東方守護執事   作:結城勇気

11 / 19
 本当は昨日のこの時間投稿しようと思ってたんだけど……無理でしたw

 それでも最近は順調に投稿できているなぁ。これが続けてばいいんだけど……いつまで続くことやら。


 ではどうぞ!


第十一話「怖い先生が怒ると何故かそうでもないけど、優しい先生が怒ると凄く恐い」 Side 宗次朗

「今日は……きゅう、か、よ……ガクッ……」

 

 今朝起きたレミリアお嬢様の第一声がそれだった。

 

 昨日の紫ちゃんに攫われた僕を奪還するべく、スカーレット家(図書館組は除く)は八雲家襲撃を決行。紫ちゃんと全力全開の死合(ガチバトル)していたんだけど……あまりにも規模が大きくなりすぎて、霊夢ちゃんに気づかれて説得を受け(フルボッコ)、中断することとなった。

 

 その説得(フルボッコ)によって、レミリアお嬢様、フラン、美鈴(めいりん)、咲夜は今ベッドの中で唸っている。熱血指導(夢想封印)が芯まで効いたらしい。

 

 そんな彼女たちの世話を、当然僕がしようと思っていたのだけれど……僕だけでは彼女たちの世話+紅魔館での仕事諸々をこなすのはさすがに無茶があるだろうと、休暇を申し渡された。別に気にしなくてもいいのにね。

 

 という訳で。僕は今人里に向かっている最中だ。“仕事はするな”なんて命令されちゃ従わざるを得ないし。それに使う機会がほとんどないお小遣い(給料)を使ういい機会かもしれない。お土産なりなんなり買って帰ろう。

 

 それに……悩まざるを得ない事態に直面している訳だし、ゆっくりのんびり考えるのも良いかもしれない。

 

 霧の湖に入った。視界が白い(もや)に包まれ、先の景色が少し見えづらくなる。

 

「あっ! 宗次朗!」

 

 聞き覚えのある声が真横から聞こえてきた。

 

「今日はこっちにいたんだ、チルノ」

 

 隣には大ちゃんもいるが、どうやらもう一人いるらしい。

 

 肩まで伸ばされた髪に赤いリボンをつけ、ブラウスの上に黒いベストと、黒いスカートの、チルノ達と同じくらいの少女。彼女の事も、僕は知っていた。

 

「今日はルーミアもいるんだ。久しぶり」

「久しぶりそーじろー」

 

 ふわふわと飛んできたルーミアは、僕の腕に抱きついてきた。ふわりとしたいい匂いと、少女ながらの柔らかさが腕を通して伝わってくる。

 

 頬を紅潮させている大ちゃんの横で、チルノがあーっ!! とルーミアを指差しながら声を上げた。

 

「ルーミア何してるのよーっ!」

「んー? そーじろーの腕に抱きついてる」

「ズルいズルい! あたいも抱きつくーっ!!」

「ぶっ!?」

 

 ガッ、とチルノが抱きついてきた、否、突進してきたのは僕の顔だった。視界が真っ暗になると同時にひんやりとした冷たい冷気が襲う。が、僕の能力に阻まれて凍えるほどの物ではなくなっている。柔らかい太ももが首に当たり、足が背に回され、手は頭に抱きつくような体制になっている。抱きつく、っていうより抱え込んでいるような状態だ。

 

 ルーミアと同じように柔らかい感触が顔中に広がるけど、息がしづらい。いや、息が出来ないくらいじゃ死なない身体なんだけど。

 

「チルノ、前が見えないよ」

「うっさいわね、それくらい我慢しなさいよっ」

「後ろにまわってよ。お願いだからさ」

「むっ」

 

 チルノは数秒黙りこむと、ふ、ふんっ! と鼻を鳴らした。

 

「お願いならしょうがないわね! 姉貴分は弟分のお願いは聞いてあげなきゃいけないし!」

「そうそう。だからお願いするよ」

「分かったわよ、ほら、これでいいんでしょ!」

 

 チルノは僕の頭を抱え込みながらクルクルと器用に後ろに回りこむ。いわゆる肩車の状態になった。

 

