最高のオワリのために   作:クローザー

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第4話 転校生の時間その2

潮田視点

 

「なぁ、今日もいるのかな?あいつ。」

 

「多分」

 

一緒に登校してきた杉野との話題に上がっているのは、昨日E組にやって来た生徒の1人、自律思考固定砲台についてだ。彼女は昨日あまりにも周りを考えない行動を取ったため、クラスから孤立していた。

 

「烏間先生に苦情言おうぜー、あいつと一緒じゃクラスが成り立たないって。あと門倉の方も何とかしないと…」

 

「あはは…」

 

昨日の一件から杉野は完全に門倉君を恋敵扱いしている。門倉君は神崎さんを大切な幼馴染だと言っていたけど、さすがにお昼ご飯を作ってもらったり一緒に下校してたら怪しまれても仕方がない。

 

(まあ、杉野が気にしすぎてる所もあると思うけどね…)

 

そう思いながら教室に僕等が入ると、ある違和感を感じた。

 

「なんか、体積が増えているような…」

 

確かに昨日より体積が増えている自律思考固定砲台のディスプレイに表示されたのは昨日とは違う姿だった。

 

「おはようございます、皆さん!」

 

可愛らしい微笑みをする姿は昨日とは想像すらつかない。

 

「「えぇええええええ!?」」

 

「今日は素晴らしい天気ですね。」

 

「親近感を出すための全身表示液晶と身体と制服のモデリングソフトを全て自作で606,000円。」

 

後ろから現れた殺せんせーが解説を始める、どうやらこの変化に関わっているようだ。たしかに昨日と打って変わって背景に長閑な森があるし、椚ヶ丘の制服を来た姿が映っている。

 

「こんな爽やかな1日を皆さんと過ごせるなんて嬉しいです。」

 

「豊かな表情と明るい会話術、それらを操る膨大なソフトと追加メモリ同じく1,103,000円。」

 

(転校生が、可笑しな方向に進化してきた…)

 

「先生の財布の残高、5円!!」

 

先生が切羽詰まった様子で、言っている。本当に余裕がないようだ。

 

「おはよー、ってあれ?そこの自律思考固定砲台、何か形が変わってない?」

 

神崎さんと一緒に登校してきた門倉君が、僕等と同じように異変に気付く。自律思考固定砲台も門倉君達に気付いたようで、門倉君達に向かって笑顔を向ける。

 

「おはようございます、門倉さん、神崎さん!今日もお2人共仲が良さそうで安心です。」

 

「は?…」

 

「え…いつも仲が良いだなんて//」

 

門倉君は目が点になり、神崎さんは嬉しそうに赤面してる。あ、杉野は血の涙を流してる…

 

「なあ潮田、これって。」

 

門倉君が近づいて来て、殺せんせーを指差しながら確認しているため僕は先程あった事を説明する。

 

「うん。殺せんせーが昨日何かしたらしいんだ。」

 

「なるほどね。確かにあの人なら出来そうだ。意思疎通が図れるのは良い事だしな。あ、そうだ。」

 

そう言うと、門倉君は自分の席に戻り、鞄の中から小さい小包を取り出し神崎さんの席に向かう。

 

「ほい、今日は俺の番だったよな。」

 

「ありがとう!別にわざわざ作ってくれなくても良いのに。」

 

どうやら弁当のようであり、神崎さんの様子はというと本当に嬉しそうにしているようだ。ちなみに杉野は僕の隣で凄い形相で門倉君達の様子を観察している。

 

「1日交代で作るって約束だし。いつもやってる事だから気にすんなよ。それに中身は主に昨日食べたオムライスをメインで使ってるから、そんなに手間暇はかけてないし。」

 

「へー門倉君お弁当作るんだ?ちょっと見せてもらってもいい?。」

 

近くにいた片岡さんが神崎さんに了解を取って、弁当の中を見る。

 

「どれどれ、綺麗に出来てるじゃん。」

 

「私も見るー!うわー凄い!」

 

倉橋さんも一緒に見て、驚いている。どうやら、よほどの出来のようだ。

 

「そうか?適当に盛り付けてるだけだからそんなに褒められる程でもないぞ。」

 

「またまた〜この玉子焼き凄い綺麗に焼けてるじゃん。門倉君って料理得意なの?」

 

「まあ父さんは家を空けがちだし、試合前に自分の体重管理するために料理したりするし、そのお陰だよ。」

 

「へぇそう言うのってトレーナーさんとかに任せるんじゃないんだ?」

 

「いや、そういうのは金がある奴とかジムに通ってる奴だけだよ。俺ジムに入ってないから、何ともね。」

 

「あれ、今ボクシングってやってなかったっけ?」

 

