艦これ 傭兵鎮守府物語   作:URIERU

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第三話「鎮守府へ 前編」

 

 ルームサービスのモーニングコールが部屋に鳴り響く。

 いつの間にか眠りについていたようだ。顔を洗い眠たい頭をはっきりさせる。

 とりあえず、朝食を食べるために階下のレストランへと向かう。

 朝食を食べ終えた後、部屋に戻りみだしなみを整える。

 時間は0800、待ち合わせまで30分あるが、昨日のあの生真面目そうなあきつ丸のことを考えると、早めに来ている可能性が高い。

 部屋でくつろぐのはやめて、ホテルの表玄関へと向かう。

 

 案の定、あきつ丸の運転する車は乗り場に停車していた。

 まだ出てくるとは思っていないのだろう、こちらに気づいた様子はない。

 車のすぐ近くまで来たが、こちらには全く気付かない。

 これから中将との関わりの際には少なからず顔を合わせることになるだろう相手だ。

 少し様子を見てみることにしよう。

 

 

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 時間は0800、待ち合わせの時間までは十分余裕があるであります。

 昨夜は、荷物整理に転属の書類や各種申請書の提出に大忙しだったのであります。

 今までは本部付での事務員仕事や中将殿の秘書艦を務めたり、緊急の救助作戦に従事したたことしかなく、鎮守府勤務は初めてであるため緊張するのであります。

 中将殿からは、傭兵は提督業における書類整理などは苦手であろうから、しっかり補助をするように仰せつかっているであります。

 中将殿は傭兵殿に期待されているご様子でしたし、その成否の如何に自分の働きも関わってくる、責任重大でありますな。

 またこれは思うに、内偵に近い意味合いも持たされているため、気を付けてかかるであります。

 

 さて、それにしても今回自分の提督となる御方、元は傭兵だと中将殿から聞きました。

 まさか、初めての提督が変わり種になるとは自分もついてないのであります・・・

 しかし、昨日の送迎の際に傭兵提督と話した感じでは、艦娘の自分にも謝罪もお礼もされる優しい方でした。

 世間一般ではごくごく普通のことのはずですが、艦娘を兵器としてしか見ず扱いもひどいこともままあることを考えれば、これだけでも上々なのであります。

 

 そこでふと、あきつ丸は身だしなみが大丈夫かを気にし始める。

 自分の初提督にみっともない姿は見せられないからだ。

 時間は0810、身だしなみを整えるには少し時間がたりなさそうだ。

 あたふたとルームミラーを使って髪や肌、服装を気にし始めるあきつ丸であった。

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 少し離れてあきつ丸の様子を眺める。

 車内では、小さく握りこぶしを掲げたり、ためいきをついたかと思えば笑顔になったり、そして身だしなみのチェックまで始まった。

 なんとも忙しい娘だ、見ていて微笑ましい。

 おしゃべりはするが、落ち着いた大人びた性格かと思っていたがそうでもないらしい。

 まだ身だしなみのチェックの途中のようだが、少し意地悪してみよう。

 どんな反応をするのやら。

 

 こんこん、と助手席の窓をたたく。

 中では前髪とにらめっこをしていたあきつ丸が驚いたようにこちらを向く。

 返事を待たずに助手席の扉を開けて乗り込む。

 

「おはよう、お嬢さん。身だしなみは整え終えたかな?」

「わわっ、お、おはようございます」

「昨日はミラー越しで分かりにくかったが、色白の別嬪さんじゃないか」

「べっ、別嬪さんなどと」

 

 色白な頬を薄紅色に染めてうつむくが、傭兵の発言で気づく。

 この男、自分が身だしなみを整えていることに気付いていたのであります。

 ただからかわれるだけでは癪であります。

 

【挿絵表示】

 

 

「別嬪さんの身だしなみを邪魔するなど、紳士の風上にもおけないであります」

「いやいや、失礼。かわいい反応が見れると思ってね、予想通りの収穫だったが、きついお返しがきたな」

「むぅ~。フンっであります」

 

 顔を背けるあきつ丸。

 すこしばかりからかいすぎただろうか、しかし気に入った。

 ただ、からかわれるだけでなく、会話にジャブを入れてくることができる。

 この娘とのやりとりは実に楽しい。

 

「うぉっと。」

 

 乱暴に車を急発進させられ体勢を崩す傭兵。

 

「何をにやけているでありますか。いたいけな婦女子をからかって、軍人の風上にも置けないであります」

 

 どうやら表情筋がだいぶ緩んでいたらしい。

 

「悪い悪い、軟派な傭兵なもんでね。機嫌を直してはくれないかな」

「それは、態度次第でありますな。あきつ丸は、そう容易く懐柔されないであります」

 

 数分ほど、無言で走り続ける。

 どうしたものか、何か話しかけようと口を開きかけた傭兵だったが、同じタイミングであきつ丸が口を開いた。

 

「それで、昨日渡された資料には少しは目を通せたでありますか?」

「大まかなところは把握したけどな、あの量を一晩で理解はしきれねぇな」

「詳細まで書かれていて膨大な量でありますからな」

「詳細、ね。しかし艦や武装の細かな性能、工廠での開発の仔細などは書かれていなかったぞ」

「どうやらちゃんと資料は読んでいただけたようでありますな」

 

 かまをかけられたらしい。おやおや、まだお嬢さんは不機嫌と見える。

 だが、機嫌を直す手法も思いつかない。会話を続けるより仕方ないだろう。

 

