真剣で私に振り向きなさい!   作:賢者神

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 NTR、お好きですか? → 知らん。






12 風間ファミリー

 

 

 

 

「あのさ。ワン子が言ったのもなんだけど俺、重くない?」

 

「鍛錬だと思えば問題無いわ。ゆーおーまいっしん!」

 

「勇往邁進。恐れずに目標に向かって前進するって意味だね。いい言葉だ」

 

 

 ガリガリガリと響く音を聞きながら宏輝は一子と会話を交わす。現在、一子の腰に巻かれた紐に繋がれたタイヤの上にバランス良く座って運搬されている宏輝。車のタイヤの重さに加え、宏輝自身の高校生基準より少し軽い体重では普通の少女では運べないというのに一子はそんな重さをものともせずに常人以上の凄まじいスピードでタイヤの上に乗る宏輝と共に爆走している。

 

 

「で、そのワン子デリバリーは何処まで行くの? モモちゃんはモモちゃんで空を飛んでるし。サイヤ人か何かか?」

 

「お姉様によれば二段ジャンプをしているそうよ」

 

「ゲームか何かかよ……ッ! ここは別の物理法則が存在してんのかって言いたくなるぜ――!」

 

 

 絶句という感情を隠しきれていないままに上空を見上げ、空中に浮いている百代を目で追い掛ける。それほど高くない高度のため、目視できている。残念ながらスカートではなく、ズボンなのでオトコのロマンである絶対領域は見れずにいた。速いと言えるスピードなのに、何故だか宏輝はこう感じていた。

 

 

(まだまだ速くなるだろ、あれ。この世界の物理法則とか狂っているんじゃないか? ニュートンさんも真っ青なくらい無視し過ぎだと思う)

 

「目的地だけ言えば風間ファミリーの秘密基地よ。お姉様が皆に紹介したいんだって」

 

「――マジ?」

 

「お姉様は嘘は言わないわ」

 

「俺、会わないって言ったんだけどなー」

 

 

 有り得ないと頭を抱える宏輝。散々言いたい放題言った身としては会い辛いのだろう。嫌そうな顔をしていた百代を思い出し、憂鬱になる。自分が大切、大事に思っているのを悪く言われれば誰だっていい気分にはならない。少し浅はかだったかと宏輝は反省し、これからを考える。風間ファミリーなる物のメンバーは軽く百代と一子から聞いている。それを踏まえると、中々濃いメンバーが多いのだろうと推測していた。中でも気になっているのは風間ファミリーの軍師と呼ばれる“直江大和”。宏輝自身の勘が何かがあると告げ、嫌な予感を感じざるを得なかった。

 

 

「あー、しょうがないか。ワン子。少し予定を変更。進路を変えてくれる? 後でお菓子あげるから」

 

「わかったわ。何処に行けばいい?」

 

「まず――」

 

 

 指差しと声で道案内をする宏輝。目的地は彼が現在、住居として使っているマダム宅。

 これから風間ファミリーに会うにあたって、着替える必要があると考えたのだろう。方向転換をする一子の引っ張るタイヤから落ちないように体を傾けてバランスを保ちながら成り行きに身を任せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いッ!! 何をしてるんだアイツはッ!!」

 

 

 場所を移して川神市某所。風間ファミリーの秘密基地として使っている取り壊し予定だった廃墟にて、川神百代は叫ぶ。

 

 

「ま、まあまあ。落ち着きなよモモ先輩」

 

「そうだぞ姉さん。俺達に会わせたい人がいるのはわかっているけどそこまでイライラしなくてもいいじゃないか」

 

 

 叫ぶ百代を諌める少年二人。一人は諸岡卓也、もう一人は直江大和。共に風間ファミリーのメンバーであり、直江大和は風間ファミリーの軍師的ポジションにいる少年である。二人は百代の一個下の年齢であり、後輩である。尤も、直江大和だけは百代のパシリ兼舎弟で苦労している。

 二人の少年以外に少年少女がおり、今いるビルの一室にあるソファから三人の様子を見ていた。イライラした様子の百代に何事かと思うが、すぐにいつもの事かと各々が自分のやりたい事をやっている。

 

 

「キャップはいないのか?」

 

「歓迎会やるから準備をするって。ワン子は知らない」

 

「ワン子はワン子で何をしてんだろ」

 

「ヒロを運ぶ役目だ。途中でいなくなったけどな! 変な事をしていたらぶっ殺す!」

 

