俺が考えたアリーシャヒロインのゼスティリア   作:具志健

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ヘルダルフとの最終決戦


第二十九話 導師と災禍の顕主

カムラン

ス「……ここがカムランか」

 

ロ「初めて来るのに知ってる場所なんてなんかへんなかんじ」

 

ア「……なんだか時が止まってるみたいだ」

 

エ「実際そうなのかも。マオ坊のあのバカみたいな力を考えればね」

 

ザ「おっそろしい量の穢れだな。スレイがいなけりゃドラゴンになってるぜ」

 

ミ「マオテラスが発しているのか……マオテラスに流れ込んでいるのか……」

 

ケ「この穢れがマオテラスを憑魔にしている原因だと考えるのが自然だね」

 

ラ「……この世に災厄が訪れてたあの時から、この場所はずっと穢れで覆われ続けていたんですね……」

 

ス「ライラ。大丈夫か?」

 

ラ「ありがとう、スレイさん。もちろん大丈夫ですわ」

 

エ「穢れの中心は村の奥のようね。おそらくそこに……」

 

ス「ヘルダルフとマオテラスがいる」

 

ザ「神殿までまだ結構ある。楽に行こうぜ?」

 

ラ「ええ」

 

ラ「ゼンライ様、ミゲルさん……。ようやくここに戻って来れました。今度こそ必ず……」

 

 

 

アウトリウスの王座前

ス「ここがヘルダルフがいる神殿か……」

 

ミ「改めて目の前にすると大きいな」

 

ス「……いよいよだ」

 

ミ「ああ」

 

ラ「スレイさん。あなたの後ろには私たちが居ますわ。それを忘れないで」

 

エ「そういうことらしいわ」

 

ザ「そういうことらしいな」

 

ロ「思いっきりやっちゃって!」

 

ケ「キミなら成せるさ、キミ自身の夢を」

 

ア「行こう、スレイ!みんな一緒に」

 

ス「ありがとう。みんな」

 

ミ「決着を付けよう。全てに。行こう!」

 

スレイとミクリオフェードアウト

 

エ「……二人ともカムランに入ってから一度もおじいさんの話しなかったわね」

 

ラ「ええ……ゼンライ様に危害を加えるのは無意味だと、かの者へ示しているのでは」

 

ザ「ビビってるように見えたぜ。俺はよ。あれじゃ自分らの弱点を認めてるようなもんだ」

 

ケ「道中にはそれらしき天族はいなかった。となると――」

 

ア「この先にいるだろう」

 

ロ「ここで考えても仕方ない!とにかく行ってみよう」

 

 

 

アウトリウスの王座 大神殿

ヘ「来たか、導師よ」

 

ジ「す……レイ……………ミク…………………り……お」

 

ミ「ジイジ!」

 

エ「やっぱり囚われていたのね」

 

ス「今助ける!」

 

ヘ「そんなにこのおいぼれの命が惜しいか。力を使い切った老兵なぞ怖くもない。返してやろう」

 

ジ「ぐっ……」

 

ス「ジイジ!」

 

ジ「ごほごほ、ワシなら大丈夫じゃ……」

 

ザ「自分から解放してくれるとはずいぶん聞き分けがいいじゃなねえか」

 

ヘ「ふん。ここは雌雄を決するに相応しい場。そこに導師と災禍の顕主以外の登場人物は必要ない」

 

ス「ヘルダルフ!オレ達はお前を救いに来たんだ。出来れば戦いたくない」

 

ヘ「まだそんなことをほざくか……。……苦しみとともに生きねばならぬ世界……全ての者はこれからの解放を望んでいるのは明白。何故それに抗う?導師よ」

 

ス「……確かにお前の目指す世界では苦しみから逃れられるかもしれない。けど、やっぱ違うと思う」

 

ミ「僕らは苦しみから目を背けたくない」

 

ラ「辛い事があるから楽しい事を実感できるのですわ」

 

ロ「だね。あたしらは生きてるって感じたいんだ」

 

