最高のオワリのために   作:クローザー

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本編:2学期
第17話 堀部糸成の時間 その1


門倉視点

 

2学期が始まり、俺と有希子は付き合い始めた。元々互いの家(主に俺の家)に行き来する仲だったので生活面では特に変化はなかったけど、週末になったら何処かへ出かけるようにした。そんな2人の関係はあっという間に殺せんせーやビッチ先生にバラされクラス中に知れ渡ってしまった。その事実を知った杉野に襲われたり、赤羽に冷やかされたりなどして俺と有希子は怒濤の1ヶ月を送るのだった。

 

シルバーウィークに入り、俺らは茅野考案の暗殺計画(プリン爆殺計画)に取り組んだが、失敗してしまう。そんなシルバーウィーク明け、俺らは今烏間先生考案の実戦型授業に取り組んでいる。フリーランニングを利用した暗殺ケイドロ、鬼は烏間先生と殺せんせーの2人で行う。

 

「全員ツカマッタラシュクダイニバイデスカネ?」

 

アメリカンポリスの格好した殺せんせーは、迷彩服に身を包んだ烏間先生に話しかける。

 

「変な便乗の仕方をするな。」

 

「イイジャナイデスカ?ワタシヲ、マゼルクラーイ?ダイタイミンナダケタノシソウデ、ズルーイ!」

 

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

「それにワタシはディフェンス担当ですし。」

 

「当然だ、お前が追っ手では訓練にならん。」

 

「まあ、門倉君は最初から捕まっている設定のお陰でアンシンデース!」

 

「‥‥‥そうですね。」

 

俺は初めから捕まっている設定でゲームはスタートしている。烏間先生曰く、殺せんせーというディフェンス担当のケイサツから仲間と協力して脱出しなければならないというハンデが俺には必要らしい。実質殺せんせーの音速ディフェンスから逃げられる訳がないので、俺は今回出番ナシである。

 

「安心してくれ、門倉君。直ぐに仲間が牢屋へと来るだろう。」

 

(‥‥いえ、こちらは捕まらない事を願っています。)

 

そう言うと烏間先生は片手をペイント付きの手袋に嵌め、裏山に繰り出していった。きっとすぐに誰かを捕まえるのだろう。

 

「では門倉君、課題のプリントをやりましょう。」

 

「‥分かりました。」

 

殺せんせーに言われて囚人用のプリントを解き始め、5分程経つと携帯の画面に警官姿の律が現れる。

 

「岡島さん、速水さん、千葉さん、不破さん、アウト〜」

 

捕まった4人はグラウンドの牢屋に現れる。4人共ここまで早く捕まるとは思っていなかったらしく、悔しそうな顔をしている。

 

「ちっくしょう〜」

 

「全く気づけなかった‥‥」

 

「信じられない‥」

 

「さ、皆さん。プリントを解き始めてクダサーイ!ヌルフフフフフ!ヌルフフフフフ!」

 

速水達がプリントを解く中、岡島は携帯を使って菅谷と連絡を取っている。どうやら注意を喚起するつもりのようだ。

 

(まあ、無駄だと思うけどね‥‥)

 

菅谷は岡島の言葉に半信半疑なようだ。岡島の喚起にも本気で取り合っていない。

 

「嘘じゃねえって、現に俺ら牢屋でドリルやらされてるし。」

 

『はぁ、いやいや岡島よ。気付かぬ内にタッチってバトル映画じゃあるまいし。』

 

「兎に角気をつけろ。もしかしたらもうお前の後ろに‥」

 

『うわぁぁああああ!』

 

「菅谷?菅谷ぁああ!!」

 

携帯越しに届く菅谷の悲鳴、どうやら捕まってしまったようだ。画面の囚人一覧に菅谷とビッチ先生が新たに現れる。

 

「菅谷さん、ビッチ先生アウトー!」

 

「どんどん追い込まれるなぁ‥‥」

 

菅谷とビッチ先生が牢屋へと運ばれ殺せんせーの監視の下、再び課題のプリントを解き始める。皆が解く中、1人解き終えた俺は山の方を見ていると何やら妙な動きをしている杉野が視界に入る。

 

(何やってるんだアイツ‥‥‥)

 

杉野の動きに何か意味があるらしいのだが、俺にはさっぱり分からない。一方俺と同じように杉野の存在に気付いた岡島は理解できたようで、殺せんせーに何かを渡す。

 

「What?」

 

