艦これ 傭兵鎮守府物語   作:URIERU

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電とあきつ丸のドックでの秘め話は次話の冒頭に入ります。
構成を考えた上で、今話には入れられないと判断したためです。

ぜひ、批評や感想など、些細なものでもお願いします。
感想にはできる限り丁寧に返していきます。



第十六話「叱責と信頼と」

「あきつ丸、この後一人で執務室に来るように」

 

 そう言い残し、食堂より傭兵は出て行った。

 

「わ、わかったであります」

 

 さすがにお互いおちゃらけた雰囲気は出せない。

 電は一人、あわあわと二人を交互に見つめていた。

 

「だ、大丈夫なのですか?あきつ丸さん」

 

 洗い物をしながら電は尋ねる。

 

「大丈夫でありますよ。ここで何の叱責もないのでは、プライドがずたぼろになるであります」

 

 ミスをしたのに何も言われない。これほど辛いこともないのだ。

 暗に何も期待していないと言われることと同義である。

 

「確かにそうなのです。しっかりと叱られてくるといいのです!」

「たはは、電殿も手厳しいであります」

「でも、重要なことなのです。そのあとは枕を涙で濡らせば、新兵卒業なのです!」

 

 グッと、泡のついたままの手で握りこぶしを掲げる。

 スポ根少女なのだろうか。

 

「えぇ、ではいってくるでありますよ」

「はいなのです!」

 

 なんとなくお互い敬礼し、別れていった。

 

 

____執務室前____

 

 いざ、入口まできたけれど中々入る勇気が出ないであります。

 思い出すのは初めて手を出してしまった後の傭兵の見せた気迫、あの時はカマをかけられたでありますが、今回はカマもなにもないのであります。

 部屋の前をうろうろしながら、中々入る決心のつかないあきつ丸であった。

 

 

____執務室____

 

さっきから扉の前に気配を感じる。あきつ丸がきたのであろう。

入るのにためらっているのか、先ほどから入ってくる様子はない。

しかし、こっちから声をかけるものでもない。

とりあえずは待つとしよう。

 

こんこんと、控えめなノック音が聞こえてくる。

どうやら決心はついたようだ。

 

「入れ」

「っは!あきつ丸入ります!」

「もっと近くへ来い」

 

いつもとは違う雰囲気に、あきつ丸は内心戦々恐々としながらも歩み寄る。

 

「さて、なんのために呼び出したかは分かっているな」

「はい!今日の出撃での戦闘の件であります」

「そうだ。俺がお前に与えた役割を答えろ」

「前衛として陽動に努め、敵の攻撃を引きつけることであります!」

「そうだ、お前はそれと違う行動をしたな。それはなんだ、そしてなぜした」

「速度を落とし敵に砲撃をしました、戦果に目が眩んだのです!」

「そのせいで、お前は被弾し艦隊を危機に晒した。お前の功名心のためにだ。違うか!?」

「違わないであります!」

「分かっているじゃないか。よろしい。気を付けの姿勢のまま、目をつぶり顎を上げ歯を食いしばれ!」

「っは!」

 

 ぐっと体に力を籠め、歯を食いしばって姿勢を取り、来るべき衝撃に備える。

 パシンっ!と執務室に乾いた音が響く。

 

「休め!」

「っは!」

「俺は怒っているのだ。艦隊を危機に晒したこともあるが、お前自身の命に対する認識に、だ。もうすこし、自分の命を大切に扱え。お前たちは入渠すれば、例え人間なら死んでいたような状態からでも治るかもしれん。だが、そういう問題ではないのだ」

「っは、はい」

「そして、初の戦闘にしては敵を1隻撃沈した。それはよくやった。だが、戦闘は部隊全員で行うものだ。例え、お前が敵を撃沈していなくても、役目を果たしていたなら俺は十分な評価をする。逆に、役目をおろそかにし自らの功名心に囚われる様では、お前を戦闘に出すことはできない。分かるな」

「分かるであります。自分は、自分はあの時何か強い力に引き寄せられたであります。そして、敵を撃破した先に提督殿に褒めてもらう自分の姿があったのであります。その誘惑に抗えなかったのであります」

