第十八話「新たな始まりと共に」
____鎮守府正門____
「こりゃすごいな。」
そういう傭兵の前には、数台のトラックが列をなしている。
中には食堂や間宮の経営に必要な食材や器材が入っているのだろう。
トラックは正門へと止まりそこから3人の女性が降りてきた。
どうやら彼女たちが新たに着任する艦娘の子だろう。
「遠路はるばるよく来てくれた、提督の傭兵だ」
「初めまして、提督。給糧艦「間宮」、萩鎮守府へと到着致しました。着任の許可を願います」
「君が、間宮さんか。うちの二人もずいぶんと間宮アイスとやらを楽しみにしていてね。存分に腕を揮ってくれ」
そういい、手を差し出して握手をする。
「あら、提督には楽しみにしてもらえなかったかしら」
「失礼。俺も興味があるよ、艦娘の士気すら左右するというアイスには、ね」
「ふふ、ぜひ甘味処「間宮」に足を運んでくださいね」
「そうさせてもらうよ、さて」
「次は、私かしらね」
そういい、後ろ髪をすっきりとまとめ上げた涼しげな、キリっとした面立ちの少女が一歩前に出る。
「阿賀野型軽巡の三番艦矢矧、着任したわ。提督、最後まで頑張っていきましょう!」
この子が軽巡洋艦となる娘か、確かに駆逐艦の娘たちよりはお姉さんに当たるようだ。
水雷戦隊の長として引っ張る立場にあるというのも納得がいく。
「まだ走りたての鎮守府でね。軽巡の着任は君が初となる。水雷戦隊の長として君には期待させてもらおう」
「ふふっ、いい気配りね、嫌いじゃないわ。阿賀野型の実力見せてあげる!」
「よろしく頼むよ。最後に」
「やっと、私の番かしらね」
次は、妙に品を作った少女が甘ったるい声で話しかけてくる。
年端もいかない少女がそれをやっているというのは滑稽なものである。
「睦月型駆逐艦2番艦の如月と申します。おそばに置いてくださいね」
ふむ、この娘は少し扱い辛いかもしれんな。
俺の周りにいた少女にも品を作る子はいたが、その子たちは様になっていた。
それもそのはず、体を売らなきゃ生きていけない世界だったからな。
だが、目の前のこの娘は違う。体を汚したことなどない、そんなことは見れば分かる。
そんな子が、品を作っているというのは・・・
「うふ、どうしたの?見とれちゃったかしら。もっと近くで見てもいいのよ♪」
傭兵の沈黙をどう捉えたか、如月は微笑みつつ近寄ってきた。
ここはすこし、カマを、脅しをかけておこう。生娘ならばこれだけで引くはずだ。
「ん、きれいな肌だな。ほっぺたも実に柔らかそうで」
そういって、かがんで顔を近づけつつ、手を頬へ差し伸べるように動かして見せる。
ぴくりと、少し怯えたような如月の一瞬の表情を傭兵は見逃さなかった。
差し伸べた手を下し、握手をする位置へと戻す。
「あまり、大人をからかっちゃいけない。悪い大人もいるからね」
と、如月だけに聞こえるようささやきかける。
彼女が大事にしたい「キャラ」というのもあるだろう、という配慮からである。
「もぅ、司令官にはお見通しなのね。うふふ、如月、司令官だったら大丈夫よ♪」
握手をしながら如月はそう言ってくる。あらあら、懲りてないと見える。
「提督殿?」「司令官さん?」
あきつ丸と電の二人から冷ややかな声をかけられる。
む、今の動きは傍から見たら、彼女の誘惑に乗っかかっていったようにしか見えないではないか。
やらかしたな・・・
どことなく、間宮と矢矧が先ほどまでと俺を見つめていた目の色が変わっている気がした。
「うぅむ、オホン」
と、わざとらしく咳ばらいをしてひとまずの区切りをつける。
「給糧艦間宮、軽巡洋艦矢矧、駆逐艦如月、萩鎮守府へようこそ。まだ駆け出しの鎮守府だが、これからみなで大きくしていこう。ひとつ、あらかじめ言っておく。俺は傭兵だ。今まで君たちが過ごしてきた海軍とはやり方が異なるだろう。君たちの信頼は、戦果で得るとしよう。貴君らの奮闘に期待する!」
「「「はい!」」」
____設営作業中____
「おー、みんな頑張ってるねぇ」
着任の書類を受け取って処理を終えてから、設営作業中の間宮にまで出てくる。
間宮の設営はみな一段と張り切っており、忙しそうにぱたぱたと駆け回っている。
「提督殿も、さぼらずに!ダンボール運んでほしいでありますよ」
みんなの様子を見渡していた傭兵を目ざとく見つけたあきつ丸が声をかける。
「あ、あきつ丸ちゃん。て、提督にこんなお手伝いなんてさせちゃあ」
「気にしなくていいさ、間宮さん。俺も食べさせてもらうわけだしな」
通りすがりに、こつんと軽くあきつ丸の頭を叩いてから、傭兵はダンボール箱を取りに行った。