岡島から差し出された巨乳水着の女性の写真を胸ポケットにしまった殺せんせーはわざと俺らを視界から外す。収賄が成立してしまったようである。

 

「‥‥1回だけだぞ。」

 

殺せんせーが写真に夢中になる中、岡島がサインを送り杉野が囚われている面子にタッチする。タッチされた面子は牢から解放され、また山へと駆ける。かくいう俺も逃げ果せた。

 

「5名脱走‥‥‥」

 

画面上の律が告げ、烏間先生に気付かれる。しかし、山の中へ入ってしまえばこっちのものだった。俺は菅谷達とは別れ、渚達と合流する事に成功した。

 

少し経ち、矢田、竹林、木村、原が捕まって牢屋に送られたようだが何らかの方法で逃げ出したようで、結果残り時間5分で捕まっているのはビッチ先生のみ。

 

俺は渚と勝利を確信し、リラックスした状態で木陰に待機していた。

 

「あと5分!」

 

「ここまで来たら、俺達の勝ちは確定だな。」

 

「ああ。」

 

「‥果たして‥そう上手くいくかな?」

 

「「「「「‥‥‥‥‥」」」」」

 

背後に現れた烏間先生が茅野の肩に触れようとする瞬間俺が両手がかりで烏間先生の腕だけを掴み、すんでの所で止める。

 

「ぬぐぉ!やるじゃないか門倉君。」

 

烏間先生は力任せに拘束を外そうとする。抑えるだけで精一杯なので、おそらく1、2分ももたないだろう。

 

「全員、早く逃げろ。なるべく遠くにな。」

 

こちらからの言葉を待たずに打ち合わせした通り俺が烏間先生の足止めに入る。渚、赤羽、奥田、茅野、杉野は駆け出し、なるべく遠くに逃げ始める。

 

「了解!」

 

「あとは宜しく〜」

 

「すみません!」

 

「ありがとうね!」

 

「爆発しろ!」

 

「おいその言葉はおかしいだろ!?」

 

杉野の罵声に納得が行かなかったものの、全員が逃げ切った所で俺は拘束を解き烏間先生と距離をとる。

 

「君が俺の足止めをし、他の生徒が逃げる。実に効果的な作戦だ。だが、最大戦力である自分が捨て駒となる事を考えた上でこの作戦を選んだのなら合格点を与える事はできないな。」

 

他の5人を諦め、こちらに狙いを定めた烏間先生は腕の動きを確認しながら作戦の評価を話す。

 

「御指摘ありがとうございます。ですが、僕は自分を最大戦力だとでも捨て駒となったつもりもありません。」

 

「‥‥‥?なっ!」

 

俺はその一瞬の隙を突き、駆け出す。烏間先生もすぐに追いかけ始めるが、俺にとっては十分な距離が開かれる。

 

「な、なぜこんなに早く‥‥」

 

烏間先生すら気付かないルートでより速く俺は移動する。毎週のようにロブロさんから課されたフリーランニングのお陰で今や俺はこの山の全てを知り尽くしている。どの場所を踏めばいいのか、どこが危ないのか、そういった事は手に取るように分かるのだ。

 

(‥‥あと数分間だけ逃げ切れば勝ちだな。)

 

そう思い、烏間先生から逃げ続ける事3分弱、律が終了を告げ、俺は山の中を駆け回ったのだった。

 

 

潮田視点

 

結局、暗殺ケイドロは僕等の逃げ切り勝ちとなった。殺せんせーは毎度の如く烏間先生の逆鱗に触れたけど、僕等にとっては良い訓練になった。

 

そう、2学期の滑り出しは誰の目にも順調に見えた。

 

放課後、杉野と別れた僕がコンビニの前を通りかかると内側からこちらに見える週刊誌の見出しに気になる事が書かれていた。

 

【平和な住宅街に激震走る!!!Fカップ以上のみを狙う黄色い男と顔に傷を持つモヒカン男の影】

 

「まさか‥‥!!」

 

何か起こる、そう考えている内に翌朝、教室に集まった僕等は似た内容の週刊誌を見比べていた。

 

「これって殺せんせーだよな。あと傷を持つモヒカン男って門倉の事?」

 

「いやあいつに限ってそんな事をする筈は‥」

 

「でもこの男ってウチの生徒の可能性が高いんでしょ?モヒカンで顔に傷をがある生徒なんてそんなにいないよ。」

 

