____工廠____
「軽空母、龍驤や。独特なシルエットでしょ?でも、艦載機を次々繰り出す、ちゃーんとした空母なんや。期待してや!」
バーン、と勢いよく扉が開いたかと思うと、中学生くらいの子が勢いよく飛び出してき、同時にポーズを決めて自己紹介をはじめる。中々元気な子のようだ。
「俺がこの鎮守府の傭兵提督だ。空母はうちでは君が初となる。これで空母機動部隊の設立、艦載機を利用した新しい戦法もできる。これからよろしく頼むよ」
「なんや、うちが初の空母かいな。こりゃ情けないところは見せられへんな。これでも昔は鬼も逃げ出す龍驤と言われとったんや。頼りにしてや!」
確かに、空いた時間で勉強しておいた史実での龍驤の活躍は、八面六臂のものといってもいいだろう。鬼が逃げ出すのは訓練の厳しさのときの逸話であったが、しかしその活躍ぶりもジャヤンクイツどもが逃げ出すのには充分なものである。
「あぁ、史実での君の活躍は把握しているよ。その力をうちでも発揮してくれ」
だが、それにしてもずいぶんと小柄な子がでてきたものだ。資料の軽空母の写真(鳳翔さんが使われている)は電の手を引いていてもおかしくない、お母さんくらいのものに見えた。しかし、これでは電と手を繋いで歩くお友達だ。
「キミィ、言葉とは裏腹になーんか失礼なこと考えておれへんか?」
つい、見下ろすような形になってしまうのと、独特なシルエットに目を向けてしまったせいだろうか、じとーっとした目で見つめてくる龍驤。隣にあきつ丸がいるのも都合が悪いかもしれない。
「いや、思っていたよりも小柄だなと。資料にあった例の写真が悪かったのさ」
きっと、戦艦当たりの年上の者と張り間違えたのだろう(そうではない)。変に言いつくろうのもよくはないし、思ったことを口に出すことにした。
「なんの話やねん!まぁええわ。このシルエットはうちの自慢やさかい、あんまりバカにしーひんといてや!」
腰に手をあて、ばんと胸を張る龍驤。気にしない風を装っているが、先ほどあきつ丸の胸に行った視線の愕然たるや、一瞬のことであったが、は見ている。別に馬鹿にしたつもりはないのだが、女性にとって胸の大きさに関わる話はタブーのようだ。
「バカにする気はないさ。さて、みんなも紹介しておこうか」
そのころ、傭兵の背中に隠れ、見えないところで電と如月は示し合わせたかのように謎の握手を交わしていた。総じて重巡や空母、戦艦の艦娘達は胸部装甲が厚い。実のところ二人は胸の大きな艦娘が来るか内心ハラハラドキドキしていたのである。果たして、彼女はもしかしたら自分たちと同じか、如月よりも・・・そして、その光景をクエスチョンマークを浮かべた矢矧がきょとんと見ていた。
「ん?てゆうか、もしかしてこれ、全員でお出迎えにきてくれたん?ちょっち照れるわ」
「そう、まだ一艦隊を編成するのもやっとでね。期待の新人さんはみんなでお出迎えってね」
「自分、あきつ丸であります。まだ若輩者ですがよろしくお願いするであります」
「駆逐艦電です。お仲間(意味深)が増えて嬉しいのです!頑張るのです!」
「駆逐艦如月よ。防空演習を主にこなしているわ。いずれは護衛艦として活躍してみせるわ」
「軽巡矢矧よ。水雷戦隊の長をしているわ。空母機動部隊も、楽しみね」
「龍驤や。うち、嬉しいで。司令官だけとか、最悪だれも出迎えに来てくれんと妖精さんだけとか考えとったさかいな」
すこし涙ぐんでいるようにも見える、情にほだされやすいのだろうか。
「よっしゃ、やったるで!せや、如月いうたな!うちの護衛艦勤め上げるんやったら、鬼の特訓こなしてもらうさかい、覚悟しとき!」
「あらぁ、藪蛇だったかしら。でも、防空は艦隊戦の要、がんばるわぁ」
「電も頑張るのです。対空防御はちょっと、苦手なのです」