ヘ「苦しみに抗う事でのみ得られる安寧……。そんなものを世界が享受するはずもあるまい」

 

エ「別に逃げるのが悪いってワケじゃないわ」

 

ザ「俺らがそうしねぇってだけさ」

 

ヘ「……ワシは自然の摂理を語っているのだ」

 

ス「摂理に従うのが生きる事だっていうのか」

 

ヘ「無論の事よ」

 

ス「違う!それは死んでないだけだ。それがどれだけ苦しいことか、お前は知ってるはずだ!」

 

ヘ「では、お前はどうすると言うのだ。この世界を」

 

ス「穢れがなく、誰も不幸にならない世界にする。ヘルダルフにかけられた呪いを断ち切って、負の連鎖をここで終わらせる」

 

ケ「穢れさえ絶てば、あなたも一人の人間。マオテラスの力を復活させれば、この世界の穢れを祓うことが出来るはず」

 

ア「旅路の中であなたの過去を知った。災厄の時代が始まって、一番苦しんだのはあなたなのかもしれない」

 

ス「ヘルダルフ。もう苦しまなくていいんだ。オレは必ずお前を救い出す!だから――」

 

ヘ「だから、戦うのは止めよう……そう言いたいのか。笑止、このワシがお前たちに従うと思うか。例えこの世界の全てを祓っても、穢れは無限にわいてくるぞ。直接的な解決にはならん」

 

ス「そうはさせない。穢れはオレが食い止める」

 

ヘ「最後にもう一度問おう、導師スレイ。ワシに降れ」

 

ス「断る!」

 

ヘ「……災禍の顕主と導師……やはり世の黒白ということか。だがワシは白とは変じぬ!」

 

ス「オレも黒にはならない!」

 

ヘ「……よかろう。真の孤独をくれてやる」

 

ヘ「マオテラス!」

 

マオテラス、ドラゴン化

 

ヘ「決意、覚悟、全て無駄。この力の前ではな!」

 

ス「もうお互い退けない…。退いたらこれまでの事を否定することになる。そうだろ?ヘルダルフ」

 

ヘ「小童がワシを語るか……片腹痛い!」

 

ミ「スレイ、僕らの策はその性質上、4回きりだ!」

 

ラ「神依による最大の攻撃で撃ち込んでください!」

 

ロ「スレイ、ジークフリートを!」

 

ス「ロゼ!?」

 

ロ「スレイは導師。最後まで温存する。ここはアタシが突破口を開く!」

 

ス「わかった。頼んだ、ロゼ」

 

ロ「任せて!ザビーダ!」

 

ザ「準備はいつでもいいぜ!」

 

ロ「さっすが、頼りになる」

 

『フィルク=ザデヤ』

 

ロ「行くよ!ザビーダ!デゼル!」

 

ザ「お前らとの旅、楽しかったぜ!またどこかで会おう!じゃあな!」

 

ロ「処断せし瞬天の扇動!シルフィスティア!」

 

ばきゅーん!

 

ヘ「むう……。天族を直接打ち出しただと……」

 

ヘ「残酷にして無謀極まりない。仲間と称するものを犠牲にしながら、何の功も奏しておらん。犬死によ」

 

ス「オレは……オレたちは……。信じた答え、信じてくれた道を貫く!」

 

ケ「ザビーダ、ロゼさん……、キミたちの覚悟、しっかり受け取ったよ」

 

エ「アタシたちの番ね」

 

『ハクディム=ユーバ』

 

ケ「ああ。とうとうこの時が来てしまったね」

 

エ「この一撃にワタシの全てを込めるわ。必ず当てなさい」

 

ケ「言われなくても!」

 

「黄昏し巨魁の錠亭!アーステッパー!」

 

ばきゅーん

 

ヘ「ぐふ……、無駄だ!」

 

ス「まだみんな戦ってる!」

 

ロ「そうだよ!あんた、それがわかんないの?」

 

ヘ「現実を受け入れられんのか……愚か者ども!」

 

ラ「攻撃は後二回です。アリーシャさん」

 

ア「お二人の気持ちを無駄にはしません!」

 

ア「ライラ様……」

 

ラ「覚悟はとっくに出来てます!穢れなき世界を」

 

『フォエス=メイマ』

 

ア「必ず実現させる!」

 

ア「業火たる白銀の聖錠!フランブレイブ!」

 

ばきゅーん!

