艦これ 傭兵鎮守府物語   作:URIERU

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中破や大破、轟沈までの過程をゲーム仕様にするか、アニメ仕様にするか、オリジナルにするか。
ゲーム仕様では、意図的にやらないと沈められないし、アニメ仕様だと普通に沈むことになっちゃう(なお監督の意図)し、どうしたもんかなぁ。

ぜひ、批評や感想など、些細なものでもお願いします。作者は最近みなさまからの感想や評価により執筆速度にキラ付けが入っております。


第十五話「揺れる情動」

「あきつ丸さん!」

 

 っく、敵の駆逐艦からの砲撃。一撃で決めてくるとは敵ながらやるのです。

 視界の先には次の砲撃へ移ろうとしている敵の姿が映る。

 

「図々しいのです、そのまま二射目などと!」

 

 電の中で刻がゆっくり流れる。負傷したあきつ丸のことは頭の隅へと追いやる。

 流れるように砲を構え、敵へと照準を定める。

 頭の中で砲弾が敵を破壊するイメージ、これならいける!

 その瞬間、チリッとした電流のような痛みが脳に走る。

 敵をも助けたい、その思いが消えていく。

 しかし構ってはいられないのです、今は敵を沈める。

 

「ギィエエエエエエ」

 

 敵の断末魔が聞こえてくる。その声はいつもより悲壮に、電には聞こえるのであった。

 その姿を悲しく見つめる電の視界の端であきつ丸が動く。

 

「っは、あきつ丸さん!大丈夫なのですか?」

「え、えぇ。どうにか中破くらいで済んだでありますよ。これでは、提督殿に顔向けできない・・・!」

 

 服は破け、肩口とわき腹からは血が流れている。

 人間で言えば重傷の分類だが、そこは艦娘である。

 

『戦闘は終わったか!?状況の報告を!』

『敵は三隻とも撃沈。あきつ丸さんは中破。でも、どちらかと言えば大破に近いのです。哨戒の続行は困難と判断。撤退をお願いするのです』

『分かっている。新たな敵がいないか警戒しつつ、撤退せよ』

『も、申し訳ないであります、提督殿』

 

 あきつ丸は弱々しい声で謝罪をする。

 

『無事ならいい』

 

 全く、人間だったら死んでいたぞ。艦娘たちの死に対する認識は俺たちと違うようだ。

 それもそうか、最新の注意を払って艦隊運用をしていれば、そう沈むこともないんだったか。

 一発の弾丸が当たれば死ぬ俺たちとは、どうしても考え方が同じにはならないだろう。

 どうしたものかなと思案に暮れる。

 

「まぁ、気持ちは分からんでもない。功を焦るのは時として仕方ないことだ。だが、そのために死んでいった奴のなんと多いことか」

 

 管制室から眺める洋上、そこには見送った時とは違う黒色混じりの煙を吐きながら帰ってくる二人の姿があった。

 さて、出迎えに行くとしよう。

 

 出撃ドックまで行き二人を待つ。

 電があきつ丸を曳航してきているため航行速度はだいぶ落ちているようだ。

 あきつ丸の体は遠目に見てもかなり出血していた。

 

「おいおい、あの出血量は大丈夫なのかよ。簡単に死なないんじゃなかったのか」

 

 ドックにて一人焦っていると、二人が接岸し上がってくる。

 

「て、提督殿。面目次第もあり・・」

「おい、大丈夫なのか。どう見ても重傷じゃないか」

 

 あきつ丸の言葉を遮り駆け寄る。体から出てる出血量は相当なものだ。

 ショック死してもおかしくない。

 

「司令官さん、落ち着いてください。私たち艦娘はこのくらいの怪我で死んだりはしないのです。入渠さえすれば元通りになるのです」

「あ、あぁ。すまない、電よ。あきつ丸を入渠ドックへ連れて行こう」

 

 電と二人であきつ丸へと肩を貸して歩き始める。

 

