最高のオワリのために   作:クローザー

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第13話 伏魔の時間・カルマの時間

潮田視点

 

僕等の暗殺計画が良い所まで行ってしまった所為で殺せんせーは完全防御形態になってしまった。そんな中起こった事件、殺せんせーに頼る事は出来ない。僕等だけで犯人からワクチンを奪わなくちゃならない。

 

「ホテルに残った奴らを除いた動ける生徒全員でここから侵入、最上階に殴り込んで薬を奪いとればいい。」

 

門倉君が当然のように言うその言葉に烏間先生は食ってかかる。

 

「危険過ぎる。この手慣れた脅迫の手口、敵は明らかにプロの者だぞ。」

 

「えぇ、大人しく私を渡した方が得策かもしれません。どうしますか?」

 

「貴方方次第です。まあ、1人俄然やる気な人もいますがねぇ。」

 

門倉君は既に準備体操を始め、身体をほぐし始めている。完全に登る気満々だ。ただ、彼のやる気に反して皆少し怖気付いてしまっている。

 

「これは、ちょっと‥‥」

 

「難しいだろう。」

 

「ホテルに辿り着く前に転落死よ。」

 

ビッチ先生の忠告にも彼だけは全く動じない。

 

「どうせこのまま何もしなかったら感染者は皆死ぬ。だったら行くしかないさ。」

 

門倉君は1人で先に登り始めてしまう。烏間先生の制止すら聞かずに物凄いスピードでだ。烏間先生は少し考え、僕と茅野に声をかけるけど、既に皆動き出していた。

 

「門倉君!‥‥渚君、茅野さん。すまないが」

 

「いやま、崖だけなら楽勝だけどさ。」

 

「いつもの特訓に比べたらね。」

 

「だね。」

 

「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練をしてないから。烏間先生、難しいけど、指揮頼みます。」

 

「ふざけた真似した奴等にキッチリ落とし前つけてやる。あと、あんな事をあの馬鹿に言われて動かなけりゃ今までの訓練の意味がねぇ。」

 

磯貝君に続いて、寺坂君が話すのは恐らく今も黙々と登っている門倉君の事なのだろう。既に姿が見えなくなっていた。そして、唖然とする烏間先生に殺せんせーも説得に乗り出す。

 

「見ての通り、彼等はただの生徒ではない。貴方の元には16人の特殊部隊がいるのですよ。」

 

「16人?」

 

「私を忘れないで下さいね。」

 

僕の画面に映った16人目である律はまるでスパイのような格好になっていた。

 

「さあ時間は無いですよぉ。」

 

殺せんせーの言葉で吹っ切れた烏間先生は僕等に指揮官として指示を飛ばす。

 

「‥!全員注目!我々の目標は山頂のホテル最上階、隠密潜入から奇襲への連続ミッションだ。ハンドサインや連携については訓練の物をそのまま使う。いつもと違うのはターゲットのみ!3分でマップを叩き込め、2150作戦開始!」

 

「「「「「「「おう!!」」」」」」」

 

そして、僕等の作戦が始まった。崖登りは皆訓練である程度習っていたのであっという間に終わり、ホテルに裏口に着く。先に着いていた門倉君も合流し、皆物陰から裏口を伺っている。

 

「律、侵入ルートの最終確認だ。」

 

烏間先生は画面上の律に話しかけると、律は画面上にホテルの見取り図を表示する。

 

「はい!内部マップを表示します。最終確認です。私達はエレベーターを使用できません。各階毎の専用IDが必要だからです。従って階段を登るしかないのですが、その階段もバラバラに配置されており長い距離を歩かなくてはなりません。」

 

「テレビ局みたいな構造だな。」

 

「どういう事?」

 

「テロリストに占拠されないように複雑な設計になっているらしい。」

 

「あぁ‥‥‥‥詳しいんだね。」

 

「こりゃあ、悪い宿泊客が使用する訳だ。」

 

「通用口、ロック解除。」

 

律がシステムを動かしてロックを解除し、僕等は無事建物内部への侵入に成功する。フロアの1階部分には多くの警備員が巡回しており、僕等は物陰からその様子を伺っていた。

 

「予想以上に警備が多いな。」

 

「全員が通過するのは難しいんじゃ…」

 

烏丸先生が思い悩んでいるのを見て、ビッチ先生は何事も無いように振る舞う。

 

「何よ、普通に通れば良いじゃない。」

 

「状況判断も出来ねえのかよビッチ先生。」

 

「あんだけの警備の中、どうやって…」

 

「だから普通によ。」

 

少し警備の様子を確認したビッチ先生はそう言い残すと、そのまま中央へ向けて歩き出す。僕等は意表を突かれ、何も出来なかった。歩いている最中にビッチ先生は千鳥足となり、警備の1人にぶつかる。

 

「ごめんなさい、部屋のお酒で悪酔いしちゃって。」

 

「あ、お、お気になさらずお客様。」

 

「来週そこでピアノを弾かせていただく者よ。早入りして観光してたの。」

 