「対空能力が上がるのは戦闘維持能力の底上げになる、頑張ってくれよ。さて、ひとまずは部屋の案内などしてやってくれ。それが済んだら、龍驤は執務室へ来てくれ」
「なんや用事か?ほな、またあとでな」
龍驤はみなと話しながら工廠を後にした。
先ほどまでの騒々しさは一転、工廠はずいぶんと静かになる。後には傭兵と妖精たちが残されている。
「リリー、いくつか聞きたいことがある」
「あらたまってどうしたのよ?」
「艦娘はみんなあんな感じ、いや、あいまいな言い方だな。生まれた時から自分がだれであるか、なんの役目を持って生まれてきたのか、知っているのか?」
「そうねぇ。すくなくとも、記憶喪失な子はみたことないわ」
記憶喪失、ね。言い得て妙な表現ではあるが的を射ている。
「それは艦娘の魂に艦艇時代の記憶があるということか」
「そうなるわね。そして、それに加えて幾許かの知識を私たちは与えているわ」
艦艇ではなく人の形として生まれたということや言語、現代の知識、などか。
「じゃあ、次。それ以外の記憶を持って生まれることはあるのか?」
「・・・。つまりは、轟沈した艦娘の魂が再度建造に利用されたら、そういった記憶も持つんじゃないかって言いたいの?」
実に話が早い、いや、というよりは感働きが尋常ではない。本当にリリーか?
「・・・」
「沈黙は肯定として受け取るわよ。結論から言うとノーよ。そういった子を建造したことはないわ」
そういった子を建造しない、こともできるんだろうな。知識を与えられるなら、その逆が出来ても不思議ではない。いや、全くもって憶測の域はでないのだが。
「そうか。質問はこれで終わりだ。わざわざありがとな」
「どういたしまして。それじゃ、コンカイのゴホウビはなにをもらおうかしら」
「なに?」
「あら、ジョウホウはタダじゃないわ。ヨウヘイならみをもってシッテイルことでしょ」
それにまだマミヤのオカシもらってないわよ、まえヤクソクしたのに、と言うリリー。
「答えておいてから言うかね。すまんな、龍驤のことでそっちのことはすっかり忘れていた」
「オトメとのヤクソクをやぶるなんてシレイカンのカザカミにもおけないわよ」
「次は奮発して、持ってくるとしよう。それで許してくれ」
「わかったわ、ツギわすれたらボイコットよ、ボイコット!」
やれやれと苦笑いをしつつ手を振って工廠を後にする。
「あぅ、ふう。つかれたわ」
傭兵が工廠から出ていくのを見届けてから体の力を抜くリリー。
「シュニン、だいじょうぶ?」
近くにいたプラムがフラフラとふらつくリリーの体を支える。
「ごめんねぇ、ちょっとラクにさせて」
「かるくウケコタエしてもよかったんじゃないのぉ」
如月のように少し色がかった、マーガレットと名付けられた妖精が近くにきて問いかける。
「マジメなカオしてたから、こっちもマジメにやらなくちゃ、ってね」
「ムチャはだめよ。いくらホレタアイテだからって、アイテは・・・」
マーガレットは言い差し、口調が消えていく。
「ダイジョウブよ、ニンゲンにホンキでホレタリしないわ。ただ、スキになっちゃたのよ」
「わかったわ。でもキョウはオヤスミね。サイキンはカイハツとケンゾウであまりヤスンデないでしょ」
「ばれてたのね。じゃ、キョウはもうコウショウはオシマイ。キュウカよ」
休眠が長かったのと、起きたてのせいで思ったよりも体力が続かなかったリリーである。
「そうね、それがいいわ」
おかしいなー、龍驤登場回なのにリリーにスポット当たってませんかねぇ。
やっぱり、リリーがヒロイン・・・
なかなかに龍驤が進まずほかの部分のプロット進めるための話に手をつけたらスルスル進みますねぇ。
龍驤モデル:猫と珈琲様
室内モデル:mato.sus304様