ラストンベル 夜
ザ「おっ、ここにいたか」
ロ「ザビーダ。散歩?」
ザ「まあな。どうしたん?そんなたそがれて。ロゼらしくない」
ロ「そう、かな」
ザ「何か悩みがあるなら話してみな。聞くだけ聞いてやるよ」
ロ「ザビーダ、あたし、この戦いが終わったら風の骨のみんなで自首しようと思うんだ。もちろん、ルナールも一緒に」
ザ「やけに素直だな。ロゼちゃんはもうただの暗殺者じゃない、戦争を止めた導師の従士、英雄とも言えるんだぜ。もみ消そうと思えば、いくらでももみ消せるだろ」
ロ「ううん。あたしは、英雄なんかじゃないよ。自分の目的のために多くの人を殺して、頭領として仲間も守れなかった。確かに、今回少しは役に立ったかもしれないけど、そのぐらいじゃ罪を償えない。それぐらいの事をしてたんだ、あたしたちは」
ザ「人間の社会は難しいな」
ロ「ザビーダは、この戦いが終わったらどうするの?」
ザ「さあな。今は何も考えてないや。俺も自分の目的の事しか考えてなかったからな」
ロ「確か、ザビーダの目的って、エドナのお兄ちゃんとマオテラスを救うこと……」
ザ「そ。アイゼンは今日救えた。でもまだマオテラスが残っている。俺の目的はまだ半分しか達成してねえってこった。後の事は後に考えればいいんだよ」
ロ「後の事、か……。スレイ、ローグリンで災禍の顕主を救うって言ってたけど、ホントに出来るのかな」
ザ「なんだ、疑ってんのか、スレイの事?」
ロ「違うの。スレイって、時々凄い無茶するじゃん。この前のドラゴンとの戦いだって、勝ち目があるかわからないのに突っ込んでいって……」
ザ「それをお前が言うか~」
ロ「そういう無茶するとこ、少しわかるんだ。相打ちになってでも目的のためならそれでもいいって考え方。スレイはきっと自分の命を賭けてでもヘルダルフを救おうとする」
ザ「それが心配ってか。まあ、止めろって言って聞くやつじゃないしな」
ザ「心配するなって、きっとうまくいくさ。俺たちにはあいつがついてるんだろ?あいつが俺たちの事を守ってくれるさ。それに導師を助けるのが従士と陪神の役目、だろ」
ロ「従士の役目、あたしの……。そうだね。その時はあたしが全力でスレイを止める。それでもスレイが決断するならきっぱり諦める。あたしはスレイの信じる答えを信じるよ。ありがとう、ザビーダ、少し元気が出た」
ザ「なに?惚れそう?」
ロ「ちょっとだけ、ね」
ケ「やれやれ、ようやく会議が終わったよ」
ア「お疲れ様」
ケ「そっちこそ。お疲れ様、アリーシャ姫」
ラ「ケインさん、アリーシャさん」
ア「ライラ様」
ラ「スレイさんからの伝言を預かって来ました。出発は明日。早朝、公園に集合だ、そうです」
ケ「わざわざそれを伝えに来てくれたのか。ありがとう、ライラさん」
ラ「いえいえ。私も街の様子を見たいと思っていましたから。お二人はこれから?」
ア「そうですね。私も少し街の様子を見て回ろうと思っていたところです。ご一緒してもよろしいですか?」
ラ「もちろん。散歩は一人でより二人のほうが楽しいですわ」
ケ「…………。ボクは失礼させてもらうよ。この街にいるうちにやっておきたいことがあるんだ」
ラ「ケインさん……、わかりましたわ」
ケ「せっかく誘ってくれたのに、ごめんね。この埋め合わせは必ず。じゃ、また明日。お休み」
ア「おやすみなさい」
ラ「では、私たちも行きましょう」
ケ「しっかし、慣れない事をするもんじゃないな。会議があんなに退屈なんて思わなかったよ。やることをやって、今日は早めに休もう……うん、あそこにいるのは?」
エ「おかえりなさい」
ケ「ただいま。エドナちゃん、こんな遅くまでどうしたの?」