「ピアニストか‥」

 

「しょっちゅう来るからその1人だろ。」

 

警備はビッチ先生に見とれいとも簡単に信じてしまう。そのままビッチ先生はピアノの椅子に座り、弾く準備を始める。

 

「酔い覚ましにね、ピアノの調律をチェックしておきたいの。ちょっとだけ弾かせてもらっていいかしら?」

 

「えっと、じゃあフロントに確認を。」

 

「良いじゃない、あなた達にも聞いてほしいの、そして審査して。」

 

「し、審査?」

 

「そう、私の事。よぉく審査してダメなところがあったら叱ってくださる?」

 

そしてビッチ先生は弾き始める。弾く姿音色、全てが警備だけでなく僕等を魅了する。

 

「あ‥‥‥‥」

 

「め、めちゃめちゃ上手だ‥」

 

「幻想即興曲ですね。」

 

「?」

 

「腕前もさることながら見せ方が実にお見事。色気の見せ方を熟知した暗殺者が全身を艶やかに使って音を奏でる、まさに音色。どんな視線も引きつけてします。」

 

「ねぇ、そんな遠くで見てないでもっと近くで確かめて。」

 

そう言われた警備が続々とビッチ先生の近くに集まる。ビッチ先生はハンドサインで《20分稼いであげる。行きなさい。》と指示を出し、また弾き始める。僕もそれに気付き、既に移動を始めた皆に続く。

 

(僕らまで思わず目を奪われた。なんて綺麗な先生なんだろうって。)

 

「全員無事に突破!」

 

「スゲエよビッチ先生。あの爪で良くやるぜ。」

 

「ああ、ピアノ弾けるなんて一言も。」

 

「普段の彼女から甘く見ない事だ。優れた殺し屋程、万に通じる。君らに会話術を教えているのは世界でも1、2を争うハニートラップの達人なのだ。」

 

「ヌルフフフ!私が動けなくても全く心配ないですね。」

 

「行こう。」

 

「うん!」

 

ビッチ先生の凄さを改めて理解した僕等はそのまま階段を上がり、3階廊下に着く。

 

「さて入り口の厳しいチェックさえ抜けてしまえば、ここからは客の振りが出来る。」

 

「客?こんなとこに中学生の団体客なんているんですか?」

 

「聞いた限り結構いる。芸能人や金持ち連中のボンボン達だ。王様のように甘やかされて育ってきた彼らはあどけない顔の内から、悪い遊びに手を染める。」

 

「そう、だから君達もそんな輩になったつもりで世の中を舐めてる感じで歩いてみましょう。」

 

すると皆一気に言われた通りに各々が思うイメージに乗り始める。

 

「そうそうその調子。って門倉君、先生の顔を模したヘルメット被ってヌルヌルしないで下さい!?先生は世間を舐めている訳ではありません。」

 

「ニュヤ?」

 

殺せんせーの頭を模したヘルメットを被った門倉君は手足をヌルヌル動かして殺せんせーに擬態していた。

 

(というか舐めてるイメージが殺せんせーって‥‥)

 

「その調子‥なのか?」

 

「ただし、我々も敵の顔を知りません。敵もまた客の振りで襲ってくるかもしれません。十分に警戒して進みましょう。」

 

「「「「「「チィース!」」」」」」

 

そして僕等は悪ふざけを止めて、中広間へ続く道を歩いていた。通り過ぎる怪しい2人組も視線を合わせずに通り過ぎる。

 

「ホテル内の全員が敵かと思ってたけど、これなら最上階まですんなり行けそうだね。」

 

「仮に何かあっても、前衛の烏間先生が見つけてくれるよ。」

 

「そう、上手くいくと良いけどな。」

 

「‥?」

 

門倉君が言った一言に僕が気を取られている内に広間に着く。

 

「フッ!入っちまえば楽勝じゃねえか。」

 

「油断するな。」

 

「時間ねえんだから、さっさと進んだ方が良いだろ。」

 

「おいっ!」

 

寺坂君と吉田君の2人が駆け出し、向こうから歩いてくる1人の男性とすれ違う直前で不破さんが声を上げる。

 

「寺坂君!そいつ危ない!」

 

「このバカ坂が!!」

 

「あ?っうお!?」

 

いち早く反応した烏間先生と門倉君が寺坂君と吉田君を後ろに下がらせる。門倉君は寺坂君と共に横側に逸れ、烏間先生は吉田君を逃しその場に取り残される。その瞬間、その男が烏間先生に紫色のガスを浴びせる。

 

「烏間先生!門倉君!」

 

「なぜ分かった?殺気を見せずすれ違いざまに殺る。俺の十八番だったんたがなぁ。おかっぱちゃん。」

 

「だっておじさん、最初にサービスドリンク配った人でしょ。」

 

たしかに島に着いたばかりの僕達にジュースを配った男性である。見事な記憶力だ、言われるまで気づかなかった。

 

「不破さん。」

 

「そんな人がここを歩いているなんて明らかに怪しいわ。」

 

「確かに。」

 