「はいなのです。傷ついた艤装は私が工廠の妖精さんへ修理を依頼するのです」

「あぁ、そっちは任せた」

「提督殿、自分は」

「今はしゃべ、るなと普通なら言うんだがな。どうした」

「自分は目の前の戦果に焦ってしまったでありますよ。提督殿に褒めてもらおうと思って・・・」

「お前ってやつは・・・こんな状況でそんな可愛いことを言うな。叱れなくなるだろうが」

「ふ、ふふ・・・やっぱりお叱り、あるでありますね」

「当たり前だ。だが、今のお前を叱ることはできん。追い打ちをかけるだけだからな。元気になったら覚えておけ」

「入渠ドックに引きこもるでありますよ~・・・」

「全くこれなんだから」

 

 っと、入渠ドックについたようだ。この中に入ることはできない。

 あとは電任せだ。

 

「すまない、電。頼んだよ」

 

 電はこくりとうなずいて、あきつ丸と共にドックの中に入っていった。

 

「くぅ、情けないでありますな。提督殿の初出撃にいきなり泥を塗ってしまったであります」

 

 電の肩を借りながら、あきつ丸は涙をこぼす。

 

「戦闘は初めてに近かったのでしょう?それでも果敢に敵を撃沈したのです。私は初めての時は怖くてろくに砲撃もできずに、怯えているところに被弾して、あとはみんなに守ってもらったのです」

「電殿でもはじめはそうだったのでありますか」

 

 先ほどの電は人が変わったようにさえ見えた。

 自分を撃ったあの駆逐艦を見つめる目は狩人のそれであった。

 

「そんなものなのです。気落ちしないでいいと思うのです」

 

 いまの電にはそんな気配は全くない。

 

「そう、でありますかな。でも、あそこで功を焦らず、速度を保って敵を撹乱し、そこを電殿に」

「戦場での、でも、あの時、は禁物なのです。今二人がこうしてお話ができている。それでいいと思うのです」

「電殿は優しいですな。そして、強いのであります」

 

 強い?今まで誰にも言われたことのない言葉なのです。

 いつも気弱でみんなの後ろにいた自分が強いだなんて。

 

「私の初めての僚艦が電殿のような方で嬉しい。入渠の暇つぶしに話損ねたことを話してもいいでありますかな」

「そ、そんなこと言われたのは初めてで・・・とっても嬉しいのです!ですが、先に艤装だけ運んでおきますね、あとは戦果の報告も。せめて傷口の表面でも閉じないとおしゃべりは辛いのです」

「そうでありますな。よろしくお願いするであります」

 

 電は艤装を抱えて工廠へと向かっていく。

 その姿を見遣ったあとあきつ丸は体の力を抜き、しばし治療へと専念するのであった。

 

 

____執務室____

 

 傭兵はあきつ丸を送った後、執務室にて出撃の報告書とにらめっこをしていた。

 さすがに今日あきつ丸に秘書をさせるのは酷というものだろう。

 自分で済ませなければならない。

 

 こんこんと、執務室の扉がノックされる。

 

「ん、電か?入れ」

「失礼するのです」

「あきつ丸についていなくても大丈夫なのか?」

「入渠さえしてしまえば、あとは傷が癒えるのを待つだけなのです」

「そうか、それはよかった。肝を冷やしたぞ、全く。で、どうしたのだ」

「今日の出撃の報告に上がったのです。あとは消費した資材とその補給の申請なのです」

 

 基本的に報告は旗艦の役目であるが、今日は特に旗艦を決めていなかった。

 

「そうか、いま出撃の報告書とにらめっこしていてな。助かるよ」

「もしかしなくても、これが初めての報告書まとめだったりするのですか?」

「そりゃなんたって初出撃だからね、これ」

「失礼なことだと思うのですが、まとめ方などは?」

「あきつ丸に一昨日教わったんだけどね。でも、実際書くってなると難しいもんだな」

 