 

ヘ「ぬうううう……、従士はもはや神依もできん。終わりだな」

 

ロ「決めつけんなっての!」

 

ケ「これでも元ローランス軍の兵士なんでね。体は丈夫なんだ。あなたもよく知ってるだろ?」

 

ヘ「そんな昔の事はとうに忘れたわい!」

 

ロ「きゃ!」

 

ケ「くっ……。確実に効いているはずなのに……」

 

ミ「火事場のバカ力ってやつか!」

 

ロ「これじゃ、ジークフリートを放つ隙が……」

 

ア「私に任せろ!」

 

ス「アリーシャ!」

 

ミ「無茶だ!一人で突っ込むな!」

 

ロ「無茶でもならなきゃいけない時でしょ、今は!」

 

ケ「従士の底力、見せてやる!」

 

ロ「あたしらは絶対に負けない!全身全霊全力全開!全部当てるよ!覚悟!ミリアド・サークラー」

 

ア「見切った!これが、私の渾身奥義!しかと受け取れ!皇刃蒼天衝!」

 

ヘ「ぐはああああ」

 

ミ「スレイ!今だ!」

 

『ルズローシヴ=レレイ』

 

ミ「自分の答えを信じて放て!ヘルダルフを貫け!」

 

「ヘルダルフ・・・!蒼華たる霊霧の執行!アクアリムス!」

 

ばきゅーん

 

ロ「はあ……はあ……」

 

ア「やったか……」

 

ケ「ドラゴン化は解いた……。なんとかマオテラスとヘルダルフの繋がりは断ち切れた……」

 

ア「ライラ様たちがやったんだな」

 

ヘ「ふはははは、その程度か……。ワシはまだここにおる。マオテラスの力がなかろうと天族の力を借りてないお前たちでは何もできまい。万策尽きたか……?」

 

ア「ま、まだだ……」

 

ス「アリーシャ、無理しないで……」

 

ア「しかし、ここで引いたらライラ様の覚悟を無駄になることになる」

 

ロ「アタシたちはまだやれるよ……」

 

ケ「そうさ……何度だって抗ってみせる」

 

ヘ「小賢しい!ふん」

 

ア「キャ!」

 

ス「みんな!」

 

ヘ「従士に興味はない!せいぜい外野からこの戦いの行く末を見届けるがいい!」

 

ヘ「導師……、いや、スレイ……。ワシとお前の一騎打ち、小細工なしの決闘。これぞこの舞台にふさわしい」

 

ス「ヘルダルフ……」

 

ヘ「……もはや語るまい。」

 

ス「いくぞ!」

 

ス「うおお!」

 

ヘ「我らの幕はその技か!よかろう!」

 

ス・ヘ「獅子閃光!」

 

のけぞるヘルダルフ

 

ヘ「ぬうう……!このワシが押し負けて……」

 

ス「これが!これがオレの全てだっ!!」

 

ス「終わらせる!来たれ神雷!俺の全てで、悪しきを断ち切る!秘剣!烈震神雷牙!」

 

ヘ「ぐあああ!!」

 

ヘルダルフ、倒れる

 

ス「はあ……はあ……やった。勝った」

 

マオテラスが降臨する

 

ス「マオテラス……、ヘルダルフとの繋がりを断ち切って解放されたのか。これで災厄の時代が……」

 

ヘ「……災厄の時代は終わらん……」

 

ス「ヘルダルフ!お前まだ!」

 

ヘ「輪廻は回る。マオテラスとの繋がりが切れ、ワシにかけられた呪いは解かれた。永遠の孤独から解放され、この身もやがて朽ちるだろう。されど、歴史は繰り返す。長きに渡って憑魔と化していたマオテラスが本来の力を取り戻すには時間がかかる」

