最高のオワリのために   作:クローザー

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本編:1学期
第2話 修学旅行の時間


門倉視点

 

 

 

中学3年の6月、俺、門倉猛は修学旅行という3大イベントの1つでクラスメイト皆が心躍らせている今日、日本の古の都、京都にいる。だが、俺にとってこの状況はあまり愉快なものとは言えなかった。

 

「ねぇ〜門倉君!このあと清水寺行こうよ〜!」

 

「え〜三十三間堂とかにしようよ!」

 

「しぶっ!それなら貴船神社とか上賀茂神社の方がいいよー!ねぇ門倉君!」

 

「なあなあ門倉〜舞妓さん見に行こうぜ!女子なんかほっといてさ!」

 

「……なんでもいいよ」

 

「「「「えぇぇーーー!」」」」

 

実の所を言うと、今班行動している奴等とは俺はロクに面識がない。急用でLHRを抜けている間に勝手に決められたのだ。だからさっきから馴れ馴れしく接されているのだが、話した事がない面子なのでこの接し方は嬉しいどころか逆に不愉快だ。

 

(有希子…どうしてるかな?)

 

幼少期からの幼馴染、神崎有希子。現在は最下層のクラス、通称『エンドのE組』にいる彼女は同じクラスの生徒達と回っている。あわよくば偶然を装って一緒に回れるのではないかと考えていたのだが、どうやら同じ班の面々は過激なE組差別者のようで近寄る事は愚か遭遇する事自体不可能であった。

 

 

そんな彼女の事を着信音が鳴り、携帯を見てみると通信用アプリ『Wine』に誰かからメッセージが来ていた。確認してみると、俺にとって割と仲が良い部類に入る友人『潮田渚』からだった。

 

潮田渚:門倉君、今どこにいる?

 

(どういうことだ?今班活動中で俺の場所を聞く必要なんてないだろうに…)

 

門倉猛:どうした?

 

送った途端に既読表示はすぐに表れ、渚からの返信はすぐに帰ってきた。

 

潮田渚:同じ班の神崎さん達が高校生の不良に誘拐されちゃって‥‥

 

(………………………は?有希子が、誘拐?)

 

「なあ〜門倉ぁ。お前も興味ある「悪い用事を思い出した。」っておい!どこ行くんだよ?!」

 

「「「門倉く〜ん!」」」

 

班員の声など脇目も振らずには俺は走り出す。荷物を置いてきたが、まあ身軽になったから御の字だ。単独行動を取ってしまう事になったが、今は緊急事態だし仕方がない。

 

携帯にまた小刻みを振動する。確認すると、表示された名前はつい先程メッセージを送って来た潮田渚であった。

 

「はい」

 

『もしもし門倉君!?』

 

どうやらこちらからの返信が来なくなり不信に思ったようである。

 

「状況は?」

 

『今神崎さん達が閉じ込められている廃工場の前まで来てる。これから突入するよ。』

 

「場所は?」

 

『え』

 

「場所はどこかと聞いているんだ!!」

 

『ま、〇〇通りのすぐ近くです!』

 

一旦を足を止め、近くにあった地図で現在地と目的地を確認する。どうやら思いの外近くにいたようで、現在地から走って1分の場所にあった。

 

「分かった!1分で着くから、俺がまず突入する。」

 

『で、でも僕らが‥』

 

「大丈夫だ。こう言った荒事に対して俺は慣れている。」

 

『だからって…』

 

「フォローは任せる。」

 

『ちょっ!?門倉く』

 

無理矢理通話を切り上げ、携帯をポケットにしまいこむ。走り出すとすぐに見るからに怪しそうな廃工場が目に入り、一旦物陰に隠れる。見つからないように確認すると、正面扉の前には黒いワゴン車が止まっており、その脇に見張りが二人以上立っている事が分かった。

 

「あそこか」

 

警戒する必要のないただの不良だと分かればこちらのもの。物陰から堂々と出て、ゆっくりと扉へ近づく。

 

「おいテメェ何もんだぁ??」

 

「ガキが来ていいとこじゃねぇんだよ!」

 

