艦これ 傭兵鎮守府物語   作:URIERU

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第二十二話「潮流に飲み込まれて」

____出撃ドッグ____

 

「今日は見送りに来てくれたでありますな」

「あぁ、別に出撃の時にまで管制室に詰めてる必要もないしな」

「ぎりぎりまで一緒にいたいなんて、照れるわ♪」

「そうだな。長く一緒にいたい、だから無茶せず必ず帰ってこい」

 

 戦友にはまっすぐに伝えるべきことは伝える、それが傭兵の教訓であった。機を逸すれば二度と何も伝えられなくなるからだ。からかい気味に言った如月であったが、果たしてまっすぐな返答に顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「この矢矧、水雷戦隊の誰一人かけることなく戻ってくるわ」

「必ず帰ってくるのです」

「自分も今日は無事に戻ってくるでありますよ」

 

「頼んだぞ。さて、今一度今日の出撃について説明しておく。今日は羽根島、声島、そして雄島の周辺海域の哨戒、並びに敵と遭遇した場合はこれの撃破が主な目的となる。そして、余裕があれば各島間での潮の流れや地形についての情報を収集してくることだ。注意したいのは雄島周辺では軽空母も確認されている、この一点だな」

 

「敵艦載機への対処は私と電ちゃんが主にやる、でいいのよね」

 

「そうだ。あとはあきつ丸へと攻撃に向かう艦載機がいたら、そいつは如月のほうで優先的に撃破してほしい。敵の砲撃を引きつけているあきつ丸に艦載機の攻撃が集中してまえば、足が止まって被弾か、艦載機の攻撃を回避できずの被弾か、その2択となる。電は如月と矢矧に向かう艦載機の撃破に集中だ」

 

「敵の艦載機の数が減ったら私も矢矧さんと砲撃に加わる、でいいのですね」

 

「そうだ、艦載機の数も見つつ敵が艦載機をさらに出して来る様なら、また艦載機の迎撃に戻る。臨機応変が求められる立場であるが、戦場での経験はこの中では電が一番長い。なんだかんだ、戦場で一番ものを言うのは経験だ。矢矧には水雷戦隊の長を任せるが、はっきり言えば電のほうが戦場での判断は頼りになる。だが、それを恥ずかしがるな。今もし恥ずべきときがあるとすれば、プライドが邪魔して人から学べないときだ」

 

 初めてなことは誰にでもある。それを認め、例え年下相手であろうが師事を乞うことができてこそ、大人なのである。

 

「明け透けなくそういってもらえると肩の荷もおりるわ。なんたって私、初出撃なんだもの」

 

 訓練はここに来る前にもたっぷり積んできたけれどね、と呟く矢矧。

 

「目がいつもよりキュッと吊り上がって緊張しているようだったからな。さて、おしゃべりはこのくらいにしようか。では、出撃!」

「了解。第一水雷戦隊、預かります。矢矧、抜錨する!」

 

 

____洋上、羽根島周辺____

 

『羽根島より1kmのところに到着、いまのところは敵影もないわ、提督』

『矢矧は雄島方向へ水偵を飛ばして索敵、それから電探を装備した電を先頭にし、周辺の調査を行え』

『了解なのです』

『もし戦闘がある場合潮流の流れは非常に大事になる。なぜか分かるか』

『向かい潮だと速力があがらないから、でありますか?』

『そういうことだ。敵がその潮に入ってしまえば撃ち放題、自分たちが入れば的だ。島と島の間などは流れが変化しやすい。数百m先で全く潮の流れが違う、ということもある』

『あらぁ、司令官は海の男だったのかしら』

『ん、説明書を読んだのさ』

 

 日本に来てからの主な仕事は船を使った口に出せないものの密売とかが多かったのだ。故に軍から逃げるために潮の流れをこまめに把握していないといけなかった、などとは口が裂けても言えない。こういったことも把握されてて中将は俺を指名したのだろうか・・・あきつ丸は、きっと知らないよな?

