更新の遅れた言い訳 → うつ病って怖いよね。
「あ、ありのままに今起こった事を話すぜ……! 麻雀をしようとしたら喧嘩を売られて殴られそうになって気が付けば金のオッサンに抱えられていた。な…何を言っているかわからねーと思うが――」
「何をブツブツと言っている」
「な、何でもありませんぜ旦那……ってか誰?」
通称、ポルナレフ状態。何が起きたかわからないまま混乱する彼は文字通り、オッサンに俵を担ぐように肩に乗せられて担がれていた。頭がオッサン、金の男性の胸の前にあるために男性のフサフサな髭が顔に当たり、擽ったい思いをしていた。同時に何故こうなったと戸惑いながら隣の厳つい男性の顔を眺める。その顔に見覚えがないか記憶を探る宏輝だが、うんと頷いて心当たりが全くない事を知る。
「自己紹介は後だ。悪いが俺に抱えられたままでいろ」
「俺、ホモじゃないんだけど。そんな趣味は受け入れられないんだけど」
「……アイツとはまた違ったウザさだな。次に余計な口を利いたら顎を外すぞ」
「黙ってます」
声色が本気であった。と後に宏輝は話す。冗談、ユーモアの欠片も無い真剣で厳しい顔をしているオッサンを見れば誰もがそう思うであろう。強ばらせていた体を完全に脱力させ、担がれた状態を維持したままされるがままに米俵の気分を体験しながらどうしてこうなったと考察する。
時刻は午後四時半。日付は次の日から休みになる土曜日。本来であれば土曜日も川神学園は授業を行うのだが、第二土曜日だけは休みになる。それを利用して帰り道に麻雀荘に寄って徹夜で楽しもうと考えた矢先、いつの間にか担がれていたのである。何度も言うが、気分はポルナレフである。
「えっと、オッサン誰?」
「九鬼家従者。そう言えばわかるだろう」
(……九鬼家。世界を代表する大企業の一家か。ジジイの昔の戦友がいるってのは聞いてるがこのオッサンの事なのか?)
むむと宏輝は唸る。九鬼家という存在は鉄心から聞いた事があっても詳細は知らない大きな企業を考え、頭を悩ませる。
(てんで知らない。急成長するにしても有り得ないスピードだし、従者というグループにも心当たりがまるで無い。やっぱ世界が異なるって説は正しいそうだ……参ったねぇ)
その考えに至ると、重い重い溜め息が自然に出る。その音、声を聞いたオッサンは嫌悪感を露わにして宏輝を抱える手に力を入れる。無言の圧力、無言の抗議をするようにしたのは宏輝でもわかった。普段から怪力、人外の力をぶつけられている彼はすぐに謝罪をしてこれ以上悪化しないようにする。
「すんませんすんません! やめてください死んでしまいます!」
「ふっ。安心しろ。人に何本の骨があると思う? ……一本や二本、折れても前よりも丈夫になってくっつくだけだ」
「怖いよこの人! モモちゃん以上に鬼畜すぎる! 誰か助け……! モモちゃん、ヘルーープッ!!」
「現実は非常である」という言葉が頭に浮かぶ。天運持ちである彼だが、絶対強者相手では意味を為さない事を学んでいる。主に武神、川神百代の天罰からを指している。
ジタバタと暴れるが、オッサンは難なく抑え付けると、音も無く宏輝と共に姿を消す。後に残るのは痛いほどの沈黙であり、何事も無かったかのように静かに時は流れる。まだ春、五月に入ろうとしているのに冷たい風が川神の土地を駆け抜けるのだった。
――数分後。百代ヘルプの叫びを聞いた百代がその場に来るが、誰もいない事に首を傾げるのであった。
◆
――本日、何度目のポルナレフを体験した事か。何度も驚いて驚き過ぎて賢者モードに突入しかけている彼は目が死んでいた。
目の前に広がるは、別世界。思わず写真を撮りたくなる衝動に駆られるほど、壮大で美しい光景に圧倒されながらドン引きするという巧みな感情を見せる。正確には、どう感情を表現すればいいかわからないので複雑極まりない表情を見せているのだ。似たような景色に見慣れている彼でもレベルが違い過ぎた。
「……オッサン、写真を撮ってもいい?」
「機密保持のためにカメラとお前を削除する。それでもいいなら構わんぞ」
「諦めます」
(え。俺って何かしたっけ? 何でこのオッサンから遊ばれるように脅し文句を言うの? 元々お茶目な性格なのか? だとしたらかわ――)
「赤子。良からぬ事を考えてないか?」
「ノ、ノーノーノー! 考えてませんサー!」
ギラリと目を光らせる宏輝を誘拐したオッサン、男性。獲物を狩るような目線に、力の無い少年である彼はただ怯えるしかなかった。ヒィと情けない声を出しながら距離を離そうとするが、野獣の眼光とも言える男性の視線に足が動かなかった。
