「うっ!くっぁ!」
目が覚めると、身体に激痛が走った。周りを見ると、病室だった。たしか、クローバーのジャックに負けて、それから……
「レキ?」
俺の脚を枕にして、レキが寝ていた、通りで、左足が痺れているわけだ。
「やっと起きたね。三日も寝たきりだから流石に焦ったよ」
病室に入ってきたのは、バ課長だった。三日も寝てたのかよ。
「君が倒れてからのことを手短に話すよ」
課長から聞かされたのは、俺が殺される寸前に課長に助けられた事。
ファントムは、課長たちが追っている組織で、全貌は解明できていない。しかも下手すると、イ・ウーよりも性質が悪いらしい。
そして最後に、ここまで運んできたのは、課長とレキらしい。しかも、レキが看病してくれたらしい。
「それにしても。君はその子と付き合っているのかい?」
トン!
「何か言ったか?」
「いやー。何にもないよ?」
まったく。何を言い出すかと思えば。ちなみにさっきのは、ナイフを投げただけだ。少し掠っているが。
「とりあえず、僕は帰るよ」
と言って、出て行った。恐らく、ファントムを追うんだろう。
軽く、レキの頭を撫でる。そして、レキを起こさないように、ベットから出て、外の空気を吸いに行く。さすがに、何時間も病室では息が詰まる。
少し、ふらっとしながらも、屋上に向かった。
屋上に上がると、少し強い風が吹き、そこには誰も居なく、静かだった。
目を閉じて、三日前のことを思い出す。惨敗だ。たとえ、あの狙撃がなかったとしても、結果は変わらなかっただろう。ジャックの能力は、物質の硬度の変化だと課長は推理している。
その根拠は、偶然にも発見した、銀弾の弾丸の部分が見つかった。形状では
それよりも――
「刀、どうすっかなぁ」
折れてしまった刀だ。俺は、狙撃と近距離が得意だ。そこは両親の得意距離を受け継いでいる。ナイフだけでもいいんだが、それだとしっくりこないんだよなぁ。このまま直しても、再びジャックと戦えば、折れるだろうし。
キイィィィ。と、重くある意味恐怖を感じる音を立てて、扉が開く。それプラスで、何らかの威圧感を感じる。
振り返れば、レキが居た。しかもドラグノフを構えて。
「レキ?」
「………………」
いつも通りの無表情ではあるが、底知れぬ怒りのような物を感じる。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
なんなんだよこの沈黙はよお!
ゴン!
「つぅ!」
「………………」
無言からの、ドラグノフの打撃。ガチでイテェ。
「目が覚めたんですね」
「あ、あぁ。ちょっと前にな」
ゴン!
「イタッ!」
「………………」
二度も殴られた。親父にも――(以下省略)
「何をしているんですか」
「外の空気を吸いに」
ゴン!
「いつっ!」
「………………」
三度も殴られた。頭蓋骨強度半減!ドラグノフの打撃はコンマ二つまで狂いありません!もう一度攻撃されたら、頭蓋骨が持ちません!
「なんで起こさなかったんですか」
「いや、気持ちよさそうに寝てたから」
「………………」
「ちょっと、まてぇ!」
おいおい、今度は銃剣付だぞ!これはガチで死ぬぞ!?
「とりあえず、それを下ろしてくれ」
「………………」
「わかった。俺が悪かった!」
「………………」
「心配かけて悪かった!」
「………………(カチャ」
た、助かった。これで頭蓋骨ブレイクは避けられた気がする。
「もう、心配かけないでください」
「分かった」
だが、恐らくファントムとまた戦う事になる。その時、俺はレキや皆を守ることができるだろうか。答えは否だ。あれほどの実力で、不可視の弾丸をたった一回見ただけでコピーした。それに超能力が物質硬度の操作であったら、万全の状態でも倒す事が難しい。いや、不可能に近いだろうな。
「強くなればいいじゃないですか」
「え?」
「相手が強ければ、それ以上に強くなればいいだけじゃないですか?」
「……そうだな」
まさか、レキに言われるとわな。そうだ、あいつが強ければそれ以上に強くなればいい。言うのは簡単だか難しい。だが単純明快だ。
「んじゃ、さっさと退院して、勘を取り戻さないとな」
「はい」
医者の見立てでは、明日には退院できるだろうと言われている。明日から。徐々に勘を取り戻そう。
翌日。晴れて退院でき、寮に戻ったのはいいが―――
「なっ、なんじゃこりゃあああぁぁぁ!!!」
部屋に入れば、家具やその他諸々が散らかっている。しかも、部屋のいたるところには、刃物による傷や、弾丸が撃ちぬいた跡がある。そして、壁には、でっかい穴があって、向こうだけ適当に修理したようだ。そして、その部屋に住んでいる奴を俺は知っている。
「キンジィィ」
やり場のない怒りを、今は学校に居る親友に向けるのであった。こうなったら、予定変更だ。武偵高に行く。今日は、帰って部屋に居るつもりであったが。今から行けば、五時間目には間に合う。
俺は、新調した制服に袖を通して、銃などの点検をして、武偵高に向かった。
「……………」
武偵高の屋上で、PSG-1を構えて、キンジに狙いを定める。それから、キンジの電話にかける。
『……もしもし?』
「よお、キンジ。元気そうだな」
『お前、もういいのか?』
他人を気にしているばあいか?
「ああ、ついさっき退院してな。いくつか質問いいか?」
『ああ』
「なんで、俺の部屋が滅茶苦茶になってんだ?」
『そっ、それは――』
俺が倒れた翌日に、キンジの部屋に白雪が侵入。運が悪い事に神崎が居て、白雪が黒雪(キンジ命名)モードになって、両者が戦闘を開始。激化していき、俺の部屋にも被害が及び、ああなったらしい。
「キンジ」
『なんだ?』
「………死ね」
『はぁ!?」
パァン!パァン!パァン!
キンジに三発撃ったが、運がいい事に掠っただけだった。
「次は直接ボコるか」
PSG-1を片付けて、直接ボコりに行く。SOCOMに弾が装填されているかを確認してから、移動を始めた。
キンジが居ると思う棟に来ては見た者の、なかなか見つからない。
「出て来いよキンジ。今なら、殺しはしねえからよぉ」
そう、殺しはしない。ただ、生きていることを後悔させるぐらいだ。
ガタッ
「………………」
音がした。しかも、目の前の教室で。
教室の扉を開き、入る。さぁて、始めようか。
「よお、キンジ。探したぜ」
「おっ、おう」
なにやら、脅えているようで。おかしいな。そんなに怖い顔してないんだけどなぁ。
「さぁて、キンジ。生きていることを後悔してもらおうか」
「まっ、待て。話せばわか――」
「問答無用だぁ、ボケがぁ」
「ギヤアアアアァァァァッ!!!」
キンジの悲鳴が木霊したが、その後キンジの姿を目撃したのは、翌日の朝の教室だった。