いでしょう」
ロ「両国の本隊同士の衝突ならこの程度で済むはずないもんね」
ス「この程度って……」
「白皇騎士団はまだか!」
「ラストンベルの避難誘導に手間取っている模様です!」
「くっ!そんな場合かっ!」
ラ「スレイさん、このままここにいても」
ロ「白皇騎士団がラストンベルにいるって」
ミ「セルゲイに会ってみよう」
ス「そうだな……」
ヴァーグラン森林
トル「と、頭領……」
ロ「トル!」
ア「ひどいケガ……」
ケ「大丈夫か。肩を貸すよ」
トル「ありがとう……」
ロ「何があったの、トル」
トル「みんなが……ペンドラゴで捕まっちゃった。枢機卿の暗殺の容疑……僕たちがハイランドに頼まれてやったって」
ロ「なんで?アレはあたしが勝手に――」
トル「ルナールが帝国に持ちかけたんだ。そういうことにすればいいって」
ミ「なるほど。帝国は開戦の大義名分を探していただろうからね」
ラ「枢機卿の暗殺をハイランドが謀ったことにできれば」
ザ「十分すぎるな」
ア「くっ……。ハイランドもローランスもそこまでして戦争がしたいのか」
トル「ルナールに罠を張られて……エギールが盾になって僕だけ……。ごめん……逃げるのが精一杯だった」
ロ「覚悟はしてた……そういう仕事だから。けど……」
ス「行ってもいいよ、ロゼ」
ロ「でも、止めないとヤバイじゃない、戦争」
ミ「けど、大義名分を得たらやることは決まってる」
ザ「証拠隠滅だわな」
エ「放っとけないんでしょ。どうせ」
ラ「家族は大切ですもの」
ロ「いいの、私を信じて。前みたいに穢れにまみれて、人を殺してしまうかもしれない……」
ス「ロゼはそんな事しない。もうロゼは誰かを失う事でどんなに大きな悲しみを生むかを知っていると思うから。オレはロゼを信じる」
ロ「スレイ……」
ケ「彼らはちゃんと法に則って処罰されるべきだ。戦争のごだごだで勝手に処罰されては困る」
ア「行っておいで、ロゼ」
ロ「ケイン……アリーシャ。ありがと!行ってくる!」
ロゼ、ペンドラゴへ
ラ「私たちは、どうします?風の骨救出と戦争」
ザ「どっちもなんとかしなきゃだが、体はひとつ」
ケ「時間がない。ローランス側はボクが抑える。それに……遅れているというラストンベルの避難状況も気になる」
ミ「そうか。確かラストンベルはケインの故郷……」
ス「任せていいんだな」
ケ「ああ」
ア「私はハイランド陣営に行こうと思う。マルトラン師匠と話をしたい……」
ラ「アリーシャさん……」
ス「オレも一緒に行くよ。水の試練神殿で言っただろ?マルトランさんを穢れから救い出すって」
エ「その方が得策ね」
ケ「相手はあのマルトランさんだ。一筋縄にはいかない。人手は多い方がいいだろう」
ア「ありがとう、スレイ」
ケ「じゃあボクもいくよ」
ラ「ケインさんもお気をつけて」
ケ「そっちこそ」
ケイン、ラストンベルへ。
ミ「ロゼにケイン……。一人で行かせて大丈夫だっただろうか」
ザ「あいつらのことだ。そう簡単にはくたばらないだろう」
ラ「スレイさん、アリーシャさん。今は目の前の事に集中しましょう。二人を信じて」
ス「うん」
ア「迂回してハイランド陣営へ向かいましょう。そこにマルトラン師匠がいるはずです」
フォルクエン丘陵
ミ「だいぶ進んできたな」
エ「もうすぐハイランドの陣営ね」
ア「こうしている間にも多くの兵が戦争で……」
ザ「アリーシャちゃん、焦りは禁物だ。緊急事態ほど特にな」
ア「わかっています。ですが……」
ス「アリーシャ……」
ラ「スレイさん!あそこ……」
ア「マルトラン師匠……」
ミ「ひとまず身を隠そう」
マルトラン「現状を報告しろ」
兵士「はっ!敵の先発部隊を強襲。壊滅的ダメージを与えた模様。自軍の圧倒的戦闘力に相手方は浮足立っているとのこと」
マ「こちらが優勢か。私が直々に相手をしてやった甲斐があったな。全軍に次ぐ。総攻撃の準備急げ!勅命が下り次第、総力をもってローランス軍を殲滅する!ハイランドに勝利をもたらすのだ!」
兵士「は!」
