ぜひ、批評や感想など、些細なものでもお願いします。作者は飢えております。なんであれ執筆速度にキラ付けが入ります。
*『』は通信時など、直接的な会話でないときに使用されます。
今話ではインカムの通信時の表現になります。
____出撃ドック____
時間は0900、出撃のためにあきつ丸と電は出撃ドックへと集合していた。
二人にインカムを通じて通信が入る。管制室にいる傭兵からだ。
『昨日も言ったが、今日の目的は戦闘ではない。あくまで鎮守府近海の哨戒をし、お前たちにここの海に慣れてもらうのが目的だ。忘れるなよ』
『大丈夫でありますよ』
『はいなのです』
『では、出撃!』
傭兵は管制室から出撃ドックから曳波を立てながら航行していく二人を眺める。
今日の出撃は鎮守府近海の哨戒だ。
鎮守府周囲5kmの範囲内の探索、駆逐艦娘の航行速度はおおよそ時速15km、2時間もあれば終了するだろう。
沖合10kmほどのところにはI島があり、そこを境目に戦艦や空母などの深海棲艦が現れ始める。
今回の範囲内であれば、最悪でも重巡洋艦クラスだろう。
____洋上____
「久しぶりの海は気持ちいいでありますな、電殿」
「あきつ丸さんはあまり出撃などはされていなかったのですか?」
「実は自分ここが初めての鎮守府なのであります。傭兵殿が初提督となるでありますよ」
「そ、そうだったのですか!?でも、航行も安定しているし砲撃も初めてには見えなかったのです」
「一応本部付での事務仕事の他に救出作戦などには従事したことはありますからな」
艦娘としては結構長いでありますよ、と付け加える。
「そういうことなのですね。あきつ丸さん、一つお聞きしてもよろしいですか?」
「なんでありましょう?」
「えと、司令官さんのことなのです」
「提督殿のことでありますか?まさかセクハラでもされたとか!?」
「い、いえ!そんなことをする方には見えないのです」
「いやいや。提督殿は自分の胸に顔をうずめたり、手を握ったり、挙句の果てには妖精さんの体までまさぐる始末!」
「はわわっ、そんなことが!」
「まぁ、どれも事故の類か、仕方なかったことでありますがね。と、緊張は取れたでありますかね」
「あ、緊張しているように見えたのですか?」
「出撃ではなく質問することに対して、でありますがね。出撃に対して緊張しているのは自分でありましたな」
自然体のつもりだったのですが、見抜かれていた。鋭いのです。
「何でも答える、といいたいところでありますが、自分も提督殿とは今日で3日目。そこまで細かいことには答えられないでありますよ」
「では、あの方の出身についてなのです。海軍の出身、あるいは所縁のある方なのでしょうか?初日に傭兵の提督と名乗っておられましたし、あきつ丸さんもいまさっき傭兵殿と言ってたのです。提督として雇われた傭兵、ということでいいのですか?」
ふむ、そういえばどういう扱いにするべきでありましょうか。
割かしグレーゾーンに近い存在なのであります。
しかし、提督殿が傭兵と自ら紹介した上に、自分の発言もある。
変なごまかしは疑惑を生むだけでありますな。
「はい、提督殿も言われた通り傭兵として雇われているようです。細かい経緯は分かりませんが」
少しだけ、嘘をつかせてもらう。ここでは、あくまで自分は一人の艦娘なのだ。
「そうなのですか、司令官さんは傭兵・・・」
元来、軍事力などというものは一個人が所有していい代物ではない。
海軍という規律ある組織の中の体系に所属するものだからこそ、所有を認められるのだ。
金ずくで人殺しすらする傭兵がその立場にいるというのは、電としては受け入れがたいことであった。
「では、あきつ丸さんからみてあの人は信頼のおける人なのですか?たった3日間でも艦娘ならば司令官というものが分かるはずなのです」
「提督殿は自分のことをとても気にかけてくれました。優しい方だとは思うであります」
「質問の答えになっていないのです」
「そうでありますな。ただ、昨日の訓練の時に言った通り、提督殿のために身命を賭していいとさえ思っているでありますよ」
「艦娘としての性がそういわせているのですか?」
「手厳しいでありますな。たしかにその面がないといえば嘘になるでありますが」
あきつ丸としては、たった数日のやり取りであったが、傭兵を信頼していた。
傭兵は自分と分かり合おうと歩み寄ってくれたのだ。
電殿は傭兵というものに恐らく抵抗感があるとみたであります。
「むーぅ。電殿、自分は・・・」
ばっと、遮るように手を掲げて目をつむって集中する電。
