真剣で私に振り向きなさい!   作:賢者神

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 ちょい真面目に書いたらイミフになったので思いつくままに書いてみた。大体最近の漫画とかもこんな軽いので改心したりするよね、って思っておく。


 ※天道総司が湧いてますので天に指を伸ばしましょう。







24 小さな人生相談

 

 

 

 

 

「――揚羽さんに?」

 

「うん。何か九鬼財閥について色々教えてもらってチェスやってた。一泊二日の旅行気分で楽しかったよ」

 

「羨ましい! 私なんか精神を静める修行をして出掛ける暇も無かったのに!」

 

「御苦労様。取り敢えず形だけ慰めておくよ」

 

「本気で心配しろー!」

 

 

 ああ、これだ。とクラスメイトは感じていた。休み明けで月曜日の朝、恒例となった宏輝と百代のやり取りで一日が始まると予感を感じる。声の大きい二人のやり取りにほっこりしながら一限目の授業の用意を各々がしていた。

 九鬼財閥、九鬼揚羽に招待されてチェスの対局の途中でしてしまった発言から空気が微妙になると思われたが、新しい挑戦状と受け取った揚羽がノリノリになった上に上機嫌になったので特に悪くなる事はなかった。最高のもてなしをされたので宏輝としては万々歳だが、一つに二つ。大きな問題があった。

 

 

「飯も美味かったし風呂もでかくて最高だったんだけどさ。これ見てよ」

 

「うわ。どうしたんだコレ」

 

 

 ズズイと百代は髪を額が見えるように上げる宏輝に顔を寄せる。額の髪の根元の近くに一筋の線の傷があり、刃物で切れたような傷だったので百代は触りながら心配する。少し感触の違うそれに指を這わせると、擽ったそうに彼は身を捩る。

 

 

「バイキング飯を食った後に用意された部屋に向かおうとしたらさ、ドジっ子メイドさんのスキルが発動してこう……テガスベリマシター的な」

 

「何があったんだ!?」

 

「使われなかったナイフがスパッと。目にまで血が入る勢いで流れたから大騒ぎになったんだ。軟膏塗ってもらったからそこまで酷くなってないけどメイドさんが凄い怒られて罪悪感を感じちった。俺は悪くないのにね」

 

 

 人事のように大変だったなぁと人並みの感想を思う百代。何かを切るようなジェスチャーを繰り返す宏輝の傷を見て呆れた顔をしており、本当に何があったんだとも思っている。普通のドジスキルの恩恵を受けたナイフでそこまで深く切れるのだろうかと武道家の立場から考察していた。生々しい傷跡に指を這わせては感触を確かめる彼に災難よりも良い方の感想を聞こうとする。

 

 

「言ったじゃん。飯はバイキングで高級食材ばかりだったよ。風呂もリアルでライオンの頭から湯が流れているのだった。隣が女湯で壁で遮って上が空いているベタなので感動した」

 

「覗いたのか。このスケベ」

 

「俺、非力な一般高校生なんだよ? 自分の身長の倍はある壁を出っ張りも無いのに登れると思ってる? 変なオッサンがいて袋叩きにされているのは見たけど。正確に風呂桶が爆撃しているのなんて初めて見たよホント」

 

「いいないいなぁ。私も混ざって楽しみたかった」

 

「夏休みにバカンス行くからそれで埋め合わせをするよ」

 

 

 本気で落ち込んでいる様子の百代を慰めるように子供にするように頭をポンポンと優しく叩く。が、百代は受け入れるどころか拒絶反応を示す。

 

 

「……なんで逃げんの」

 

「こ、このチャームポイントだけは駄目だ! 乱されると力が入らなくなるんだ!」

 

「アンパ○マンかい。というかチャームポイントなんだそのバッテン」

 

 

 必死にチャームポイントだと言う髪のクロスを隠す百代に宏輝は面白そうな顔をする。百代の特徴と言える前髪クロスがまさかチャームポイントだと思わなかったのか、触ろうとする。咄嗟の反応、その手を蠅を叩くように払い除ける百代。