「その気持ちは俺にも分かる。俺の部下、いや、戦友たちも、目先の功を急いて死んでいった奴がたくさんいる。クリフ、オダル、どいつもいい奴だった」

「て、提督殿のお仲間も・・・」

「そうだ、みな帰ってこなかった。だが、お前は帰ってこれた。お前はもう2度とその誘惑には囚われないはずだ。帰ってきてくれ、それだけでいいんだ」

「自分は、うっ、うぅ、うわぁーん」

 

 あきつ丸は責を切ったように泣き出す。

 叱られたこと、自尊心が傷ついたこと、優しくされたこと、戦闘の恐怖や緊張、それらがないまぜとなりあきつ丸の心を乱した。

 あきつ丸は泣きに泣いた。

 

 傭兵はあきつ丸を抱きしめつつ頭を撫で背をさすりながら、泣き止むまでなだめるのであった。

 

 泣き止んだあきつ丸は泣き疲れたのかすぅすぅと寝息を立てている。

 どうやらそのまま眠ってしまったようだ。

 やれやれ、出撃に被弾に入渠、そして叱責。

 体は丈夫でも心まではついていけないようだ。

 その部分はたしかに、少女のそれのようだな。

 

 あきつ丸を背負い執務室の扉を開けて廊下に出ると、奥から電が歩いてくる。

 

「お、お疲れ様なのです。司令官さん」

「電か。あきつ丸が心配だったか」

「あ、あきつ丸さんは大丈夫ですか?」

「泣きつかれて眠っちまっただけさ、いまから部屋に送るところさ」

「わ、わたしが連れていきましょうか?」

「あー、そうか。君たちなら問題なく背負っていけるんだったな。だが、ここは俺が運ぶとするよ。俺の仕事だ。ただ、部屋に連れて入るときだけはついてきてくれると嬉しいな」

 

 俺の身の潔白を証明してくれないとね、と笑いかける。

 

「分かったのです、司令官さんにはセクハラ疑惑がかかっているのです!」

「そいつは俺の背中をよだれで汚しながら寝ているバカ女が言ってたのか」

「バカ女はひどいのです!」

「悪い悪い、昔の癖だ。つい言葉遣いが汚くなっちまうことがある」

 

 今日の通信でも、最後には馬鹿野郎と叫んでしまったしな。

 

「直してほしいのです!」

「いいじゃねぇか、気を許した証拠さ。ったく、セクハラ疑惑ってなんだよ。俺は一度も、そう一度もそんなことはしてねーぞ」

 

 いま背負っているあきつ丸のおっぱいの感触なんてちっとも気にしていない。

 

「なんで、一度言い直したのですか?」

 

 じとっとした目で見てくる。

 何やら構えており、背中のあきつ丸を奪おうとしているようだ。

 

「気にしない、気にしない。さぁ、さっさと行こうぜ。俺も疲れてるんだ」

 

 人を叱るということは実に疲れることなのだ。

 感情的に怒るのであらばなんてことはない。

 相手の心情に配慮することなく喚き散らすだけなら子供にでもできる。

 叱る場合、相手の行動理由も自尊心も考えなければならない。

 その上で理屈をすり合わせる、実に高度なやり取りなのだ。

 

「分かったのです」

 

 部屋にたどり着き、揺り動かされて起きたあきつ丸は、赤面しながら背中で暴れ、傭兵の背中から落ちて尻もちをついた。

 そして、礼もそこそこに自室へと逃げ隠れるように入っていったあきつ丸であった。

 

「あの、司令官さん」 

「ん、なんだ?」

「あ、あの。なんでもないのです」

「・・・?話せるようになったら話せ」

「!すでのな」

 

 電は、傭兵のことを信用してみることにした。

 自分の、奥底に隠したことはまだ話せない。

 だが、いつか話せる日を願って。

 




どうでしたでしょうか。

この話の構成にはとても気を使いました。
人を叱るというのは本当に難しいです。

気づけばUAも2500を超えて、お気に入りも40件に到達しようかというところまで来れました。皆さま、ありがとうございます。

今後も引き続きお楽しみください
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