どのような下衆であろうとも経歴上、俺は相手に確認を取らなくてはならないことになっている。だから今至近距離でメンチを切っている不良Aに向かって聞く。

 

「良いのか?」

 

「あぁん、何がだよ?」

 

「ここは俺の間合いだぞ。」

 

「……っぶはぁっ!?かたらふしやらや…」

 

完全に決まったアッパー。直撃した不良Aは綺麗に弧を描き、扉に思い切り当たる。しかも完全に入ったようで、動かなくなる。何が起こったのかわからなかった不良Bは動かなくなった相方を見てようやく何が起こったか気付き、俺に向かって去勢混じりに怒鳴り散らす。

 

「て、てめえ!一体何もんだ!?!!」

 

「椚ヶ丘中学、3年A組門倉猛。幼馴染である神崎有希子を含め、同級生の身柄を引き取りに来た。そこを退け!」

 

そのまま向かってくる不良Bの拳を躱し、腕を取ったまま無理やり扉に向かって投げつける。AとBが当たった衝撃に綺麗に扉が壊れ、道が開かれる。

 

「さ、行くか。」

 

動かなくなった不良を気にせず、俺はそのまま倉庫内に踏み込んでいった。

 

 

潮田視点

 

 

門倉君に電話を切られてスグ僕はカルマ君、杉野、奥田さんとの4人で茅野達が連れ込まれた廃工場の様子を隠れて伺っていた。

 

「門倉は?」

 

「それが…一方的に電話をきられちゃって。近くまで来てるとは言ってたんだけど‥」

 

「まぁいいんじゃない。彼なら「おいテメエ何もんぅっ!?!」…あらら、予想より早かったね。」

 

音の聞こえた方向を確認すると、既に見張りのヤンキー達を門倉君が蹴散らし悠然と中に入るのが伺える。

 

「あれはやり合いたくないな…」

 

さすがにカルマ君もここまで門倉君が早く来る事自体予想外だったらしく、少し苦笑いしている。

 

(というか殴っただけで、扉壊すとかどんだけ馬鹿力なの!?烏間先生レベルじゃん‥‥)

 

「ここからどうするんだ、カルマ?」

 

「んー、とりあえず様子見で。もしかしたらこのまま解決しちゃうかもだし。」

 

「そうだね。ってこの音は?」

 

中から聞こえる物が壊れる音は門倉君が交戦を始めたということを意味しているのだろう。音とともに僕達を襲った不良達の声が響いてくる。

 

『おい!テメエなにしやが』

 

『邪魔を、するな!!!!』

 

『ぷぎゃぁあああ!?!?』

 

まさに阿鼻叫喚の嵐である。完全に門倉君の独壇場であるようだ。

 

「…………」

 

「そろそろ、僕らも行く?」

 

「そ、そうだな…」

 

「というかぷっぷぎゃあって…ププッ!」

 

笑いを堪えるカルマ君を置いて門倉君の気迫に驚きながら、僕らはあとに続くのだった。

 

 

 

 

門倉視点

 

粗方の雑魚を片付け、奥に進む。そこで大柄の不良が3人、そして縛られた有希子含めE組生徒が3人、俺の視界に入る。

 

「有希子!」

 

「タッちゃん!?」

 

「えっ!あれ門倉君!?なんでいるの?」

 

「あぁん?んだテメエごらぁ!」

 

「ふん!」

 

「ぴぎゃああ!」

 

とりあえず気持ち悪い声を上げた1人を裏拳で殴り飛ばし、残りの2人と対峙する。

 

「おい、何だよテメエー。ヒーローごっこは他所でやれや!」

 

「そちらこそ、ヤンキーごっこは他所でやってくれ。いまどき不良なんて漫画などといったフィクション受けないんだからな。とりあえずその娘達を返してもらう。」

 

「はぁ!?ふざけんな!!」

 

今度は最も大柄な不良が勢いをつけて殴りかかってきたため、まずパンチを避け姿勢が崩れた所で頭を蹴り上げる。

 

「「ぐはぁあ!」」

 

(2人とも再起不能になったようだな。さて、残りはあと1人だ。)

 