 二人に沈黙が訪れると、何かの冗談だと思った宏輝が再び手を伸ばして再び払い除けられる。手を伸ばす、払い除けられる。いつの間にかそんなやり取りに変わっていた。

 

 

「……そんなに嫌なん?」

 

「やだ!」

 

 

 キッパリと拒否の姿勢を見せるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「ほい」

 

「ん。サンキュ」

 

 

 宙を舞う桃が描かれている缶を片手で受け取る。投げた本人である彼は渋く大人の珈琲とキャッチフレーズがある缶珈琲を一啜り。苦い味をした珈琲が口の中に広がるのを感じながら顰めっ面をする友人を見る。

 

 

「それ、苦くないのか?」

 

「風味があって良いと感想を言わせてもらう」

 

「うへぇ」

 

「ま。味覚なんて人それぞれだしね。俺は結構子供の頃から飲んでいるから慣れているだけ。大人でも珈琲の苦さが苦手って人がいるからそんなに気にしなくても大丈夫だよ」

 

 

 缶の中の珈琲を飲みながら言う宏輝に、少し百代はむっとする。何をするにしても大人っぽい事をしている彼に嫉妬している事は彼女自身、自分で気付いていた。珈琲を飲む事が大人である事とイコールであるわけではないが、諭すように言われて同い年なのに年上に感じてそれが気に食わない事から嫉妬していたりするのだが。

 時期は放課後。特に何事もなく授業を全て終えた二人は恒例と言える帰路を共にしていた。飲み物を百代に奢るのも恒例、駄弁りながら宏輝にからかわれて諭されるのも恒例だ。そしてオチに必ずからかわれる事に嫌になった百代にグーパンをもらうという流れがある。

 今回は休みの日に九鬼財閥を案内された事を土産話として話題にしており、揚羽と会った事とバイキング式の夕飯を饗された事に食いついて二人は楽しく会話をしていた。

 

 

「へー。ジジイからモモちゃんと同じ武道四天王の一人だって聞いてたけど先輩だったんだ」

 

「元だけどな。怪我して引退したけど私と対等に戦える唯一の人だったんだ……少し残念にも思うな。今じゃ、誰も歯応えが無いし」

 

 

 ブスッとする百代。唇を尖らせて暗い表情をするのでかなり深い悩みなのだと悟る。そういえば、と川神鉄心の言葉を思い出していた。百代に関して注意のように受けていた言葉に心当たりがあると思い出し、百代の暗い表情にそれが関係しているのだと彼はわかった。

 

 ――川神百代は武神である。世界に名を轟かせる最強の武道家として有名であり、世界ではそちらの道で知らなければモグリだと言われるほど憧れている者もいる。天下無双と称されており、挑戦者が後を絶たないのだが誰もが百代が求めている実力を持っているわけではなかった。最近では殆どが純粋な勝負をする者がおらず、自分の名を遊び半分で上げようとする不良や彼女の強さを信じずに自分の井の中の蛙を惜しげもなく晒してはボコボコにされるという事が多い。

 自分と対等の者を望んでいる彼女としてはフラストレーションが溜まる一方で数少ない自分と渡り合える者である同じ武道四天王の九鬼揚羽は憧れであり、何よりも求める者だった。戦いたい、そんな感情を強く持っているので余計に歯止めが効かないようになってきている。

 

 

「――だから揚羽さんは私の希望なんだ。私をあそこまで満足してくれる人はジジイ以外だとあの人だけだった」

 

 

 ポツポツと語る百代に、宏輝は沈黙する。話の重さに黙るしかなく、どう声を掛けようかと考えている最中なのだが、自分の心中を語った百代には彼の様子はわからない。

 

 

(言葉を選ばないとマズイなこりゃ)

 

「あっ、あー……」

 

「……」

 

「んんー。先に言っとくけど俺はモモちゃんみたいなスーパーパワー無いから全ての悩みはわかるわけじゃないけど」

 

