艦これ 傭兵鎮守府物語   作:URIERU

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1章 鎮守府の始まり
第一話「依頼」


 こんな豪華なソファに座ったのは要人護衛のとき以来か、と尻の下の素材の感触を確かめる。

 目の前には今回の依頼主「佐伯海軍中将」が座っている。

 今までにも軍に関わる依頼をこなしたことはあるが、仲介役を通して大々的に集められる傭兵部隊の一員となったくらいのものだ。

 俺自身が直接軍の将官から依頼を受けるなど初めてのことだ。

 とはいえ、俺が弱気になるほどの理由ではない。

 

「さて、海軍中将様がこんな流れの傭兵にどんなご依頼ですかね」

「全く物怖じしないようだな、面白い。君は深海棲艦というものを知ってるかね」

「今の世界、それを知らないやつなんてのはいないんじゃないかね。正体不明の人類の敵、通常兵器は効かない、と」

「では、奴らに現在唯一対抗できる艦娘の存在についてはどうかね」

「そこは噂程度だな。だが、どれも眉唾ものすぎて信じられねぇな」

「人間の少女が過去の大戦の軍艦と同じ能力を有して人類の敵と戦っている、こんな噂かな」

「まったくもって荒唐無稽すぎる。話にならんぜ」

「だが、それが事実なのだよ」

 

 事実と来たもんだ。目の前の男は50~60代くらいの初老期に足をいれたくらいであろう。

 まだ呆けるには早い年齢だ。

 

「・・・。わざわざ海軍中将様が俺にドッキリをしかけてるってわけじゃねぇんだよな」

「面白い暇つぶしだとは思うがね。そんな暇がわしにも欲しいくらいだよ」

「で、それが真実だとして俺にどうしろってんだ。そいつらと一緒に化け物狩りしろってのか?」

「まぁ、端的にいうとそういうことだな」

「冗談はよせよ」

 

 通常兵器の効かない、しかも海上の敵相手にただの人間が立ち向かえなどシャレにならない。

 いくらもらったところで割に合わない仕事である。

 

「冗談ではない、何も君に直接戦えといってるわけではないのだよ」

「なるほど、オカルティックな兵器、艦娘ってやつらを指揮しろってことかい?」

「話が早くて助かる、その通りだ」

「海軍式でいえば、提督ってやつか。しかし、そんなのは軍の中でもお偉いさんがつくようなもんだろ。一介の傭兵にやらせることじゃない」

「たしかに、過去でいえばそうだし、この戦争が始まってからもそうだった。だが、いまは人材不足でね。数年前から養成所の成績優秀者も提督に任命されるようになっていった」

「末期だな。養成所出たてのひよっこをいきなり現場の指揮官だと?そんなのの指揮で戦わされるほうはたまったもんじゃねぇな」

 

 彼自身、傭兵としていろいろな部隊を巡り歩いてきた経験がある。

 クソッタレな指揮官を事故に見せかけて殺害することなどそう珍しいことではない。

 新人のついこの間まで学生だったやつが、偉そうに指揮なぞしようものなら即座に血祭りにあげられることだろう。

 

「実のところ、我々のような将官たちも前大戦を経験したものはいない。実に100年も前の話だからな。それから日本は戦争をしていない。結局お偉いさんというのも実戦経験のないひよっこに過ぎなかったのだよ」

 

「たしかに、平和ボケした日本で戦争経験者なんぞ100歳越えの老人くらいか。そいつらも生まれたばかりで、戦争で戦った経験なんてないわけだしな」

 

「そうなのだ。しかし、この新たな制度も初めのほうは案外うまくいったのだ。艦娘というのはほんとに人間の少女なのだ。兵器という面も持ち合わせた、ね。彼女たちにとっては、年の取った頭の固いひよっこ将校よりは卒業したての頭の切れる若者のほうがいいらしい」

 

