楽しんでいただければ幸いです!
「ふわぁぁぁぁぁ〜。ん、朝か」
俺はベッドで目を覚ました。
「んー、やっぱりこの部屋は豪華すぎるよな〜」
辺りを見回しながらそんなことを呟いていた。俺の、いや、俺達ギルドメンバーの私室はとても豪華な造りになっていた。アインズ・ウール・ゴウン最盛期に造られたここは、リアルの世界の超高級ホテルにも匹敵するのではないか、というほどである。
「おはようございます、ゼクス様。朝食の御用意はできております」
そんな声が俺の思考を断ち切った。この声の主はルベドである。そう、今ルベドは俺の部屋にいるのである。俺的には朝からルベドの声を聞き、顔を見れるだけで幸せである。しかし何故ルベドが俺の部屋にいるのかというと、それは俺とルベドが戦った日まで遡る。
◆
―ゼクスとルベドの戦闘直後―
「はぁ、はぁ」
俺は肩で息をし、剣で身体を支えながら立っていた。
(なんとか勝てた。かなり際どい戦いだったけど)
俺はルベドとの戦いに勝ったのである。今ルベドは意識を失って倒れている。
(おっと、余韻に浸っている場合じゃないな)
「ペストーニャ、回復を頼む」
俺は、アルベドが連れて来ていたナザリック1のヒーラーであるペストーニャに回復を頼んだ。彼女は見た目は犬の顔の中央に縫った後があるような見た目だが、高位の神官であり、ナザリックのメイド長である。ちなみに彼女は語尾に「わん」と付けるように設定されているらしい。まぁよく忘れているのだが。
「畏まりました・・・わん。
ペストーニャはそう言うと俺にヒールの魔方をかけてきた。
「ああ、いや、俺じゃなくてルベドに頼む。HP1しか残ってないからな」
「で、ですが・・・」
ペストーニャは困ったような表情でそう言ってきた。
(ふむ、俺達を攻撃してきたルベドを警戒しているのか?)
俺が内心でそう分析していると、モモンガさんからメッセージがきた。
《ゼクスさん、お疲れ様でした。まったく、一時はどうなるかと思いましたよ》
《あはは・・・、すみませんモモンガさん。迷惑をかけてしまいました》
《まったくです。まぁ、ゼクスさんのこういったことは今に始まったことではないですからいいですけど》
《そうでしたっけ?》
《そうです。・・・ですが、ルベドの方は大丈夫でしょうか?》
《大丈夫だと思いますよ。最後は憑き物がとれたような表情でしたから》
《だといいんですが・・・》
《ということで、ペストーニャにルベドを回復させるよう言ってもらってもいいですか?》
《わかりました。ゼクスさんはルプスレギナに回復してもらってください》
《了解です》
「ペストーニャはルベドの治療を頼む。ルプスレギナはゼクスさんの治療を」
モモンガさんがそう言うと、渋っていたペストーニャもルベドにヒールをかけにいった。俺の方には突然自分の名前が呼ばれてびっくりしたのか、驚いた様子のルプスレギナがやってきた。ルプスレギナはプレアデスの一員であり、ペストーニャと同じく高位の神官である。
「ゼクス様、治療させていただきます」
いつもとは違った仕事モードの喋り方で俺にヒールをかけてきた。さっきまで激痛がはしっていた身体が、だんだん楽になってきた。そのまましばらくヒールを受けていると、ルベドが意識を取り戻した。
「んっ、私は・・・」
ルベドはまだ少し記憶がはっきりとしていないのか、ぼーっとしていた。ルベドが意識を取り戻したのに反応して、守護者達が一気に警戒体勢にはいる。そんな彼らを俺は手で制しながらルベドに話しかけた。
「ルベド、何があったか覚えているか?」
「ゼクス様・・・、はい。私は負けたのですね」
「そうだな。あの勝負は俺の勝ちだ」
「そうですか。ですが負けたのに不思議と嫌な気持ちにはなりませんね」
どうやら記憶ははっきりとしているようだ。ルベドが無事でよかった。
《モモンガさん、とりあえず大丈夫そうですよ》
《ですね。よかった〜、ルベドが反旗を翻したなんて洒落になりませんからね》
《あはは、そうですね》
《ですが忠誠心はもともと設定されてないから仕方ないとして、ルベドは今後どうするつもりなんでしょうか?》
《そこんとこも今から聞いてみます》
《お願いします》