「ああ、日本一にもなれたし学業にも専念したいから大学を出るまではやんないって決めたんだ。復帰する時のためにトレーニングはしてるけどね。」

 

「そうなんだ。なんか日本一までなったのに、もったいない気がする。」

 

「父さんとの約束だからな。仕方ないよ。」

 

そのまま話が盛り上がる中、ずっと僕の隣でブツブツ呟いていた杉野が徐に神崎さんの席にフラフラと近づいていった。

 

「カ、カンザキサン。オレモ、ミセテモラッテイイカナ?」

 

「え、うん!良かったら見てみて!」

 

神崎さんが嬉しそうに杉野に渡す。杉野が恐る恐る弁当の中身を確認すると、より驚愕に晒された顔になる。

 

「……」

 

「す、杉野?」

 

「?どうした?」

 

心配した門倉君が杉野に近づくと、杉野は顔を背けて教室の扉の前に立つ。

 

「…門倉。」

 

「あん?」

 

「俺は…俺は…絶対負けないからな!くそおぉおおおお!」

 

そう言って杉野は教室を飛び出していった。

 

「何だあいつ?」

 

「あ、あははははは…」

 

〔ま、俺も負けるつもりはないけどな〕

 

「ん、門倉君何か言った?」

 

「いや、何にも。席に着こうぜ。」

 

そういうと髪の毛をボサボサ掻きながら、門倉君は席に戻っていった。僕も違和感を感じながら、席に着くのであった。

 

 

 

門倉視点

 

「庭の草木も緑が深くなってきましたね。春も終わり、近づく夏の香りが心地良いです。」

 

画面の中では相変わらず綺麗な庭園や木々の様子が映し出されている。感動する程凄い技術だ。

 

「たった一晩でえらくキュートになっちゃってぇ〜」

 

岡島がやらしい目線を送っているのは置いといて、確かに昨日よりかは遥かに順応している。

 

「あれ一応、固定砲台…だよな?」

 

まるで生きているかのようにも見えるのだ。だから三村が驚くのも正直言って無理はない。だが、寺坂のようなたいぷはまだ完全には信じきれていないようだ。

 

「何騙されてんだよお前ら。全部あのタコが作ったプログラムだろうが。愛想良くても機械は機械、どうせまた空気読まずに射撃すんだろうあのポンコツ。」

 

画面の背景が気持ちを移すかのように雨雲模様になり始め、画面の中の彼女も悲しそうな表情へと変わる。

 

「仰る気持ち、分かります、寺坂さん。昨日までの私はそうでした。ポンコツ、そう言われても返す言葉がありません…」

 

泣いてしまった、また同時に画面の中で雨が降り始めた。周りも寺坂を怪訝そうな目で見つめる。

 

「あーあ、泣かした。」

 

「寺坂君が2次元の女の子を泣かせちゃった〜」

 

「なんか誤解される言い方やめろぉ!?」

 

「ああいうタイプは大抵かサブカルチャーに嵌りやすいのにな。典型的な小学生のガキ大将だぜ。」

 

「うるせえ門倉!お前は黙ってろ!?」

 

寺坂が若干慌てている中、竹林が眼鏡をかけ直し、昨日の「2次元、神が降りたか…」に続いて今日も口を開く。

 

「素敵じゃないか、2次元。Dを失う所から女は始まる。」

 

「竹林!それお前の2回目の台詞だぞ!」

 

「良いのか!?」

 

お陰で磯貝と木村が慌ててしまっている。喋るだけでここまで驚かれるとはなかなか凄いやつだ。そうこうしている間に彼女は涙を拭き、画面は腫れ上がっていた。

 

「でも皆さん、ご安心を。殺せんせーに諭されて私は協調の大切さを学びました。私の事が好きになっていただけるよう、皆さんの合意が得られるまで私単独での暗殺は控える事にしました。」

 

「良い笑顔だ。これからも頑張って行こうぜ。」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

「……」

 

「‥何?」

 

「……別に。」

 

俺と自律思考固定砲台との会話の後から有希子の機嫌が悪くなっている、何故だ。まあそんな事関係なく落ち着いた所で、しばらく静観してた殺せんせーが場をまとめにかかる。

 

「そういう訳で仲良くしてあげて下さい。あぁもちろん、先生は彼女に様々な改良を施しましたが、彼女の殺意には一切手をつけていません。」

 

「はい!」

 

返事をした瞬間、昨日と同様様々な重火器が一瞬で中から現れる。

 

「先生を殺したいなら、彼女はきっと心強い仲間になるはずですよ。」

 

殺せんせーの得意げな顔が憎たらしいが、確かにその通りだ。機械の彼女が俺等の援護に回ってくれれば心強い事この上ない。その後自律思考固定砲台は菅谷に問題を教えたり、クラスメイトの要望で色々な物を作ったりして殺せんせーからの嫉妬を買ったが、律という愛称を付けられ、彼女は着々とクラスに馴染んでいった。そして放課後、皆帰宅を始める。