「むーぅ、艦娘暴行でしょっぴくでありますよ!」
と、傭兵の背中へ文句を言う。傭兵は振り返りもしない。
「とても仲が良いのです」
と、電、その様子を眺めていた矢矧が声をかける。
「ねぇ、いいかしら?ここではかなり提督との距離が近いのね?」
「え?えと、確かにそうなのです」
「その、ね。いきなり気にすべきことじゃないと思うんだけど、規律とかは大丈夫なの?」
「あれで、あきつ丸さんも線引きはしっかりしているのです」
「そうなの?ならいいのだけれど」
締めているところは締めている、のだろうか。
如月やあきつ丸とのやり取りはどうにも気軽いのではないか、と思う矢矧であった。
「さて、大体済んだかな」
「はい。みなさんのお陰で予定していたよりかなり早く終えることができました」
これでお食事の支度がゆっくりできます、と間宮さん。
「おぉ、間宮さんが来るまでずっとカレー三昧だったんだ。楽しみだよ」
「ふふ、楽しみにしてくださいね。今日は・・・金曜日ですから!」
傭兵は金曜日が海軍のカレーの日であることを知らなかった。
____演習場____
午後一番、傭兵は演習場についた艦娘たちに訓練の内容、作戦についての説明を行う。
軽巡洋艦である矢矧の着任により諸々の変更はあるものの大筋に変わりはない
「魚雷の発射に関しては私に一任する、と?」
「武装の性質上それが一番だろう。各々が好き勝手に撃つよりはいい」
艦娘の装備している魚雷は一度発射してしまえばまっすぐに進むだけだ。
残念ながらスティンガーのようなヒートシーカー、近代のアクティブソナー魚雷などという大層な代物ではないらしい。
対歩兵戦闘では無誘導のロケット砲でも隠れている敵を遮蔽物ごと吹き飛ばすこともできるが、海上では勝手が違う。
「正直なところ、俺には無誘導で海中を進む魚雷というものがどれほどの真価を発揮するのかわからん。昔の艦船のように図体がでかく足もそれなりに遅いのなら、相手の位置を未来予測し、そこらへんに撒いておくというのも分からんでもないがな」
「そういえば前の出撃や演習時にとくに雷撃のことは触れられなかったのです」
「提督、私たち水雷戦隊にとっては魚雷と夜戦が本来の領分よ。正直なところ昼戦での砲撃戦で勝負を決めるようなものではないわ」
この作戦では、同程度の艦隊は相手にできても重装甲の戦艦が出てきたとき太刀打ちできないわよ、と矢矧。
「そうだな。確かに昼戦で有効打を与えられるのは同じ帯の艦種くらいだろう。だが、いまは戦艦がいる海域まで出向くこともない。勝てないとは言わんが、リスクとつり合いが取れん。戦争における、こんな局所の一回の勝ち負けなど些細な事だ。この面子で戦艦や空母がいる艦隊に勝てれば大金星だろうが、それで戦争に勝てるわけじゃない」
結局、損害の少ないように進み、練度や艦種が豊かになってきてから攻めに転じればいいのだ。
「確かにそれもそうね。作戦自体は面白いと思うわ。あきつ丸が前衛、如月が中衛、私と電が後衛でいいのかしらね」
「私も前衛のほうがいいんじゃないかしら?二人に敵の放火を集中させたほうが被弾率も負担も減ると思うわ」
「それはある。だがその分敵への攻撃も減るのとあとは空母対策もある。軽空母に関してはI島の手前側でも資料に遭遇例があったようでな。中衛には敵艦載機の撃破という防空の役目を担ってもらう」
「つまり敵空母がいるようなら後衛よりで、艦載機の迎撃をすればいいのかしら」
「そうだ。敵空母がいない場合は、敵の数が減ってきたら後衛に寄り砲撃に集中してもらう」
「その時の判断は自分でするのかしら?」
「はじめのうちは俺が指示を出す。そして、指示がでたタイミングを如月のみならず全員に把握しておいてもらいたい」
「いずれは、同じ役目が回ってくる、そして自分たちで判断できるようになれ、ということでありますか?」
「そうだ。全員が全員の役割について理解していればおのずと動きも変わってこよう」
そして、味方がなにを考えて動いているのか、それは実際に同じ役割を担えば分かることなのだ。
「では、訓練の予定を伝える!まずは各自砲撃訓練、矢矧は電に、如月はあきつ丸の指示に従え。2時間後に休憩の後、矢矧と雷は3船速内での砲撃戦闘、あきつ丸と如月は3船速以上での着弾円縮小を目的とした戦闘の演習だ!」
「了解!」
2部と共に3章、始まります。
活動報告にて艦これ 響DAYZのアンケートを行っております
当小説での追加艦娘のリクエストに関しては、もう少し話が進んでから行う予定です。
その時は皆さまぜひよろしくお願いします。(艦種指定などは申し訳ないのですが入れさせていただきます)