「へー、よく見てるじゃないか。」

 

「じゃあ皆にウイルスを盛ったのも?」

 

「フッフ、断定するには証拠が弱いぜ。ドリンクじゃなくてもそんなもの盛る機会幾らでもあるだろ。」

 

「あ‥‥うぅ‥‥」

 

「フッフッフッフ。」

 

「あぁ?」

 

不敵に笑みを浮かべ不破さんは歩き出す。どうやら推理が出来ているようだ。

 

「私達全員が口にしたのはあのドリンクと船上でのディナーの時だけ。けど、ディナーを食べずに映像編集していた三村君と岡島君も感染したから、感染源は昼間のドリンクに絞られる。したがって、犯人は貴方よおじさん君!」

 

「凄いよ不破さん!」

 

「なんか探偵みたい!」

 

「普段から少年漫画読んでるとね、普通じゃない状況が起きても素早く適応出来るのよ。特に探偵物は、マ◯ジン、サ◯デーにメガヒット揃い。」

 

「ジ◯ンプは!?」

 

「え、ジ◯ンプの探偵物?よく知らないけど、文庫本が出てるらしいから買うと良いと思うよ。」

 

「イヤラシイよ!?」

 

「ステマが露骨過ぎだよ不破さん!?もっとマーケティング倫理に配慮して!」

 

そんなやり取りをしていると烏間先生が床に倒れこんでしまう。ここから見ても顔色が良くない。

 

「ま、俺の正体が知れた所で、もう手遅れなんだがな。」

 

「‥‥くっ‥」

 

「毒物使い、ですか。しかも実用性に優れている。」

 

「俺特製の室内用麻酔ガスだ。一瞬吸えば象すら堕とすし、外気に触れればすぐに分解して証拠も残らん。さて、お前達に取引の意思がない事はよぉく分かった。交渉決裂、ボスに報告するとするかぁ。」

 

そう言って刺客は退散しようとするが、既に退路を皆で塞いでいるので身動きが取れない。

 

「敵と遭遇した場合。」

 

「即座に退路を塞ぎ。」

 

「連絡を絶つ。」

 

「ですよね、烏間先生!」

 

「お前は‥‥我々を見た瞬間に攻撃せずに報告に帰るべきだったな。」

 

「まだ喋れるとは驚きだ。だが、所詮他はガキの集まり。お前が死ねば、統制が取れずに逃げ出すだろうさ!」

 

「余計な御世話だ!!」

 

そう告げて刺客が烏間先生に襲いかかるが、背後からの門倉君の踵落としで床に勢い良く沈む。完全に烏間先生に意識が向かっていた刺客は全く抵抗出来なかった。しかし、それと同時に烏間先生は気丈に振る舞うのも限界のようで崩れ落ちてしまった。

 

僕等は他の客に気付かれないように刺客を縛り上げ、テーブルと椅子の下に隠した。

 

「これ以上は、無理ですよ烏間先生。」

 

「30分で回復させる。決して無茶はするな‥‥」

 

磯貝君に肩を貸してもらってやっと歩ける状態の烏間先生はまだ先に進むつもりだ。

 

「象も倒せるガスを浴びて歩ける方がおかしいって‥」

 

「烏間先生も十分化け物だよね。」

 

そのままぼくらは移動を始めるが、僕等は烏間先生という大きな戦力を失い精神的に追い込まれていた。

 

(経験と知識を兼ね揃えたプロは本当に凄い。そんなプロが、この先も待ち構えている。僕等の力だけで勝てるのか‥?)

 

「いやぁ、いよいよ夏休みって感じですねぇ。」

 

「「「「「「‥‥‥‥」」」」」」

 

「何よお気楽な!」

 

「1人だけ絶対安全な形態の癖に!」

 

「渚、振り回して酔わせろ!」

 

「ニュヤァアァアアア!!?」

 

言われた通りに思い切り袋ごと殺せんせーを振り回す。

 

「よし寺坂、これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて。」

 

「死ぬわ?!」

 

「殺せんせー、何でこれが夏休み?」

 

「ニュヤ、先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは、先生の保護が及ばない所で自立性を養う場でもあります。普段の体育で学んだ事をしっかりやれば、そうそう恐れる敵はいない。君達はクリア出来ます。この暗殺夏休みを。」

 

「言われなくても、やってやりますよ。」

 

「ま、やらねえとどのみち御陀仏だしな。」

 

門倉君と寺坂君はわざとらしく嫌々やっている感を出しながら廊下を先行する。烏間先生の代わりに、自分達から先行役を名乗り出たのだ。

 

「あの2人、素直じゃないね。」

 

「うん。」

 

あの2人は期末の一件から急に仲が良くなってきた。もともと寺坂君が門倉君を一方的に嫌っていたのだけど、今は互いに信頼し合っている。共に最前線に立つ実行部隊として背中を預け合える信頼関係を築いたのだ。

 

「所でテメェ、さっきのバカ坂ってなんだ、バカ坂とは!?」

 