(ヘ、ヘルプミー、モモちゃん。アナタ様の友人が死にそうな目に遭っております。大好きなジャンボピーチパフェを何杯でも奢るから助けて……)
少年の切なる願いだった。生きた心地のしない彼は心の中で最強のボディガードである川神百代に助けを求めていた。
首根っこを掴まれた状態で睨まれるという二重苦に、ガリガリと精神を削られる彼に救いの手が訪れる。豪華な飾りが為された昔のフランスの宮殿のような景色の奥から数人の人間が現れる。その態度は威風堂々、人の上に立つ素質を持っていると一目見てもわかるようなオーラを放つ異質な人間の女性に宏輝の頭はカチリと意識を変える。怯えていた少年から掴み所の無い空気を纏う物へと。宏輝の異質なスキルが発動した瞬間であった。
(あの人……ばーちゃんと見間違うオーラ。年代、容姿、あの感じ。元武道四天王の九鬼揚羽って人か。九鬼家長女、九鬼財閥の正統後継者の一人である女性……モモちゃんもだけど何でこんなに美人が多いんだ。橘さんとか椎名ちゃんとか)
思考を切り替えた宏輝は冷静に目の前の女性を見極める。彼女が誰かを推理できたのは、一重に宏輝が今までに情報収集を怠らなかった成果だ。主に川神学園の学長である川神鉄心との日常会話の中での然りげ無い情報収集だ。
威圧感、妙なオーラを発しながら歩み寄る女性は宏輝が推理した九鬼揚羽に間違いはない。長く、美しい銀髪を揺らしながら優雅に宏輝へと近付く。後ろに三人の従者を従えながら来る姿は圧巻、気圧されるものだ。
「……はじめまして」
「うむ。お初、お目に掛かる。我は九鬼揚羽と申す」
「ご丁寧にどうも。天井宏輝です」
「……ふむ。確かに良い目をしている……と使い古された言葉は抜きにしよう。ヒュームの言うように
(天上皇輝ってどんだけ有名なんだ)
心の中で思う宏輝。百代と出会ってからその名を聞かない日は無いほど、耳にタコができる回数を聞いてきた。その割には情報を集めても実態は掴めずにいるので不思議で堪らない様子だった。
「丁重に持て成した甲斐があったな。さぞ、驚いた事だろうが今日は我の我侭に付き合ってもらいたい。無論、報酬は用意してあるし、迎えは我が九鬼家の誇る従者でも優秀な者を選んでおる」
(優……秀……!?)
戦慄する。何処が優秀だと言おうとすれば無言の重圧に無言の
「本日はお近付きの印に我等の九鬼財閥を紹介しようと思う。聞けば、九鬼財閥を知らないらしいではないか」
「まあ……一般常識なのに知らなくてすみません」
「ふふ。構わぬ。知らないのであれば教えれば良い。無知の子供に諭すように説明するのは大人の役目であろう?」
「あながち嘘ではないけどそんな考え方をしては傲慢で愚かな大人と同じになりますよ。クソ政治家みたいなのにはなりたくないでしょう」
「同感だな……ふむ。発想が柔軟と言っていいのか? そういった考え方をする者はいるだろうが、我のような者に面と向かって堂々と言える者は少ないだろう。面白いとは聞いていたが、予想以上に楽しめそうな少年だ」
(喜んでいいのかわからん。というか天津神って何だ天津神って)
新しい天上皇輝の代名詞を知ってげんなりとする宏輝。以前から天上皇輝という人物に瓜二つだという事で天上皇輝を知る人間から懐かしいと言われては比較され、勘違いされて非日常に非日常という更なる爆弾を投下されている。ヒュームに誘拐される前に百代に助けを求めている彼だが、以前からも武道家を名乗る人間に襲われている。そう、全ては天上皇輝から始まっている。何も知らない人間のはずなのに何故自分は比較されているのだろうかと何時も思う。
妙に機嫌の良い九鬼揚羽に案内され、九鬼財閥を知る。日常生活からあらゆる事にまで手を伸ばして技術を発展させている財閥に純粋に驚愕を見せる彼はそこにある物が以前までにいた場所と比較する事も愚かだと思える技術力がある。嘘だろ、と呟く彼の反応に満足そうに頷く九鬼揚羽の姿が確かにあった。
「最近では医療方面で特効薬を開発している。アルツハイマー病に効く薬が主だ。チンパンジーといった動物で実験をしている」
「おいやめろ。まさかシーザーって名前を付けてないよね?」
「ほう。よくわかったな」
「どうやら猿の惑星のフラグが建ったようです」と宏輝の脳裏にテロップとして浮かぶのだった。その他にも様々なSF映画に似た設定があり、顔を引き攣らせるしかない宏輝だった。
新しい別名、天津神……(笑)。厨二病的な称号と言えばこんな感じ。天上皇輝は厨二病的な名前なので設定もトコトン厨二病にしようかと思っております。天上皇輝は後々で重要人物というか原作オリジナルキャラさんとして出ます。ある設定に絡ませているけど今、気付ける人は凄いと思う。
ヒント → マブラヴみたいなん。