キンジの悲鳴が木霊した数日後の昼。
がやがやと煩い食堂で、ハンバーグ定食のキンジと、持ち込みの桃まんのチビと俺で昼飯を食べている。ちなみに俺は天ぷらそばだ。
「漆ヶ谷君。ここ、いいかな?」
「ああ」
隣に座った、イケメン。不知火 亮。強襲科Aランクで、不知火はバランスのいいAだ。
「最近、1時間目出てないけど、どうしたんだい?」
「そのことか。少し鍛錬をしている。一日でも早く勘を戻さないとな」
久しぶりに、射的をすれば、酷い物だった。あまりにも酷すぎて、それを見た者は、誰一人声も出なかったほどにだ。
だが、外で銃を撃ちまくれば、近所迷惑になるから、剣術と体術の鍛錬をしている。銃は、強襲科の授業でやっている。
「そう。でも、ほどほどにね?」
「分かっている」
あの時は、はしゃぎ過ぎて傷が開きそうになったが。
「そういえば、龍夜。お前、アドシアードには出るのか?」
アドシアード?ああ、あのインターハイ、オリンピックもどきか。
「一応、複数の競技の代表に呼ばれてるが、辞退する」
「どうしてだい?知っていると思うけど――」
「メダルを持っていると、進路がバラ色だろ?」
武偵大には推薦の進学。それに就職に有利。武偵局にはキャリア入局。民間の武偵企業では、一流企業の内定だったな。まあ、俺には関係ないが。
「就職先には、困ってないんだよな」
「どういうことだ、龍夜。逃げたら轢いてやる」
と、突然会話にわって入ったのは、武藤だった。こいつ、何処から湧いてきた?
「どんな所なんだい?」
「やめておいたほうがいい。実力がなければ、入れないし。それに、俺よりも強い奴が多いし」
「「「「え?」」」」
話し聞いていた、全員が絶句した。まあ、強襲科でやったランク付けの再試験を見た奴なら、信じられないだろうな。
「ハイジャックの時に出てきた、オッサンが居ただろ?あれが上司だ。ちなみに一番強い奴」
「そっ、そうなんだ。やめておくよ」
本当にやめたほうがいい。実際、本気の殺し合いになることが多い仕事だからな。
「んじゃ、俺は先に行ってるぜ」
昼食を食べ終わり、食堂を出て行った。
放課後。教務科からの呼び出しがあった。しかも、妙な事に白雪もいるということだ。
「二年A組。強襲科。漆ヶ谷 龍夜。来ーたよ」
「ちょうどいい。漆ヶ谷。こっちだ」
俺を呼んだのは、尋問科の教論である、綴先生だった。
「星伽には、もう一度言うが、ボディーガードつけろ。お前らは『魔剣』に狙われてんだぞ」
魔剣か。たしか、連続誘拐犯だったな。零課では、イ・ウーの犯行で、誰が魔剣かはわからない。諜報科と超能力捜査研究科で、レポートと予言が出てきているらしい。
「てか、なんで俺も呼ばれたんですか?俺、狙われてないんじゃ」
「まあ、そうなんだが」
吐いた煙を白雪にぶつけ、白雪が煙に目を細めると同時に、瞬きモールスを始めた。
『マケン ガ オマエ ヲ コロシニクル カノウセイ アリ』
なるほど。魔剣が、俺を始末しに来る可能性があるからか。
「来ても返り討ちにしますよ」
「……わかった。お前はもういいぞ」
綴から、許可を貰い。教務科を出て行った。それと同時に課長からメールが来た。狙ってんのか?
夜。ビルの屋上で、PSG-1のスコープを覗く。
今回の依頼は、暴力団の頭の捕獲。その暴力団は小規模ではあったが、着実に勢力を広げていて、面倒になる前に潰す事になった。
「こちら漆ヶ谷。目標は、北に移動中」
『了解した。目標が予定地点を越えた瞬間に発砲せよ』
「了解」
警察が嘘の検問を敷いて、目標を誘導する。予定地点は、日ごろから交通量の少ない道で、そこで襲撃する。ここ選んだ理由としてまず、翌日の交通の邪魔にならない。そして、事故として扱いやすくするためだ。
「さてと、狙い撃つか」
的は、車の右の後輪。それを撃ちぬいて、スリップさせる。
パァン!
銃声が鳴り、後輪が撃ちぬかれた。撃ちぬかれた車は、スリップして、壁に激突する寸前で止まった。
そして、出てきた部下を射殺する。その数分後に先輩たちがやってきて、頭を逮捕した。
「いつまで傍観するつもりだ。ジャック」
「あれ?気付いてたのかい?」
ちょうど死角になっているところから、ジャックが出てきた。
「その程度で隠れたつもりなら、ずいぶんと嘗められたもんだな」
「ごめんごめん。それに今日は、戦闘は禁止だから安心してよ」
安心できるかボケが。一応周囲を警戒する。
「何のようだ?」
「ちょっと、様子を見に来たんだ。君のね。お見舞いみたいなやつだよ」
「余計なお世話だボケ」
「あはは。その用だね。じゃあ、僕は帰るよ。それと、僕が殺すまで死なないでね。なんて言ったって、君は僕に二度も傷を負わせたんだからさ」
闇夜に溶け込むようにその姿を消した。
「お前が俺を殺す前に、俺がお前を殺す」
俺はまだ死ねねえんだ。ブラドを殺すまでな。
すぐに片付けをして、合流ポイントに向かった。報告書には、あの事は書かなかった。理由は面倒だからだ。