「おはようございます。0600、朝の空気が心地よいでありますよ」
こんこん、とドアをたたくあきつ丸。鎮守府の朝は早い。
「起きているでありますかー?部屋に入るでありますよ」
ガチャガチャ、とドアノブをひねるが扉は開かない。この傭兵に寝起きドッキリは通用しない。
寝ている時こそ最も無防備、鍵をかけ忘れるなどあり得ないのだ。
「むぅ。寝坊した提督殿を起こすという自分の夢がもろくも崩れ去ったであります」
あきつ丸は提督のいない歴が長く、提督の秘書艦になったらしたいことが色々あったりするのだ。
そのころ、傭兵はベットの上で寝起きの頭を振るい眠気を覚ましていた。
あきつ丸の第一声で起きていたのである。しかし、鍵はかけてあるから部屋には入って来れない。
飽きたら食堂に行って待っているだろう。ゆっくり準備するとしよう。
「しかし、このまま籠城されてはせっかくの朝食が冷めてしまうであります。まぁ力づくで開けるとするであります」
ひどく不穏当な内容だ。艦娘の力を持ってすれば鍵など役に立たないだろう。
現にミシリとドアから木材の軋む音が聞こえる。いくらなんでも強引すぎないか。
「おい、あきつ丸!お前はドアを破壊する気か!すぐ出るから食堂で待っていろ」
「そういって二度寝する気でありましょう。提督殿の姿を確認するまでは引き下がれないであります」
「あぁ、もうこれでいいか!?10分以内には行く。今ので完全に眠気が吹っ飛んだよ」
鍵を開けて扉から顔だけ出して言う。
「おはようございます、提督殿。そう、それでいいであります。では、またであります」
あきつ丸そういい踵を返して去っていく。朝の準備を整えながら考える。
一日経ってどうやらやりたいようにやると決めたようだ。まぁこちらには敬意は払っている、んだよな。
はっきり言えば仕事のしの字くらいしかしてないため、敬意を払われるべき部分もないのだが。
よし、食堂へ向かうとしよう。
「思うんだが、朝早すぎないか。お前0500には起きてるだろ。もう少しゆっくりしようぜ」
トーストにかじりつきながらあきつ丸へと話しかける。
朝食は昨日頼んだ通りのものにみそ汁が加えられている。
「早起きは3文の得でありますよ。と、いう常套句は置いとくとしても、海軍ではこれが普通でありますよ。むしろ、0530には提督殿は起床しているものであります」
「昨日いったろ、ここには何の規律もないって。俺は0630までは寝ていたいんだ。できれば0700までごろごろしていたい」
「そんなぐーたらな生活は認められないであります。払うべき敬意が微塵もなくなるでありますよ」
ぐ、それを言われたら不味い。だが、こっちも譲れない。
そこまで早く起きなくても問題あるまい。
「100歩譲って0700から朝食を食べられるくらいにはして欲しいでありますよ。皆に示しをつけるためにもここが最低のラインであります」
「うぅむ、それくらいで手を打とう。ずいぶん健康的な生活を送ることになるな」
「では毎朝0630には、起こしに行くでありますからね」
「だからって今日みたいに扉を壊そうとするのはやめろよ?」
寝坊するたびに扉が破壊されてはたまったものではない。
「それは提督殿次第であります。鍵さえ閉めないでいただければ、優しく起こしてあげるでありますよ」
「さぁ、午前は書類整理だったか。悪いがこっちもさっぱりなんでね、今日もよろしく頼むよ」
「スルーはよくないと思うでありますよ!?少しくらいお願いを聞いてくれてもいいでありますのに・・・」
これにかこつけて鍵を開けさせようと思ったが、どうやら簡単にはいかないようであります。
「書類整理と一口にいっても、資材の管理に出撃の報告書、遠征の計画書etc...いくらでもありますからな。頑張るでありますよ」
「最終的にはその量を俺一人で片づけるのか。それだけで一日が終わりそうだな」
「いえ、たいていの鎮守府では秘書艦として艦娘が執務の補佐をするのが普通でありますよ」
「そうなのか。じゃ、今日の秘書艦はあきつ丸ということか」
「当分は自分、あきつ丸が秘書艦をするでありますよ」
事務仕事に関しては、ほかの艦娘たちより一日の長がある。
本部付きでの事務に中将の秘書艦をこなしてきた彼女の能力は高い。
「頼んだぜ。それと朝食、ありがとよ。おいしかったぜ、ごちそうさま」
「では、執務室のほうに追っ付すぐにいくでありますから、待っていて欲しいであります」
「わかったよ、じゃ後でな」
無理に言い合う必要もない、
それも間宮さんとやらが来るまでの話しだ。