「あ、バカはバカだろ。良いあだ名だろ?烏間先生の忠告を聞かなかったお前にはピッタリだ。」

 

「んだとごらぁ!?」

 

(うん‥‥多分信頼し合っている‥)

 

そんな2人の先行に続いて僕等は先を目指す。そして、5階の展望廊下へ通りかかると1人の人影が歩みを止める。ガラス張りの壁にもたれかかったその人物は隠れる事なく、ただ何かを待っている様子だ。そして、雰囲気は一般客の物とは一線を画している。

 

「おいおい、滅茶苦茶堂々と立ってやがる。」

 

「あの雰囲気‥」

 

「ああ、いい加減見分けがつくようになったわ。どう見ても殺る側の人間だ。」

 

するとその人物がもたれかかっていたガラスの壁に突然広範囲でヒビが入る。恐らく何かしたのだろう。ヒビの中心部分では何かに握られた形跡があった。

 

「つまらぬ、足音を聞く限り手強いと思える者が1人しか居らぬ。精鋭部隊出身の引率教師もいる筈なのぬだ。どうやら、スモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相打ちぬと言ったところかぬ。出て来いぬ。」

 

「手で窓にヒビ入れたぞ!?」

 

言われた通りに全員で前に出る。どのみち見晴らしの立つ展望廊下では隠れようがない。

 

「ぬ、多くねおじさん?」

 

「「「「「言った!!」」」」」

 

「ぬ、を付けると侍っぽい口調になると小耳に挟んだぬ。格好よさそうだから試してみたぬ。」

 

(そっか、外国の人か‥‥)

 

「間違ってるならそれでもいいぬ。この場の全員殺してから、ぬを取れば恥にもならぬ。」

 

「素手、それが貴方の暗殺道具ですか‥」

 

「こう見えて需要があるぬ。身体検査に引っかからぬ利点は大きいぬ。近づきざま頚椎を一捻りぬ。その気になれば頭蓋骨も握り潰せるが。だが面白い物でぬ。人殺しのための力を鍛える程、暗殺以外でも試してみたくなるぬ。即ち戦いぬ。強い敵との殺し合いだぬ。だから、お前。かかってこいぬ。お前だけはこの場で実力に足るぬ。」

 

刺客が指名したのは案の定門倉君であった。門倉君は上着を脱ぎ、タンクトップ姿となりいつものようにボクシングの構えを取る。

 

「‥‥‥分かった。だが、俺はあんたを殺すつもりはない。構わないか?」

 

「構わぬ。」

 

「じゃあ‥」

 

門倉君が仕掛け用とした途端、カルマ君が観葉植物を鉢ごと振り回し相手に殴りかかる。その攻撃は刺客には当たらなかったが、窓ガラスに大きなヒビをつけた。

 

「ねえおじさんぬ。意外とプロって普通なんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。ていうか、デカイだけの奴に喧嘩売っちゃう辺り、強さの分別きちんと出来てない人?」

 

「デカイだけの奴‥‥」

 

「よせ無謀だ。」

 

「ストップです、烏間先生。顎が引けている。今までの彼なら余裕をひけらかして、顎を突き出し相手を見下す構えをしていた。でも今は違う。口の悪さは変わりませんが、目は真っ直ぐ油断なく正面から相手の姿を観察している。テスト以来少々なりを潜めていましたが、どうやら敗北からしっかり学んだようですね、」

 

「悪いね門倉君。こいつ、俺がもらうよ。」

 

「デカイだけの奴‥」

 

完全に落ち込んでしまった門倉君は置いといて、刺客は上着を脱ぎ捨て臨戦態勢に入った。

 

「いいだろうぬ。試してやるぬ。」

 

「存分にぶつかりなさい、高い大人の壁に!」

 

暫くの沈黙の後、まずはカルマ君から仕掛ける。手に持つ観葉植物で殴りかかったのだが、木の枝を掴まれてしまう。

 

「柔いぬ、もっと良い武器を探すべきだぬ。ぬん!」

 

木の枝を握りつぶされ、カルマ君は木片を手放す。

 

「必要ないね。」

 

「‥‥んぅうぬん!!」

 

今度は刺客から仕掛ける。両手を使いカルマ君の身体を掴もうとするが、カルマ君は間一髪の所で交わすか、攻撃を捌いている。だが、避ける事しか出来ないようだ。

 

「お、おお‥」

 

「凄い、全部避けるか捌いてる。」

 

「烏間先生の防御テクニックですねぇ。」

 

「たしかに授業で烏間先生が皆の攻撃を捌いているのを観察していたな。」

 

いつの間にか復活した門倉君が僕の隣に現れていた。

 

「回復早いね‥」

 

「ああ、あれくらいよく言われるからな‥」

 

(よく言われるのに落ち込んでたんだ‥)

 

カルマ君が避けて捌いていると刺客は一旦攻撃の手を止める。

 

「ぬ?どうしたぬ?攻撃しなくては永久にここを抜けられぬぞぬ。」

 