「ヒロ……って姉さんが前にできたって言う友達? 歓迎しようって言いだしたのはそれか」

 

 

 成程といった様子の大和。そんな様子の彼に、とある少女がほんのりと頬を染めて熱のある視線で見ていた。少女の名は椎名京、直江大和という少年に恋している一途な少女なのだが。

 

 

「真剣な表情もイイ……大和、結婚して」

 

「お友達で。姉さん、そのヒロって人はワン子と一緒にいるのか?」

 

「ああ。空は飛びたくないって駄々をこねたからワン子のタイヤに乗って移動させる事にした」

 

「……よく身に染みて理解したよ」

 

 

 大和はまだ名前しか知らぬ宏輝に同情を感じ、仲間意識を持ち始めた。百代の舎弟という名の奴隷兼玩具の扱いを受けている彼としては、同じような目に遭っているのだろうと仮説を立てた。大体合っているのが否定できないのが彼女、川神百代と付き合う人間が誰もが持つ心情だ。

 友人ではあるが、宏輝としては泥棒と付き合いたくないと考えるだろう。しかし、彼女自身の持つ名声と付き合う際に感じる空気を考えれば金を犠牲にしてでも付き合う価値があると思っているのは彼女には内緒だ。

 

 

「……ん? ガクト、何をしてるの?」

 

「新しいメンバーになるかもしれないからな。こう、構えている必要があるだろ?」

 

「だからってわざわざポーシングする必要は無いと思うけど」

 

「ヒロは男だ。女ではないからな」

 

「畜生! 男の名前を持っている女の子かと思ったのに!」

 

「普通に考えればわかるだろ……」

 

 

 和気藹々と風間ファミリーのメンバー。部屋にいる最後の一人である島津岳人。色々な意味で濃い性格を持ち、ガッシリとした肉体を持つ少年でもある。

 楽しみながら会話をしていると、百代はある事に気付く。自分達がいるこの場所に近付いてくる人間が三人分、気を感じ取っていた。全てが全て、百代自身が知る気なので窓に向かって歩き始める。突然動き始めた百代に他の人間は何事かと共に窓に向かって外の景色を見ようとする。建物の下を見れば、風間ファミリー全員が知っている川神一子、風間ファミリーのリーダーである風間翔一が百代以外知らない少年と雑談をしていた。紺色の上着で身を包んだ、二人よりも背が高い少年で両手に荷物を持ちながら何かを咥えていた。

 

 

「オイ、ヒロ!」

 

「――お。モモちゃん、お待たせ」

 

「お待たせじゃない! ワン子に手を出していないよな!?」

 

「性的には出していないよ。手伝う時とか肩に手を置いたりはしたけどぶふぇ」

 

 

 言葉を全て言えなかった。窓から飛び降りた百代に落下スピードによる腹部キックにより、言葉を紡げなかったのだ。

 

 

「イタタ。モモちゃん、俺の手を見て? 歓迎会をするって言う翔一の手伝いをして食べ物があるのにオジャンにするつもりかい?」

 

「いきなり姿を消したお前が悪い!」

 

「よく見てよ。昨日、碌に着替えられなかったから着替えたんだよ。あんな高い物を着て会ってみたらブルジョワ死ねとか思われるじゃん。だから少しオシャレをした程度の服装に変えたの」

 

「似合うからいいけどファッションセンスがいいのがムカつく!」

 

「キャバクラでトークと一緒に教えてもらったんだ。できるオトナになるには子供から教育が一番って言われてたし」

 

 

 少し前屈みになる紺色の上着を着る少年、天井宏輝。痛む腹部を撫でたいと思っているようだが、両手が塞がっているのでできない。百代にぎゃあぎゃあと耳元で怒鳴られ、げんなりとする宏輝に目を見開いて驚く部屋にいるメンバー、大和、京、岳人、卓也。ここまで百代と打ち解けられるのが信じられないようで宏輝が誰なのかと気になり始めていた。

 

 ――が、一人だけ宏輝を鋭い目で見ている者がいた。

 

 

(何アイツ。嫌な感じがする)

 

 

 椎名京。彼女の体感した過去の経験から、天井宏輝という人物に危険な臭いを感じている。奇しくも、この勘は正しいのだと気付くのは遠い未来である。というよりも彼を見抜くと同時に自分の暗い本性を暴く事になるだけなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

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