 電は近くによって報告書を見る。あまり進んでないようなのです。

 

「お手伝いしてもよろしいですか?」

「ぜひお願いするよ。ありがたい限りだ」

「よろしくなのです!あっ!」

 

 そういえばあきつ丸さんとお話しをする約束をしていたのです。

 でも、報告書は重要なお仕事なのです。はわわっ、やってしまったのです。

 

「どうかしたのか、電?」

「え、えと何でもないのです」

 

 ふむ、何か用事でもあったか。この場合用事なんて限られている、あきつ丸だろう。

 猿芝居でも打つとするか。

 

「電よ」

「は、はい」

「あきつ丸は初の出撃で被弾をして落ち込んでいる。生真面目なあいつのことだ、俺の前でこそ虚勢を張って軽口も叩いていたが、その実、弱っていただろう」

「そ、そうなのです」

「俺も傍についてやりたいところだが、あいにく俺はドックには入れん。そこで、電に重要な使命を与える。これは書類仕事より大事なことだ。何が言いたいか、分かるな」

「分かるのです」

「つまり、だ。遠慮せず行って来い」

「は、はいなのです。でも少しだけでもお手伝いするのです。あきつ丸さんの傷口が塞がるまでは、出来ればそっとしておきたいのです」

「分かった。じゃ、集中してやるとしようか」

 

 サラサラと執務室内にはペンの流れる音だけが聞こえてくる。

 私たちのことをとても気にかけてくれるのです。

 今回のあきつ丸さんの行動に関しても怒ってはおらず、あくまで叱ると言っていました。

 叱るタイミングさえも配慮してくれます。

 そして、私の様子を見てあきつ丸さんとの用事があることもすぐに察知してくれました。

 傭兵さん、私の思っているような人間ではないのでしょうか。

 

「ふぅ、結構進んだな。いや、やっぱり秘書艦がいるってのはいいね」

「ほとんど終わっちゃったのです」

 

 電自身は秘書艦をしたことはほとんどなかったが、今日の出撃は2隻、戦闘は1回。

 その報告書となると、前の鎮守府でやった内容に比べたら至極簡単なものである。

 

「よし、もう十分だな。あきつ丸のとこへいってやれ」

「分かりました、行ってくるのです」

 

 ペンを置き、電は扉へと向かっていく。おっと、言い忘れていた。

 

「電、本当にありがとう。君はきっちりと役目をこなして、あきつ丸の命をも救ってくれた。君が来てくれたこと、私は光栄に思うよ」

「はわわっ、そんなことを言われると照れちゃうのです」

 

 電は顔を真っ赤にして縮こまる。

 

「可愛い奴め。そうだ、お菓子でも持っていけ。昼に出てくるのは難しいだろうから、とりあえずこれでも食べておくんだ」

 

 そういい、棚から取り出したお菓子を電に手渡す。

 電はお菓子をうれしそうに抱えて、礼をして去っていった。

 

 うぅむ、普通に優秀な子だ。今日の砲撃にしても確実に当てている。

 軽巡が一発で落とせなかったのも、そもそもの砲の火力不足で直撃はさせていたようだ。

 味方がやられた後も動揺することなく冷静に砲撃を決めている。

 なぜ、舞鶴は彼女を手放したのか。

 それとも最前線とされるような海域では、あれでも役立たずな分類なのだろうか。

 だが、いまは彼女が来てくれたことを素直に喜ぼう。

 明日には給糧艦間宮に、軽巡洋艦と駆逐艦の二人がやってくる。

 戦闘ももう少し楽に展開できるだろう。

 

 あとはあきつ丸をどう叱ったものか、な。

 書類を書き終え一人悩む傭兵であった。

 




今回の鎮守府近海にでてきた深海棲艦は、せいぜい1-1や1-2の敵編成、強さもそれに準じているくらいの設定です。

電はそこまで強いわけではありませんが、ある程度の練度があるから充分に活躍できるといった具合です。
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