 

ヘ「この地に封じられていた穢れもすでに世界中に流れ込んでいる。新しい災禍の顕主が生まれるのも時間の問題よ」

 

ス「大丈夫。ちゃんと考えがあるから」

 

ス「マオテラス!」

 

マ「…………いかようか?若き導師よ」

 

ス「オレはこの世界を災厄の時代から救い出したい。そのために力を貸してほしい」

 

マ「世界を穢れから加護するのが私の使命。言われなくてもそのつもりだ。だがしかし……」

 

ス「すぐには難しい……だよね」

 

マ「私自身、まだ完全に浄化されてない。穢れを持っている今、自浄作用は使えぬ。しばらくたてば再び憑魔と化してしまうだろう」

 

ス「そんなことさせない!オレが憑魔になるのを食い止める!」

 

ス「オレがマオテラスの器になって、穢れを祓う。そうすれば皆が憑魔になるのを防げるはずだ!」

 

マ「それが導師スレイ……お主の答えか」

 

ス「ああ」

 

ス「ヘルダルフ……永遠の孤独は終わった。でもこのまま死んじゃダメだ。この世界には悲しい事だけじゃない、楽しい事も沢山ある。お前には残りの人生をそれを嫌と言うほど味合わせてやる」

 

ヘ「しかし、ワシはもうじき……」

 

ス「死なせない。オレがマオテラスを宿して、ヘルダルフを加護する。今はまだ完全に穢れが祓えていないけど、時間をかけてでもオレが浄化するから。……もう苦しむことはないんだ」

 

ヘ「この世界を穢れに満たそうとしていたワシに今更生きる場所などない。戦いの敗者はこの世を去る。この世界にワシは必要ない存在だという事だ」

 

サ「ヘルダルフ様」

 

ヘ「サイモン……何故ここに……」

 

サ「あなたは私の主です。いつでもお側にいます。己の業に苦しんでいた私に手を差し伸べてくれたのは他ならぬヘルダルフ様です。初めて誰かに必要とされて嬉しかった。この世界の住民が皆、あなたを憎んでも、私は、私だけは、ずっと側にいます」

 

サ「だから……、自身の事を必要の存在なんて言わないでください……」

 

ヘ「サイモン……」

 

ス「ヘルダルフ、お前は孤独じゃない。共に生きよう。新しく生まれ変わった穢れなき世界で」

 

ヘ「スレイ……、ふっ、お前はどこまでも真っ直ぐなのだな。こんな気持ち、いつぶりだろう。心に希望の光が差したように暖かい」

 

マ「ヘルダルフの穢れが消えていく。浄化の力を使わず、閉ざした心に救いの手を差し伸べたか。これが今の導師……」

 

ス「さあ、マオテラス。オレの中に」

 

マ「いい目だ。全てを背負うと覚悟を決めたのだな」

 

ス「うん。約束したんだ、穢れなき故郷を見せるって」

 

マ「約束……か。その覚悟しかと見届けよう」

 

ス「ありがとう、マオテラス」

 

 

 

ア「う……、今の光は……」

 

ザ「どわあ!」

 

エ「キャっ」

 

ラ「アイタタタ、一体どうなったんですの」

 

ミ「ちょっと、みんな、どいてくれ。お、も、い」

 

ロ「みんな!無事だったんだ!」

 

エ「ええ。なんとかね」

 

ケ「そうだ、スレイくんは……」

 

ス「オレならここだよ」

 

ア「スレイ……その光は……」

 

ス「マオテラスと契約したんだ」

 

ロ「契約!?」

 

ミ「スレイ、やったんだな」

 

ス「ああ。これで人間や天族が憑魔になることはない。災厄の時代がやっと終わったんだ」

 

ロ「これで誰も憎み合い、殺し合うことが無くなるんだね」

 

ケ「あれほど溢れていた穢れがまったく感じられない。どうやらホントに」

 

ア「ああ。世界は救われたのだな!」

 

ミ「…………」

 

ア「ミクリオ様、どうしたのですか?浮かない顔をして……」

 

