オーバーロード〜黒き翼と白き翼〜   作:つなかん@缶詰め

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今回もカルネ村編になります。

楽しんでいただければ幸いです。


第7話:カルネ村の戦い

 

 

『ガゼフ・ストロノーフ』、そう名乗った男はどうやらカルネ村近隣の都市である、リ・エスティーゼ王国の王国戦士長という立場の人間らしい。村長や他の村人達の反応を見るかぎり、かなりの大物のようだ。

 

「私はこの近隣を荒らしまわっている帝国の騎士を討伐するために村々を回っているものである。そなたがこの村の村長だな。今の状況を説明してもらいたい」

 

ガゼフはそういうと村長にこれまでの経緯を聞いていた。俺達は一応この村を助けたのだから、悪いようには言われないだろう。しかし、騎士の討伐というだけで王国戦士長クラスの人物がこんな辺境の村に来るだろうか。王国はそれほど人員に余裕がないのか、はたまた何か意図があるのか・・・。それに、どうやらガゼフはこの村を襲った騎士が帝国に扮したスレイン法国のものであるということを知らないようだ。これは何か裏がありそうだな。

 

俺が思考の海に潜っている間に状況説明は終わったらしい。ガゼフが改めて俺達に向きなった。

 

「この村を救っていただき、感謝する」

 

そういってガゼフは俺達に頭を下げた。これにはさすがの俺達も驚いた。王国戦士長、というくらいだ、おそらくは特権階級の人物であろう。そんな人物がどこの馬の骨ともいえない俺達に頭を下げてきたのである。どうやらこの人物はかなり人ができた人間のようだ。その部分には素直に好感が持てた。

 

《モモンガさん、この人はなかなかに信用できるんじゃないですか?》

《そうですね。もう少し話しを聞いてみましょう》

 

それからはモモンガさんがガゼフに俺達自身のことについて説明をした。どうやらモモンガさんは、長く魔法の研究のために地下にもぐっていた魔法詠唱者(マジック・キャスター)という設定でいくらしい。俺はその仲間といったところだろうか。

 

「なるほど。そなた達のことはわかった。この村を襲った騎士達はそなた達が倒したのか?」

「ええ。この村を襲った騎士達の大半の命は奪いました。これでしばらく暴れることはないでしょう」

「奪った・・・、それは殺したということかな?」

「そうとも言えるでしょう」

 

モモンガの少し曖昧なニュアンスの言い方にガゼフの視線が近くで待機していた死の騎士(デス・ナイト)にいった。

 

「そなた達に質問したいことが2つある。まずは、そこの魔物について説明していただきたい」

「あれは私が生み出したシモベですよ」

 

騎士達が驚いたような声をあげた。おそらくこの世界では、死の騎士(デス・ナイト)というのはかなりの魔物に相当するみたいだ。

 

「それと、もうひとつ。その仮面を外していただけないだろうか?」

「お断りします。あの魔物が暴れたら大変ですから」

 

その言葉に騎士や村人の表情がこわばった。

 

「なるほど、それは取らないほうがよさそうだ」

「わかっていただき、感謝します」

 

とりあえず説明は終了だ。それと、さっき襲った騎士達が帝国に扮した法国のものであるらしい、ということを告げると、ガゼフが納得がいったような表情をしていた。

 

「スレイン法国・・・、どうやら狙いは私の命のようだ」

 

王国戦士長クラスの人物ともなると色々と恨まれたりもするのだろう。悪いが正直そこまで面倒をみてやる義理はない。

 

その後、ガゼフ達はとりあえず1泊してから王国へと帰ると言っていた。これで俺達の用事も無事終わったようだ。

 

《モモンガさん、今度こそ帰りましょうか》

《ですね。一旦ナザリックに帰って状況を整理しましょう》

 

ようやくナザリックに帰れる。とりあえず帰ったらまず風呂に入りたいな。などと考えていた。しかし、まぁなんだ。面倒事というのは続くらしい。ガゼフの騎士の一人が焦ったような表情で走ってきた。

 

「戦士長、大変です!周囲に複数の人影が村を囲むいうに展開しています!」

 

本日二度めのお客様だ。なんだ、この村はなんか呪われてるんじゃないか?