残ったリーダー格と思わしき男は額に青筋を立てながら、俺を睨みつける。他の奴らと同じ実力だろうからおそらく造作無く勝てるだろう。

 

「あとは、あんただけだ。さあどうする?」

 

「お前ぇ、椚ヶ丘中の奴か?エリート様がこんな暴力沙汰起こして良いのかよぉ?」

 

安い挑発だ。如何にもヤンキーらしい言い方だ。

 

「拉致監禁された同級生を助けるためだ。ある程度の罰則も覚悟の上だよ。」

 

「ヘェ〜、じゃあこの女はどうなんだよ!」

 

「何?」

 

ヤンキーは有希子を指差し、捲したてる。

 

「この女はなぁ、去年俺らがたむろしているゲーセンに入り浸ってたんだぜぇ!俺らが不良ならこいつも不良だろうがよぉ!」

 

「………」

 

「不良は助ける価値あんのかよエリート様よぉ!!」

 

「門倉君…」

 

いつの間にか追いついてきた潮田達が俺に心配そうに声をかけてくる。恐らく俺がショックで声を出せずにいるのだと考えているのだろうが、それは少し違う。俺はヤンキーーに目と鼻の先の距離まで近づく。

 

「あ、あん?」

 

「とりあえず一言言わせてくれ。」

 

「はぁ?」

 

「お前は1つ、大きな勘違いをしている。」

 

「は?な、何がだよ?」

 

「俺はそんな事で人を見捨てないって事だよ!!」

 

思い切り仰け反り反動をつける、その勢いを利用して呆然とするリーダーヤンキーのデコに思い切り頭突きした。

 

 

 

烏間視点

 

 

渚君達から連絡を受け後処理に向かったのだが、そこには無事に生徒達が揃っていた。

 

「烏間先生!」

 

「君達、無事だったか?」

 

聞いた話だと神崎さんと茅野さんが不良に拉致されたとの事だったが、2人とも問題なさそうだな。怪我もしてないようだ。特に神崎さんは妙に明るいようだが?

 

「はい!タッちゃ…門倉君と皆が来てくれて」

 

「門倉?」

 

E組の生徒ではないな。聞き覚えのない名前だが?

 

「自分です。烏間先生。」

 

彼等の後ろから現れたのは、モヒカンで肌が黒い、高身長の少年だった。

 

「椚ヶ丘中学校3年A組に所属しています、門倉猛です。お初にお目にかかります。」

 

「君は何故ここに?同じクラスの生徒達と班行動を取っていたのでは無いのか?」

 

「僕が連絡したんです。」

 

渚君が手を上げ、俺からの質問に答える。

 

「門倉君は神崎さんの幼馴染で、いざとなった時は連絡するように頼まれていたので。」

 

「そうか。では君からもあとで事情を聞かせてもらう。構わないか?」

 

「はい、クラスメイトには既に連絡しといたので問題ありません。」

 

「それで、例の不良達はどこに?」

 

「ニュルフフフフ!奥で眠りについてますよ烏丸先生。私のヌルヌル縛りでしばらく動けないでしょう。」

 

E組の担任、通称殺せんせーがしたり顔で音速で現れた。違和感なかったが、今部外者の彼がいる事に俺は気付く。

 

 

 

 

 

 

(いや、今現れてはまずいだろう!部外者がいるんだぞ!)

 

「貴様!ここにはE組以外の生徒がいるんだぞ!」

 

「ニュヤッ!?!うっかり忘れてました!!」

 

うっかり所の騒ぎではない。こんな国家機密の生物がE組以外の生徒にこのタコの存在を感知されては情報の秘匿性が崩れてしまう。

 

(とにかく急いでこいつを隠さなくては!)

