コンセプトが固まりました。なので、あらすじや題名を変えて完全に決定いたしました。コロコロと変えてすいません。
ある程度の進行は考えていますが、原作と他の方の小説の影響でハーレムになる可能性が濃厚になりそうです。ただし、京は大和の嫁。これは変えられぬ(キリッ
「う、嘘だろ……?」
―― だらっしゃあ! また俺の勝ちだ、ブラックジャック!
―― あ、有り得ねぇ! 何回ブラックジャック出してんだよ!
―― まだガキなのになんて強さだ!
―― ニヒヒヒ。まだやる?
―― ……クッ、参った。降参だ。持っていけ!
―― まいどまいどっ
有り得ないと百代は呆然と呟く。友人となった少年、宏輝のその実力を目の当たりにして驚く以外の感情が出なかった。あくどい顔をしながら新品のトランプの数枚を手に持ち、相手を貶めるような言い方をする宏輝。短い時間だけとはいえ、人柄が良いと思っていたのに浮かべている表情を見れば別人のようだと感じる百代。
悔しそうに歯軋りする相手の男性は憎しみを込めてテーブルにバンと数枚の札を出し、荒々しく建物から出て行った。そんな様子を見た宏輝はあくどい顔から人懐っこい、百代の人柄が良いと感じた表情に戻る。テーブルに置かれた札、合計七万円のそれを取ると、近くにいる如何にもホームレスに見える男性の手に握らせた。
「ほいおっちゃん。二度と騙されんなよ」
「おおぉ。ありがたい。本当に取り返してくれるとは……ありがとうあんちゃん」
「困った時はお互い様。悪いのはあの馬鹿だし? おっちゃんが頑張って稼いだ金を奪うなんて許されないって。また取られたら言って? ギャンブルは得意だからいつでも取り返せるよ」
「ありがたい。ありがたい……こんなに優しくしてもらえたのはいつ以来だろう……」
ニヒヒと笑う宏輝に涙を流すホームレスの男性。ペコペコと宏輝に頭を下げながら建物、賭博場から出るのを見計らって手を振っている宏輝に近付く百代。労いの言葉を掛けようかと考えたが、背中を軽く叩くだけにした百代。
「お人好しだなヒロ」
「まあね。俺、昔にホームレスの人等にギャンブルを教わった事もあったから助けようと考えているんだ」
「マジか。そういえばホームレスの中でギャンブルに強いのがいるってジジイが言ってたな」
顎に手を当て、考える百代。ギャンブル、先程やっていたのはトランプを使うブラックジャックだ。カジノ定番のゲームでカードの合計が21こ越えないようにプレイヤーがディーラーよりも高い得点を取る事で勝利を得られるものである。先程のゲームでは、ホームレスから金を巻き上げた元ディーラーの経験がある“その筋の人間”である。新たなカモとして現れたと思っていた少年はギャンブラーの才能を持ったギャンブル狂い、天才であった。デック、ショートデックと呼ばれるブラックジャックでの代表的なイカサマを使い、勝率を最低まで下げた状態でディーラーは勝負を挑んだ。結果、一枚しかないエースと10カードを全て抜いて圧倒的な勝利を収めた。ルールを詳しく理解していないであろう百代にペットボトルの水を飲みながら説明する宏輝。
「――つまり、さっきのは普通の人がどう足掻いても勝てない仕組みになってたってわけ。結構使われるイカサマなんだ」
「詳しいな。さっき以外にも経験があるのか?」
「あるよ。子供だからわからないって思ってやったらボロ負けして唖然。って顔を何度も見た」
「……鬼畜だな。それだけを聞くと」
「イカサマを仕掛けた方が悪い。もっと言えば見抜かれるのが一番悪い。イカサマは見抜かれないからこそのイカサマだ。簡単に見抜かれるお粗末なイカサマはイカサマとは言わないよ」
ふと、百代は気が付いた。宏輝がペットボトルを持っていない方の手で無意識に腹部に触れるのを。百代の記憶が正しければあの位置には傷のような物があったはずだ。ギャンブルの事を話し、無意識か意識的か、どちらにしてもその傷はギャンブルに関係するのだろうと百代は思った。イカサマの事をそこまで詳しく言う事を考えると、そんな事があったのかと百代は心が痛むのを感じる。まだ若いのに――と。
何やらシリアスな雰囲気を出す百代だが、宏輝の心中は全く別の事を思っていた。
(肉の食べ過ぎで胃が凭れた)
(ヒロ、今まで苦労してきたんだな……クッ)
「んでピーチ。他に面白い場所ある?」
「クッ……まあ他にも面白い―――って何だその呼び方は」
「百代で桃、ピーチ。姫を付けたら攫われそうだと思わない?」
「やめろ。その呼び方だけはやめろ……えーじゃない。せめてモモにしろ。攫われるくらいなら尻尾を掴んで振り回すわ」
「じゃあモモちゃんで。同い年っていうけど、どうにもモモちゃんって子供っぽいよね。マリオ知ってるの?」
「お前が言うかお前が。スーファミで何度かやった」