エ「あなたを待っていたの」
ケ「キミが?ボクを?一体どんな風の吹き回しだい?」
エ「…………」
ケ「……まあいいさ。エドナちゃん、ちょっと付き合ってくれる、行きたいところがあるんだ」
エ「行きたいところ?」
ケ「エドナを会わせてあげたい人がいるんだ。頼むよ」
エ「……わかった」
エ「ここって……」
ケ「墓地さ。ここでシランが眠っているんだ」
エ「シランって、戦争で亡くなったって言うあなたの……」
ケ「そ。実は、彼女が亡くなってから一度も墓参りに来た事無かったんだ……。彼女が死んだ現実を受けとめたくなくて……、戦争を止めるまでここには来ないって……、……勝手な事言って、バカみたいだろ」
エ「そんなこと……」
ケ「だいぶ遅くなってしまったよ、シラン。戦争は終わったよ。導師とその仲間たちが多くの命を救ってくれた。もう人間同士が傷つけあうこともない、キミが願った世界がやってくるんだ。だからそこから見守っていてくれ」
エ「ケイン……」
ケ「ごめんね。付き合わせちゃって」
エ「ワタシも手を合わせていい?」
ケ「ああ。きっとシランも喜んでくれる」
エ「ケイン、ワタシずっと苦しんでた。ありもしない可能性にすがって逃げる事もできずに、何百年もすっと縛り付けれて――」
ケ「お兄さんの事、だね」
エ「殺すしか方法がないと思っていた。でもワタシには力も勇気もなかった。お兄ちゃんってだけで……殺すことも出来なかった」
ケ「エドナちゃん……」
エ「もう無理だと思っていた。ドラゴンを救う方法なんて聞いたこともない。なのに、あなたたちは「どこかに救う方法があるはずだ」って無責任なことばかり言って」
ケ「今思えば、かなり強引だったね」
エ「強引、強引、超強引。…………でも、あなたに会えてよかったわ。短い間だったけど、世界中を見て回れた。お兄ちゃんをドラゴンにしたと思い込んで嫌いだった人間も、いい人もちゃんといるんだって好きになれた。あなたたちがわたしを外の世界へ連れて行ってくれたおかげよ。そして、ちゃんと約束通り、お兄ちゃんを救ってくれた……」
ケ「それはエドナちゃんが諦めなかったからさ。キミにお願いされてなかったらボクもスレイくんの従士になってないんだし」
エ「そうね……。後は」
ケ「うん。災禍の顕主を救う、だね」
エ「わかっているならいいのよ」
ケ「誰もが笑って暮らせる世の中を作りたい、それがシランの夢であり、ボクの夢だった。災厄の時代を終わらせればきっと……」
エ「幸せになれるわ、……その娘も、あなたもね」
エ「…………、ケイン」
ケ「なんだい?」
エ「丁度いいから今のうちに言っておくわ。……一度しか言わないから。……お兄ちゃんを救ってくれて、…………ありがと」
ケ「エドナちゃん……。うん、どういたしまして」
ラ「今日は夜空が綺麗ですね」
ア「はい。良く澄んで見えます。それにこの活気、ようやく平和が訪れたのですね」
ラ「そうですわね。戦争が終わり、穢れがなくなった。不安や怒りから解放されたのです。きっとレディレイクの街も同じだと思いますわ」
ア「ずっと見たかった景色、夢がやっとかなったんだ。スレイに感謝しなきゃいけませんね」
ラ「スレイさんだけではありません。アリーシャさんも、苦しい境遇の中、ハイランドのため、そして世界のために尽力しましたわ」
ア「ライラ様にそう言ってもらえるとなんだか嬉しいですね」
ラ「ふふふ、会議の方はどうでしたか?」
ア「今後の簡単な打ち合わせをしました。セルゲイ殿とケインが和平の方向に働きかけてくださるみたいです。ハイランド側の代表としても、なんとしても和平までこぎつけなくては……」