 

「は、早く隠れ‥」

 

「き、黄色いタコが…喋ってる!?」

 

「しまった!」

 

「「「「そりゃ気づかれるよ!!?」」」」

 

「ニュヤァッ!!」

 

「はぁ…」

 

また俺の仕事が増えそうだ。

 

 

 

門倉視点

 

 

黄色いタコ、通称殺せんせーを見てしまった俺は烏間先生に同行し、E組が泊まっている旅館の教師用の部屋に来ていた。

 

「成る程。事の顛末は理解した。今回の件は正当防衛という事で君らが無罪放免になるように防衛省が処理しておこう。」

 

(移動中に烏間先生が防衛省の人間だと話していたから、あまり驚かなかったけど‥防衛省凄いな。)

 

「ありがとうございます。そうしてもらえると助かります。」

 

「いや、むしろ礼を言うべきなのはこちらだ。生徒達を助けてくれて、ありがとう。」

 

(真面目な人だなぁ‥)

 

俺のような見ず知らずの中学生にここまで真摯に頭を下げられるこの人は人間として凄い人なのだろうと感じる。

 

「さて、話が変わるんだが門倉君」

 

烏丸先生の雰囲気が変わる。恐らくあの黄色いタコについてなんだろう。

 

「君は月の爆発を引き起こしたのが、あのタコだと言ったら信じるか?」

 

「………あまり信じたくない話ですが、真実なんでしょうね」

 

こんな真面目な人が真剣な顔をして冗談を言う訳ないだろうし、信じるしかない。

 

「理解が早くて助かる。あのタコは来年の3月まで自分を殺せなければ地球を破壊すると宣言した上に今3年E組の担任をしている。」

 

「地球を、破壊ですか?」

 

馬鹿げだ話だが、月を破壊出来るのなら有り得ない話ではない。

 

「ああ。この事実は政府の極一部と3年E組の生徒しか知らない。むやみに情報が拡散し国民にパニックを起こさないためだ。」

 

(この話の流れだと、多分‥)

 

「今回、奴の存在を知ってしまった君の記憶を消す事になる。」

 

(やっぱり……)

 

「消すと言っても1日分だけだから、日常生活に支障を来さない。ただ君が「僕がE組に編入して暗殺に参加すれば全て解決、ですよね。」…その通りだ。」

 

予想は付いていた。機密情報を知ったら口封じか仲間に入れるかが定石だし、映画でもよく見てた。

 

「君のプロフィールを調べさせてもらった。学業だけでなく、スポーツでもボクシングで日本一という結果を残している。椚ヶ丘中学校の中でも理事長からとても期待されている生徒だと聞いている。」

 

たしかに父の名に泥を塗る訳にはいかないので、努力をしてきた。だが父は今の椚ヶ丘のやり方を否定しているし、努力をするのはあくまで自分の目標のためだ。

 

「ええ。たしかに期待はしてもらっています。ですが、それに応えるつもりはありません。」

 

「?」

 

「答えは簡単です。気に入らないんですよ、この学校のシステムが。」

 

そう、反吐がでるほど気に入らないのだ。

 

「一部の生徒を差別する事で残り大部分の生徒のやる気を向上させる。この学校のシステムは異常です。」

 

「…………」

 

「やり方が気に入らないから、ただ変えたかっただけなんです。E組に対する皆の考えをね。E組には親しい生徒が多いですから、潮田や磯貝、そして有希子もいる。」

 

「…………」

 

「差別撤廃派の僕が1位を取り続ければ少しでも周りが変わるかと思ったんですけど、まあ駄目でした。人間はなかなか変わらないものですね。」

 

「…成る程。」

 

「そもそも、同級生がこんな目に遭っているのに自分だけ何もせずに記憶を消されて日常生活に戻るのは都合が良すぎるでしょう。僕にそんな真似はできません。」

 

「では、E組への移動の話を‥?」

 

「ええ、謹んで引き受けさせていただきます。ただし、1つ条件があります。」

 

「僕はA組で成績1位を取る事で学費を理事長の権限で全額免除してもらっていました。ただE組になると免除はなくなると思います。E組である間の学費を政府から援助してもらう事をお願いしたいです。」

 

椚ヶ丘中学校の学費は馬鹿にならない。正直、免除がなくなるとうちの家計に大打撃である。

 

「分かった。こちらの都合で異動してもらうんだ、その点については防衛省の方で何とかしよう。手続きについては我々が取り仕切る。御家族への連絡は?」

 