 

どうやらまだナザリックには帰れないらしい・・・。

 

 

 

 

ーカルネ村近隣ー

 

「各員、獲物は檻に入った」

 

一人の男がゆったりとした声で指示を出していた。その男の名はニグン。スレイン法国の特殊部隊、『陽光聖典』の隊長である。

 

「汝らの信仰を神に捧げよ。行動開始」

 

その一声で集まっていたメンバーはすぐに村を包囲するいうに散開した。それはまさしく一糸乱れぬ動きであった。

 

(我等の目的は王国の最大戦力であるガゼフ・ストロノーフを暗殺すること。相手はたしかに強いが、今は王国に伝わるという至宝を装備していない。今のやつになら我等陽光聖典が負けることはないだろう)

 

ニグンははやくもこの戦いの勝利を確信していた。今彼が考えていることはこの作戦が成功したあかつきに貰える報酬のことである。

 

(それに万が一のことがあろうとも、こちらには切り札がある。ふふふ、最早我等の勝利は確実だな)

 

全ては人間の敵である魔族を滅ぼすために。ゆえに別にニグンはガゼフが憎いというわけではない。それどころかむしろ、同じく魔族と戦うための重要な戦力だと考えていた。今回このような作戦が下ったのはひとえに王国の腐敗にある。この王国の腐敗を正すために必要なことなのだ。

 

(ガゼフよ、悪く思うなよ)

 

そう思いながらニグンはこれから戦場になるであろう場所へ向かっていた。

 

 

 

 

カルネ村

 

ルベドはいらいらしていた。それもこれも次々とやってくる人間達のせいである。ルベドはカルマ値がそこまで低いほうではないが、さすがに怒りを感じていた。

 

(折角ナザリックに戻ってゼクス様と二人の時間を過ごせると思ったのに・・・。いっそのこと私が全員殺してこようかな)

 

(でも殺しちゃうとゼクス様に怒られちゃうかもしれないし・・・)

 

そして、ここにも一人怒りを抑えているものがいた。

 

(下等生物どもがああぁぁぁ!!次から次へとウジ虫のように沸いてきやがって!全員まとめてぶっ殺してやろうかしら)

 

(でも殺してモモンガ様を怒らせてしまうのは本末転倒よね)

 

 

((はぁ〜〜))

 

 

二人のため息が重なった。お互いが聞こえたのか、何とも言えない表情でしばし見つめあっていた二人であった。

 

 

 

 

「ふむ、たしかに包囲されているな」

 

ガゼフが周囲を確認しながら呟いた。どうや俺達は完全に囲まれてしまったらしい。

 

「それにあれはスレイン法国の陽光聖典か」

 

陽光聖典とはなんだろうか。ガゼフに聞いてみるとどうやらスレイン法国のエリート部隊のようだ。そしてそいつらの狙いはガゼフというわけだ。思った以上にガゼフは人気者らしい。

 

「ゴウン殿、ひとつ私に雇われてはくれないだろうか?」

「それはお断りします」

「そうですか。いや、無理なお願いを失礼」

「いえ、ですがこの村はお守りすると約束しましょう」

 

おっと、どうやら俺達はこの村を守ることになったようだ。まぁたしかに折角助けたこの村をみすみすやらすのは気に入らないね。

 

「戦士長殿、これを持って行ってください」

「これは?」

「一種の御守りのようなものです」

 

モモンガさんがガゼフに木彫りの人形を渡していた。

 

(なるほど、そういうことか)

 

俺はそれをみて納得した。たしかにそれなら大丈夫だろう。さすがはモモンガさんである。

 

ガゼフは木彫りの人形を懐にしまうと囮になるべく騎士達を連れて出発しようとしていた。

 

「戦士長さん、あんたはなかなかに好感が持てる人だ。健闘を祈る」

 

俺が激励の言葉をかけると、ガゼフは笑って頷き出陣していった。

 

さて俺達はまずは高見の見物といこうかね。俺達は村人を一ヶ所に集めた後、村長宅の二階を借りてガゼフの戦いを観戦していた。

 