「なるほど。本来ただの兵器なら機嫌取りなんぞいらないが、人間って面を持っているがために、古いやり方なんてのはうまくいかなかったわけか。しかも、少女ってなるとなおさらだろうな。」

 

「軍艦としての魂、記憶を有しているおかげで、自分たちが戦うことについての拒否感というのは低かったみたいだがね。まぁ概ね、そういうことだな。だが、それも長く続かなかった。慣れない実戦における指揮のミスから艦娘の轟沈、少女たちを戦場に出すという罪悪感、艦娘との距離感を誤ったがための指揮の鈍りなど、問題は山積みだった」

 

「その問題ってのは何も若い奴らだけのものじゃない気がするがな」

 

 ひよっこのお偉いさん、とてつもなく扱い辛いものだろうということは予想に難くない。

 若者と同じようなミスをしても、すべて艦娘のせいにして認めない。

 そんなことは日常茶飯事だったろう。俺だったら、背後から腎臓を一突きだ。

 

「耳が痛いな。そして我々も議論した、次はどのような人材が日本を救えるのかとね」

 

 ふぅ、っと一息ついた後こちらを見つめる目に力が入る。

 

「そこで、白羽の矢がたったのが君だ」

「っは、この俺が日本を救う救世主とは、ねぇ」

「君のことについては色々と調査させてもらったよ。15年前、日本人一家が中東のザンビアで政府反乱軍によって殺害された。だが、当時6歳の君は、反乱軍に捕縛され少年兵として反乱軍と共に戦うことになった。ザンビアの反乱軍はその1年後に政府軍に制圧されたがね。それからも君は各地の戦場を転々としながらも生き延びてきた。アルミラでは少年兵を率いて実に驚くべき戦果を残している」

「ザンビアでの少年兵の件は予想でどうにかなるとしても、アルミラでのことまでご存じとはね。驚いた」

「君には戦場での経験がある。今の日本においては、実に貴重な経験だ。そして、指揮能力の高さに兵士を育成する能力だ」

「一体どこまで知ってやがるんだ」

 

 先ほどまでは中将のことを、この中将自身の言っていたひよっこの将官達とさほど変わらない、

 似たり寄ったりのものくらいにしか見ていなかった。だが、どうやらそうではないらしい。

 

「君は少年兵を決してただの特攻兵や自爆兵としては用いなかった。少年兵を兵士として育て上げた」

「そんな情報媒体としてどこにも残ってなさそうなことをよく調べられたもんだぜ。まぁ、俺の話なんかどうでもいい」

 

 昔の、あの激動の時を他人に語られることは非常に気分が悪い。他人が気安く触れていいものではない。

 

「日本に戻ってからは碌な仕事なんぞなかったからな。提督業、なかなか面白そうな仕事じゃないか」

「面白い、でやられても困るがね。今回の起用に関しては私も少しばかり無理をしてね」

「俺が使い物にならなかったらあんたの立場が危ういってか?俺の知ったことじゃないぜ?」

「君に満足に報酬が払われるためにも私の立場というのは重要になってくるのだよ」

「おいおい、報酬ってのは一括払いにするか、手付金として半分は頂戴したいところなんだがな」

「君には提督としてうちに就職してもらうのだよ。給料制ということになるね」

「冗談だろ?あまりからかうもんじゃないぜ」

「場合によっては永久就職ということもあるかもしれんな」

 

 どうにも雲行きが怪しい。

 

「・・・」

「君の肩書は佐官となる。佐官と提督業の手当て、それなりの額にはなるぞ」

「サラリー制ってことかい。飼い殺される気はないぜ」

「そうは言っても、君も日本に来てからはろくに仕事もないのではないかね?」

「たしかに日本に来てからケチな野郎どものお守りだとか、な」

「そう、口を大にしてはいえないようなことをしてきているわけだ」

 

 なるほど、いよいよ持って侮れない相手だ。

 