「僕の方から連絡しておきます。父ならむしろ歓迎してくれると思いますから。」

 

「助かる。では、修学旅行後直ぐで申し訳ないがE組に登校してくれ。」

 

「はい。では、失礼します。」

 

部屋を退出し、廊下で父に電話をかけ要点だけ揃えて伝える。予想通り喜んでくれて一安心した。そのまま世間話をして電話を切り上げ、A組のホテルに帰ろうとしたが入り口で意外な人物が待っていた。

 

「有希子」

 

「タッちゃん!」

 

浴衣姿でスリッパをパタパタ鳴らしながらこちらに近づく彼女はとても可憐である。

 

(綺麗だ…)

 

「…?」

 

凝視していた事に気付かれたがあくまでポーカーフェイスを貫く。

 

「いや、何でもない。それより、どうした。何かあったか?」

 

「何かあった訳じゃないけど…」

 

「ないけど?」

 

「………えっと」

 

風呂上がりなのか妙に顔が赤い。風邪を引いたのかもしれない。今日は色々あって疲れただろうしな。

 

(退散した方が良さそうだな)

 

「じゃあ、俺帰るよ。身体に気をつけて。」

 

「う、うん。」

 

「またな。」

 

「…タッちゃん!」

 

「ん?」

 

入り口の扉に手をかけた俺の裾を有希子が掴む。俺が振り返ると有希子は俺の首に抱きつき、耳元で囁く。

 

「た、助けに来てくれてありがとう!嬉しかった!」

 

「…………」

 

「そ、それじゃあ!」

 

そう言うと慌てて俺から離れた彼女は廊下をかけて行き、あっという間に姿が見えなくなってしまった。色々思う所があるが、今言えるのは

 

「シャンプーの香りが、した。」

 

恥ずかしながら思春期の俺には刺激が強く、ホテルに帰る途中も帰った後もクラスメートの話など全く耳に入らずその事しか考えられなかった。

 

 

 

烏間視点

 

 

「では、門倉猛のE組編入の件ですが、宜しくお願いします。」

 

上官との通話を切り、門倉君の移動手続きを済ませた俺は一息つく。

 

「ヌルッフッフッフ!どうですか烏間先生。彼はE組に来てくれそうですか?」

 

「ああ、お前の希望通りに来てくれる事になったよ。」

 

彼のE組への異動を俺に提案してきたのは、いつの間にか俺の向かい側に座っていたこのタコである。

 

(全く、彼も厄介な生き物に目をつけられたようだな。)

 

「そうですか。それは楽しみですねぇ〜」

 

奴は相も変わらずニヤニヤした笑いを浮かべ、京都名物の八ツ橋を食べ始める。

 

「烏間先生。貴方の目から見て、彼は優秀な暗殺者になりそうですか?」

 

「ああ、素質、実力共にE組トップクラスだろう。近接戦において恐らくカルマ君を完全に凌いで俺と同等に近い。」

 

体の動かし方から見て、武道を嗜んでいるのは目に分かる事だ。そして拳に大きなタコが出来ている。あそこまで出来るのならきっとかなり鍛えているのだろう。

 

「そうですか。それはまた楽しみですねぇ。彼のような優秀な人を見ると、昔を思い出しますよ。」

 

「その話は、お前の手足が2本ずつだった頃の話か?」

 

その瞬間、奴の雰囲気が変わる。

 

(ここまでか…)

 

「いや、止めておく。どうせ話す気はないだろうしな。」

 

「賢明です、烏間先生。幾ら旅先でも手足の本数まで聞くのは野暮ですから‥」

 

「1つ、聞いても構わないか?」

 

「何ですか?」

 

「何故、わざと彼に見つかるように現れたんだ?あれはお前らしからぬミスだ。まるで彼がE組に入るように振る舞ったとしか俺には見えないんだが。」

 

「…さぁ、どうでしょうねぇ。」

 

(……これからも気が抜けない日々が続きそうだ。)

 

 

 

 

欠けた月が静かに見下ろしながら、彼等の修学旅行は更けていく。




今回から色々な人の視点から物語を進めていこうと思います。
では、また未来でお会いしましょう!
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