百代は宏輝を叩いた。叩かれた側、宏輝はニヒヒと口癖である子供っぽい笑い方で応える。少し怒っていた百代はそんな笑顔に毒気を抜かれた気分になり、苦笑する。こんな一面も天井宏輝という少年の良い場所なのだろうと思っていた。二人は並んで歩きながら川神の街を歩く。時折、百代のツアーガイドらしい観光案内もして宏輝はへーと相槌を打ちながらも興味深そうに説明された場所を眺めたりしていた。
ほい。とたまにある店でおやつ扱いのお菓子やコロッケを宏輝自身と百代の二人分を買って食べ歩きをしたりする。警察の手当を倍にしたため、金だけはある宏輝は観光気分で百代と雑談しながら――というより、修学旅行気分で川神市を練り歩いていた。男とは仲の良い人間以外とは初めてのため、少し新鮮だと感じ、楽しいとも感じている百代。パチンコ、パチスロを見掛けるとフラフラと導かれるように店の中に入ろうとする宏輝を止めたり、自分で買ったお菓子を道行く子供に与えたりする宏輝を見たり。新しい景色が見えていた。
「うお。ぬこだぬこ。しかも真っ黒。これ食うか? ――え? 死んじゃう? ノー?」
(猫かヒロ。自由奔放すぎるぞ)
「モンプチか。やっぱりモンプチか。コンビニで買ってくる」
「待て待て。少しは落ち着け。さっきからあっち行ったりこっち行ったりと忙しい奴だな」
猫と同じようににゃーと鳴き真似をする宏輝を借りてきた猫のように襟を持って持ち上げる百代。野良猫である黒猫もにゃーと鳴きながら浮いている宏輝を見上げ、少し高い位置にある靴に手を伸ばそうとジャンプしては猫パンチを繰り返していた。
「思うんだが、動物とか人に関係なく好かれるんだな」
「自分でも思う。ばーちゃんが言うには俺には“天”が付いてるって事らしいよ。だからホームレスの人とか初対面の人との交流を簡単にこなせるって聞いた。天運だけでなんでそこまで言えるかわからんけど」
「不思議な奴だなぁ、お前」
「自分でも自分がわからないよ全く……それより離してくれない? モモちゃん」
「やだ」
ぷらんぷらんとてるてる坊主のように揺れる宏輝を少女とは思えない怪力で軽々と持ち上げる百代は流石、武神と言わざるを得ない。少し暴れても微動だにせず、持ち上げられている場所を支点に揺れるだけであった。
「はーなーせー」
宏輝の声に合わせ、黒猫も合唱するようににゃーと鳴く。宏輝の足で遊んでいた黒猫は対象を変え、百代の足元に擦り寄って遊んでいる。肉球のある手でふにふにと少し露出した靴下で覆われた足の甲の部分を触っては楽しんでいる。そんな様子に、彼女は空いた片手で黒猫を摘んで宏輝の前に出して見せる。両手は自由なので、黒猫は宏輝の手の中に収まった。おーよしよしと手馴れた様子で黒猫の首を撫でると、ゴロゴロと嬉しそうに鳴く。
(何か和む)
「おっちゃんおっちゃん。この猫ちゃんに救いの手を差し伸べてくださいませんか?」
「……っていつの間に抜けた」
宏輝を持っていた手を見た百代は宏輝がいなくなっている事に気付く。気付かぬ間に抜け出していた事に驚き、黒猫を前に突き出して餌こと食事をくれるようにお願いしている宏輝を見つける。相手は土産屋で働く店の主人である男性であり、少年の宏輝と楽しそうに笑いながら会話をしていた。初対面であるはずなのに、すぐに仲良くなっているのにも百代は驚いていた。馴染み易いのは知っていたが、まさかここまでとは思わなかったようだ。
また来いよ坊主と土産屋の男性の声を聞きながら二人はまた場所を変えるように歩き出す。新しい連れに、黒猫がチョコチョコと宏輝と百代の後ろを歩いて付いて来ていた。チリンチリンと鈴、黒猫の首に着けられた赤い首輪の黄色い鈴が周りに鳴り響いていた。
「名前はクロにしよう」
「飼うのか? 凄い懐いているなこの黒猫。変なフェロモンでも出ているのか?」
「否定できないのが現状である。このせいでどれだけ苦労した事か――」
主にこんな事が。と語り始める。初めは興味本位で聞いていたが、だんだん話が進む度に顔を引き攣らせる。自分が思っていた事と違っていた事が起きていた事に引き攣っているのだ。
「犬に寄られて舐め回される。動物園に行けば必ず動物が脱走して絡まれる。宝くじを買えば一等以外は当たらない――」
「も、もういい。幸運なのはわかったけど同時に不幸なのがよくわかった」
疲れた感じで話している宏輝に百代は話を止める。天運といっても、幸運が幸運になるわけではないのだと彼女は悟った。宝くじが一等なのは魅力的だが、話の中にあった幽霊に会える幸運だけは体験したくないと考えていた。幽霊嫌いな川神百代、少女らしい可愛い一面であった。
話を逸らすように、百代は陽が暮れるまで宏輝を川神市を案内する事にした。朝から練り歩き、昼食を一緒に取るなど。世間で言う『デート』である行動であった事は百代はこの時点ではまだ気付いていない。
――しかし、そんな楽しい時は終わりを告げる。
「ん? 電話か?」