これは終わるはずだった物語...
西暦2138年の某日、ある一つのゲームが終わりを告げようとしていた。DMMOーRPGの人気に火をつけたゲーム、
《
それは現在の地球の環境の悪さによる悪影響から逃れるように多くの人がプレイしていた。それも今から見れば過去の栄光である。
◆
ユグドラシル某所
全身に漆黒に黄金のラインが刻まれている鎧をまとい、頭に黒いリング、背中に黒き3対6枚の羽根を生やしたキャラがいた。
所謂堕天使と呼ばれる種族のキャラである。
「ふぅ。ようやく最後のクエストが終わったぜ」
俺ことゼクス・オーラルはため息混じりに呟やき、ふと時間を確認すると、
【10時30分】
「おっと、そろそろ行かないとやばいな」
今日がユグドラシルの配信最終日である。もし遅れでもしたら洒落にならない。
「よっしゃ、行くか!」
彼は自分たちのギルドを思い浮かべながら転移魔法を使い転移した。
◆
「よし、到着!」
彼は無事に自分達のギルドに転移できたのを確認して歩きだした。
ギルド、『アインズ・ウール・ゴウン』
ユグドラシル内でDQNギルドとして名高く、メンバー41人全てが異形種で構成されている珍しいギルドである。しかしその実力は凄まじく、かつては何千とあるユグドラシルのギルドの9位にまでつけ、Lv100プレイヤー1500人による大侵行を撃退したのはもはや伝説である。
アインズ・ウール・ゴウンの拠点は『ナザリック地下大墳墓』とよばれ、全10階層でできている。彼はギルドの一員である証しのリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで第9階層へと転移した。
◆
「最終日だし、誰かインしてる人いるかな〜」
彼はそんなことを呟きながら円卓がある部屋をめざした。しばらく歩くと机を叩きつけるような音が聞こえてきた。
「くそっ、ふざけるな!」
そこには骸骨の顔したキャラが座っていた。
(あ〜、こりゃモモンガさん怒ってるな。)
円卓に座っている骸骨、そのキャラこそが我らがギルド、アインズ・ウール・ゴウンをまとめあげたギルド長の『モモンガ』である。
俺は内心そんなことを思いながらモモンガさんに声をかけた。
「やっほ〜、モモンガさん。大丈夫かい?」
モモンガは扉の方を見て、俺を見つけると、
「あっ、ゼクスさん!どこいってたんですか?」
「いやなに、ちょっと最後に途中だったクエスト
を終わらせきてましたw」
「も〜、最後なんだからちゃんと来てくだ
さいよ〜」
「すみませんw」
俺は笑いながらモモンガさんと軽く会話をしながら呟いた。
「やっぱり寂しいですね」
「そうですね。最後だからもう少し来てくれるかと思ったんですがだめみたいですね」
モモンガも寂しそうにそう呟いた。アインズ・ウール・ゴウンは一時期は栄華を極めたものの、今となってはその大半が引退し、残ったのは俺とモモンガさんの2人だけになっていた。
「まぁ、みんなリアルが忙しいんですよ」
そう、これはゲームである。当然リアルの方が大事に決まっている。それを言ってしまえば最後まで残っている俺達が少しおかしいのかもしれない。
俺はモモンガさん一つ提案をした。
「モモンガさん!最後にナザリックを回って見ませんか?」
「いいですね!最後ですし、軽く見て回りましょうか」
「そうこなくっちゃ!あ、最後ですしモモンガさん、あれ持って行きましょうよ!」
「あれ?」
「ギルド武器ですよ!」
「ギルド武器ですか?たしかに一度も動かしたことなかった気がするな」
「でしょ?是非持っ行ってくださいよ!」
「でも、これはギルドの象徴としてのものですし、俺個人で持って行ってもいいんでしょうか?」
「いいに決まってるじゃないですか!うちのギルドマスターはモモンガさんなんですから!」
「う〜ん、そうですね。持って行きましょうか!」
「はい!」
モモンガさんがギルド武器、『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を掴むと黒いもやとともに苦悶の声が聞こえてきた。
「うわっ、作り込みこだわりすぎ」
モモンガさんは驚きの声をあげていた。
(モモンガさんは今まで俺達に遠慮して自分の意見をあんまり言ってなかったからな。最後くらい我が儘いっても許してくれるでしょ。)
俺はそんなことを思いながら言った、
「似合ってますよ、モモンガ!魔王って感じ」
「も〜、ちゃかさないでくださいよ!」
「はははっ、すみませんw んじゃ行きますか!」
俺達はそんなことを言い合いながらナザリック内を改めて見て回るために円卓をあとにした。
◆
ナザリック第8階層
そこで俺はずっと思っていたことを言った。
「モモンガさん。最後ですし、ルベドを起動させてやってくれませんか?」
