真剣で私に振り向きなさい!   作:賢者神

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 注意。実際の川神百代はこんなキャラではありません。






03 第一災難

 

 

 

 

 

 ラッキースケベを体験した少年。乙女の怒りの矛先とばかりに少女、百代に殴り飛ばされた後に土左衛門となったまま川をどんぶらこどんぶらこと流されていた。流石に殴るのまでは後悔、反省しているのか、百代は川に流される少年の救助をする事にした。ずぶ濡れなので百代が触れると服が濡れる。心なしか、百代自身も嫌そうであった。

 可愛らしい美少女である彼女は男らしくダランとして動かない少年を俵担ぎしており、有り得ない事に川の水の上を地面を走るのと同じように走っていた。正確には、とん、とん、とんとステップを刻むように等間隔でジャンプして渡っている感じだった。

 

 

「……どうしよう。こいつ」

 

 

 川から救助した百代は新たな課題にぶつかる。ずぶ濡れである少年をどうするか、である。水に濡れた服を着たままだと風邪を引く可能性もあり、見知らぬ人間だとしても一般人である少年を殴り飛ばした罪悪感も持っており、体調を気遣う事を第一に考え始めた。

 取り敢えず百代は見様見真似、テレビのドラマなどで得た知識を有効活用する事にする。濡れた服を全て脱がし、焚き火を焚いて木の枝を通して濡れた服を乾かす。まさに無人島に遭難した対処を住宅街も近くにある場所で行う彼女は愛すべき馬鹿であった。下着一枚になった気絶している少年を火の近くに置き、冷えた体も暖めていた。傍から見れば、少年を裸同然に剥いた美少女と薄い本ができそうな展開である。

 少年が起きるまでの間、少年の素性を知ろうと濡れた制服のポケットから財布や水に濡れたために壊れた携帯電話を取り出す。まずは財布の中身、百代は身分証明書を調べる前に何故か札の数を数えようとする。

 

 

「――何ィ!? 何でこんなにあるんだよ! 同じくらいなのに私よりも金持ちじゃないか!」

 

 

 その枚数に圧倒され、思わず叫んだ。福沢諭吉様がこんなにいるのは初めてだ――と百代は呆然とする。少なくとも、百代の倍以上の金額の金が財布にあった。ネコババしようと邪な考えをすれば、そのタイミングを見計らったように気絶している少年が呻いてネコババを阻止する。天運、ここに極めり。

 気を取り直して百代は身分証明書らしき物のカードを調べる事にした。何かの会員証、学生証、そして何故かある原付免許。全てを調べると少年の名前と素性が大体わかったが、同時におかしいと思う場所が出てきた。

 

 

「川…崎、市? そんなのあったか? それに天牌なんて麻雀荘も知らないし。何か謎が増えたなこいつ」

 

 

 原付免許にある住所、会員証にある天牌という麻雀荘の住所と名前、学生証にある学校の名前と住所。全てが百代の知らないものだった。日本、地元である川神市の近くにはこの住所の名前も無く、聞いた事が無い名前であった。

 携帯電話を調べるも、水に濡れて壊れてしまっていて調べる事ができない。百代の知る携帯電話よりも高性能なので性能がわからないという事もあるが。携帯電話を調べる事を諦め、他の事を調べようと今度は“裸同然”の少年を触り始めた。ペタペタ、ではなくつつーっと妖艶な手の動きをしながら触診する。完全に少年を襲う痴女の図であった。

 キスをされた恨みを晴らすためか、ビクンビクンと反応する少年を見ながらほくそ笑んでいた。性感帯を調べるついでに乳首を重点的に責めている百代は完全に悪魔の顔である。

 

 

「ヌフフフッ。女の子を触るのもいいがこれも中々――ん?」

 

 

 触る事を楽しんでいた百代はある事に気付く。彼の肉体のあらゆる場所を触ったからこそ気付いたその違和感。脇腹と何かが貫通したような場所にある背中、瘡蓋(カサブタ)のような感触が手に伝わる。ゴロリと少年を転がすと、うつ伏せにして背中を見る。

 古傷か。と百代は思う。これを見れば誰もが思うであろう傷跡。まるで刃物で腹部を刺されたようなものだと、背中からか腹部からかそこまではわからないが酷い傷だったのかと考える。

 暫し、考える間ができる。そしてすぐに考えるだけ無駄だと結論付けて少年を弄る手を再開させる。難しい顔で考える先程の様子が嘘のように今は子供の悪戯をする時の楽しそうな笑顔で今度は背中の性感帯を探しながら背中から乳首を弄る。乳首フェチなのだろうか、川神百代。

 

 

「……こいつ、本当に男か? 女の子みたいなモチモチな肌だな。いつまでも触ってても飽きないなコレ……フヒヒ」

 