ラ「しかし、また大臣たちの妨害があるのでは?」
ア「確かに交戦派も多々いますが、必ず説得して見せます。タケダもルーカス殿も付いてますし、大丈夫です」
ラ「それなら安心ですわ。後は……」
ア「災禍の顕主、ですね」
ラ「……はい。これが最後の戦いになるでしょう」
ア「今夜がその名の通り、決戦前夜という訳ですね」
ラ「かの者との戦いはこれまでの旅路以上に、肉体的にも精神的にも厳しい戦いになるでしょう。アリーシャさん、決戦の前にスレイさんと話しておかなくていいんですか?」
ア「な、何をいきなり」
ラ「この戦いが終われば、お互い新しい目標に向かって歩み始めます。アリーシャさんだって忙しくなるのでしょう?戦いが終われば、今までのように毎日顔を合わせることが難しくなりますわ」
ア「それは……わかっていますが……」
ラ「アリーシャさん。胸の内の気持ちは伝えられる時に伝えておいた方がいいですわ。スレイさんはこういうの、言わなきゃ分からない人ですから。安心してください。私がしっかりサポートしますから」
ア「ライラ様……」
ラ「さ、スレイさんを捜しに行きましょう。きっと私たちのように街を見て回っているはずですわ。善は急げです」
ス「……すごい星空だな」
ミ「ああ」
ス「……誰が言ったんだっけ。星の数だけ想いがあるって。うまい事言うよな。その想いそれぞれが輝いていると比喩したものだな。よっぽどのロマンチストだったんだろう」
ス「……オレ、旅してわかったよ。自分から見えてない星もあるのに、見えないから輝いてないって思われる事もある」
ミ「……実際、イズチから見上げるだけじゃ見えない星もたくさんあったな」
ス「誰だって気付きさえすればその輝きがわかると思うんだ。ハイランドとローランス、人間と天族、国や種族が違くても、同じ世界で生きている家族なんだって」
ミ「グレイブガント盆地でも戦いでそれがよくわかったね」
ス「すげえワクワクしたよ。あの時。穢れを浄化して、ちゃんと互いに向き合えば敵同士でもわかりあえるって」
ミ「だが、あれだって君がドラゴンを、穢れを浄化しなければ……」
ミ「……そうか。決戦のあとどうするか、考えたんだな」
ス「うん。オレがマオテラスを宿せば、グリンウッド全域に力をゆだねられるんじゃないか。そうすればこの大陸全体の穢れを祓うことができるんじゃないかって」
ミ「確かに君の全ての力をマオテラスにゆだねればあるいは……。マオテラスの加護と導師の浄化の力……人々が憑魔になるのも防げるかもしれない」
ス「だろ?」
ミ「だが、その行動の意味をわかって言ってるのか?」
ス「ああ。オレはこの世界とマオテラスの穢れを浄化するまで動きがとれなくなる」
ミ「マオテラスと繋がり、刻(とき)にとり遺され、何年……いや、何百年待つのか……」
ス「待つさ、いつまでも」
ミ「……夢はどうなるんだ?世界中の遺跡を探検するんだろ?」
ス「オレが忘れない限り終わらない」
ミ「……わかった」
ス「サンキュ。ミクリオ」
ラ「アリーシャさん、いましたわ!」
ミ「ライラ、アリーシャ。どうしたの?」
ア「その、あのですね……」
ラ「ふあああ~……急に眠気が……。私、先に宿屋に戻っていますわ」
ア「えっ!?」
ス「何かオレ達に用があるんじゃなかったの?」
ラ「何かあった気がしますが、もう忘れてしまいました。でもアリーシャさんはあるみたいですよ、スレイさんとお話ししたい事が」
ア「ら、ライラ様!」
ス「アリーシャが?オレに?」
ミ「…………なるほど。そういうことか。スレイ、僕も用事を思い出した。先にもどっているよ」