 

『謎の多い男性って魅力的よ♪』

『ありがとよ、じゃ、仕事に集中しな』

『もう、い・け・ず♪』

 

 しかし現実から逃げたいがためにお薬ってのはとっても人気だったよなぁ、と思い返す。いやいや、俺がメインで関わってきたのは密漁だし、そんな極悪じゃない。元をただせば海軍が悪いんだ。漁業に関わる民や漁獲に対してひどいことをしていたから、それのはけ口として俺みたいなのが必要だったんだ。

 

「一体誰に言い訳してるやら。ま、過去は過去さ」

 

 気にしない、気にしないと言いながら、管制室でくつろぐ傭兵であった。

 

 

「たしかにこの辺の潮流は安定しないというか、提督殿が言っていた通りちょっと先で全く違う流れになっているでありますな」

「そうね、この雄島と本島の間なんかは飲み込まれるように入って、そのまま抜けれるかと思いきや、向かい潮なんだものね」

「・・・。早めにここは抜けてしまうのです。いま襲われたら後にも先にも行けないのです」

「たしかに、ここ自体は凪いでるお陰で砲撃はとってもしやすいけど、思うように動けないものね」

「ん、嫌なタイミングかしらね。水偵が雄島方面で敵艦を発見したわ」

 

『提督、雄島方面4km先で水偵が敵を発見したわ。数は5、悪いことに水偵が軽空母発見の報告をしてきているわ。現在羽根島-本島間の凪の中にいる。後も先も向かい潮よ』

 

『落ち着いて、全速で北東方向へ抜けろ。矢矧、水偵は声島-O島間を抜けるように帰らせろ。まだこちらの位置はばれていない。敵は水偵の帰る方向へと艦載機の発艦を進めるだろう。迂回して帰らせる以上、向かい潮を抜けるのには間に合う。艦載機の迎撃は全員で行え。その後は敵を誘い出し島-島間の潮流の落とし穴に誘い込め。そしてそれを1.2~5kmの有効射程内に収められるように陣取り、あとは作戦通りに。以上だ』

 

『了解したわ』

 

「みんな、指示は聞いての通りよ。速力一杯!まずは潮流を抜ける」

 

「はいなのです」「了解であります」「如月、わかったわ」

 

艦隊は速力を上げて、潮流の落とし穴からの脱出を図るのであった。

 

 

____矢矧視点____

 

 本当に速度がでないものね。ここに入るときは機関を停止(したら沈む)してても2速は出るくらいだったのに、今じゃ速力一杯で3速かそこらよ。こんなところを戦艦にでも狙い撃ちされたら数分も持たないわ。それにしても、電は敵機を感知する前からすぐに抜けよう、と警告してくれたわね。私はこの場所が危険だとは分かっていても、ちゃんと認識はできていなかったのね。確かに、提督の言う通り今は電から学べるところは学ぼう。艦種がどうとか年齢がどうではないわね。

 

「よし、みんな潮流は抜けれたわね?このまま進んで島-島間から1.5kmの位置を目指すわ。それと水偵も直に帰ってくる。途中で艦載機の迎撃をするわよ!」

 

 みんなに声をかける。振り返ると遅れずにみんなついてきてくれている。

 

「大丈夫なのです。ただ、少し速力を落として息を落ち着けませんか?艦載機の迎撃をしてからでも陣取りは間に合うのです」

 

 よく見ると、如月とあきつ丸はすこしだけ息が上がっている。見れていない、気づかなかったわね。

 

「そうね、ありがとう。しっかり迎撃態勢を整えましょう。1速まで落として」

「ありがとうであります。大発を引っ張る馬力はあっても、速力はでないでありますから・・・」

「私はちょっと運動不足かしら。帰ったらトレーニングしなきゃね」

「いいえ、私がちゃんと見れていなかったわ。まだ攻撃を受けてもいないのに焦るものね」

 