「どうかなぁ?あんたを引きつけるだけ引きつけといてぇ、その隙に皆がちょっとずつ抜けるってのもアリかなって思って。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

「安心しなよ、そんな狡い事はなしだ。今度は俺から行くからさ。あんたに合わせて正々堂々、素手のタイマンで決着付けるよ。」

 

そう言うと、カルマ君はいつもの門倉君のようにステップを踏み始める。仕掛けるつもりのようだ。

 

「良い顔だぬ、少年戦士よ。お前とならやれそうぬ。暗殺稼業では味わえぬ、フェアな戦いが。」

 

その言葉を皮切りにカルマ君が仕掛ける。蹴りかかってから手刀を当てにかかり、膝で蹴り上げる。その痛みで刺客は屈みカルマ君に背を向ける。

 

「‥!チャンス!」

 

カルマ君は好機と捉えたのか、その背中に追撃をかけようとするが、刺客はどこから取り出した判らないスプレーでカルマ君にガスを浴び付ける。

 

「‥あ‥‥‥」

 

「マズイな‥‥」

 

意識を失ったカルマ君を刺客が髪の毛で掴む。

 

「一丁あがりぬ。」

 

(あのガス‥!)

 

見覚えがあった、さっきの刺客が持っていたスプレーと酷似している。

 

「長期戦は好まぬ。スモッグの麻酔ガスを試してみる事にしたぬ。」

 

「き、汚ねえ!!そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ!」

 

「俺は1度も素手だけとは言ってないぬ。拘る事に拘り過ぎない、それもこの仕事を長くやっていく秘訣だぬ。至近距離のガス噴射、予期してなければ絶対に防げぬぅう!?」

 

途中で刺客は至近距離で同様のガスを受ける。それはカルマ君が持つスプレーかは噴射されたものだ。

 

「ぬはっ!?‥ぬ、ぬわんと。」

 

「奇遇だねぇ、2人共同じ事考えてた。」

 

「ぬ、ぬわぜ?お前がそれを、持っているぬ?しかも、何故お前は俺のガスを吸ってないぬ?」

 

意識を失った筈のカルマ君は口にハンカチを当て、ガスを吸わないようにしていた。そして、刺客は折りたたみ式ナイフを取り出すとカルマ君に斬りつけようと襲いかかる。それをゆるりと交わしたカルマ君は勢いを利用して刺客を倒し、関節技をかける。

 

「ぬぅおおお!」

 

「ほら、寺坂早く早く!ガムテと人数使わないと、こんなバケモン勝てないって。」

 

「‥‥へいへい。てめえが素手のタイマンの約束とかもっと無いわなぁ。」

 

「たしかに。」

 

「ヌワァア!?」

 

「縛る時気をつけろ、そいつの怪力は麻痺していても要注意だ。」

 

「「「「「「はーい。」」」」」」

 

男子が全員で乗りかかり、刺客の動きを止める。その状態のままガムテープで動けないように縛り上げる。

 

「グヌヌヌヌヌゥウウウ‥」

 

「毒使いおっさんが未使用だったのをくすねたんだよ。使い捨てなのが勿体無いぐらい便利だねぇ。」

 

「何故だぬ?俺のガス攻撃、お前は読んでいたから吸わなかったぬ。俺は素手しか見していないのにぬ。何故ぬ?!」

 

「当然っしょ。素手以外の全部を警戒してたよ。」

 

「ヌゥ‥‥‥‥」

 

「あんたが素手の戦いをしたかったのは本当だろうけど、俺らをここで止めるためにはどんな手段も使うべきだし。俺でもそっちの立場ならそうしてる。あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒してた。」

 

「成る程。」

 

(カルマ君、ちょっと変わったな。良い感じに。)

 

「大きな敗北を知らなかったカルマ君は期末テストで敗者となって、身をもって知ったでしょう。敗者だって自分と同じ色々考えて生きている人間なんだと。それに気付いた者は必然的に勝負で相手の事を見縊らないようになる。自分と同じように敵も考えていないか、頑張っていないか、敵の能力や事情をちゃんと見るようになる。敵に対し敬意をもって警戒出来る人、戦場でそう言う人を隙が無いと言うのです。」

 

「フゥ‥大した奴だぬ、少年戦士よ。負けはしたが、楽しい時間を過ごせた「え何言ってんの?」ぬ?」

 

「楽しいのこれからじゃん。」

 

「ぬぅ‥‥?」

 

カルマ君が嬉しそうに取り出したわさびとからしに刺客は理解が追いついていないようだ。

 

「な、何だぬそれは?」

 

「わさびアンドからし。おじさんぬの鼻の中にねじ込むの。」

 

「さっきまではきっちり警戒してたけど、こんだけ拘束したら警戒もクソも無いよね。これ入れたら専用クリップで鼻塞いで、口の中に唐辛子の千倍辛いブートジョロキアぶち込んで、その上から猿轡して処置完了。」

 

「ヌヌ、ヌァア‥」

 

「さあ、おじさんぬ。今こそプロの意地を見せる時だぬ♪」

 