「――あの、何をしているんですか」

 

「おまわりさん助けてください! こいつがパンツ一枚になって私を襲おうとしたんです! 怖かったから気絶させてしまったんです!」

 

「なにっ! マル変確保ォ! …大丈夫ですか。カウンセリング担当の女性警官をお呼びしましょうか?」

 

「だ、大丈夫です。うぅ……帰って祖父に慰めてもらいます」

 

 

 最低だった。外道であった。

 少年を弄る事を楽しんでいた百代は後ろから聞こえる声の主、青い国家権力の公務員に助けを求める。演技であろう泣き真似をしてあたかも自分が被害者であるように見せる徹底ぶり。少年に非があるとはいえ、流石にこれはやり過ぎだ。下着一枚の少年は手に手錠を掛けられ、原因を作った百代は涙を流しているフリをしている。

 

 ――ここで思い出して欲しい。公然猥褻罪として逮捕された少年だが、彼の持ち物は警官に“押収されていない”。この意味がおわかりだろうか?

 

 

(慰謝料として回収しとこう)

 

 

 川神百代、小遣い削減による金銭不足。少年の財布をまるごと盗むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「いや、だから! 俺は何もしてないって! 本当だって! 信じてくれよハゲた刑事さん!」

 

「テメッ、クソガキ! 気にしてるんだから言うんじゃねえ! それより何で下着一枚で女の子に迫った? 学生特有のムラムラしたからやりましたってか? これだから童貞って奴は――」

 

「俺、童貞じゃねーし。ムラムラなんか初対面の女にしないよ」

 

「死刑。送検の用意しとけ」

 

「完全に私情だろアンタ! そして知りたくなかった魔法使い説!」

 

 

 少年の現在地、尋問室。公然猥褻罪で逮捕されると、気絶したまま連行される。気が付いたら強面の頭が寂しい刑事が煙草を吸っていた。ポルナレフコピペがそのまま付ける状況であった。

 身に覚えのない罪を着せられ、変態の犯人扱いされる事を知った少年は勿論、反論する。同時にある事を思い出し、反論に反論を重ねる反論で刑事に食って掛かる。

 

 

「こう、黒い髪の毛が長い女の子で珍しい赤い目をしている奴だ! あの野郎、俺を空にぶん投げた挙句に受け止めようとしなかったんだぞ!」

 

「ああ、はいはい」

 

「――班長、それって川神百代では? 軽々と空に投げるなんて武神である彼女くらいですよ」

 

「……ちょっと待った。そこのイケメンの刑事さん」

 

 

 尋問室で弁論する少年と班長と言われた男性の間に若い刑事が割り込む。その言葉が気になった少年が手を伸ばして止め、言葉の真意を聞こうとする。

 

 

「川神百代っていうのか? あの女、俺の財布を――って何そのマジかよ。みたいな顔は」

 

 

 二人の刑事は驚いたように、それ以上に驚愕を表して少年を見る。尋問室であるにも関わらず、やけにリラックスしているので刑事は驚愕と唖然と様々な感情が入り混じって変な表情になっていた。ズズズと温かいお茶を啜る少年。犯罪者扱いなのに妙に適応しすぎである。

 怒るのも疲れたのか、取り敢えずは落ち着こうという考えに変わったからこそ、ここまでリラックスしているのだ。怒りに身を任せては勝てる勝負も勝てないと賭博、麻雀を通じてそれを学んでいる。なので、自分の感情のある程度のコントロールと切り換えの早さがウリでもある。

 

 

「……班長。この子、キメてますね」

 

「ああ。武神を知らないなんてシャブ以外にはあるまい」

 

「待て待て待て。俺をシャブ常用者みたいな扱いをすんな。寧ろ武神とかワロスってのがこっちの考え方なんだが」

 

「いや、だって川神百代と言えば世界的にも有名だし」

 

「マジで? 俺が時代の流行に乗れてない感じ? 麻雀しすぎて頭がアホになったのか?」

 

「賭博関与の罪で別件逮捕」

 

「遊びだっつーの! ハゲ刑事、アンタ俺の事が嫌いだろ!」

 

 

 うがーっと吠える少年。どうも少年と二人の刑事の間で価値観の違いがあるようで、切り換えの早い少年でも混乱し始める。自分の知らない知識、常識と言っている事を今まで聞いた事がない。それが混乱する主な原因である。

 考える。考える。考える。考える――この違和感の正体を考える。

 

 

「むぬぬぬぬ……わかんね」

 

 

 そして、少年は考える事をやめた。麻雀ができればいいやと堕落した人間の考えを示すのであった。

 

 

 

 

 

 





 修正改訂 13/05/24




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