「ありがとうチルノ」

「ふふん♪ もっと褒めなさい!」

「偉い偉い」

「あったりまえよ!」

 

 チルノちゃん……と大ちゃんは苦笑しながら、僕の右肩に乗ってきた。それを一瞥すると、僕は再び歩みを進めた。

 

「で、どこに行くの?」

 

 ルーミアが見上げながら言った。

「人里だよ。いろいろあって休暇がもらえたからね。使ってないお給料でも使っちゃおうかなって」

「そーなのかー」

「それに、最近会ってない人たちもいるしね」

 

 慧音ちゃんとか阿求ちゃんとか。あとは、薬を運んでいれば鈴仙(れいせん)にも会えるかもね。あぁ、時間があれば迷いの竹林にでも行ってみようか。輝夜と永琳にも会ってないし。

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

 霧の湖を抜けてしばらく歩いたところに、人里はあった。

 

 今はまだ昼前。でも人里の人々は活気にあふれていて、店を営んでいる人は元気に客寄せしているし、茶屋や食事処では若者がちらちらと見える。畑では数人の人々が作業しているし、今日は寺子屋(学校)が休みだからか、あちこちで子供たちが元気に騒ぎ遊んでいる。

 

「お! 宗次朗じゃねえか!」

 

 人里をのんびりと歩く僕らに声をかけたのは、いつも食材を買うのに立ち寄る八百屋のおじさんだった。彼の声にこちらを見た他の人たちが僕達に気づいて、魚屋のおばさんと肉屋のおじさんたちが近寄ってくる。

 

「はっは、久しぶりじゃないか」

「ひゅーっ、まさに両手に花って奴だねぇ。でも、浮気はあたしらが許さないよ?」

「冗談言わないでよ。浮気なんて、閻魔が説教しなくなるくらいあり得ないから」

 

 魚屋のおばさんと肉屋のおじさんは快活に笑う。

 

 魚屋のおばさんは笑みを崩さずに、

 

「今日は買いだしかい?」

「いや、今日は休暇なんだ。昨日いろいろあってね」

「あー、そういや博麗の嬢ちゃんが夜すっ飛んでくの見たなぁ」

「結構な爆音とかも響いてたけど、何があったんだい? 異変でも起きたのかね」

「そういう訳じゃないんだけどね……」

 

 事の次第を正直に話すべきかどうか少し迷ったけど、あれだけ大きな戦闘があればブン屋(射命丸)が気づかないわけがない。その内「文々。(ぶんぶんまる)新聞」にでも載るだろう。つまり隠しててもしょうがない。

 

 八百屋のおじさん達には簡単に昨日の事について話すことにした。

 

 説明を終えると、三人は突然爆笑しだした。

 

「はっはっは、賢者さんも随分大胆な手に出たもんだねェ!」

「んで? 休暇を良いことに人里に出て気晴らしながら、賢者さんの事に悩もうってか?」

「まぁ、そんなところかな」

 

 昨日の事だからか、それ以外に何かあるのかは分からないけど、今でも紫ちゃんの顔が脳裏に焼き付いている。どこまでも真剣で、それでいてどこか泣きそうな顔だった。そんな顔をさせているのが僕だと思うと、凄く自分自身に腹が立った。

 

『好きよ……クライス……』

 

 切なげな彼女の声が脳裏に響く。

 

 あれが友愛や家族愛ではないことくらいなら、鈍感と言われる僕でも分かる。

 

 彼女が「宗次朗」ではなく、「クライス」の名で呼ぶときは、それがどんな状況であれ冗談なんて一ミリもない時だけだ。遊び半分や日常でその名を呼ぶことを紫ちゃんは何故かしない。僕は好きな方で呼べばいい、って言ってるし、彼女が彼女なりに使い分けているなら別に構わない。

 

 ただ……彼女が「クライス」の名を冗談や遊びの時に使わないのが分かっているから、悩まざるを得ない。

 