「脅すってのかい、この俺を」

「本意ではないのだ。わかってほしい」

「っち。わかったよ。そもそも引き受けなかったときに簡単に解放するつもりねぇだろ?あれだけ色々おしゃべりしててよ」

「そこまで外部に漏らしてはいけないほどの機密はしゃべってはいない。ただ、口止めは、必要になるな」

「まったく食えないねぇ」

「とはいって、君に引き受けたふりをされて、ここから抜け出されてしまえば私もお手上げではある」

「傭兵としては信頼は売りなもんでね。ラットみたいな真似はしねーよ。それに、今のご時世で海軍に目を付けられてちゃどこも雇ってくれんさ」

 

 深海棲艦が現れてからというもの海軍の勢いは強い。

 人類の敵に対抗できる唯一の軍隊だから当然ではある。

 

「私としては快く引き受けてくれるとありがたかったのだが。こんな話をした後でなんだがね」

「色々と気に食わないところはあるが、そろそろ腰を落ち着けるってのも悪くない。提督業、引き受けるぜ」

「ありがとう。実際我々も困っておるのだ。打開策となってくれることを望んでいる」

「・・・。とはいって、仮に俺がうまくいったとしてもだ。俺はだれぞの教育をしたりなんてことは流石にごめんだからな」

「そこのところは、成功した時に追々話し合おうじゃないか」

 

 この野郎、俺の話を聞いているのか?

 

「話し合う余地はないって今言ったつもりなんだが」

「まぁまぁ。さて、気になる報酬や待遇についての話に移るとしようじゃないか」

 

 提示された額は、傭兵からしてみれば実に充分なものであった。

 それに、実際戦うのは自分ではなく艦娘たちである。

 後ろから安全に指揮しているだけでこれだけ貰えるのならば・・・

 

「上々だな。素晴らしい高待遇じゃないか」

 

 流石に先の中将の言に嘘はなかったようだ。

 実のところ、あまりに待遇が悪ければ前言を翻してでも、ラットのように逃げ回るつもりだった傭兵である。

 

「納得してもらえたようでなにより。成功報酬ってのは今回の形式上難しい」

「この戦争を勝利に導いたら元帥にでもしてもらおうかね」

「ははは。その暁には、な」

 

 そこから傭兵は、着任することになる鎮守府や艦娘についての情報の受け取り、いくつかの質問を行った。

 艦娘についてはどうにも信じがたい情報ばかりで、その出自については結局謎が深まるばかりであった。

 それなりに分厚い参考資料を受け取り、話を終える。

 

「表に車を待たせてある。それに乗ってホテルに向かうといい」

「気が利くねぇ。慣れない土地だ、迷子になるところだったからありがたいよ」

「迷子になられては困るからね。では、頼んだよ。傭兵提督」

「確かに承りましたよ、佐伯中将殿」

 

 見よう見まねの海軍式の敬礼をし、傭兵は部屋を後にした。

 中将は彼ひとり、静かになった部屋で海軍帽を脱ぎ、肩の凝りをほぐす。

 夕暮れに沈む街を眺めながら、一人つぶやく。

 

「君は少年兵を兵士へと育てあげた。当時の少年兵の扱いなど、それこそ物同然であっただろう。だが、君は彼らを人間として扱った。艦娘たちのことも、兵器ではなく人間として扱い、また正しく導いてくれることを信じているよ」

 

 眼下には、車へと乗りこむ傭兵の姿があった。

 

 

 




初投稿のSSとなります。
可愛い艦娘たちを動かしたい!自分なりの艦娘像を書いてみたい!
この二つの思いから執筆しております。

改行や言葉の言い回しなど非常に難しいですね。
こうしたら読みやすい、この表現は分かりにくかったなど、どんどん教えてください。

批評もぜひお願いいたします。キラ付けできます()

気づけば一話目に艦娘でてねーじゃねーか・・・
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