そしてカルマ君は無情にも刺客の鼻の中にからしのチューブをねじ込み、中身を注ぎ込む。その後も様々な事をしたが、筆舌に尽くしがたいのでここで止めておこう‥

 

「殺せんせー‥カルマ君、特に変わってなく無い?」

 

「ええ‥将来がおもいやられます。」

 

「何つーもん持ってきてんだよ。ほら行くぞ、もたもたしてっと見つかっちまう。」

 

「図体デカイからねぇ、門倉君と一緒で。」

 

「「うるせぇ!?」」

 

そのまま悲惨な状況になってしまった刺客を置いて進む。僕等は5階から6階へと上がる途中の階段を進んでいた。

 

「皆さん、この上がテラスです。」

 

「バーフロア‥‥問題の階ね。」

 

「はい!ここらVIPフロアに通じる階段は店の奥にあります。裏口は鍵がかかっているので、室内から侵入して鍵を開けるしかありません。」

 

「こっからはアドリブかぁ。」

 

「俺達は目立っちまうな。」

 

「先生達はここで隠れてて。私達が店に潜入して中から裏口を開けるから、こういう所は女子だけの方が怪しまれないでしょ?」

 

「うんうん。」

 

「いや‥女子だけでは危険だ。」

 

「おぉー、だったら。」

 

「うぇ?」

 

何故か分からないけど、僕と門倉君に視線が集まる。

 

「あ?」

 

「あ、え?」

 

その後僕等は望まぬ選択を強いられるのだった。

 

 

 

門倉視点

 

女子に続いてバーフロアに入る。俺や潮田は自分の格好に目を配ってしまい、周りが見えない。

 

「ほら男でしょ?ちゃんと前に立って守らないと門倉君、渚君もだけど。」

 

「勘弁してくれ。」

 

「無理、絶対に無理。」

 

「諦めな。」

 

「ほら!」

 

「うわぁああ‥‥どうして、僕が‥」

 

俺と共に出てきた潮田は女子と見分けが付かないくらいの女装男子、男の娘だった。それにひきかえ、俺は完全に黒スーツにサングラスをかけたYakuzaとなっている。メイクで顔に大きな傷も作られたし。

 

「男手も欲しいけど、こういう所は男にチェック厳しいの。」

 

「だからって‥門倉君はすんなりと通ったじゃん。」

 

たしかに潮田の言う通り、俺が通る時は警備員が『お疲れ様です!』って敬礼していた。

 

「作戦なんだから、もう1人男子がいたって問題無いの。」

 

「‥本当に?」

 

「ええ、本当です。」

 

「律まで!?」

 

「自然過ぎて新鮮味がない。」

 

「そんな新鮮さいらないよ!」

 

「右に同じく。」

 

ボディーガードらしさなんて欲しくも何ともない。女子は俺らの意見に構う事なく、歩き始める。

 

「どこにあったのこの服?」

 

「外に脱ぎ捨ててあった。門倉のはカルマが何故か持ってた。」

 

「「‥‥‥」」

 

(赤羽よ、何故そんなのを持っていたんだ‥‥)

 

「あーやだやだ、こんな不潔な場所早く抜けたいわ。」

 

「その割には楽しそうだな、不破よ。」

 

「ね!」

 

「うわ‥!?」

 

潮田に誰かが話しかけた。どうやらナンパの輩であるようだ。

 

「どっから来たの君ら、そっちで俺と飲まねぇ?金あるから、何でもおごってやんよ。あ、その人が彼氏さんなら別だけど‥‥」

 

「はい渚、相手しといて。」

 

「片岡さん!」

 

片岡は潮田の耳元で何か話している、どうやらナンパ男を相手するように指示しているようだ。潮田は諦めたようにナンパ男とどこかに行ってしまった。

 

「そっかぁ、渚ちゃんって言うんだ。俺、勇治な。」

 

「うん‥」

 

「よし、今の内に。」

 

(潮田‥すまん。)

 

俺は片岡の誘導で女子チームと共に進み始める。

 

「えっと上への階段は‥こっちで間違いないわね。」

 

「よお、お嬢達。女だけ?俺らとどうよ今夜?」

 

別のナンパ男がこんどは2人組で声をかけてくる。どうやら俺は連れとして見られていないようだ。

 

「あのねぇ‥言っときますけど!‥矢田さん?」

 

矢田は片岡を止め、俺の腕を引きナンパ2人組の前に出る。

 

「お兄さん達、格好いいから遊びたいけどあいにく今日はパパ同伴なの私達。うちのパパちょっと恐いから、止めとこ。ね、縞内?」

 

矢田が相手に見えるように見せたのは極悪なヤクザのエンブレム。そして、俺をそこのボディーガードとして使ったようだ。

 

「あん、何だこれは‥?ってヤクザのエンブレム!?」

 

「し、しかも少人数だけど凶悪で有名な集英組。そこにいるのはまさか集英組の若頭ぁ!?」

 

どうやら俺を若頭だと勘違いしてくれたようだ。完全に顔が青ざめている。

 