そこではガゼフ達と陽光聖典達が召喚した天使が戦いを繰り広げていた。

 

「あれってユグドラシルのモンスターですよね?」

「ええ、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)ですね。どうやらこの世界にもユグドラシルのモンスターが存在しているみたいですね」

「それにあの隊長格のやつが従えてるのは監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)か」

「しかし、どの天使も弱いですね。スレイン法国のエリート部隊というくらいだから最高位天使クラスがでるかと思ったんですが」

「これならルベドのほうが圧倒的に強いですよ。な、ルベド?」

「はい!当たり前です!」

「なにいってんですか。ルベドが負けるようなら正直勝ち目はかなり薄いですよ」

 

俺達が話しているうちにもガゼフ達はだんだん押されてきていた。ガゼフだけはかなり善戦しているが他はもうだめだろう。しかし、さっきからガゼフが使っている技には興味がった。あれはユグドラシルにはないものだった。この世界特有のスキルか何かだろうか。できることなら是非習得してみたいものだ。

 

これはそろそろ頃合いかな。

 

「モモンガさんそろそろ」

「ええ、行きましょうか。お前達もついてこい」

 

モモンガさんに命令されてのが嫌だったのかルベドが少しムッとしていたが、俺が言うとちゃんとついてきた。まったく、可愛いやつだ。さぁ、俺達も出陣だ。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、くそっ・・・」

 

ガゼフは次から次へと召喚される天使達の物量に押されていた。一体一体はそこまで強くはないが、これほどの数を召喚されるとさすがに無理がある。仲間達はすでに大半のものがやられている。せめて王国に伝わる至宝さえあればこの状況を打破することが可能なのだが、無い物ねだりしていてもしょうがない。

 

「ガゼフよ、そろそろ諦めたらどうだ?」

「ふっ、あいにくそう簡単に諦めるわけにはいかないのだよ!」

「お前は何故そこまでしてあの腐った王国のために戦う?」

 

ガゼフ自身も現在の王国が腐敗していることはわかっていた。しかし、自分の力ではそれをどうこうすることはできないということも。

 

(だが私は王のために戦わなければならない。私が心から敬愛する我が王のために!)

 

「貴様には関係のないことだ。さぁ陽光聖典の力はそんなものか?出し惜しみせずにかかってくるがいい!」

「はっ、哀れなものだなガゼフよ。ならば死ぬがいい!」

 

ニグンの命令と共に同時に6体の天使がガゼフに向かってきた。

 

「〈即応反射〉」

 

ガゼフは武技を発動させて相手の攻撃を回避する。そこでガゼフは切り札を発動させる。

 

「はぁあああああ!!〈六光連斬〉!」

 

ガゼフの剣から放たれた6つの斬激が天使を切り裂いた。しかし、そこでとうとうガゼフが膝をついた。

 

「見事な武技だガゼフよ。貴様を殺さければならないのが残念だよ」

 

その言葉と共に新たに召喚された天使がガゼフの身体を貫いた。

 

「がぁあああああ!」

 

ガゼフが口から血を吐き倒れる。この瞬間ニグンはすでに勝利を確信していた。

 

「ははは、ガゼフほどの人間が無様なものだな」

「くっ、くくく、愚かなことだな。あの村には・・・俺などよりはるかに・・・強い人がいるぞ。貴様らでも・・・勝てるかどうか・・・知れないほどのな」

「・・・王国最強のお前よりも?ふっ、ハッタリはやめたらどうだ?お前こそ愚かよ」

 

しかしそれでも、ガゼフは不気味な笑みを浮かべたまま倒れ付していた。ニグンは薄ら寒いものを感じながらも止めをさしにいった。

 

「・・・天使達よ、ガゼフ・ストロノーフを殺せ」

 

ガゼフがせめて最後の抵抗をしようとしたとき、声が聞こえた。

 

 

ーさぁ、そろそろ交代の時間だー

 

 

その声と共にガゼフの身体が一瞬で光りの粒となって消えた。

 

 

 

 