「電探に感あり、深海棲艦なのです」
「こちらも感知したであります」
『司令官さん、電探に感あり、敵なのです』
急ぎ、管制室へと報告を行う。
『敵の艦種と数は分かるか』
『待ってほしいのです。んっ、数は3、反応は小さいので駆逐艦といても軽巡までなのです』
おあつらえ向きの構成である、というよりはこれが今相手にできる敵の構成の限界だが。
『よし、昨日教えた通りの戦法でいくぞ。陣形はあきつ丸を先頭にした梯形陣だ』
『了解であります(なのです)!』
「さて、お話しは後でありますな、電殿」
「敵さんは空気を読むのが上手なのです」
「はは、違いない。では、行ってくるであります」
「お気をつけて、なのです」
「頼んだでありますよ」
その言葉を別れにあきつ丸は敵へと接近していく。狙いもそこそこに砲撃を開始する。
深海棲艦側からしてみれば、急に敵一人が突出した形に見えるだろう。
彼らに戸惑いというものがあるかは分からない。
しかし、この不審な行動は彼らの注意を引き付けるには十分な効果があった。
敵からの砲撃も自分たちの周囲にある程度はまとまって着弾しており、無視はできない。
「さて、計画通り奴らの注意を引き寄せられるでありますかね」
そういいつつ、戦速を落とさないようにしながら砲撃を繰り返す。
段々と自分の周囲に着弾する砲弾が多くなり始める。だが、当たらない。
回避運動をメインにしながらの四戦速で砲撃が当たるなら、運が悪かったとしか言えない。
弾が避けていくようなものだ。
「と、かなり敵の注意もこちらに向いてきたでありますね。電殿!」
「了解なのです!」
電は原速まで航行速度を落とし慎重に狙いをつける。
いま自分の方には全く弾が飛んできていない。
確かに、これは外せないのです。心労と、重いと、そう言っていた意味がよくわかる。
敵を減らさなければあきつ丸が砲撃に晒される時間が長くなる。
さらに外して敵の注意がこちらに向いてしまえば、またやり直しなのである。
ズドンと重厚な音を残して、電の構える砲身から空を裂くような砲弾が発射される。
砲弾はきれいな山なりを描いて、敵の体へと吸い込まれていった。
遠方で爆発が起きる、どうやら敵駆逐艦を一撃で撃沈したようだ。
遠目に敵が動揺しているのが分かる、態勢を立て直そうとしているようだ。
手元では妖精さんがせっせと砲弾の装填作業をしている。
敵が立て直す前にもう一撃叩き込みたい。
すでに次の狙いを付けている。装填が終わると同時に発射した。
妖精さんがぱたぱたと慌てて離れていくが気にしない。
二射目の砲弾もまた、敵の体へと叩き込まれる。
しかし、爆発は小さい。煙の中からふらふらと中破状態になった軽巡洋艦が現れる。
「火力不足なのです。でも中破に追い込んでます。この次で・・」
言い終わる前に、別の方向から飛んできた砲弾が敵の体に突き刺さる。
一息ばかりの間を置いたのち、爆発。撃沈したようだ。
「やったであります。この距離なら外さないであります」
どうやら、砲弾の雨が止んだあきつ丸が速度を落とし敵に狙いをつけていたようだ。
電と比べてあきつ丸は敵に接近しており、速度の落ちた敵になら容易に命中させられるのだ。
だが、それはあきつ丸自身にも言えることなのであった。
『提督殿、敵を撃沈したでありますよ』
つい、嬉しくなりまだ敵がいるにも関わらず報告をしてしまう。
『馬鹿野郎!速度を落とすんじゃねぇ、あきつ丸!』
傭兵には手に取るように状況が分かった。
浮かれ切った弛緩したようなあきつ丸の声。
ほとんど初となる戦闘、今までの話でも敵を撃沈したという話はなかった。
そこへきて、中破でふらつく敵、さきほどまで降ってきていた砲弾も止んでいる。
絶好の機会だ、功を焦る気持ちも分からないでもない。
だが、今お前は敵の近くにいるんだ。
お前が今落とした敵のように、お前は敵の目に映っているんだぞ。
「えっ、うわぁ!」
残った一隻の敵の駆逐艦の砲撃は、無防備なあきつ丸の体へと吸い込まれていった。
艦娘の航行速度に関してはどうしたものか悩みました。
本来の駆逐艦の航行速度である39ノット(約時速70km/h)は人間サイズのものが移動する速度しては、高速すぎる。
ひとまず砲の射程と同じで10分の1の7km/h、これでは早歩きしている人間が出せるくらいの速度。さすがに遅い。
では、2倍の14km/h、マラソン選手くらいの速度、ちょうどよさそう。
この近くで調整するか、といった具合に決まりました。
あとは2人じゃ陣形は取れないのですが、イメージとして梯形のあの斜めの感じを考えていただければ大丈夫です。