 握った手はじっとりと汗ばんでいる。速力一杯で駆け抜けたから、だけではないわね。私もこの心臓の高鳴りを抑えないといけないわ。深呼吸、深呼吸。

 1分ほどたったかしら、水偵がぞろぞろと敵艦載機を引き連れているわね。もう数秒で射程内に入る、迎撃の用意ね。

 

「よし!敵艦載機の迎撃開始するわよ。撃ち方はじめ!」

「了解!」

 

敵軽空母は一杯、艦載機の数はそこまで多くはない。充分に迎撃しきれる数だ。いくらか敵艦載機を撃破したところで敵が引いていく。

 

「効果がないと判断したのかしらね。艦載機も下がっていくわ」

 

『提督、敵艦載機の第一陣は撤退したわ。損害はせいぜい服が破けた程度かしら。みんな問題なし』

 

 周りを見渡すと、すこし息が上がっているくらい、あとはあきつ丸の裾がすこし破けたくらいである。

 

『よくやった。では、手筈通りに陣取って敵を誘い込め。あ、あきつ丸。言い忘れていたが、陽動の際にあまり島-島間には近づくな。追い潮に乗って彼我の距離が一気に詰まることがあるからな』

『そんな大事なこと言い忘れないでほしいでありますよ!また自分だけ被弾して提督殿の戦果に泥を塗るところだったであります』

『なんだ、お前。そんなこと気にしてたのか、可愛い奴め』

『あぅ・・・自分がかわ『あらぁ、くどくのは戦いが終わってからよ、司令官♪』』

 

 途中で如月が割り込みをかけている。確かに戦闘前に緊張が抜けるわね。でも、これくらいならいいリラックスかしら。

 

『悪い悪い。じゃ、頑張ってくれ。無茶はするなよ』

『了解したわ』

 

 通信を切り、水平線に目を向ける。そこには追い潮で速力を上げて距離を詰めてくる敵艦が見えている。

 

 でもね、その少し先は落とし穴なの。あなたたちは策略に嵌められたのよ。

 

 あきつ丸が少し前へ出て敵への砲撃体勢に入る。落とし穴へとはまり敵の速度はみるみると落ちていった。

 

 その後は一方的な戦いとなった。敵の軽空母はこちらの射程にはまだ入るつもりはなかったのだろうが潮の流れに乗ってしまい、こちらの射程内に入ってしまう。そこを一気に電と矢矧の両名で狙い撃ちにし、大破へと追い込む。艦載機の発艦ができなくなった空母などお荷物だ。本来なら駆逐艦がかばいに来るものだが、潮のせいでそれぞれの距離が離れたことも幸いしたようだ。

 

 提督に途中で空母大破の報告を入れると「よくやった。あとは好きにやれ」との返答。後はあきつ丸が適度に陽動しつつ、如月も後衛に加えて狙い撃ち、さらには魚雷を打ち込み撃破していった。地の利、ここは海の利というべきか、を味方につけてしまえば戦闘は実に楽に進んだものである。

 

『全敵艦の撃沈を確認。戦闘を終了するわ。それとやったわ。遠くに見える輝きは艦娘の魂ってやつかしらね』

『おぉ、例の魂ってやつか。って、輝いてそこに浮いてんのか。ぜひともこの目で見たい光景だよ』

 

 神だの霊だのそんなものは信じていなかったが、考えを改めるときが来たか、としみじみ思う傭兵であった。

 

『さて、間接的にだが、ほぼ3島間の潮の流れは確かめられたな。敵空母も撃沈できたし、今日はもう十分だろう。作戦を終了、帰投しろ』

 

魂とやらを早く見たいしな、とは口には出さない。

 

『了解したわ、第一水雷戦隊、帰投します』

 

一向は鎮守府への帰路へと舵を向けるのであった。




ご都合主義?関係ないね!
だって、話が進まなくなっちゃうんだもん。延々海戦の様なんて書く技量もないしな・・・

さて、一体どの艦娘の魂なんだ・・・
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