カルネ村

 

「はっ・・・。こ、ここは・・・」

 

ガゼフが周りを見回すとそこは先程までの戦場ではなく、村人達が避難している倉庫だった。

 

「ここはアインズ様が防御魔法を張られた倉庫です」

「村長殿・・・。ゴ、ゴウン殿は・・・?」

「先程までおられたのですが、戦士長様と入れ替わるように突然姿が消えて」

 

ガゼフが懐をみると、アインズから貰った木彫りの人形が消滅していた。

 

「・・・なるほど、そういうことか。これは・・・一杯くわされ・・・たな・・・」

 

ガゼフは納得したような笑みを浮かべ、今度こそ意識を失った。

 

 

 

 

ー戦場ー

 

「な、何が・・・」

 

ニグンは突然の出来事に呆然としていた。ガゼフを仕止めたと思ったら突然入れ替わるように4人の怪しげな者達が現れたのだ。

 

「ふっ、どうやらうまくいったようだな」

「お前達は何者だ?ガゼフをどこに隠した?」

「私はアインズ・ウール・ゴウン。ガゼフには退場して貰ったよ。ここからは私達が相手をしよう」

「なんだと?」

 

ニグンは考える。退場させたということは転移させたということだろうか・・・。しかし、陽光聖典の隊長であるニグンですらそんな魔法は聞いたことがない。大方ただのハッタリで、すぐ近くに隠れているのだろう。自分自身に言い聞かせ、ニグンは少し落ち着きを取り戻した。

 

「私は陽光聖典の隊長、ニグン・グリッド・ルーインである。お前達が何者かは知らないが、さっさとガゼフを差し出せば命だけは助けてやろう」

 

そういいながらもニグンは突然現れた4人のうちの一人に見入っていた。それは陽光聖典の隊長という地位にいるニグンですらお目にかかったことがないほどの美人だった。

 

(あれほどの女はみたことがないな。ふふふ、あの女だけはいただいて帰るとするか)

 

ニグンは帰った後のことを考えながらゲスな笑みを浮かべていた。

 

《あの野郎、ルベドに色目使いやがって。いますぐぶっ殺してやろうか・・・》

俺は殺気を放ちながら一歩前へ出た。それだけで相手は掠れた声を出して一歩下がった。

 

《待ってください、ゼクスさん。できればあいつは生きたまま捕らえたい。エリート部隊の隊長格ともなれなスレイン法国について詳しく知っているはずですから》

《・・・わかりました。でも他のやつはある程度殺していいんですよね?》

《ええ、調度いい力試しになりそうです》

 

俺達はそう意見をまとめると改めてニグンに向き直った。

 

「ぐだぐだ言ってないでさっさとかかってこい。お前らごとき俺一人で十分なんだよ」

「な、なんだと?貴様、どうやらこの状況がわかっていないようだな。今すぐその口黙らせてやる」

 

ニグンは待機させていた天使達に命令を出した。

 

「天使達よ!そいつを殺せ」

 

俺に数体の天使が迫る。しかし、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)ごときの下級モンスターなど俺の敵ではない。俺はそいつを一刀のもとに切り捨てた。

 

「おいおい、エリート部隊ってのはその程度なのか?」

「な、なんだと!?・・・なめるなよ!天使達よ、一斉に攻撃せよ!」

 

今度は数十体の天使が同時に切りかかってきた。しかし、所詮雑魚が何体増えようと変わりはない。

 

「《四閃三獄》」

 

俺のスキルは天使をバターのように切り裂き、その余波で後ろにいた魔法詠唱者(マジック・キャスター)も絶命した。

 

「ば、ばかな!!・・・貴様何者だ!?」

「ただの通りすがりの剣士だよ」

「く、くそ!お前達魔法で集中攻撃しろ!」

 

俺にとってはそんなものは少しのダメージにもならない。後ろのほうではなんかアルベドが発狂したりしていたが、まぁ気にしないでおこう。そこでついにニグンも焦りはじめた。

 

「プ、監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)よ、あいつらを消し去れ!」

 