 

 川原。話をするのに定番である場所に百代を座らせる彼は隣に座って夕焼けが見え始める景色を二人で見詰めながら言葉を慎重に選んで語り掛ける。

 

 

「誰かと対等でいたいという気持ちはわかるよ。自分だけが他人と違うと孤立しているって錯覚を感じるのは俺もあったから」

 

「ヒロも?」

 

「うん。俺も天運とか持ってギャンブルは負け無しでしょ? 頭も良いしテストの成績も良いし」

 

「……自慢じゃないか。ただの」

 

 

 ハッハッハと誤魔化すように笑う。ジト目の百代だが、自然に笑っている宏輝を見て少しだけ笑みが溢れる。

 

 

「他人と違う事で疎外感を感じるのは人間だからこそだよ。普通だと自分よりも弱い人間を殴って悦に入る場合もあるから強い人と戦いたいと思うモモちゃんはそんなアホと比べたら格段に良いけどね。モモちゃんもそんなアホは嫌いでしょ?」

 

「……ま、まあな」

 

「? どったの? 少し歯切れが悪いけど」

 

 

 言えない。と百代は思う。宏輝と面識を持って遊ぶ仲になってからそれをしていないが、弱い者イジメに近い事はしていた。不良に分類される人間をボコボコにして玩具にして遊んだ事もある彼女は罪悪感をヒシヒシと感じており、言葉を濁しているのだ。

 そんな事を知る由もない宏輝は必死に言葉を選びながらどうやって慰めるべきかを考えていた。口上手だが、立ち直らせる高等な技術を持ち合わせていない彼は兎に角必死に考えて考える。

 

 

「ありきたりの言葉になるけど、生まれる場所は誰にも選べないんだ。けど、生き方は自分で選べる。出生を嘆いても何もならない、嘆くよりも自分が生きたい人生を探す方が良い」

 

 

 川原の風で靡く草の斜面から立ち上がると、天に浮かぶ沈みかける太陽を指差す。もし、知識がある人間がいれば、あれ? と感じる仕草だった。

 

 

「――おばあちゃんが言ってた。人が歩むのは人の道、その道を拓くのは天の道だと……っても、ウチのばあちゃんが好きな特撮の名言なんだけどね? だけど俺はその言葉を何よりも気に入っている。道に迷ったらこの言葉を思い出してみ? 自分の道は人の道でも天の道でも選べるって事がわかるよ。自分の道は自分で決められる。それを忘れないようにすれば些細な悩みなんて吹っ飛んで人生楽しく生きられるよ……たぶん」

 

「最後の言葉が無かったら感動してたのにな。残念な奴だ」

 

「……ごめん。こういうの、苦手なんだ。ばあちゃんでもいればすぐに悩みを解決してくれるんだけどさ……」

 

「ありがと。少しだけ元気が出た」

 

 

 困ったようにポリポリと頭を掻いた彼に、百代は笑う。感謝しているとも言葉を添えると、宏輝は珍しく照れる。そっぽを向いて頬をポリポリする様子に面白いものを見たというように顔を緩ませる百代。

 

 

「おっおっ? 照れてるのか?」

 

「そ、そそそそ、そそそんな事ないやい! ……畜生。純粋に感謝されると照れちまうじゃねーか……ハッ」

 

「聞こえたぞ聞こえたぞー? 可愛いところもあるじゃないかヒロ。お姉さんがナデナデしてやろう」

 

「やめて! そんなに優しくしたら狂っちゃう! いじるのは好きだけどいじられるのは慣れてないんだよ!」

 

「むふふっ。今までのお返しができるな……ふひひ」

 

「犯されるぅー!!」

 

 

 美談となるはずなのにオチが付くのは二人の性格ゆえだった。

 

 

 

 

 

 

 





 おばあちゃんが言ってた――こう言えば何でも許されるのが天道のクオリティ。明らかに変身後で考えたのもありそうな気がする。

 百代が天道化してもイメージ変わらないよね。






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