「「失礼しましたぁ!!」」

 

「意気地なし、借り物に決まっているのにね。」

 

「矢田さん凄い‥」

 

「ま、良い護衛がいたからね。」

 

矢田は俺にウィンクする。無事にボディーガードとして役に立てたようだ。だから少しこちらも悪戯を仕掛ける。矢田の頭を優しくポンポンと叩き、耳元で告げる。

 

「お役に立てて光栄ですよ、お嬢。」

 

「「「「「はうっ//」」」」」

 

「こ、これはズルい‥//」

 

女子達は頬を赤く染めながら、先に進み俺もそれに続くのだった。しばらく先に進むと片岡が何かを発見する。

 

「皆、あれ。」

 

指差す先には目的の場所があるが、そこには警備員がいた。

 

「辿り着いたはいいかど、見張りが居るのよね。」

 

「場合によっちゃ男手が必要かも。」

 

「そうね、茅野さん。渚を呼んできて。門倉君、お願い。」

 

「わかった。」

 

茅野が潮田を呼びに行くと共に俺は警備の人間に近づく。相手はこちらに気付くと、その場で敬礼して震えだす。どうせだからヤクザの振りを続ける事とする。

 

「お疲れ様です!」

 

「おう。お疲れさん。ここ、連れの奴らが通るんだが、いいか?」

 

「は、はい!」

 

(茅野が潮田を呼び戻すまでまだ時間もあるし、聞きたい事を聞いとくか‥)

 

「おい、ちょっといいか?」

 

「はい!何なりと!」

 

「ここのホテルのVIPフロアによ、他にどんな客が泊まってんだ?」

 

「いえ、お客様のプライバシーはちょっと‥‥」

 

「そうか、ウチのお嬢方がよ。VIPフロアの他の客から迷惑行為を受けたと仰っててな。良かったら教えてくれねぇか?」

 

後ろにいる矢田達を指差し、話を進める。これで警備員も信じ始める。それにこの話は嘘ではない。事実ウチの生徒がウイルスを盛られている。要は言い方の問題だ。警備員はどうやら俺が誰かとドンパチやらかすと思ったようで益々慌て出す。

 

「お、お客様。当ホテルでの戦闘行為は極力控えていただきたく‥」

 

「分かってるって、安心しなよ。少し、痛い目にあってもらうだけだから。あんたらに迷惑はかけねえよ。最近ホテルの最上階に泊まり始めたの客だけでいいからよ。」

 

「‥‥内密にしてもらえますか?」

 

「ああ、勿論、あんたが言ったなんて言わねえよ。」

 

そう言うと俺は笑顔で途中で落ちていたのを拾った5枚の1万円札を握らせる。警備員は安心したのか賄賂に心躍ったのか、こちらにつられて恐る恐る笑顔を作る。

 

「そ、そのお客様は‥」

 

「こらガキィ良い度胸だ!」

 

背後から聞こえてくる怒号に振り向くと、どうやらさっき潮田に声をかけたナンパ男がヤクザの服に酒をかけてしまったらしい。ナンパ男はヤクザに胸倉を掴まれ、何処かへ連れて行かれかけているようだ。

 

「ちょっと、悪い。」

 

「あ、お客様!」

 

(折角良いところなのに邪魔しやがって‥!!)

 

俺は片岡達に動かないようにハンドサインを送ると、ヤクザの肩を掴む。

 

「よお兄弟、どうした息荒くして?」

 

「ああん、何だてめぇ?ってえ‥‥‥」

 

ヤクザはそのままその場に倒れこむ。無理はない、まあそうなるように押したからだが。無事成功したようだ。

 

(ロブロさんから教わった全身の点穴押し、1点付くだけで気絶させれるって聞いてただけで練習では人間相手に出来なかったけど。まさか本当に通じるとは思わなかったな。)

 

「おい。」

 

「はい!」

 

「こいつ酔っ払って倒れちまったから、回収してやってくれ。」

 

「は、はい!全く、飲み過ぎやがって。」

 

先程の警備を呼び出して運ばせる。残念だがターゲットについては聞き出せないようだ。

 

「今の内!」

 

残りの女子面子が警備がいない隙に目標の場所に入る。俺もそこに続くが、潮田とナンパ男が目に止まる。どうやら潮田がナンパ男に何か言うつもりのようだ。

 

「女子の方がアッサリカッコ良い事しちゃっても、それでもめげずにカッコつけないといけないから辛いよね、男子は。」

 

「渚ちゃん‥//」

 

「今度会ったらまたカッコつけてよ。出来ればドラッグとダンス以外が良いな。」

 

そして、俺もお節介ついでに助言をする。

 

「タバコなんざ吸ってたら、守りたいもんも守れないぜ。」

 

「ひぃ!‥は、はい。」

 

「じゃあね。」

 

「んじゃ!」

 

慌てて俺らも女子に続いて出口に向かうのだった。陰で元の格好に着替えて戻ると無事合流を果たせていたようだ。

 