____傭兵執務中____
「で、この書類がこーなって、あーなって。資材の管理はこの形式の書類なんだな。隔週ごとに送られてくる資材と合わせて...」
「そこ、間違っているでありますよ。それでは入手した資材が2倍になるでありますから...」
なんという面倒臭さであろうか、もっとパソコンを使った一元管理をしたいものだ。
しかし、パソコンも沿岸部の工業地帯の壊滅、海外からのパーツの輸入困難に伴い、レアなものと化してきている。
この鎮守府にもせいぜい本部との連絡用に無線機のそばに一台置いてあるだけなのだ。
「資材の管理に関しては、送られてくる資材はほぼ一定でありますし、部隊のローテーションが決まってくれば、入手・消費資材もほぼ固定されてくるであります」
いずれは単純な作業になるでありますよ、とあきつ丸は言う。
「結局、我が鎮守府には燃料・鋼材・弾薬・ボーキサイトが2000kgずつ、と。これでどれくらい持つんだ」
「従来の軍艦ほどではないにしても、艦娘もそれなりに資材を消費するでありますからな。燃費の良い水雷戦隊で1か月ほど持つでありますよ」
「ちなみに戦艦とか空母とかをガンガン使ったら?」
「1週間も持たないでありますよ。大破炎上しようものならそれこそ2日でなくなるであります」
うちに戦艦や空母が来るなどまだ当分先の話ではありますが、と付足す。
「凄まじい浪費だな。だが、戦力としてはやはり必要だ。新規の艦娘は大本営や他鎮守府から異動してくる以外には、建造ってやつがあったよな。戦艦や空母の艦娘の建造は難しいのか」
「確かに建造という手段はあるのですが、ちょっと特殊なのであります」
「欲しい艦種に来てもらうのは難しいとかそんな感じか」
「そんなところでありますな。建造というのは戦場で入手した魂を妖精さんに解析してもらい、それに合った艤装を地方の海軍庁舎に申請し送ってもらうであります。艤装は本部付きの妖精さんと設備でしか作れないでありますよ」
そして、戦艦や空母の艦娘の魂は珍しいのでありますよ、とあきつ丸。
「戦場で入手する魂ってのがなんともオカルトだが・・・」
「その辺は、実際に出撃をし始めればわかるでありますよ。そして、その送られた艤装を妖精さんに渡して魂を埋め込んでもらえば、艦娘の完成であります」
なるほど、この方式なら中央は各鎮守府の戦力を把握できる、各鎮守府は秘密裏に戦力増強をし反乱軍を作ることはできない。
正直艦娘からなる大隊を結成できれば、国家転覆すら可能なのである。
その管理は厳重に行われるべきものだ。理には適っている。
「すごいもんだな。確かに目で見るまでは信じられん。というか今ですらお前たちが水上をスケートしながら砲撃するなんて信じられないんだぜ」
「午後に舞鶴よりの子が到着しなくても、訓練はできるでありますからな。それさえ見ていただければ信じられるでありましょう」
そういい終わったとき、電話のベルが鳴った。
自分が取るでありますといい、あきつ丸が受話器を取る。
「はい、こちら鎮守府執務室、あきつ丸であります」
「あきつ丸か、こちらは佐伯だ。傭兵提督と変わってほしい」
「分かったであります」
受話部分を抑え、佐伯海軍中将からですと言いつつ、傭兵へ受話器を差し出す。
「はい、こちら傭兵提督。何か用かい?」
「うむ、そちらに異動となる艦娘についてだ。すでにあきつ丸より聞き及んでいるかもしれんが、今日の1300には舞鶴より1名着任する。そして、新たな情報だが2日後に来る給糧艦に合わせて2名の艦娘が着任することになる。ちなみに1名が駆逐艦、1名が軽巡洋艦だ」
「おぉ、これで4人にはなる。なんとか形くらいは整いそうだな」
「水雷戦隊だけではすぐに限界が来るとは思うがね。さらなる追加艦娘については、情報が入り次第伝えるとするよ。では、今後に期待する」
「ありがとうございます。では、また」
受話器を置き通話を終える。
「どうやら2名の追加艦娘も決まったようだ。そして、予想通り舞鶴からの子は午後には着任するようだ」
「では、午前の仕事はこれで切り上げて、お昼の準備でもするでありますかね。新しく来る子もお腹を空かせていると思うでありますよ」
「それがいいな。それから軽く紹介を済ませて、午後の訓練といくか」
「はい、であります」
あきつ丸は、まじめでしっかり者ではあるものの、年相応の抜けたところや可愛げのある性格として描けたらなと思っております。
そして、書いてて思いました。一日の流れを事細かに考えて、可能な限り書かないと気が済まない性格なんだって・・・日付が全然進んでいない・・・