殺せんせーと猛に疑惑がかかる中、容疑者の可能性大の殺せんせーが教室の扉を開く。

 

「汚物を見る目ぇええ!!?」

 

教壇に置かれた雑誌を読み始める殺せんせー、どうやら初耳だったようで驚きを隠せずにいる。

 

「これ完全に殺せんせーよね?」

 

「正直がっかりだよ。」

 

「こんな事してたなんて。」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!先生全く身に覚えがありません!」

 

「じゃ、アリバイは?」

 

「アリバイ?」

 

「この事件があった当日深夜、先生どこで何してた?」

 

「何って、門倉君の家でプリンを食べてましたよ。」

 

1人でないのは救いがあるけど、そのアリバイの相手が疑惑をかけられている猛とはまるで示し合わせているようだ。皆そう思ったようで、猛の関与も疑い始める。

 

「‥門倉ねぇ?」

 

「なんとも言えない偶然だこと‥」

 

「皆よせ!たしかに殺せんせーは小さな煩悩満載だ。けど今までやった事と言えば、精々。エロ本拾い読みしたり、水着生写真で買収されたり‥‥休み時間一心不乱にグラビア雑誌に見入ったり‥『手ぶらじゃ生ぬるい、私に触手ブラさせて!』という応募ハガキを出してたり‥‥‥‥くっ、先生。自首して下さい!」

 

「磯貝君まで!?」

 

「失礼な!先生は潔白です!」

 

殺せんせーの訴えもむなしく、僕等は疑いの視線を向けていると、渦中の人物である猛が遅れて教室に現れる。

 

「遅れましたーって、皆どうした?」

 

今度は猛が注目を集める。本人だけでなくその後ろに立つ神崎さんもキョトンとしている。

 

「えーと、なんかあった?」

 

「ねえ猛、昨日殺せんせーと一緒にいたの?」

 

「ああ。昨日なら有希子が家の用事で帰った後殺せんせーとプリン食べて過ごしてたぞ。そうだよな有希子?」

 

「うん。昨日帰る時に殺せんせーがタッちゃんの家に入るのを見たよ。」

 

「んで、昨日の事なんか聞いて一体どうしたんだ?まるで取り調べだな。」

 

「‥これ、読んでみてよ。」

 

僕から週刊誌を受け取ると、猛は記事の内容を読み始める。読んでいる内に彼の顔からどんどん血の気が引いていく。

 

「‥‥‥まさか、俺疑われてんの?」

 

「‥‥‥うん。」

 

「おいおいまじかよ‥‥」

 

猛も流石に驚きを隠せないようだ。クラスメイトからの視線にやり場がない様子である。

 

「タッちゃん、どうしたの?」

 

「あー有希子、これはな‥」

 

猛が説明しようとするが、他の女子から別の週刊誌を渡された神崎さんが目を通してしまう。神崎さんは記事を読みながら、猛をチラ見する。猛と犯人の間で一致する部分が多い事に気づいてしまったのだろう。

 

「‥‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥‥」

 

「‥‥し、信じてる、よ?」

 

「‥‥‥」

 

沈黙の末に困惑気味の神崎さんから告げられた一言に猛は完全にショックを受け、膝から崩れ落ちる。彼女からの疑いの眼差しは猛にとってかなりのダメージがあったようだ。

 

「‥‥か、門倉。これは‥」

 

「‥‥‥上等だ。」

 

ふらりと立ち上がる猛、笑顔ではあるもののその目は怒りに染まりきっている。

 

「ねえ渚、あれって‥?」

 

「うん。」

 

(完全にキレてる‥‥)

 

猛は席に着く事なく週刊誌を机に置く。優しく丁寧なのが逆に恐ろしい。そのまま猛は教室の扉に手をかけ、僕等を見る。

 

「先生、体調が悪くなったので早退します。」

 

「わ、分かりました。」

 

殺せんせーからその言葉を聞き、猛はそのまま帰ってしまった。どう見ても犯人探しに向かうのだと分かる。

 

「‥‥か、門倉は置いといて、殺せんせーはまだ怪しいな。」

 

「ならば、教員室に来て下さい!先生の理性の強さを証明するためにも、机の中のグラビアコレクション一片残さず全て処分して入れましょう‥‥」

 

教員室に移動し、自分の机の中からグラビア雑誌を放り出す殺せんせーの触手に紫色のブラジャーが引っかかる。

 

「‥‥マジかよ。」

 

全員言葉を失っていると、出席簿を持った岡野さんが駆け込んでくる。

 

