艦これ 傭兵鎮守府物語   作:URIERU

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第二話「艦娘-あきつ丸-」

 海軍庁舎から出てきて周囲を見渡す傭兵。

 目の前の乗り場には車が一台止まっており、その横には女性が一人ドアを開けて待っていた。

 中将の言っていた待たせてある車とはあれのことだろう。

 

「佐伯中将から下で車が待っていると言われたがあっているかな」

「はい、お待ちしていたであります」

「じゃ、遠慮なく乗せてもらうぜ」

 

 車に乗り込む傭兵。丁寧に車は発進し海軍庁舎を後にした。

 

「やれやれ、着任はすぐ明日か。もらった資料を満足にみる時間もねぇぜ」

 

走り出して数分後、車内で一人ぐちる。

 

「・・・。あなたが新たに提督殿となる御方でありますか?」

 

ミラー越しにこちらを伺う運転手。

 

「あんたは一体?軍の送迎の運転手やってるってことは」

「っは!自分はあきつ丸、陸軍の艦娘であります」

 

ミラー越しに敬礼をしている姿が見える。運転中にはやめてもらいたいものだ。

しかし、陸軍で艦娘、海軍から出てきたのに陸軍の運転手。どういうことなのか。

不審げに思われている雰囲気を感じ取ったのか補足をし始める。

 

「陸軍にも揚陸艦というものがあり、あれは海軍ではなく陸軍所属の艦であります。海軍にいることに関しては自分からもうまく説明はできません」

 

それにしても、わざわざ運転手に艦娘を寄越すとは。

艦娘というものに少しでも慣れておけという中将の計らいなのだろうか。

 

「なるほどね。それにしても全く気付かなかったな。ほんとにまんま人間の小娘だ」

「小娘と言われるのは心外でありますな」

「いや、失礼。言葉選びが悪かったよ。実に可憐な少女だ」

「取り繕っても何もでないでありますよ。しかし、自分が小娘となると駆逐艦の子たちにあったらさぞ驚くでありましょうな」

「つまり、君より幼いってことかい?」

「会ってからのお楽しみでありますな」

「はは、明日が楽しみだね」

 

あの中将の側近でもやっているのであろうか、何とも食えない娘だ。

 

「明日は自分が、ホテル前に0830にお迎えに上がります。その時までに準備をお願いしたいのであります」

「明日も送迎付きかい?至れり尽くせりでありがたいことだが、別に逃げたりはしねーぞ?」

「いえ、自分も鎮守府のほうには用事があるのであります」

「そうか。まぁいずれにせよ助かる。ありがとう」

「では、また明日であります」

「ありがとな。じゃ、お疲れさま」

 

 ドアを閉めて手をひらひらと振る。

 

【挿絵表示】

 

 それに対してあきつ丸はビシッという音が聞こえてきそうな見事な敬礼を返した後、車を走らせて去っていった。

 

 普段泊まることのない豪華なホテル、部屋まで荷物を持ってもらいホテルマンに案内されるなど初めての経験であった。

 ホテルマンの後を歩きながら先ほどの艦娘に対して考えを巡らす。

 先ほどの艦娘、あきつ丸と名乗った娘は軽口を叩いたかと思えば、まじめな敬礼を見せる。

 不愉快なことには相手に反発も見せる。

 見た目も人間と相違なく、確固たる人格を持っているようにも思えた。

 先ほど聞いた艦娘の出自、生い立ちには「魂」が関わっているとのことだった。

 器である部分の体を用意し、それを動かす意思となる「魂」を埋め込む。

 そうすることで艦娘が出来上がる。

 そうなると先ほどのあきつ丸は、あきつ丸の「魂」があればクローン人間のように複製が可能ということなのだろうか。

 それとも、あきつ丸の「魂」はユニークなものであり、この世には二つと存在しないのだろうか。

 複数の「魂」が存在するとしたらドッペルゲンガーの如く何人ものあきつ丸がいるのだろうか。

 泥沼のような思考に陥りかけたところに、ホテルマンから声がかかる。

 

「お客様、お部屋につきました。こちらがルームキーとなります。何かお困りの際は、遠慮なさらずコールして下さい。ディナーは2階のレストランにて6時からとなっております」

「丁寧にありがとう」

「では、私はこれで失礼いたします」

 

 時間は1700、ディナーまでは1時間あるため、先ほどもらった艦娘の資料を読む。

 まずは艦娘の種類、駆逐艦・軽巡洋艦・重巡洋艦・空母・戦艦・潜水艦と大別すると6種類だ。

 それぞれできることが異なるようであり、これの把握が運用の鍵となるだろう。

 それぞれの艦種毎に荒い写真が添付されていた。

 顔の判別はできないが、駆逐艦はだいぶ幼い印象であった。

 逆に空母や戦艦は大人びた女性、自身と大差ない年代のようである。

 次に艦娘の武装について。艦種によって装備できる武装は異なっており、それぞれの特徴を生み出す一因のようである。

 また対空や対潜のソナーに艦載機の種類など、覚えるべきことは多数あるようだ。

 ここまで読んでから資料の厚さが気になり、さっと流し読みしてみたが、艦隊の陣形、艦娘の運用コストなど、資料の内容はまだ盛り沢山であった。

 

 傭兵はもう少し仕事の開始、鎮守府の着任まで時間がほしいと思った。

 艦隊運用すれば自然と頭に入ることとはいえ、指揮する側である自分にそんな現場で学習をしていくことなど、許されることではないのである。

 ふと気になり時計を見るとすでに1900となっていた。

 資料に集中していて気づかなかったが腹も空いているようである。

 その後は、ディナーを済ませ風呂で疲れを落とした後、資料を読みながら眠りへとついた。

 




第2話にして艦娘、あきつ丸の登場となります。

第1話で艦娘が登場させられなかったのと、区切りをつけるためもあり、だいぶ短い投稿となってしまいました。

コメント、批評募集しております
誰かが読んでくれていると思うとキラキラします

挿絵 提供元
あきつ丸モデル:毛長伍長 様
トヨタ・ミライモデル:御子柴 彩 様
スカイドーム:Kanata 様
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