モモンガさんとそんなやりとりをしながら、俺はルベドに話しの続きを聞いた。
「そうか、ならよかった。・・・ところでルベドよ。お前はこれからどうするつもりなんだ?」
「私は・・・」
「いや、いいんだ。お前にはもともと忠誠が設定されてないからな。まぁ、できるなら敵対・・・」
「ゼクス様、私はあなた様にお仕えしたいと思っています。他の何者でもない、あなた様だけに」
「えっ・・・、そ、そうか」
《これは驚きましたね。まさかルベドがゼクスさんに仕えるなんて言うとは》
《ええ。俺としては嬉しいんですけどね》
《でもなんか、ゼクスさんだけに仕えるみたいなこと言ってませんでした?》
《え、ええ。どういう意味でしょうか》
「え、えーっと、ルベドよ。それはどういう意味だ?」
「そのままの意味でございます。私はあなた様の剣であり、盾。この身が尽きるその瞬間まであなた様をお守りいたします。(そして、できることならこの身も心もゼクス様に・・・)」
「ん、わかったルベドよ。(なんだ、そういう意味か〜。ちょっと残念だな)」
「ならばお前は俺の言うことにしか従わないということか?」
「はい。私が仕えるのはあくまで、ゼクス様ただ一人。他の者に従うつもりはございません」
その言葉を聞いた瞬間、後ろにいた守護者達の雰囲気が一気に険しくなった。
「ルベド、あなた!」
《うわぁ〜、まじか〜。どうしましょう、モモンガさん》
《どうしましょうって言われても・・・。しかたないですね。ルベドはゼクスさんの専属にしましょう》
《えっ、いいんですか!?》
《ええ。ですが後でせめて俺の言うことは聞いてくれるように言っといてください。ゼクスさんの言うことなら聞くと思いますから》
《了解です。いやー、ふふふ、嬉しいな》
(はぁ、こんなんで大丈夫だろうか。それにしてもアルベドは俺が絡むとちょっとおかしくなるし、まぁ全部俺が悪いんだけど・・・、やっぱりこの世界でも姉妹って似るのかな?)
モモンガは内心ため息をついた。
「よい、アルベド。これよりルベドはゼクスさんの専属とする」
「しかし、モモンガ様!・・・」
やはり守護者達はいまいち納得できていない様子だった。
「よいのだ。ルベドにはもともと忠誠心が設定されていない。お前達もあまり邪険にしないようにしてくれ」
守護者達もモモンガさんに言われてしまったら何も言えないようだ。さすがはモモンガさんである。
「そういうことで、ルベド。これからよろしくな」
「はい!ゼクス様!」
ルベドは嬉しそうに返事をした。やっぱりルベドは可愛いわ!!
◆
第9階層、ゼクスの私室
という具合で今に至る。あれから俺はルベドに、モモンガさんと守護者達の言うことはできるだけ聞くように、と念をおしておいた。ナザリック内でルベドが孤立してしまうのは俺としても寂しい。できればみんなと仲良くなって欲しいと思っている。その成果もあってか、意外とルベドはナザリックのみんなとうまくいっていた。ちゃんとモモンガさんの言うことは聞いているらしいし(渋々らしいけど)、守護者達の言うことも一応耳を傾けているらしい。まぁ態度は素っ気ないけど。
(俺としてはルベドがナザリックで孤立しなくてよかったよ。これからもこのままいってくれるといいんだけどな)
俺が長い間黙ってルベドを見つめていると、ルベドは頬を染めながらもじもじしていた。
「あ、あの・・・ゼクス様?私の顔に何かついているでしょうか?」
「あ、ああ、すまん。つい見とれてしまっていたよ」
「み、見とれて・・・」
ルベドは更に顔を赤くしていた。
(あ〜、今日もルベドは可愛いな。なでなでしたいなぁ)
「そうだな。もういい時間だし朝食にするか」
「はい、畏まりました」
俺は内心そんなことを思いながら朝食にすることにした。
◆
ナザリック食堂
俺とルベドは食堂に来ていた。ここはナザリック内にある食堂で、普段は一般メイド達やプレアデスの面々がよく利用しているらしい。別に部屋で食べてもよかったのだが、せっかくなので食堂で食べることにしたのだ。俺とルベドが食堂に入ると、今まで賑やかだった食堂が一気に静かになった。
(あれ?俺来ないほうがよかったかな?)