ラ「マオテラスを器としたということは……つまり」

 

エ「それがあなたの答えなのね」

 

ザ「スレイらしい選択だな」

 

ロ「どゆこと?ちょっと、誰か説明してよ~」

 

ス「それは……」

 

ミ「マオテラスと共に祭壇に留まり、穢れを祓い続けなくちゃならない。刻にとり遺され、何百年もの間……」

 

ロ「それって、ここから出られないってこと?」

 

ス「うん……」

 

ア「ウソ、でしょ……?」

 

ス「黙っていてゴメン」

 

ケ「という事は、スレイくんとはここでお別れ……」

 

エ「天族であるワタシたちはともかく、人間のあなた達にはそういうことになるかもね」

 

ア「こんなことって……、せっかく世界が平和になったのに……」

 

ス「アリーシャ……。オレ、この旅でいっぱい大切な事を学んだ。みんなで世界中を回って、たくさんの人に出会って……。きっとイズチに籠っていたら知らなかったことばっかりだった。そのきっかけをくれたのは、アリーシャなんだ。だから、そんな顔をしないで」

 

ア「スレイ……」

 

ス「…………うん、わかったよ、マオテラス」

 

ス「今すぐにでも流れ出した穢れを浄化する作業に移る。また誰かが入ってこないようにここを封じなくちゃならない。みんなとはここでお別れだ」

 

ミ「スレイ、ホントにこれでいいのか……」

 

ス「うん。離れ離れになっても、オレはみんなと旅した大切な思い出がある。寂しくなんかないよ。そうだろ、みんな。さあ、行って」

 

ラ「…………わかりましたわ。スレイさんに従いましょう。私はあなたの主神です。導師と主神と陪神、そして従士の絆。スレイさん、あなたは一人じゃない。それを忘れないで」

 

ス「ライラ、いつも見守ってくれてありがとう」

 

ライラ去る

 

ザ「まさか自分からマオテラスの器になるなんてな。恐れ入ったぜ」

 

ス「そんなこと言って、ザビーダの事だからホントは薄々気付いていたんじゃ」

 

ザ「さあな。その話は今度会った時の酒飲み話にでもしようや。さよならは言わないぜ。じゃあな」

 

ザビーダ去る

 

ロ「あたしもさよならは言わないよ。もう会えなくなるなんて急に言われても実感ないし、なんだかんだ言ってスレイのことだからふらっと帰ってきそうだし」

 

ス「ははは、ロゼらしいね」

 

ロ「あたし、頑張る。だから、スレイも頑張ってね」

 

ロゼ去る

 

ケ「キミとの旅、とても興味深かったよ」

 

ス「結局最後まで付き合わせちゃったな」

 

ケ「いいんだ。貴重な経験をさせてもらった。キミと一緒に旅できたことを誇りに思う。この旅の事、一生忘れない」

 

ケイン去る

 

エ「スレイ、お兄ちゃんがあなたに会いたがっていたわ。いつでもいいから会いにいってあげて」

 

ス「わかった。いつか必ず遊びにいくよ」

 

エ「……あなたのおかげで人間の事がちょっとだけ好きになれたわ。ありがとう。また会いましょう」

 

エドナ去る

 

ミ「イズチのことはボクに任せてくれ。必ず復興させてみせる」

 

ス「うん、よろしく頼むよ」

 

ミ「あの夢のこと忘れてないよね」

 

ス「もちろん!」

 

ミ「まあ、君が目覚めるころには世界中の遺跡を調べ尽くしているとは思うけどね」

 

ス「じゃあ、その時は案内してよ、ミクリオ先生」

 

ミ「ああ。楽しみにしているよ、スレイ」

 

ミクリオ去る

 

ア「…………」

 

ス「アリーシャ……」

 

ア「スレイはずっと生きるんだよね……。世界を守りながら、ずっと……」

 

ス「うん……。ごめん、アリーシャ、一緒に世界を回る約束、守れそうないや……」

 

ア「いいんだ。少し寂しいが……それも仕方ない……」

 

