真剣で私に振り向きなさい!   作:賢者神

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 今回から三点リーダ使用。所謂、ちゃんとした小説の書き方に変更。それに合わせて今までの話を少し改訂します。次回辺りで描写を変えた話を書きます。







21 這い寄る災難

 

 

 

 

 

 川神学園一年F組。昼休みという時間帯に二人の男女が勉強をしている。一人は携帯を操作しながら所々で指示しながら説明をする。一人は難しそうな顔をしながらシャープペンシルを持って考える素振りを見せている。男、少年は天井宏輝。女は少女である川神百代だ。

 

 

「う、うぬぬぬぬぬ」

 

「あ。そこは関係代名詞があるから少し意味が違うよ」

 

「ガーッ! んなモンわかるかー!」

 

 

 音を上げるように百代がダンと机を両手で叩いた。怪力である百代が叩けば机の上にあった物が浮くが、対面に座っている宏輝は(あらかじ)めわかっていたかのように浮いた教科書やノートを見事にキャッチし、ノートに書かれている文章を読む。読んでいる間に段々と顔の表情が曇り始め、自然と呆れたような溜め息が出る。

 

 

「モモちゃんさ。同じ学年のクラス名物でももう少しできるよ? 人に得手不得手があるのがわかるけど基本的な知識をしっかりと着けていないのは少しヤバいよ」

 

「五月蝿い! そもそも英語なんて何に使うんだ!」

 

「俺の場合だと渡米した時。高校生で学ぶのはまだ基本の部分だけどその基本の部分を大事にすれば応用もできるの。それは他の教科に関しても言える事だよ?」

 

 

 パタンとノートを片手で閉じながら宏輝は百代に言う。真面目な説明をしているのにもう片手では携帯をカチカチと弄っているので説得力はほぼ皆無であった。自分を見ずに説明をする態度にイラッとしているのか、百代の堪忍袋の緒が切れる寸前の状態になっていた。

 

 

「というか! お前は何をやっているんだ! 今は私に勉強を教えているんだろ!」

 

「普通だったらね。けど今教えているのは課題だからね? 宿題なのにやってないから貴重な昼休みを潰してまで教えているんだよ。寧ろ今の時間は感謝してもらいたいんだけど」

 

「うぬぐッ」

 

「ちなみに携帯は橘さんと会話。モモちゃんに紹介されてから仲良くなってね。またデートしないかって誘われていたり」

 

 

 ガタッ。その言葉に百代だけではなくF組の男子が立ち上がる。殆ど同時に立ち上がるので流石の宏輝ですら圧倒され、携帯を触っている手を止める。

 

 

「な、何だよ。モモちゃんなら兎も角、何でお前等まで反応する?」

 

「天井ィ! 貴様女連れか! 百代さんがいながら浮気者め!」

 

「えー。俺とモモちゃんってそんな関係じゃないんだけど」

 

 

 詰め寄る名無しのクラスメイト男子の顔を押し返しながら宏輝はズバッと切り捨てる。橘さん、橘天衣とも恋人的な関係ではなくどちらかといえば友人のような関係である。疚しい気持ちは無いに等しいが、発情期(ししゅんき)真っ只中、大人の一歩手前の高校生である男子にはそんな事は関係なかった。噛み付く勢いのままに興奮した様子で宏輝にあれこれと質問を繰り返す。当の宏輝はげんなりとした顔で詰め寄る男子を見ていた。

 

 

「ああ、ああ。五月蝿い五月蝿い。勝手に妄想してシコシコしてろチェリー共。今はモモちゃんの勉強会なの。モモちゃん(アホの子)の成績を上げないといけないんだよ」

 

「……今アホの子って言わなかったか?」

 

「気のせい気のせい。頑張って成績を上げよう。そして一緒に美味い飯を食べよう」

 

 

 見る人が見れば優しい笑顔をする宏輝であるが、実際の事情は百代の成績向上による川神学園専用のグルメな学食を食べる際に必要になる上食券を得るために引き受けたので親切心からではないクソ野郎と罵られてもおかしくない事をしているのだ。もし、それを知る人間がいればその優しい笑顔の裏にドス黒い感情を感じ取る事ができるであろう。

 

 

「……なんか、腑に落ちないな」

 

「ほらほら。難しい事は考えずに問題を終わらせよう……お。土曜日オーケーですか。少し、遠出をして、遊びませんか」

 

「デートなら私がいるじゃないか。私では不満か?」

 

「妬いてるの?」

 

「妬いてない! 誰がお前なんかに妬くか!」

 

「モモちゃん、かーわーいーいー」

 

 

 ヤキモチ発言から不機嫌になる百代だが、可愛いと言われて今度は顔を少し赤くして照れる。そんな彼女の様子に宏輝は嬉しそうに楽しそうに笑う。彼女の照れる姿に宏輝の何かにどストライクに決まったのだろう。彼の穏やかな笑顔に目を奪われるクラスメイトの女子も少なくはなかった。