「「「ゼ、ゼクス様!?」」」
メイド達は驚いたような顔をして慌てて礼をしてきた。どうやらいきなり俺が食堂に来たことでびっくりしたらしい。
(そりゃそうか。組織のトップがいきなり食堂に来たらびっくりするよな)
と、内心で思いつつ俺はみんなに声をかけた。
「みんな、驚かせてしまって悪かったな。俺はただ朝食を食べに来ただけだからそんなに緊張しなくてもいい。ゆっくり朝食を食べてくれ」
俺はそう言って自分が座る席を探した。しかし、言われたほうはそういうわけにもいかない。仮にも相手は現ナザリックのトップと、つい先日そのトップと死闘を繰り広げた人物である。緊張するな、というほうが無理であった。
(んー、座るとこないなー。どうしようか)
見た感じ席はどこもうまっていて空いていなかった。俺がどうしようかと悩んでいると、ある人物が手を降っていた。
(ん?あれはルプスレギナか)
「ゼクス様ぁー、ルベド様ぁー、よかったら一緒にどうっすかー!」
「ん、そうか。ではお言葉に甘えさせてもらおうか。ルベド、行こう」
「はい」
俺とルベドはルプスレギナ達が座っているところに行き、一緒に座らせてもらうことにした。こういうときに気軽に話しかけてくれるルプスレギナのことが俺は嫌いじゃなかった。席にはルプスレギナとシズの二人が座っていた。俺とルベドは二人の向かい側に座った。
「助かったよルプスレギナ。ありがとう」
「い、いえ!そんなことないっすよ!」
俺が礼を言うとルプスレギナはうれしそうに照れていた。横ではルベドが少しむっ、として頬を膨らましていた。
(いいな。私もゼクス様に褒めてもらいたいな)
「さてと飯を取りに行くか」
「ゼクス様、私が取って参ります!」
「そうか?じゃあ頼むわ」
ルベドは張り切って二人分の朝食を取りに行った。ルベドが帰ってくるのを待って、ルベドにお礼を言ってからいただきますをした。
(はぁ、やっぱりゼクス様に褒められると心が温かくなる)
ルベドはゼクスに褒められてうれしそうだった。
(これはやっぱりあれっすね。ルベド様はゼクス様に惚れるっすね)
(そうだね。・・・でもゼクス様もルベド様のことが好き)
(うひゃー、まさに相思相愛ってやつっすか!うらやましいっすねー)
ルプスレギナ達はそんなことを話しながらゼクスに話しかけた。
「いやー、それにしてもゼクス様。先日のルベド様との戦いは凄まじかったっす!」
ルプスレギナは普段通りの口調でゼクスに話しかけていた。それは一重にゼクスが普段通りの口調でいい、と言ったからである。
先日ルベドとゼクスが戦ったことはもうナザリック全てに広まっていた。試合内容と、どちらが勝ったのかも。ナザリックNPC最強であるルベドを破ったことは、ゼクスのナザリック内での評価をさらに数段引き上げさせていた。ただでさえ高い忠誠が更に上がっていた。
「あたりまえ。ゼクス様が私程度に負ける筈がない。それにゼクス様はまだ本当の力を出してなかった」
「そうなんすか!?いやー、さすがゼクス様っす!」
「うん、すごい。あれで全力じゃないなら本気を出したらどうなるんだろう・・・?」
(いや、かなり本気だったんだけど)
みたいなツッコミを心の中で入れていた。ルベドはどうやら俺以外の相手と喋るときは敬語を使わないらしい。
(俺も敬語使わずに話して欲しいんだけどなー)
ルベドはそんなゼクス心中も知らず、ゼクスと一緒に朝食を食べられたことで上機嫌になっていた。
それはそれとして、俺は一言いいたい。「ナザリックの飯うますぎじゃね?」と。リアルの世界では環境問題や、自身の生活の関係からおいしい料理を食べるという機会はほとんどなかった。そのせいか、ナザリックの食事を初めて食べた時は美味しすぎて涙が出てきたほどだ。
(ここの料理はほんとにおいしいな。是非モモンガさんにも食べて欲しいんだけど、モモンガさん骨だからな・・・)