「断る、ってこと自体は決めてるみたいだねぇ」

「そりゃフランがいるからね」

「それは正しい判断だろうさ。だから、アンタが悩んでるのは賢者さんが傷つくとかどうとかだろう?」

 

 その通りだ。

 

「ま、あの人は一回や二回断られたくらいじゃ、諦めそうにねェけどなぁ」

「優しすぎるのさ、アンタは。アンタがどれだけ頑張ったって、一から百まで守れるわけじゃないだろうに」

「……僕は我が儘(欲張り)だから」

「……ま、とにもかくにも。さらっと断っちまえば良いんじゃないか?」

 

 肉屋のおじさんは言う。

 

「俺は女子(おなご)じゃないから女心って奴はは分からんが、引きずるよかいいだろ」

「それに……あたしがアンタの話聞く限りじゃ、それは別に告白が目的じゃなさそうだねェ」

「え?」

 

 魚屋のおばさんはよく分からない事を言う。

 

 告白が目的じゃない? 確かに告白だけならあんな面倒な事をする必要はないとは思うけど……。

 

「その辺は自分で考えな。他人が教えることじゃないさね」

「はあ……」

「オラオラっ、せっかくの休暇なんだろ? んな辛気臭え顔してんじゃねえ!」

 

 バシバシ! と、僕の背中を叩いてくる八百屋のおじさん。頭に乗るチルノが小さく悲鳴を上げた。

 

「ちょっと! びっくりするじゃない!」

「はっは、悪ぃな氷精の嬢ちゃん! ほれ、お詫びに飴ちゃんやるから許してくれよ」

「ふ、ふん! そ、そういう事なら許してあげるわ! んぐんぐ」

 

 大ちゃんの苦笑を浴びながら、チルノは美味しそうに飴をなめる。いや、まぁ見えないんだけど。

 

「おっと、そろそろ戻らねえと。買い出しん時はよろしく頼むぜぇ!」

「あたしらも戻るかねェ。んじゃ、また今度ね!」

「じゃな」

 

 三人は小走りで自分の店に戻っていく。

 

「んーっ、アメおいひー」

「よかったねチルノちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 人里をのんびり歩いていると、道中に立っている一本の木に目が留まった。

 

 別にその木が珍しい木だとか、思い出のある木だとか、いわくつきの木だとか、別にそんな理由があるわけじゃない。目が留まった、とは言ったけど、正確にはその木の一本の太い枝の上。

 

 そこには一人の女性がくかーっ、と寝息を立てながら寝ていた。

 

 赤い髪の女性だった。着ている服は人里の人たちが着ているものとは違う。官職の人間が着ていそうな服とでも言おうか。それなりにいい服を着ている。ただし若干着崩されていて、発育のいいその胸の谷間が誇張されている。さらに目を引くのは、彼女の寝ている枝の付け根辺りに立てかけられている大鎌。まるで死神の――否。死神そのものだ。

 

 彼女、小野塚小町は、いつも通り仕事をサボって寝ているようだった。

 

「あ、死神」

 

 ルーミアが指差す。

 

「小町ちゃん、小町ちゃん」

 

 下から声をかけてみるけど、むにゃむにゃ、と気持ちよさそうに昼寝を続行する小町ちゃん。

 

 僕はその辺から適当な木の棒を拾うと、つんつんと突いて再び声をかける。

 

「小町ちゃん、小町ちゃん」

「ん、んー?」

 

 うっすらと(まぶた)を開いた。ゆっくりとこっちへと視線を向ける。

 

「……お? おー、宗次朗じゃないか。久しぶりだねぇ」

「久しぶり。相変わらずサボってるんだね」

 

 と、チルノが急にビッ、と小町ちゃんを指差した。

 

「あぁ! 思い出した! アンタ、いっつもあのうっさい女と一緒にいる奴!」

「あらら、随分と楽しそうな状況だねぇ。あたしも混ざっていいかい?」

「浮気してるとか噂が立つのは嫌だから勘弁してほしいな」

「はっはっは! それもそうだ!」

 

 笑いながら鎌を手にして枝の上から降りてくる。

 