ア「ミクリオ様まで!」
ラ「アリーシャさん、ファイトです!」
ミ「しっかり話すんだよ、スレイ」
フェードアウト ミクリオ ライラ
ス「どうしただろう、ミクリオまで」
ア「スレイ……」
ス「ん。どうしたの?」
ア「いや、大したことではないんだが……、スレイはここで何をしていたんだ?」
ス「星を見てたんだ。今日はとてもきれいに見えるんだ」
ア「星を?……本当だ、キレイ。…………。スレイ、お昼にペンドラゴのお城に招待された話を覚えているか?」
ス「ローランス皇帝が直々に交渉してくれるんだよね」
ア「うん。そこでなんだが……スレイも一緒にペンドラゴに行かないか?君は両国の架け橋として重要な人物だ。もちろん災禍の顕主を浄化して、一段落してからでいい」
ス「災禍の顕主を、か……」
ア「スレイは災禍の顕主を倒した後、どうするつもりなんだ?やはりイズチに戻るのか」
ス「イズチには戻らないと思う。そうだな、アリーシャたちが作り上げた穢れの無い平和な世界を見て回りたい、かな」
ア「スレイも一緒に、でしょ」
ス「うん……。アリーシャは?」
ア「しばらく公務で忙しくなるかもしれない。中々休みもとれないだろう。ずっと夢見ていた世界の為だ。これぐらいどうということない。もし、時間に余裕が出来て、スレイさえ良ければ、その、一緒に世界中の遺跡を見て回らないか」
ス「アリーシャ……」
ア「い、いや、変な意味ではないんだ。ライラ様やミクリオ様。みんなで一緒にって意味で、エドナ様とロゼは退屈かもしれないが……。ハイランドにはまだまだ多くの遺跡があるんだ。今回の旅ではゆっくり回ることができなかったから、じっくりと回れたらなって」
ス「みんな一緒に……か」
ア「スレイ?」
ス「あ、いや、なんでもないよ。わかった。一緒に行こう」
ア「本当か。やった!約束だぞ」
ス「うん」
ラ「アリーシャさん、本当に嬉しそうですわ」
ミ「ずっと夢見てたローランスへの和平が決まりそうなんだ。今回の功績で大臣たちにいじめられることもないだろうしね」
ラ「それだけではありませんわ。きっと隣にスレイさんがいるから」
ミ「ああ、そうだね」
ミ「…………」
ミ(スレイ…………)
朝
ス「おはよう!」
ラ「おはようございます」
ロ「今日は寝坊じゃないんだね」
ス「それ、ロゼが言う~」
ケ「スレイくん、いよいよだね」
ラ「昨夜はよく眠れましたか?」
ス「うん。もうぐっすり」
ザ「これから最終決戦だっていうのに頼もしいねえ」
エ「心配なさそうね」
ス「やることはやった。戦争も止められたし、エドナのお兄さんも救えた。後はヘルダルフとマオテラスだけだ」
ア「ようやくここまで来たのだな」
ス「うん。アリーシャがイズチに来たのがつい最近に感じるよ」
ミ「スレイ……」
ス「大丈夫だよ、ミクリオ」
エ「まずはイズチへ行くのよね」
ケ「ああ、そこにカムランへ通じる道があるはずだ」
ラ「決戦ですわね」
ザ「んじゃ、気合入れていきますか」
ア「セルゲイ殿やタケダには話を通してある。いつでも発てます」
ス「さあ、出発しようか。イズチ、そしてカムランへ」
こんにちは、作者です。第二十七話です。原作の決戦前夜の演出が大好きで、セーブデータを個別にとって、何回も見直しています。特にエドナの「いやよ」は、BGMの演出も伴って最高ですね。個人的にはシリーズ最高の決戦前夜です。アニメではどのような演出がされるのか楽しみです。さてさて、次回から二話に渡って最終決戦をお送りします。いよいよクライマックスですね。なんとか三十話に収まりそうです。ではまた、第二十八話で会いましょう。