マ「かくれんぼは楽しいか、アリーシャ。わざわざここまで出迎えに来たのだ。出てこい」
ア「師匠……」
エ「私たちに気付いていたのね」
ザ「恐ろしい女だ」
ア「マルトラン師匠……。なぜ戦争を進めるのですか!このままでは双方ともに大勢の死者が出ます」
マ「なぜ、だと。二度も言わせるな。私が信じる理想のためだ」
ア「……………」
マ「……来い。ここでは人目につく。決着をつけよう、アリーシャ」
ア「戦うしかないのか……師匠と」
ス「アリーシャ……」
ア「大丈夫だ。さあ師匠の後を追おう」
エ「あの子、相当無理してるわね」
ミ「当然だ。自分の師と戦うことになるかもしれないんだから……」
ミ「ライラ、マルトランはなんの憑魔なんだ?」
ラ「それが……正体が見えないのです」
ミ「わかるのは手強いってことだけか」
ザ「強い美人か。相手にとって不足はないね」
ス「ホントは戦わずに浄化できるといいんだけど……」
エ「やるだけやってみて、出来なかったらその時考えましょう」
ラ「希望を捨ててはいけません、スレイさん」
ザ「お姫様を支えるんだろ、導師殿」
ス「みんな……、ありがとう。もう一度だけマルトランさんと話してみるよ」
ミ「そうと決まれば、見失わないうちにアリーシャを追いかけよう」
ボールス遺跡
ア「師匠!」
マ「来たか。大仕事が控えている。手早く終わらせよう」
ア「なぜです!師匠っ!」
マ「この期に及んで、まだ問いを吐くかっ!」
ア「………っ!」
マ「今見えているものが現実であり事実だ。そんな基本もわきまえぬ者が民を導こうなど笑止極まる」
ア「理解はしています。でも……」
マ「では、悟っただろう。お前の青臭い理想など一片の意味ももたないという現実を。国にとっても。民にとっても。もちろん私にとってもだ」
ア「だったら!どうして私を支えるフリをしたんですか!?」
マ「……ふたつだけ利用価値があったからだ。お前は、ハイランドとローランスを最大の力で衝突させるための道具だった。バルトロらを反発させ暴走させる役には立った」
ス「でも、アリーシャはハイランドの国の人の事を考えて――」
マ「それだけじゃないぞ。お前がローランスの兵に殺されたという情報を流し、開戦の名目を得る事も出来た。導師、お前たちがアリーシャを大臣たちから守ろうと働いた小賢しい浅知恵の副産物だ」
ア「くっ…………」
ス「アリーシャの理想には、意味も価値もあるよ」
ミ「ああ。少なくともスレイは信じてる」
ラ「スレイさんだけではありませんわ」
マ「愛弟子への最期の授業だ。邪魔しないでもらいたいな」
ザ「邪魔が入るのが現実ってもんさ」
エ「あなたの思いどおりにはさせないわ」
マ「……最早かわすのは刃だけで十分か。まあいい。もうひとつの価値を果たすには最高の舞台かもな」
ス「アリーシャは下がって」
ア「…………」
ア「これは私と師匠と、ハイランドの未来に関わる問題だ。ちゃんと向き合いたい」
ス「わかった」
マ「お前と本気で手合わせするときが来るとはな」
ア「やってみせる!」
マ「ふん!隙だらけだぞ、アリーシャ!」
ス「うおおお!」
マ「ぐっ……うおおお。ふふ、浄化などされてたまるか……真に浄化されるべきはっ!この世界の方なのだから!」」
ラ「この方も……浄化出来ない」
マ「ぐ……おおおおおお。ぬうん」
ミ「何か様子がおかしいぞ」
エ「あまりの穢れに心身とも耐え切れなくなってる……」
ス「枢機卿の時と同じか…」
マ「やはり生身ではあのお方の大いなる力には耐え切れぬか……。だが、もう戦争は止められぬ。いずれこの世界は穢れに溢れ、私たちの理想は実現される。ここで命ついえてもあのお方が必ず……」
ア「もうやめてください、師匠!あなたは災禍の顕主に騙されているんです!!」
マ「……どこまでも優しいな。私は、そんなお前が――」
マ「がはっ……!!」
マ「反吐が出るほど嫌いだったよ」
ア「…………っ!」
マ「これが現実だよ……アリーシャ」
倒れるマルトラン。
マ「あの方の理想に身を捧げた証――。後悔は……ない」