モモンガは骸骨のアンデットということもあり、食事はおろか睡眠も必要がなかった。モモンガさんはあまり気にしていなかったけど、俺的にはあまり無理はしないで欲しかった。
(まぁ俺が言っても説得力ないんだけどねー)
みたいなことを思っていた。その後もルプスレギナ達と食事を楽しみ、二人は仕事へと向かった。食事はそこでお開きとなり、俺とルベドも一旦私室へと戻った。
◆
ゼクスの私室
「いやー、やっぱりナザリックの飯はうまいな」
「それならよかったです」
「んー、ルベド。俺も他のみんなと話すときみたいに敬語じゃなくてもいいんだぜ?」
「い、いえ!そのようなことは・・・」
「はははっ、そっか。ならまぁ、今は無理でもいつかそうしてくれるとうれしいな」
「は、はい・・・」
(本当は私も、もっとゼクス様と親しく話しがしてみたい。でも・・・)
ルベドはゼクスにそう言ってもらえたのが嬉しかった。だがやはり、NPCとしてある一線を越えることができないでいた。
「ルベドはさ、俺なんかに仕えるの嫌じゃない?いきなり俺の専属なんて言っちゃったけど」
「そんなことはありません!私はゼクス様の側に居られるだけで幸せなのです!」
「そ、そうか?ならいいんだけどな」
俺はルベドの思いもよらない剣幕に少しびっくりした。でもルベドがそう言ってくれたのはうれしくて。
(そっか、やっぱり俺はルベドが好きなんだな。この気持ちをいつかお前に伝えられたら・・・)
(ゼクス様はああ言ってくれたけど、本当は私が側にいるのが嫌なのかな?・・・例えそうだとしても私はゼクス様の側に居たい。私はゼクス様が好きだ。いつも私の側に居てくれたゼクス様が。この気持ちをいつか伝えられたら・・・)
しばしの沈黙が続いた。そこで俺はルベドの頭を撫でてやった。嫌がられたらどうしよう、と内心びくびくしていたがルベドは嫌がらずに受けてくれた。
「ルベド、ありがとな。これはいつものお礼だ」
「ゼ、ゼクス様・・・。ありがとうございます!」
「これからもよろしく頼むぞ」
「はい!」
ルベドは顔を真っ赤にしながら嬉しそうに頭を撫でられていた。その後も他愛ない会話をしながら、しばしの間時間を過ごした。
◆
執務室
俺はルベドを連れてモモンガさんの執務室を訪れていた。俺にも何か手伝えることがないか、と思ってきたのだ。するとモモンガさんが鏡の前で変なポーズをとっていた。
「モモンガさん、何してるんですか?」
「ああ、ゼクスさん。
「ああ、なるほど」
「よし!成功だ!」
ほどなくしてモモンガさんのそんな声が聞こえた。どうやら操作に成功したらしい。
「おめでとうございます、モモンガさん!」
「ええ。これで外の様子を確認できる」
そう言いながらモモンガさんが鏡を操作するとある村の様子が映し出された。
「ん?祭でもやっているのか?」
「いや、これは・・・。正確にいうと血祭りですね」
そこには鎧を着た騎士達に一方的に殺されている人達が映っていた。
「どうします、モモンガさん?」
「見捨てましょう。別に助けるメリットがない」
モモンガさんはそう切り捨てたが俺はいまいち納得できなかった。モモンガさんはカルマ値がめっちゃ低いからしかたないのかもしれないか。
しかしモモンガさんは突然側にいたセバスを見て何かを呟いた後に、俺の方を向いてこう言った。
「ゼクスさん、やはり助けに行きましょう」
「そうこなくっちゃ!俺は一足先に行きます。ルベド、付いてこい!」
「はい!」
「ゼクスさん、気を付けてください!まだこの世界のレベルがわからない。もしものときは全力で逃げてください」
「了解です!」
映像では今まさに二人の少女に騎士の剣が迫っていた。俺はルベドを連れて
ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回はあまり話しが進まなかったので、次は進めたいと思います。次はようやくカルネ村編です。
次回も今しばらくお待ちください!