 こんな感じで過ごす宏輝であるが、最近では照れる事が多くなる百代に癒される事が多い事を追記しておく。

 

 ――無論、からかい過ぎて百代に照れ隠し(ほうふく)を受けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ――天上皇輝。天井宏輝と瓜二つと言われる武神川神鉄心の師匠(自称)である。謎の多い人物、青年であるが彼と直接面識があるのは何も鉄心だけではない。鉄心同様、天上皇輝と拳や脚を交わした人間がまだいるのだ。まだ若い頃の若気の至りで完敗した者が。

 

 

「――ふん。確かに似ているな。このまま成長すれば面構えも全く同じになるだろうな。武人ではないから雰囲気の違いはあるだろうが」

 

「全く。急に宏輝君を見たいと言うから何かと思えばそんな事かい。言っとくがワシは彼を鍛えるなんて事はせんからの? 初めは期待しておったが師とあの子では似ていても才能までは似ていないとわかったんじゃ」

 

「当たり前だ。あんな奴が何人もホイホイいてたまるか。アイツだけはもう二度と相手にしたくない」

 

 

 ふんと鼻を鳴らす金の男性は川神学園の学長である鉄心の横で教室で授業を受けている天井宏輝という少年を見ながら忌々しげに彼を見ていた。只ならぬ雰囲気に敏感に感じた宏輝に悪寒が襲っているが、それはまた別のお話。

 鉄心の横にいる者はまだ若かった鉄心が共に切磋琢磨して互いを高め合った友人で戦友でライバルある人間。鉄心とは違って鋭い刃のような雰囲気を発する人間は天上皇輝という過去の人間を嫌っている。嫌うと言っても根本から嫌っているわけではない。

 

 

「おぉ。そういえばヒュームちゃんは皇輝殿にボコボコにやられておったのう。少し後に彼は姿を消したが」

 

「……チッ。勝ち逃げされたから気に食わんだけだ。唯一の黒星がアイツだけだからな。俺は負けっぱなしは嫌いだ」

 

「ホッホッホ。確かにあの人だけには勝てておらんわい」

 

「今なら勝てる」

 

「自信満々じゃの。ワシ、もう勝つ事は諦めたわい。実力も何もかもが勝てる気がせんわい」

 

「偉く弱気だな鉄心。それでも武神か」

 

「真に武神と言われる資格があるのは天上皇輝という人間じゃよ。まさに天に愛されたような武の才気、大きな力に驕らぬ精神力、ワシを誤った道から引き戻してくれたりと。武人として完成しておるワシ等でも勝てんじゃろうと思っておるよ」

 

 

 そう語る鉄心の顔は穏やかであった。それを見れば彼がどれだけ天上皇輝という人間を尊敬しているかがわかる。だが、鉄心の横に立っている男は何よりもそれが気に入らなかった。仏頂面を更に深くし、不機嫌なのを隠さないで授業を受ける宏輝をまるで親の敵を見るような目で睨んでいる。睨まれている宏輝は悪寒に怯え、キョロキョロとして隣のクラスメイトに不思議そうに見られていた。

 金の髪の毛、金の髭が特徴の男性は川神鉄心のライバルであるヒューム・ヘルシング。彼もまた、若い頃に謎の多い天上皇輝に会って戦った事がある人間である。川神鉄心同様、まだ未熟であったために天上皇輝という武人に完敗をし、新たな道を見つけた天上皇輝に影響を受けた者である。だが、影響を受けた上で黒星なのでそこが何よりも気に入らないのだ。

 

 

「……鉄心。あの赤子を借りるぞ」

 

「とは言ってもの。あの子、ヒュームちゃんが思っておるような人間じゃないぞ? 天上皇輝の血族ではないし、武の才気もあるわけではないぞい」

 

「安心しろ。あの赤子には遊びに付き合ってもらうだけだ。丁度、揚羽があれくらいの年齢の小僧の話し相手が欲しいそうなのでな」

 

「……死なんよね?」

 

「……チェスをするだけだ。死にはせん……多分」

 

 

 多分。という言葉でどうしようもなく嫌な予感がする鉄心であった。自分の親友であるヒュームがそこまで言葉を濁すのは珍しい事なので宏輝の身を心配するのであった。

 

 

(巷で噂のチェスキングを負かした高校生。報告の容姿からまさかとは思ったが本当にあの天上皇輝に似ているものだな。全く、揚羽もいきなり対戦したいなどと我が儘を言いおって)

 

 

 

 

 





 露骨な登場。天上皇輝と面識があるのはこの二人とあと一人だけいます。この事がS本編で更にカオスになります。清楚さん以上にキャラが濃くなるかもしれん。

 以前に感想で清楚さんヒロイン希望が多いのは何故? そんなに人気なの? 二重人格のあの人。ぶっちゃけ私は燕先輩派なんだけど。




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