「皆見て!クラスの出席簿、女子の横に書いてあるアルファベット、皆のカップ数を調べてあるのよ!」

 

「ちょっ!?私だけ永遠の0って何よこれぇえ!!」

 

「しかもこれ、椚ヶ丘Fカップオーバーの女性リストって‥」

 

「なっ!そんな筈は‥‥ええ、えええ。あーそうだ!放課後、皆とバーベキューしようと準備しておいたんです!この串なんてほらぁ美味しそうでおわぁあ!」

 

クーラーボックスの中から取り出された串に刺さっていたのは肉や野菜ではなく、色とりどりのブラジャーである。これには皆ドン引きである。神崎さんもつい目を背けてしまう、これで一緒にいた猛への容疑が益々高まってしまう。

 

「やべぇ‥」

 

「信じられない‥」

 

「不潔‥」

 

「あ、あはははは‥‥」

 

この日殺せんせーは皆から軽蔑の視線を向け続けられたまま授業を行っていた。そして今日最後の授業が終わる。

 

「きょ、今日の授業はここまで‥また明日。」

 

「ははっ!今日1日針の筵だったろうねぇ。居づらくなって逃げ出すんじゃね?」

 

「でも殺せんせーも猛も本当にやったのかな?こんな洒落にならない犯罪を。」

 

「地球爆破に比べたら可愛いもんでしょ。」

 

「そりゃあまあ‥」

 

「でもさ、仮に俺がマッハ20の下着泥棒とその相棒ならこんなにもボロボロ証拠残すヘマしないけどね。」

 

「おおっ!?うわぁ‥」

 

カルマ君から投げて渡されたボールもブラジャーが取り付けられている。

 

「体育倉庫にあったボール。こんな事してたら俺らの中で先生として、クラスメイトとして死ぬ事くらいわかってんだろ。あの教師バカの怪物にしたら、くだらない真似して俺らの信用を失う事は暗殺されんのと同じくらい避けたい事だと思うけどね。」

 

「うん、僕もそう思う。」

 

「それにさ、門倉君なら神崎さんっていう彼女がいるのにわざわざ他の女にうつつ抜かす必要ないっしょ。」

 

「‥‥‥‥//」

 

カルマ君の言葉に神崎さんは言葉を失い、頬を赤く染めて俯いている。

 

2学期が始まって分かった公認カップル、神崎さんと猛の2人。まあ猛がベタ惚れしてて神崎さん一筋なのは間違いではない。

 

「でも、そしたら一体誰が?」

 

「偽よ。」

 

「ん、不破さん。」

 

「体色、笑い方、見た目、間違いなくこいつらは偽殺せんせーと偽門倉君よ!!ヒーロー物のお約束、偽物悪役の仕業よ!」

 

「「‥‥‥‥‥」」

 

「ということは犯人は殺せんせーと門倉君の情報を熟知している何者か。律、私と一緒に手がかりを探して頂戴!」

 

「はい!」

 

「その線だろうね。何の目的でこんな事すんのかわかんないけど、何れにせよこういう噂が広まる事で賞金首がこの町にいられなくなったら元もこうもない。俺らの手で真犯人をボコってタコとあの優等生君に貸し作ろうじゃん。」

 

「「「はい!(おう!)」」」

 

「‥永遠の0‥」

 

そして時間は夜、集まったのはカルマ君、茅野、不破さん、寺坂君、そして僕だ。不破さんからの提案で僕等はあるマンションの敷地内にある茂みに潜んでいた。

 

「フヒヒヒ!身体も頭脳もそこそこ大人の名探偵参上!」

 

「やってる事はフリーランニング使った住居侵入だけどね‥‥」

 

「んで、不破よ。何で真犯人はこの建物を次に選ぶって分かんだよ?」

 

「ここは某芸能プロの合宿施設。この2週間巨乳ばかり集めたアイドルグループが新曲のダンスを練習してるって。」

 

「はい、犯人の傾向から考えるとここが狙われる確率99.78%」

 

「しかも明日が合宿最終日、真犯人がこの極上の獲物を見逃すはずがない!」

 

「成る程。」

 

「殺せんせー!あと猛も‥‥2人共真犯人を追って‥」

 

「どう見ても盗む側の格好だな。」

 

茂みの中から下着を見ているのは黒装束に身を包んだ殺せんせーと猛。

 