「まぁ、指揮する側としてはできる限りのことはしないとな。ところで、色々と艦娘のことについて、本人から教えてもらってもいいかな」

「自分にわかる範囲でよいのなら、お答えするであります」

「よし、じゃあまずは一番気になっているのは戦闘の方法だ。資料にも書かれていたが水上をスケートのように移動しながら戦うってのは本当なのか」

「はい。潜水艦などの水中にいる艦を除けば、みな水上を移動しながら戦うであります」

「そうか。で、さらに謎なのは14cm砲や46cm砲といわれる主砲についてだ。こんなものを人間の少女が砲撃しようものなら反動で吹き飛ぶ、最悪バラバラ死体になっちまわないか?」

「それは心配ないであります。発射される弾丸そのものは小さいもので言えば9mm弾、大きいものでも50口径のライフル弾ほどであります。大体反動もそれにみあったものになるであります」

「あくまで昔の軍艦時代だったときの主砲のサイズから名前が来ているだけなのか?」

「いえ、そういうわけでもないであります。弾丸や反動と威力は別物といえばいいでありましょうか、発射された弾の威力そのものは名前の通りのものなのであります」

「ハンドガンで撃たれたと思ったら14cm砲の砲弾が飛んでくるってことかよ」

 

 超兵器もいいところだぜ。頭がおかしくなる。

 いや、少女が水上スケートしてる時点で十分におかしいが。

 

「イメージとしてはそんな感じでありますな。敵の深海棲艦も同じくびっくり砲を撃ってくるでありますよ」

 

 びっくり砲とはね、もっとかっこいい名前がいいんだが。

 

「まぁイメージとしては遮蔽物の乏しい平野での歩兵戦といった感じか。駆逐艦はライフル兵、戦艦は戦車みたいなもんか」

「陸軍の艦娘としては、そのイメージはわかりますな」

「そのまま人間大で獲物を振り回せるんなら、軍艦時代よりはずいぶんと小回りが利くことにもなるな。おまけに被弾面積も格段に小さいってわけだ」

「それは、敵にも同じことが言えるわけでありますが」

「そうだな、だがそれは大きな問題じゃない。逆に、敵だけ軍艦の大きさ保ってるんなら、それこそ相手にもならねぇ」

「人類が大敗を喫した連合艦隊戦の光景そのものですな」

 

 軍艦の主砲を人間相手に直接当てるなど正気の沙汰ではない。

 日米露の海軍・海自の連合艦隊が大敗したのは通常兵器が効かないこともある。

 だが、例え効いたとしても、海上を自由に動き回る人間サイズの軍艦が相手では、結果は変わらなかっただろう。

 

「そういえば、お前さんは戦場に立ったことはあるのかい?」

「自分は昨日も言った通り揚陸艇であり、戦闘は得意ではないであります。一応武装はありますが、自衛用です。主に従事したのは輸送作戦や人員輸送であります」

「お前さんは輸送用の船が出せるってことなのかい?」

「はい、大発動艇という揚陸艇兼輸送船を装備しているであります。救助作戦では多くの友軍を救出したでありますよ」

 

 横目にあきつ丸を見てみると、ググッと胸を張り顔もどことなく誇らしげだ。

 しかし、大きいな、うむ。

 

「何でありますか?」

 

 おっと、見つめすぎたようだ。ばれたらまた機嫌を損なってしまうだろう。

 

「いや、素直にすげぇなと思っただけさ(おっぱいが)」

「ふふん、そうでありましょう」

 

 おや、昨日今日のやり取りをみていると、あしらわれるかと思ったが、流石に自分の功績を褒められることは素直にうれしいようだ。可愛いものだ。

 それからは饒舌に自分の活躍ぶりを話すあきつ丸の姿があった。

 

「もうだいぶ来たようだが、鎮守府まではあとどのくらいだ?」

 

 先ほどから海沿いをずっと走っている。

 

「20分もかからないと思うでありますよ。そういえば、お昼はどうするでありますか?鎮守府に給糧艦である間宮さんの着任は確か3日後でありますから、あちらではまだまともに食事はとれないでありますよ」

「給糧艦っていうと、食堂のおばちゃんみたいなもんか?」

「その言葉、絶対に間宮さんの前で出してはだめでありますよ・・・」

 

 隣にはガタガタと顔を青ざめているあきつ丸の姿がある。

 過去に誰かが地雷を踏み抜いたらしい。気を付けるとしよう。

 

「そうだな、鎮守府にはさすがに電気やガスは通ったままだろ?そこいらのお店で食材買って食堂で調理するとしようぜ。その間宮さんとやらが来る3日間外食ってわけにもいかないし、いくらか買い込む必要があるだろ」

「いい考えでありますな。出前外食三昧だったらどうしようかと思っていたであります」

「経費で落とせるだろうから、それでもいいんだけどな。給糧艦の到着が遅いのは俺のせいじゃないしな」

 

 あの海軍中将に対する小さな小さな嫌がらせだ。

 

「そんなことはこのあきつ丸が許さないでありますよ。国民から海軍に対しての突き上げがきつくなっている昨今、血税でそんな贅沢三昧はできないであります」

「世知辛いねぇ。お、あのスーパーなんかいいんじゃないか。寄っていこうぜ」

「了解であります」

 




さて、ようやく艦娘の仕草や心理描写などがでてきました。
ここをいかに可愛くかけるか、何より心情を読み手に伝えるか、とても難しかったですね。

そして、自身の独自設定である、艦娘の武装性能の説明もでてきました。
おそらくほかの作者様にも同じような設定がある、独自でもなんでもない設定だとは思いますが・・・

挿絵 提供元
あきつ丸モデル:毛長伍長 様
トヨタ・ミライモデル:御子柴 彩 様
スカイドーム:Kanata 様
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