「いやはや、しかし久しぶりだねぇ。数年ぶり?」

「そんなとこかな。どうも人里には来てたみたいだけど、僕がいる時にはなかなか合わなかったみたいだね」

 

 よく「また死神が閻魔に説教されている」という話は聞いていたんだけど、どうもいっつもすれ違いというか、連れて行かれたちょっと後にいつも僕が来ていたみたいだ。それが数年。偶然なのか必然なのか。下手すればあの副首領(水銀の蛇)のせいか。いや、そこまでヒマでもないか。

 

 小町ちゃんは大きな欠伸を一つして、涙目で首をコキコキと鳴らす。

 

「ふぁぁ……しかしよく寝たなぁ。珍しく映姫様も来なかったし」

「あぁ……大変だね、あんなバカ閻魔の部下だと」

「ははは……相変わらずみたいだねぇ」

 

 小町ちゃんが苦笑いした。

 

 まぁ、小町ちゃんの気持ちも分からないでもないけど。今更彼女に対する評価が変わるはずもない。

 

「まぁ、正直あそこまで嫌悪する相手も珍しいんだけどね。アレは特別だよ――君も同じだろう? バカ閻魔」

「え?」

 

 たらり、と小町ちゃんの頬を汗が一筋垂れた。

 

 

 

 

 

「えぇ。私も同じです。あなたはある種の特別な存在ですよ、九重宗次朗」

 

 

 

 

 

 凛とした声が背後から聞こえた。それは僕がこの幻想郷で五本の指に入るほど聞きたくない声だ。

 

 頭の上のチルノと、肩の上の大ちゃんが震えだすのが分かった。僕はそれを無視して振り返る。

 

 緑髪の女性がいた。

 

 身長は小町ちゃんより少し低いくらい。見るからに上位の職に就いてることが分かる服装をしており、その手には棒を一本ぶら下げている。

 

 四季映姫・ヤマザナドゥ。四季映姫が名前で、ヤマザナドゥは役職名らしい。すわなち閻魔の。

 

「またサボっている小町を探していれば……まさかあなたに会うとは思いもよりませんでした」

「僕としては会いたくなかったよ。女性がゴキブリに出会いたくないのと同じさ」

「なるほど、あなたにとって私はゴキブリと等価値という訳ですか」

「いや、それ以下だね。僕にとって愛しきモノ(家族・友人・仲間)以外は路傍の小石にも劣る」

「……なるほど」

 

 スっ、と映姫が目を細めて睨みつけてくる。

 

 ……彼女とは出会ったころからこんな感じだ。

 

 彼女は閻魔。死者の裁判官。地獄にある裁判所で、三途の川を渡ってきた死者を(さば)く存在。故に僕の存在が許せないらしい。

 

 僕が、いや、僕と僕の同僚である聖槍十三騎士団。僕たちは聖遺物と言われる特殊なマジックアイテムを、永劫破壊(エイヴィヒカイト)という魔術をもって扱う。

 

 聖遺物とは、キリスト教における聖人の遺物の事じゃあなくって、人々から膨大な想念を浴びて力を持った物を示す。そしてこれを扱うための魔術たる永劫破壊は、その使用や発動に人の魂を必要とする。

 

 この術は術者に対し慢性的な殺人衝動を起こす代わりに、己が聖遺物を破壊されない限りは不死でいられる。更に肉体を損傷、例え欠損したとしても、魂を糧に瞬時に再生できる。

 

 その肝心の魂。それは術者が人を殺して殺して殺しまくった数だけ、聖遺物により回収される(喰われる)。それによって僕らは人外レベルの身体能力と防御能力を持つことが出来るし、量と質によってはフランでさえ壊せなくなるくらいの物になるかもしれない。

 

 まぁ、その辺はどうでもいいんだ。

 

 彼女はその僕の力(永劫破壊)が気に食わないらしい。最初の第一声が、「あなたの中にある魂を解放しなさい」だったから。

 

 当然、そんなことする気はないし命令されるいわれもない。

 

 その時から、僕と彼女のこの関係は確定された。今後変わる予定もないし変えるつもりもない。僕がそのために行動するなんてあり得ない。彼女がそうするならまだしも。

 

