時はカレー作った後のデザートタイムより。
「さて、結局俺と同日着任する初期艦ってのはお前だった」
「そうでありますな」
残ったひとつのデザートを挟んで向かい合う傭兵とあきつ丸。
「で、なんでデザートが余っているのかを聞きたいんだが」
「女性にとってデザートは活力であります。たった一個で満足させられると思っていたでありますか」
すっと手を伸ばして平然とデザートを食べ始める。
「この野郎、悪びれるどころかこっちを非難してきやがった上に、平然と食ってやがる」
「ふふん。実際艦隊を指揮するうえで間宮アイス、伊良湖最中は艦娘たちの戦意を高揚させる手っ取り早い手段のうちのひとつでありますから、ちゃんと覚えておくでありますよ」
どや顔で解説を始める何だかキラキラしているあきつ丸。目が霞んでいるのだろうか。
まぁデザート一個でこれ以上追及する気もない。
「はぁ、全く。昼間の殊勝なあきつ丸がいきなり恋しくなるぜ。で、だ。ほかの艦娘はいつ着任するんだ。さすがに戦闘向きでないお前を一人で戦場には出せんぞ」
例え戦闘向きであったとしても、一人での出撃など無謀であるし、させはしない。
戦場での事故はつきものだ、何かあった際一人ではカバーも効かないのだ。
「自分は中将殿に出立前に伺いましたが、どうやら舞鶴鎮守府のほうより艦娘1名が異動となるようでありますな。おそらく移動は開始してる、かと」
「舞鶴ね、どんな鎮守府なんだ」
「呉、佐世保、横須賀、舞鶴の4大鎮守府のうちの一つであり、かなりの規模を誇る鎮守府でありますな。戦果は華々しく、元帥閣下の覚えもよろしい、でありますが・・・」
「歯切れの悪い言い方だな」
「ただ、艦娘たちの待遇という面ではあまりよい噂を聞かないでありますな。あ、とはいえ単純に労働環境がかなりきついというもので、戦果をあげる以上致し方ない面もあるというでありますか。その過酷な労働条件に見合った報酬もあるようですが、我々艦娘はそもそも選択肢がないでありますから・・・」
なるほど、激務で高収入というのは当然であるが、艦娘には選択権はないのだ。
勤務先の選択権がない以上、だからいいだろうというわけにもいかない。
「しかし、そんな第一線のところから稼働したての鎮守府に来るなど左遷もいいところというか、妙な話だな」
「はい、ほかにも前線となる鎮守府で人材を要している場所はあるであります。一線級のところの艦娘、普通に考えたらそちらに送るべきであります」
中将殿がなにかをしたでありましょうか。
しかし、今の状態で傭兵提督殿にテコ入れをするのは得策ではないであります。
成果を出しても、結局は優秀なところから来た艦娘によるもの。
引いてはその艦娘を輩出した鎮守府の名を上げることにしかならないであります。
「何かがある、かもしれないってことか。とはいえ、せっかく来てくれるんだ、無用な勘繰りはやめるか」
「そうでありますな、下手な印象を持つのは相手に失礼であります」
一応人員補充のあてはあるようで何よりだ。
今は何をするにしても人手が足りない。
「さて、鎮守府巡りをするでありますよ。未だに食堂にしか来てないという体たらくでありますから」
「そうだな。そういや食堂まで何もみずに案内してくれたよな。俺は地図もらってないんだが、ちゃんと把握してんのか?」
「基本的に各鎮守府の構造は同じになっているでありますよ。演習で別のところへ行って迷子になったり、異動のたびに鎮守府案内などめんどうでありますからな」
「そいつは便利だな。じゃあ案内頼むぜ」
「まずは提督殿の執務室と私室からでありますよ」
____艦娘案内中____
「さて、大体案内は終わったであります。最後は工廠の立ち上げに向かうであります」
「立ち上げ?専門の工廠作業員がやるもんじゃないのか」
「工廠の作業員はもういるでありますよ。稼働してない鎮守府の妖精さんたちは休眠するのでそれを提督殿が起こしにいかなければならないであります」
「妖精って言ったよな。まさか工廠で作業するおっさんを妖精って呼んでるのか・・・?そして、そのおっさんを起こしに行けと?」
面白い勘違いなので放置しておくであります。
たしかに、妖精さんとか言われて信じるほどメルヘンな頭はしてないでありますよね。
逆に妖精さんを信じていたらやばいであります。
「え、えぇ。そうでありますよ!提督殿以外には妖精さんは起こせないでありますからな!」
日本の童話、白雪姫の如く、王子(提督)のキスでお姫様(おっさん)が目覚めるのだろうか。
さすがに勘弁してほしい。
「俺、行きたくないんだけど」
「まさか提督殿は、我々に装備も支給せず裸一貫で敵に突撃せよとおっしゃるでありますか。そんな薄情ものだとは思わなかったであります。幻滅であります」
「そうは言ったって色々無茶があんだろ!?なんなんだよ、そのおっさん。まじめに働けよ!」
「いいから行くでありますよ」
ずるずるとあきつ丸に引っ張られる傭兵。
必死に抵抗するも力では艦娘にかなうはずなく、容赦なく工廠へと連れ去られるのであった。
____工廠に到着____
「さぁ提督殿、中へ入って名乗りをあげるでありますよ。そうすれば妖精さんたちが応えてくれるでありますから」
「もうなんなの、わけわかんない」
無理やり引きずられて痛む手首をさすりながらあきつ丸へと非難の視線を送る。
「なんかキャラがぶれてるでありますよ。しっかりするであります」
非難の視線もどこ吹く風。気にした様子もない。
仕方ない、装備がないんじゃ話にならないからな。
諦めて工廠へと入ることにする。
「今日から鎮守府に着任する傭兵提督だ!おら、おっさんども起きやがれ!いや、起きてください。お願いします」
なかば自棄になりながら名乗りをあげてみる傭兵。
するとそれに呼応するように暗かった工廠内の電気が一斉につき始める。
「うぉ、なんだこれ。まじで工廠が立ち上がったのか。でも、誰もいねぇじゃねぇか。おいあきつ丸、どうなってんだ」
そこには妖精と呼ばれるおっさんどころか何の気配も感じられない。
どういうことかとあきつ丸へと振り返った傭兵、その背後で小さな影がひとつ動き始めた。
「だれがオッサンだーーー!」
いきなり背後から聞こえてきた声に驚いて振り返る傭兵。
その瞬間目にしたのはハンマーを振りかざしながら顔面へと飛び込んでくる小人の姿であった。
そこで、傭兵の記憶は途切れるのであった。
傭兵は星を見た。
この世界には4大鎮守府に加えていくつかの鎮守府が軒を連ねる形になっています。
4大鎮守府は程度の差はあれど、どこも優秀な艦娘たちがそろっております。
さて、そこから来る艦娘はどんな子やら。
艦これの妖精さんはどれもかわいいよね。
艦これ改の動画見てると、クレーンで釣られながら移動する妖精さんとか間宮妖精さんとか、ブラウザ版にぜひ追加して欲しい子たちがたくさんいました。