そう。俺は自身がナザリック内にいるめちゃくちゃ作り込まれているNPC達のなかでもルベドが特に好きだった。そりゃもう嫁にしたいくらいに。
ナザリック内の個では最強の戦力であり、かのワールド・チャンピオンであるたっち・みーさんにすら勝てる可能性がある脅威のNPCである。俺自身、勝てるかどうかは怪しい。
「ルベドですか?」
「はい」
「あ〜、ゼクスさんルベドのこと大好きでしたもんね。『ルベドを下さいっ!』ってタブラさんに頼みこんでたし」
そう、そして最終的にはPvPで俺が激闘の末タブラさんに勝利し、許可を得たのだ。
「お願いします、モモンガさん!」
「そうですね。最後ですし起動させてやりま
すか」
「やった!モモンガさん最高だぜ!」
「恥ずかしいですからやめてくださいよ〜」
そう言いながらモモンガさんはギルドマスター権限を使ってルベド起動した。すると一瞬の光りとともに純白の鎧を身にまとい、俺とは正反対の白いリングに白い翼を生やした、淡いプラチナブロンドの髪をした女性が目を覚ました。女性といっても少女と女性の丁度中間くらいの見た目である。
「あぁ〜、やっぱりルベドはかわいいなぁ〜」
俺はにやにやしながら(表情は変わらないが)ルベドを眺めていた。俺はわりと時間があるときにルベドを起動してもらい、色々話しをしにきたりしていた。だが最近は起動する時間もなく会えずにいた。
「ごめんな〜、ルベド。最近あんまり話しをしてやれなくて」
「本当にゼクスさんはルベドが好きですね〜」
「もちろんですよ!」
とかいう話しをしながらもうあまり時間もなかったので、名残惜しかったが俺達はルベドにわかれを告げて、最後の目的地である玉座の間へと向かった。
◆
玉座の間
ここにくる途中にセバスやプレアデス達NPCにもあったので、付いてくるように言って玉座の間までやってきた。そこでモモンガさんが玉座に座り俺がその近くに立っている状態で最後の時間を過ごしていた。そこで俺はふとあることを思い出した。
「ん?アルベドってたしかルベドの姉的なポジションのNPCでしたよね?」
「たしかそうですね。こう見ると結構ルベドと似てるとこありますね」
「ですね〜。設定厨のタブラさんのことだからめっちゃ凝ってそう」
「見てみます?」
「おっ、見ちゃいますか?」
と言ってモモンガさんはギルド武器の能力使ってアルベドのテキストを表示した。
「「ながっっ!!」」
二人揃ってそんなことを言ってしまった。いやだってね、めっちゃ長いんだもん。そりゃそんなこともいいたくなるわ。
「いや〜、さすがタブラさんとしか言い様がありませんね」
「ですな」
アルベドのテキストを下の方まで見ていくと最後の一文が目に止まった。それは、
『ちなみにビッチである。』
「「えっ?」」
そこには思いもよらなかったことが書いてあった。まぁ、タブラさんらしい気もしたが...
「いや〜、さすがにこれはちょっとかわいそうですね」
「ですね。何か変えてあげましょうか」
「そうですね。変えてあげましょう。何かいい案あるんですか?」
モモンガさんはしばらく悩んだあとギルド武器の力を使ってテキストを書き換えた。覗いてみると、
『モモンガを愛している。』
最後の一文にはそう書かれていた。
(え、モモンガさんってこんなこと書くような人だったけな)
「モモンガさん。これって...」
「い、いいじゃないですか!最後なんですし!」
モモンガさんは焦ったようにそんなことを言ってきた。もしかしたらモモンガさん実は、アルベドのことが意外と好きだったのかもしれない。
「はははっ、そうですね。タブラさんギャップ萌えでしたし、大丈夫でしょう。(たぶん)」
そんなことを話しているとそろそろ時間が近づいてきていた。俺達の夢が終わる時間が。
「そろそろ時間ですね。」
「ですね。――たっち・みー、ウルベルト、ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜...」
モモンガさんは玉座の間に掲げられているみんなのサインが入った旗を指差しながら、順番にギルドのメンバー全員の名前を言っていった。
「――最後になりましたがゼクスさん」
「はい」
「最後まで残ってくれて本当にありがとうございました。ゼクスさんがいたから俺も最後まで続けることができました。」
「いや、そんなっ!俺のほうこそ最後までモモンガさんと一緒に冒険できて本当に楽しかったですよ!」
そう。これで本当に最後なのである。
「モモンガさん。最後にあれ言って締めましょうよ!」
「そうですね。」
俺達は二人揃ってこの言葉をいった。
「「アインズ・ウール・ゴウン万歳!!」」
そして静かに時計は24時を指した。
しかし、これが全ての物語の始まりだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次の話しも是非楽しんでください!