穢れと共に消えるマルトラン。
ア「あああ……!」
ア「うう……っ!」
ス「アリーシャ……」
ア「もう嫌だ……」
ア「嫌だ!嫌だ!家に帰りたい!知らないよ!戦争も国も民も!陰口を言われるのも、意地悪をされるのももうたくさん!王女も騎士もやめる!バルトロでも誰でも勝手にすればいい!」
ス「アリーシャ……」
ア「みんなのためにって頑張っても……いいことなんてなかった……なにも……。無駄だったんだ、私の行動全部が!戦争を止めることも出来ないで誰も守れない。私のせいで……私の……せいで……」
ラ「アリーシャさん……。…………」
ミ「ライラ?」
ラ「『騎士は守るものにために強くあれ。民のために優しくあれ。ここで諦めるのか、アリーシャ・ディフダ!』」
ア「それは……」
ラ「約束でしたわよね。アリーシャさんが弱気なことを言ったら、思いっきり叱ってくださいって。私はレディレイクの礼拝で、アリーシャさんと街の人々を見てきました。アリーシャさんは、どんなに苦しいことがあっても、すべての人々に笑顔で接していました。アリーシャさんの行動が無駄だったなんて言ったら、街の人々が悲しみますわ」
ア「ライラ様……」
ラ「アリーシャさんの目指す先に必ず光があります。一緒に行くのでしょ、希望の先へ」
ア「『騎士は守るもののために強くあれ。民のために優しくあれ』師匠の言葉が耳から離れないんです。きっと私を騙すための言葉だったのに……」
ス「あの人が嘘を言ったとしてもアリーシャが受け止めた気持ちは本物だろ?」
ス「それで今ここにいるアリーシャは間違いなく現実だよ。オレが保証する」
ア「はは……みっともない現実を見せてしまったな。ハイランドの民を守るために、穢れなき世界を見るために、最後まで青臭くあがいてみせる。それが私だから!」
ザ「若いねぇ~!素であんなセリフを」
ミ「すまない……」
エ「なに泣いてるわけ?あなたまで」
ラ「だって感動して……」
ス「なんか言った?」
ミ・ラ・エ・ザ「別に」
ス「これからどうする?」
ア「当初の目的通りハイランド陣営へ向かおうと思うが……」
ミ「今戻ると危ないかもしれないな」
ラ「ハイランド陣営内に、アリーシャさんを助けてくれる方がいるといいのですが……」
ルーカス「スレイ!」
タケダ「殿下!」
ス「ルーカス!」
ア「タケダ!無事だったのだな!」
タ「殿下こそ!よくぞご無事で!」
ル「これは驚いたな。こんなところで何をしてる。アリーシャ姫はローランスに殺されたと聞いていたが……」
ア「心配をかけたな。実は……」
ル「なるほど。事情はわかった。で、アリーシャ姫はハイランド陣営に戻りたいと」
ア「はい」
ル「わかった。オレがアリーシャ姫を護衛する」
ス「ルーカスが!?」
ル「安心しろ。知ってるだろ、俺達の実力」
タ「もちろん、私もお供します!」
ザ「二人も兄ちゃんが付いていれば大丈夫だろ」
ア「スレイはケインとロゼのところへ向かってくれ」
ス「……わかった。ルーカス、タケダさん。アリーシャをよろしくお願いします」
タ「言われなくとも」
ル「導師殿から直々のお願いとなると無下にはできないな。後で一杯おごれよ」
ス「ああ。約束だ」
ア「あまり時間がない。すぐ立とう。スレイ、ありがとう。私、もう少しだけ頑張ってみる」
ス「オレも頑張るよ。必ず戦争を止めよう」
ア「ああ」
アリーシャ、ハイランド陣営へ。
ミ「僕たちも行こう」
ス「ああ。ケインとロゼを助けにいかなきゃ」
ラ「ここからならロゼさんが向かったペンドラゴよりセルゲイさんとケインさんがいるラストンベルが近いですわ」
エ「ラストンベル、次にペンドラゴの順番の方が効率的ね」
ス「ケイン、セルゲイと合流できたかな」
ザ「ケインの事だ。きっとうまくやってるさ」
ス「様子を見に行こう」
こんにちは、作者です。第二十四話です。
今回はアリーシャ編。次回がケイン、ロゼ編です。ここらへんの件は殆ど原作通りですかね。敵の三幹部との直接対決。ベタですが燃える展開ですね。ではまた、第二十五話で会いましょう。