 

「タッ…門倉君。帰ろう?」

 

「別にタッちゃんでいいよ。そっちじゃないと調子狂うし。」

 

「‥‥う、うん。そうだね//」

 

「もう帰ろう、今日は凄い空腹だ。」

 

「そうなの?じゃあ今日はお肉料理を沢山作るね。精肉店に寄って行っていい?」

 

「分かった、荷物持ちは任せてくれ。今日は親御さん、いるんだっけ?」

 

「ううん、2人とも今日は帰らないって。」

 

「じゃあ、泊まってくか?女の子1人は危ないしうちなら隣だから問題ないだろ。」

 

「え…で、でも」

 

「安心しろよ。別に取って食べる訳じゃあるまいし。」

 

「じゃ、じゃあお邪魔しようかな//」

 

「じゃあ決まりだな。帰りに有希子の家に寄って荷物取って行こう。」

 

そういうと俺は杉野に見えるように手でブイマークを作る。これぐらいは別に構わないだろう、幼馴染なのだから。

 

「ぐぬぬぬぬ!」

 

「杉野、まあまあ。」

 

杉野は拳を握りこちらを睨むが知った事ではない。たしかに昨日俺は今有希子とは付き合ってないただの幼馴染とは言ったが、付き合いたいと思わなかった訳ではない。

 

彼女がどうかは知らないが、俺は小学生の時から彼女へ好意を抱いていた。だが、その頃から俺はボクシングの練習や勉学に追われ、忙しくなってしまう。よく家に遊びに来ていたが、有希子も気を遣ってかあまり俺に相談しなかった。そのせいで有希子の父親との確執も最近になって知ったくらいだ。父親との確執で異性に対して苦手なイメージを少なからず感じているかもしれない。だから今俺はただの幼馴染でありたいのだ。

 

(焦ってもしょうがない。今はただ一緒に居られるだけで俺は充分なんだ。)

 

「さ、行くか。」

 

「うん!」

 

昨日と同じように有希子の分の鞄を持ち、俺達は教室を出る。

 

「〜〜〜〜〜ッ!?」

 

「す、杉野!?」

 

「気持ちは分かるが落ち着けって!」

 

「どうしたんだろ?」

 

「さあ‥‥それより、早く行こう。もたもたしてると日が暮れちゃうからさ。」

 

「う、うん。」

 

教室から響く音を無視し、有希子を連れてそのまま帰宅の途に着いた俺は特に揉め事に巻き込まれる事もなくその日を過ごした。

 

 

 

潮田視点

 

「おはようございます、皆さん。」

 

翌日登校した僕等の前に現れたのは、昨日とは打って変わってまた一昨日と同じ状態に戻った律の姿だった。

 

「生徒に危害を加えないという契約だが、今後は改良行為も危害とみなすと言ってきた。君らもだ。彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ。」

 

烏間先生が説明する中で寺坂君が舌打ちをし、殺せんせーは苦笑いする。

 

「チッ!」

 

「持ち主の意向だ。従うしかない。」

 

「持ち主とはこれまた厄介で…親よりも生徒の気持ちを優先させたいんですがねぇ。」

 

そして授業が始まる。だけど、皆は元の自律思考固定砲台に戻ってしまった律に警戒してしまい、授業どころでは無い。そして、突然画面に電気が走り律の動きを知らせる。

 

(…来る!)

 

「来たっ!」

 

凄まじい音が鳴り、全員が警戒するが出てきたのは重火器などではなく、沢山の花だった。

 

「花を作る約束をしていました。殺せんせーは私のボディに計985点の改良を施しました。その殆どはマスターが暗殺に不要と判断し削除、撤去、初期化してしまいました。しかし、学習したE組の状況から私個人は協調能力が暗殺に不可欠な要素と判断し、消される前に関連ソフトをメモリーの隅に隠しました。」

 

殺せんせーだけでなく、僕も皆も笑顔になる。

 

「素晴らしい!つまり、律さん貴女は。」

 

「はい!私の意志でマスターに逆らいました。」

 

「ハハッ!やるな!」

 

「殺せんせー、こういった行動を反抗期と言うのですよね?律は、いけない子でしょうか?」

 

「とんでもない。中学3年生らしくて大いに結構です!」

 

こうしてE組に1人また仲間が出来た。これからは、この28人で殺せんせーを殺すんだ。




改めて説明しますが、門倉君は鈍感ではありません。
神崎さんに好意は抱いているのですが、神崎さんからの好意には確信を持てておらず、なにも出来ていない状況です。
そう考えて読んでもらえると助かります!
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