「いい加減、その魂たちを解放する気になりましたか?」

 

 またそれか。

 

「何十回、何百回、何千回言えば分かるのかな。そんな気はないよ。第一そんなことしたら死んじゃうし」

 

 いや、魂を解放、なんてこと誰もしたことないから実際死ぬのかは分からない。でも、聖遺物を壊されれば僕らが死んでしまうように、魂を解放なんてすればどうなるか考えると……死ぬくらいしか僕には思いつかない。

 

 第一、解放の仕方自体わからないし。

 

「彼らが輪廻転生に戻るのならば、それも必要な犠牲でしょう」

「ほんとに一つ覚えだな君は。芸がない」

「それはお互い様でしょう」

「生憎だけど、永劫破壊を扱えるからには僕は一応超人なんだ。一つ覚えなんて劣等種にしか出来ないこと僕には出来ないな」

「……それは私に対する侮辱ですか?」

「さぁ、どうだろうね。君が自分を劣等だと思うならそうなんじゃないのかな」

 

 刺し貫かんと睨みつけてくる映姫を僕は見返す。

 

 怒り? 憎しみ? 憎悪? そんなものは感じない。感じる価値もない。必要もない。彼女は僕にとってその程度の価値でしかない。苦しんで死ねばいい、とは思ったことくらい数多あるけど、それはそれらの感情からくるものじゃない。少なくとも僕はそう思っている。

 

 僕が怒りや憎しみを向けるとすれば、それは僕の愛する人々を傷つける輩だけ。そいつらだけだ。

 

 だが。

 

「いい加減理解しなさい九重宗次朗。あなたがそうしていればそうしているだけ、周りの罪も重くなるという事を」

「……何?」

 

 言葉が冷たくなるのを感じた。

 

「いつもいつも、あなたの周りの女性たちはあなたを(かば)います。そんなくだらないことで宗次朗を殺すな、と。魂の輪廻を乱すあなたを庇う――それがどれほどの罪になるか、あなたは理解していますか?」

「…………」

「あなたが愛するという彼ら、彼女たちの罪、あなたが倍増していると気づきなさい。裁かれれば、下手すれば地獄行きの可能性も――」

 

 瞬間。

 

 ガッ! と、僕の手は映姫の首をつかんでいた。

 

「カハッ!?」

「そんな事して見ろ閻魔風情が――魂の一片まで殺し尽くすぞ」

「お、おい宗次朗!?」

 

 今まで黙っていた小町ちゃんが声を上げた。

 

「お、お前! そんなことしたらますます――」

「ごめん小町ちゃん。今――キレてるんだ」

「ッ!」

 

 抱きついていたルーミアとチルノ、肩に乗っていた大ちゃんが思わず離れた。自分でも抑えられないほどに殺気立っていることに今更ながらに気づかされる。

 

「あ、なたは……!」

「こんなことをしてどうなるか、って言うんだろう? 分かってるよ」

 

 グッ、と彼女の身体を持ちあげる。

 

「どうにもならないさ。僕は君如きどうでもいいからね、今ここで(くび)り殺しても僕は全く構わないくらいだ」

「……ッ!」

 

 そう、本当にどうでもいいんだ。

 

 彼女は愛しきモノ(守りたい人たち)には入ってない。入る予定も今はない。だからここで殺しても僕は何も思わないしそれでもいいと思っている。

 

 閻魔? だからどうした。みんなの言う(偽物の)神様なんていくらでもいる。代わりの閻魔くらい来るかもしれない。来なくても僕は別にいい。溢れ出した魂がみんなに危害を加えるならいくらでも喰らえばいい。ただそれが面倒だから生かしているだけだ。

 

 生かされていることにも気づかず、ただただバカみたいに魂を解放しろ解放しろとうるさくするのも飽き足らず、それどころか僕の家族にすら手を出すなら――。

 

 ジャキッ、と僕の首に鋼色の刃が付きつけられた。

 