「危険な場所へ潜入させてしまいましたねぇ。危ない目に遭いませんでしか?」

 

「ううん!」

 

「ちっとも!門倉君のお陰でね。」

 

「そう言ってもらえるとあんな格好した甲斐があったよ。」

 

「ハァ‥」

 

どうやら潮田も着替えが終わったようだが、何やらため息をついている。

 

「あれ、着替えるの早いね渚。」

 

「うん‥」

 

「?どうしたの?」

 

「いや‥結局今回女子と門倉君が全部やってくれたし。僕がこんな格好した意味って‥」

 

「面白いからに決まってんじゃん!」

 

「取らないでよ、カルマ君!!?」

 

赤羽は潮田の女装写真を撮っていたらしく、携帯の画面に出している。

 

(ん‥あの画像って?)

 

「って俺もかよ!?」

 

いつの間にか俺の写真も映っていた。思い出しただけでものすごく恥ずかしい。

 

「そんな事ないと思うよ。きっと誰かのためになってるって。」

 

そんなやりとりもあり、俺らは先に進むために階段を登り始めた。

 

「あのまま行けば良かったのに。暗殺者が女に化けるのは歴史上でも良くあるぞ。」

 

「い、磯貝君まで‥」

 

「渚君、取るなら早い方が良いらしいよ。」

 

「取らないよ、大事にするよ!!?」

 

「その話は後にしてくれるか‥」

 

「2度としません‥‥」

 

(潮田も大変だな‥たしかにあの姿は女子と一切見分けつかなかったが‥‥)

 

「この潜入も終盤だ。律!」

 

「はい、ここからはVIPフロアです。ホテルの者だけに警備を任せず、客が個人で雇った見張りを置けるようです。」

 

いつの間にか上の階に着いていた俺らは階段から覗くように見張りの位置を確認する。そこには2人程屈強な男が立っている。

 

「そんで早速上への階段に見張りか‥」

 

「超強そう‥‥」

 

「私達を脅してる奴の一味なの?それとも無関係の人が雇った警備?」

 

「どっちでもいい、倒さなきゃ通れないのは一緒だろうが!」

 

「その通り、寺坂君。そして、倒すには君が持っている武器などが最適ですねぃ。」

 

「クッ!透視能力でもあんのかてめえは‥」

 

寺坂はイラつきながらカバンを下ろし、中から何かを取り出し始める。

 

「一瞬で2人を仕留めないと連絡されるぞ。」

 

「任せてくれって。おい木村、あいつらをちょっとらここまで誘い出して来い。」

 

「俺が!?どうやって?」

 

「知らねえよ!」

 

「じゃあこう言ってみ木村。」

 

赤羽が木村へ何か告げた後、木村はそのまま見張りの近くまで行く。やり取り自体は聞こえないが、何か言っているようだ。

 

「何だゴラァア!?」

 

どうやら成功したようだ。木村と共に2人共こちらに向かってくる。木村が駆け抜け、こちらを通り過ぎる。そのタイミングを伺っていたのか寺坂は吉田と共に飛び出す。

 

「今だ!」

 

「す、スタンガン?!」

 

「タコに電気試そうと思って買っといたのよ。こんな形でお披露目とは思わなかったがな。」

 

「買っといたって高かったでしょ、それ?」

 

「あ?ああ、いや、最近ちょっと臨時収入があったもんでよ。」

 

「いい武器です寺坂君。ですが、その2人の胸元を探って下さい。」

 

「あぁん?」

 

「膨らみから察するにもっといい武器が手に入る筈ですよ。」

 

そう言って寺坂が取り出したのは実弾入りの拳銃だった。そのまま殺せんせーは話を続ける。

 

「そして、千葉君、速水さん。この銃は君達が持ちなさい。」

 

「「えっ!?」」

 

「烏間先生はまだ精密な射撃が出来る所まで回復していない。今この中で最もそれを使えるのは君達2人です。」

 

「だ、だからっていきなり「ただし!」‥!?」

 

「先生は殺す事は許しません。君達の腕前でそれを使えば、傷付けずに倒す方法はいくらでもある筈です。」

 

2人は深刻そうな顔つきになる。恐らく今日の暗殺での失敗を引きずっているのだろう。

 

「さあ、では行きましょう。ホテルの様子を見る限り、敵が大人数で陣取っている気配はない。雇った殺し屋も残りは精々1人や2人。」

 

「おお、さっさと言ってブチ殺そうぜ!」

 

「皆さん、これより上の階もVIP専用の非常階段を使わなくてはなりません。そのためには8階のコンサートホールを通る必要があります。」

 

「仕掛けてくるならここだな。」

 

「えぇ、先生もそう思います。」

 

俺の言葉に殺せんせーと烏間先生が同意する。そこで俺らはコンサートホールで刺客を待ち構える事にした。コンサートホールに着くと各自がバラバラに散らばり、客席に隠れこむ。そして待つまでもなく、刺客は現れる。

 

 

 

残り時間僅かな俺らと、3人目の刺客との攻防が始まった。

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