ス「アリーシャ、ずっと支えてくれてありがとう」

 

ア「礼を言うのはこちらの方だ。スレイが照らした世界……、必ず私たちが穢れなき平和な世界にしてみせる。いつかスレイが目覚めて、ゆっくり遺跡探検ができるような平和で穏やかな世界を目指して」

 

ス「うん……遠くからだけど、アリーシャのことずっと見守ってる。……ほら、みんな待ってるよ」

 

ア「いままで本当にありがとう、スレイ。キミに出会えて、一緒に旅が出来て本当によかった。この気持ち、ずっと、ずっと忘れない」

 

アリーシャ去る

 

ス「さようなら、アリーシャ」

 

 

 

ヘ「儀式は終わったか」

 

ス「うん。マオテラスの力で始まりの門を再び閉ざした。これでここから出られなくなった。……ホントにいいのか、ヘルダルフ。外の世界に出なくて」

 

ヘ「ああ。今までの罪滅ぼしだ。この神殿を外敵から守る。身動きがとれないお前たちに変わって、誰かがやらねばならないことだ」

 

サ「私もお供します」

 

ス「ヘルダルフ、サイモン、ありがとう」

 

ヘ「お前こそ、いいのか。あの世界でやり残したことがあるのであろう」

 

ス「オレはいいんだ。世界を浄化しなきゃならない。そんなこと言ってられないよ」

 

マ「それは本来私が行う事。私の中に渦巻く穢れを祓えさえすれば、お前がどこに行こうが関係ない」

 

ス「でも、それじゃあマオテラスが……」

 

マ「一年だ。一年あれば私も完全に浄化される。さすればお前の力を借りなくとも大陸全体を加護し、新たなる憑魔の発生を食い止めることができよう。ここからは私の仕事だ」

 

ス「マオテラス……」

 

ス「人間の一生ははかなく短い。スレイには、導師である前に一人の人間として人生を全うして欲しい。この閉ざされた世界で一生を終えるには惜しい存在だ」

 

ヘ「ワシも協力する。お前が居なくともこの祭壇を守り通す。だから安心せい」

 

サ「あの娘が待っておろう。行ってあげよ」

 

ス「マオテラス、ヘルダルフ、サイモン……」

 

マ「何はともあれ、一年だ。一年間は共に穢れを祓ってもらうぞ。生まれ変わったその世界をしかと胸に刻め」

 

ス「ありがとう……」

 

 

 

一年後

 

アリーシャの家

 

ア「今、帰った」

メイド「アリーシャ様、お帰りなさいませ。どうでした?ローランスへの視察は」

 

ア「大変有意義だった。評議会の中にも和平派が台頭しつつある」

 

メイド「……講和条約締結が見えてきましたね」

 

ア「ああ」

 

メイド「長旅お疲れでしょう。おかけください、すぐにお茶を用意いたします」

 

ア「ありがとう、頼む」

 

ア(……スレイ。見ててくれ。スレイが守る世界を争いのない平和な世界にしてみせる。それが私が出来る、スレイへの恩返しだと思うから……。…………。私がこうして想いを馳せている間にも、君はこの世界の穢れを祓っているのだろうか。……スレイ、会いたいよう……)

 

ス「アリーシャ!」

 

ア「この声は!?」

 

ア「うそ……」

 

ス「ただいま、アリーシャ。約束、果たしにきたよ」

 

ア「スレイ……。お帰りなさい」

 

ス「勢いのまま屋敷まで来ちゃったけど、アリーシャ、今時間大丈夫?」

 

ア「あ、ああ。私は大丈夫だ」

 

ス「よかった。じゃあ、早速行こう!」

 

ア「行こうって、どこに?」

 

ス「決まってるじゃないか。遺跡探検。約束、したでしょ?」

 

ア「遺跡探検……」

 

ス「さすがに急すぎたかな……。アリーシャの都合のいい日で……」

 

ア「行く!私も一緒に行く!」

 

ス「決まりだな。行こう、新しい世界へ」

 

Fin

 




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