「……宗次朗、そこまでにしといてくれよ。さすがにそれ以上やられちゃ、あたしだって出しゃばらざるを得ないよ」

「…………」

 

 小町ちゃんの声は震えていた。彼女ですらそうならば、僕が思っている以上に(にじ)み出ている殺気は濃厚なのかもしれない。

 

 それでも僕に刃を突きつける。きっと彼女にとってこの閻魔は愛しきモノ(大事な人)なんだろう。だから命を懸けて守ろうとする。僕が相手なのに。

 

 ――自惚れかもしれないけど、彼女はもしかしたらこうしても僕が“敵”だと認識しない、そう信じてくれているのかもしれない。

 

 ……………………仕方ない。

 

 パっ、と手を放すと、苦しげな顔のまま映姫の身体は地に崩れ落ちた。

 

「ゲホッ! ぅぁ……ぅぇゲホッ……!」

「映姫様、大丈夫ですか?」

「え、えぇ……」

 

 未だ咳きこみながら、映姫は小町ちゃんに支えられて立ち上がる。

 

「……今日は帰ることをお勧めするよ。悪いけど、今君と相対していて、次も見逃そうなんて思えない。小町ちゃんを傷つけてでも殺しにかかる自信がある」

「……えぇ、今日はそうさせて、もらいましょう……ですが――」

 

 そこで口を閉じた。彼女はそのまま「…………いえ、なんでもありません」と言い残して、小町ちゃんに連れられて行った。途中で小町ちゃんは振り返って小さく「ありがとう」と呟いていた。

 

「そ、宗次朗……?」

 

 背後から恐る恐ると言った感じで、チルノが声をかけてきた。

 

 振り返って笑みを浮かべる。多分かなりぎこちない笑い顔だった。

 

「……ごめん、チルノ、大ちゃん、ルーミア。怖がらせちゃったね」

「う、ううん。あ、あたい別に怖がってなんか……」

「わ、私もそんな……」

「震えながら言われても説得力無いよ」

 

 ぎゅっ、とチルノと大ちゃんを抱きしめる。身体が小さく震えているのが分かった。

 

「ごめん……」

「い、いいって宗次朗! あ、あたいは大丈夫! あたい難しい話はよく分かんなかったけど……悪いのはあのうるさい女だから!」

 

 チルノは無理矢理笑って見せてくれる。大ちゃんもルーミアも同じように。

 

「……じゃあ、これは自己満足のお詫びってことで。お昼ごちそうするよ」

「え、でも……ご迷惑では……」

「そんなことないよ。それに今日はお小遣い(給料)を使いに来たんだしさ」

「じゃあ、あたいかき氷!」

「チルノ、今の季節にかき氷はないわ」

「えーっ!?」

 

 三人を連れて、食事処の集まる場所へと歩いていく。

 

 どこに入るかを決めた頃には、もうさっきの“怒り”は消え失せていた。

 

 

 

 

 




 ひっじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおに申し訳ないッ!!


 べ、別に映姫様が嫌いなわけじゃないんです! むしろ大好きな方です!

 でもでも、聖遺物の使い手は魂を喰らう(正確には聖遺物が回収してるみたいですが)ってことを考えると……やっぱり閻魔様たる映姫様とは関係が良好とはいかないんじゃないかなー、って思って!

 ごめんなさい! ほんっとーにごめんなさい! 世界中の映姫様ファンの方々ごめんなさい!



 別に映姫様アンチとか、そういうつもりはないんですけど……でもやっぱり聖遺物使い達にいい印象は抱かないんじゃないかなって、思っちゃうんですよね……そしたらこんな事に……。


 これって、私は別にアンチとかそういうつもりはないんですけど、アンチタグつけたりした方がいいんでしょうか。

 多分これからも宗次朗は映姫さま嫌いでしょうし、映姫様もまた然りでしょうし……。うーむ。


 あ、ちなみに映姫様の描写を見てもらえばわかる通り、幼女なえーきさまではありません。そっちもいいかな、とは思ったんですけど……やっぱ大人版かな、って。宗次朗とケンカするんだし。



 では、また次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。