第十一話「艦娘-電-」
ようやく到着したのです。鎮守府の表門に立ち一息つく。
電車を乗り換え、ホテルに泊まってバスを乗り継ぎやってきたのだ。
「ここでは、うまくやるのです」
脳裏をよぎる舞鶴鎮守府での出来事。私は戦いが怖いのです。
自分が沈むことではなく、相手を沈めること、そしてそれに慣れていく自分が怖いのです。
いつしか、敵をも助けたい、この気持ちが消えてしまうのではないか。
そして、私はついに口にしてしまったのです。
「沈んだ敵もできれば助けたいのです」
味方の誰も受け入れてくれませんでした。でも、それも仕方ないのです。
みんな姉妹艦を失ったり、怪我をしてきたり、深海棲艦に対する恨みを募らせているのです。
でも、私は憎しみ合うだけなのは嫌なのです。
どちらかが滅びなければならないなんて、悲しすぎるのです。
でも、この思いは隠さなくては。
意を決したように顔を上げ、鎮守府へと入っていく。
ここの司令官さんはどんな方なのでしょうか。
前の司令官さんは戦果のことばかりで、怖かったのです。
私たちのことを単純に自ら動く戦力、兵器としか考えていなかったのです。
もちろん、戦争をしているから戦果を追い求めるのは分かります。
そして、それに納得している子たちもいたのは確かです。
でも、私には分からないことなのです。
目の前から司令官さんと隣には艦娘と思しき方が歩いてきました。
司令官さんは隙のなさそうな、でも不思議と近寄りがたい雰囲気のない方です。
艦娘の方はまだ見たことがないのです。
色白で真面目そうな、私よりも少しお姉さん、でしょうか。
仲良くやっていきたいのです。
「え、えと。し、司令官さんでしょうか?」
「あぁ、傭兵提督だ。長旅ご苦労さん。よく来てくれた、歓迎するぜ」
「遠路はるばるお疲れさまであります。あきつ丸であります。よろしくでありますよ」
「も、申し訳ありません。自分から名乗らずに失礼をしました。駆逐艦、暁型4番艦の電です。どうか、よろしくお願いするのです」
「そうかしこまらなくていいさ。そんなんで失礼なんて言ってたら、このあきつ丸はどうなるこ、っうぐ」
あきつ丸にわき腹をど突かれる。だから、こいつらの力で人間に手を上げてはいけないと教えてやらなければ・・・
「さぁ、電殿。お部屋に案内するであります。それからお昼にするでありますよ」
「あぁ、し、司令官さんが大変なことになっているのです」
「大丈夫でありますよ、頑丈でありますからな。提督殿、また食堂で」
さっさと艦娘寮のほうに電を連れて去っていくあきつ丸の背中を見つめる。
電はちらちらとこちらを心配そうに振り返っている。
手を振って行ってこいと合図だけしておく。
あきつ丸にはいつか、修正を加えなければならない。できれば、の話だが・・・
「駆逐艦電、か。気弱そうな子だったな。最前線から来たようには見えなかった。あれで戦闘のときに豹変する、とかだと面白いがな」
駆逐艦の子を見たら驚く、か。たしかに、少女兵といってもいいくらいだ。
年の頃はせいぜい12歳前後であり、小学校でランドセルを背負っていても不思議ではない。
あんな幼いのを戦場に送り出すなど、確かに気を病みそうなものだな。
____食堂____
食堂で一人座って待っていると、あきつ丸と電の2名が入口より入ってくる。
電は自分を見かけるとこちらへと駆け寄ってくる。
「さ、先ほどは大丈夫だったのですか。とても痛そうだったのです」
傍目にも拳が体にめり込んでいるのが見えていたのだろう。
彼女が心配をするのも最もだ。ちらとあきつ丸の顔色を窺う。
道中も電が心配を口にしていたのであろう。
どこ吹く風とはいかないようで、やりすぎたという表情をしている。
「あぁ、殴られた瞬間は凄まじい衝撃だったがな心配してくれるとは、電は優しいな」
そう言って見せると、あきつ丸はびくっと震える。
そんな不安そうな反応をするな、何も言えなくなるだろうが。
「あきつ丸、手を上げるなとは言わん。だが、加減は覚えろ」
「も、申し訳ないであります。次からは気を付けるであります」
次から、か。もうやらないとは言わないようである。
「おいてけぼりですまんな、電。まぁここでは上官に手を上げてもいい、加減をするならな」
「そ、そんなこと電にはできないのです」
「そうか、ずっとそうでいてくれるとありがたいな。ではさっさと、昼飯を食うとするか」
「準備はすぐ済むでありますからな。電殿も今日はお客さん、座っていて欲しいでありますよ」
「お皿を運ぶくらいはできるのです。やらせてほしいのです」
長旅で疲れているであろうという考えからの配慮であったがどうやら必要はないようだ。
まぁ、長期間の遠征であれば3日のうち2日間近くは海上を移動することさえあるのだ。
つい、幼い見た目のためにいらぬお節介を焼いてしまうでありますな。
「そうでありますか。ではお任せするでありますよ」
「はいなのです」
ここでは、司令官さんと艦娘の距離感は前とは比べ物にならないほど近しいものなのです。
前の司令官さんに手を上げようものなら営倉入りは避けられないでしょう。
軍隊としてはそれが普通だとは思うのです。
そういえば、傭兵の提督と名乗っておられました。
正規の士官学校や海軍の出ではないということなのでしょうか。
提督として雇われた傭兵、ということなら規律が緩いのもわかるのです。
しかし、軍のような閉鎖的なところが、提督という地位ある立場に外部の人を招き入れるなんて、あまり考えられないのです。
後で直接お聞きしてもよいものでしょうか、とカレーを食べながら一人悩む電であった。
「午後からは訓練をする予定だが、考えれば長旅の後だ。明日に回してもいいが、どうする」
「大丈夫なのです。こんな成りですが私もれっきとした艦娘、普通に扱ってほしいのです」
気弱そうな雰囲気はなりを潜め、打って変わって力強さをまとった様子に戸惑う。
評価を改めなければならない、強い意志を持った少女のようだ。
「そ、そうか。すまないな、見た目に惑わされるべきではないか」
「あ、いえ、お気遣いはとても嬉しいのです。ですが、私は頑張れるのです」
途端に先ほどまでの雰囲気は霧散する。戦闘中の豹変、あながち的外れの推測ではないかもしれんな。
「じゃ、とりあえずは予定通りといくか」
電と書いてプラズマと読む二次設定自体はとても好きです。
アニメでも時折平然と毒づく感じのセリフを言う彼女はとても好きでした。
電のキャラ付けどうしようかなぁ。