ニグンは自分が使役していた天使を動かした。ニグンには自分が使役する天使の能力を引き上げる生まれながらの異能(タレント)を持っていた。監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)は味方の天使の能力を上げる力を持った天使である。それゆえにそれは自分自身が動けば使えなくなってしまう。しかし、タレントを持っている自分の力と合わせれば問題なく敵を消せるとふんでいた。

 

「今度は私の番だな。《獄炎(ヘルフレイム)

 

しかしその希望は仮面を被った魔法詠唱者(マジック・キャスター)によって簡単に打ち砕かれた。

 

「い、一撃だと・・・!?」

「ひ、ひぃいいいいいいいい」

「ば、化け物だ・・・!」

 

そこでとうとう部下達が平静を失いかけていた。もうこうなったら切り札を使うしかない。そう覚悟し、ニグンは懐からクリスタルを取り出した。これに封じられているのは200年前に魔神と戦ったと言われている最上位天使である。最早これしかない。

 

「お前達、私を守れ!今から最上位天使を召喚する!」

 

そういうと先程まで絶望していた部下の目に一瞬で希望が灯った。最上位天使にはそれほどの力があるのだ。

 

「あれは・・・魔法封じの水晶・・・、しかも超位魔法以外を封じられるものだな。・・・ならば召喚される最上位天使は・・・熾天使(セラフ)級か?恒星天の熾天使(セラフ・エイスフィア)以上は出ないと思うが、至高天の熾天使(ラフ・ジ・エンピリアン)が出ると不味いな・・・。ゼクスさん」

「切り札というほどならそれくらいが出てきてもおかしくはないですね。ここは全力でいきましょう」

「久しぶりの共闘ですね。ついわくわくしてしまう」

「ははは、わかります。ここはいっちょルベド達にかっこいいところ見せてやりますか!」

「ええ!アルベド、お前達は下がっていろ。ここは私とゼクスさんが相手をしよう」

「ルベド、お前も下がってな。たまには俺もかっこいいところを見せてやるぜ」

 

そういって俺達はユグドラシル以来、はじめて肩を並べてルベド達の前に出た。

 

 

 

 

((くふーー!!かっけーー!!))

 

お互いが愛する人のかっこいい姿を見ながら、アルベドとルベドはテンションが上がりきっていた。ルベドにいたっては若干キャラが崩れていた。

 

(やべー、モモンガ様まじかっけー!!くふー、惚れるわー!!)

 

(はぁああああ、なんて凛々しいお姿・・・。さすがはゼクス様。私がお仕えするに相応しい御方・・・)

 

アルベドは身体をくねくねさせながら、ルベドはうっとりしながら二人の姿を眺めていた。最早二人にとっては敵の存在など意識から消え去っているのだった。

 

「「はぁあああああ〜」」

 

二人の口から同時に声が出た。

 

「ん?」

「ん?」

 

そんな姿をお互いが同類を見るような目でしばし見つめていたのだった。

 

 

 

 

後ろで二人がそんなことを思っているなど露も知らず、ゼクス様はニグンを見ていた。

 

「ふはははは、見よ!これが最上位天使の輝きだ!来い、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)!!」

 

ニグンの手にあった水晶が砕けると共に先程までの天使とは明らかにオーラが違う天使が現れた。

 

「な・・・、なんだと?・・・これが私達に対する切り札だというのか?」

「ふはははは、もう遅いぞアインズ・ウール・ゴウン!最上位天使の力の前に絶望するがいい!!」

 

ニグンの勝ち誇ったような笑いと共に部下達も歓喜の声をあげていた。

 

「・・・まじかよ。かっこよく決めた俺達が恥ずかしいじゃん」

「まったくですね。・・・貴様らその程度が切り札だというのか?笑わせるなよ?」

「な、なに!?貴様最上位天使を前にして何を言っているのだ!」

「興ざめだな。モモンガさん、俺がやっていいですか?」

「いいですよ。ですが、ニグンという男は殺さないようにお願いします」

 

ニグンには目の前の者達が言っていることが理解できなかった。ここにいるのは最上位天使だぞ?ニグンはもう考えるのを止め奴らを消すことにした。

 