「見て、真犯人への怒りのあまり、下着を見ながら興奮してる。門倉君なんて目を血走って犯罪者の顔になってるし。」

 

「フーン!けしからん!!実にけしからんですよ!」

 

「‥‥犯人‥絶対‥‥ボコる!俺を利用した事‥‥‥後悔させる!」

 

(怒りの余り片言になってるし‥‥)

 

「あいつらが真犯人にしか見えねえぞ!」

 

2人を見ている内に別の茂みから何か物音が聞こえてくる。

 

「‥‥?ねえあっち。」

 

「誰か来た。」

 

見つけたのは殺せんせーの頭に似せたヘルメットを被った大男と頬に傷があるモヒカン男の姿だった。

 

「黄色い頭の大男!あとモヒカン男も!」

 

「やっぱり‥」

 

「真犯人は別にいた。」

 

「あの身のこなし、ただもんじゃねえ!」

 

「やばい、逃げられる!」

 

逃げようとする犯人達を僕等が取り抑えようかと動こうとすると、殺せんせーと猛がそれぞれ抑える。

 

「捕まえた!よくも私に化けて羨ましい真似してくれましたね!丸裸にして隅から隅まで手入れしてやります。ヌルフフフ!」

 

「よくも俺を利用してくれたな‥‥俺に似せた覆面被ってるみたいだし、これは確信犯って事でいいよなぁ!そもそも、俺はヨーロピアンモヒカンでお前のはニューソフトモヒカンだ!真似するならちゃんと真似してこいや!」

 

「ヒィッ!」

 

「なんか下着ドロより危ない事してる人みたい‥」

 

「笑い方も報道通りだしねぇ。門倉なんて完全にカツアゲしてるようにしか見えない‥‥」

 

「さあ、顔を見せなさい、偽物め!ってあれ?」

 

「その覆面取りやがれ!って‥あんた?」

 

ヘルメットと仮面を取られ2人の泥棒の顔が露わになる。それを見た2人はつい動きを止めてしまう。

 

「あ、あの人達って確か烏間先生の部下の‥」

 

そう、よく烏間先生の指示でE組に協力してくれていた2人だ。

 

「なんで、こんな‥」

 

「‥‥先生、避けろ!」

 

猛が殺せんせーを突き飛ばす。すると殺せんせーが居た場所に格子が地中から生える。隙間からその場にいた猛が閉じ込められてしまった事がわかる。そこに林の方からシロさんとイトナ君がやってくる。

 

「国に掛け合って、烏間先生の部下をお借りしてね。この対殺せんせー物質から作られた檻の中まで誘っていただいた。残念ながら察しの良い彼には気づかれてしまったがね。まあ2人共狙ってたのだから、どちらが先でも構わないがね。」

 

「‥‥門倉君、無事ですか!すぐに助け‥‥‥にゅ!」

 

外側から殺せんせーが入ろうとして壁に触れるが、触手が溶けてしまう。嘘は言ってないみたいだ。

 

「君の生徒が南の島でやった方法だ。若者の発想は柔軟だね。当てるよりまずは囲むべし。」

 

「シロさん‥生徒まで巻き込むとはどういうつもりですか!!狙うなら私1人だけで十分でしょう!」

 

「彼には何かと邪魔されてきたからね。ついでだよ、ついで。イトナも、彼とは決着をつけたいようだったからね。」

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

「ちなみにそこから出る為には檻を壊すかイトナが持つリモコンを使うしかない。ま、対殺せんせー物質で出来ていると言っても頑丈に作ってくるから壊すのは諦めなよ。」

 

壁に触れる猛にシロさんは淡々と話す。まるで猛の考えを読んでいるかのようだ。

 

「まずは彼を戦闘不能にしておくとしようか。さあ、殺せんせー。君にはそこで自分の生徒が無様に嬲られる様を見てもらおうか‥イトナ!」

 

「門倉猛、お前は俺より弱い。舞台は整った、決着をつけよう。」

 

大きく跳躍したイトナ君は壁を越えて中に飛び込む。すると壁に屋根が上空から取り付けられ唯一の侵入口が塞がれてしまう。すると逃げる事を諦めたのか今まで黙っていた猛が上着を脱ぎ捨て、対殺せんせーグローブを着けた拳を構える。以前聞いた話だと、これがボクサー上がりの彼にとっての全力を出すための格好であるらしい。

 

「御託はいい。とっととかかってこい。」

 

今まさにイトナ君と猛の因縁の戦いが始まろうとしていた。

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