善なる極撃(ホーリースマイト)を放て!」

 

この魔法こそが人類では決して到達することのできない高みに存在する第7位階以上の魔法。スレイン法国では大人数の儀式によって使用することができなくもないが、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)はそれを単体で使用することができる。この魔法の前では何人たりとも塵とかすのだ。

 

「へぇ、第7位階の魔法か。だてに切り札ってわけではなかったんだな・・・」

 

魔法の発動と共に極大の光の柱が俺の頭上に落ちてきた。視界が真っ白に染まる。

 

「ふははははは、これが最上位天使の力だ!その力を引きだ出せたことを冥土の土産とするがいい!」

 

この魔法をくらって無事なはずがない。何人も塵へと変わるはずだ。しかし・・・

 

ー敵は未だに健在

 

「え・・・はっ・・・?む、無傷だと・・・!?」

 

最早目の前で起こっている事象にニグン達の頭は追い付いていなかった。何故やつは生きている?あの魔法が効かなかったというのか?第7位階魔法である善なる極撃(ホーリースマイト)が?

 

「ふむ、まぁこんなもんか・・・。終わりだ、《虚空天斬》」

 

最上位天使が一撃で消滅した。その事実はニグンの心を折るには十分だった。それと同時に上空で何かが割れるような音がした。

 

「ん?何者かがここを監視していたようだな・・・」

 

どうやら何者かが監視していたのがモモンガさんの対情報系魔法の防壁に引っ掛かったようだ。

 

その事実はニグンを更に混乱させた。

 

(わ、我々は監視されていたというのか?)

 

ニグンの頭には最早戦うという選択肢は消え去っていた。このままでは殺されてしまう。

 

「ま、待ってくれ!・・・いや、・・・待ってください!あ、貴方様方は何者なのでしょうか・・・?」

 

そこで俺達は正体を明かすことにした。モモンガさんは仮面を外し、俺は翼を見えるようにした。

 

「し、死の神・・・」

 

そう言うとニグンは何かぶつぶつ言った後、急に平服して謝ってきた。どうやらモモンガさんをスレイン法国が信仰している神の化身だと思ったらしい。そのまま何でも言うことを聞くからどうか助けて欲しいと言っていた。俺達としては逆に手間が省けたのでよかったと言えよう。

 

その後ニグンと生き残っていた部下数名をナザリックのニューロリストのところに送り、俺達の戦いは終わりをつげた。さて、今度こそようやくナザリックに帰るとしよう。

 

 

 

 

その後俺達はカルネ村へと戻り、そこで村長からの感謝とガゼフからの感謝を受けてナザリックへと帰っていた。ナザリックの外に友好的な村ができたし、王国戦士長と知り合いになるという思わぬ成果もあった。今回の結果としては上出来である。

 

帰る途中俺とモモンガさんの後方でアルベドとルベドが何やら会話をしているようだった。

 

 

「・・・ルベド、あなたはゼクス様のことを愛していますか?」

「ええ、もちろん。そういうあなたはモモンガ様のことを愛してるいるんでしょう?」

「もちろんよ。・・・私はまだあなたのことを完全に信用はしていないわ。何せあなたは私の愛するモモンガ様を傷つけたのだから」

「別に構わない。私もあなたがゼクス様を傷つけたらそうしていた」

「でも、私はあなたの、ゼクス様のことを思う気持ちには同じく至高の御方を愛する身として共感できるわ。だからここはお互いの恋を応援するということで手を打たないかしら?」

「・・・アルベドがそれでいいのなら私は構わない。お互いに協力するとしよう」

 

そう言って二人は悪い顔をして握手をした。これによって二人の間に思わぬ絆が生まれたのだった。

 

 

(お、なんかルベドとアルベドが仲良さげにしてるな。いやー、よかったよかった。どうやら杞憂だったみたいだな)

 

俺はそんなことになっているとは露も知らず、二人を微笑ましく眺めながらナザリックへと帰るのだった。

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

少し短いかもしれませんがこれでカルネ村編は終了です。

そして、なんやかんやで妹には優しい姉でした。
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