東方守護執事   作:結城勇気

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 頭痛い……。

 なんか最近バトルシーンというか、バトル系の物語書きたくなってきた。きっとDies irae今やってるからだな。

 この前香純ルート終わって、今は螢ルート。細かい話はネタバレ対策的にしないけど、簡単に言えばようやく練炭が創造使ったあたりだね。

 いやー、ホントやってるとテンションあがってくるわ。きっと男女関係ないね、Dies iraeは。


 あぁ、てかすごいどうでもいいなこんなこと。


 では、どうぞ!




第十四話「ハーレムなんて夢物語は創作物だけで十分」 Side 宗次朗

 迷いの竹林を抜けると、急な明るさが目を襲った。普通なら目が眩むのかもしれないけど、そんなこともなく、人里の入り口を捉える。

 

 時刻は……そろそろおやつの時間、ってところか。のんびり抜けてきたから思ったより時間かかったかな。でもまぁ、その分久々に鈴仙とも話せたし。無駄な時間ではなかったよ。

 

 入り口を通ると、未だに活気あふれる人々が。夕飯の買い出しに出ているらしい奥さんやら、未だ遊ぶ子供たちやら。

 

 それを見るでもなく、鈴仙はくいっ、と僕の裾を引っ張る。

 

「じゃあ、あの。私、帰りますね?」

「あぁ、ちょっと待って」

 

 どうも帰るらしい、ってまぁ、それは永遠亭の家事手伝いしてる辺り当たり前なんだけど。僕はそれを引き留める。

 

「時間取らせないからさ、ちょっとだけ付き合ってくれないかな」

「えと、それは構いませんけど……」

 

 ありがとう、と礼を返すと、鈴仙の手を取って歩き出す。

 

「あ……っ」

 

 向かうはいわゆる商店街。いや、街ってほどの規模じゃないけど、いろいろな店があるっていう意味では間違ってないと思う。

 

 とりあえず、夕飯の時間も間近ということで奥さんだらけだ。魚屋さんや肉屋さん、八百屋さんは張り切って声を張り上げている。世間話や、値切り勝負を繰り広げている店主さんと奥さんも所々に。

 

 かといって、別に食品関係の店しかないわけではなく。茶屋や鍛冶屋、散髪屋、などなどなど。まぁとにかく結構いろいろな店がある。

 

 その中で僕が向かったのは――甘味処。

 

「あ、宗次朗さん。いらっしゃい」

 

 出迎えてくれたのは、ここの娘さん。いわゆる看板娘って奴。彼女目当てで来る男客がいるくらいには美人だ。

 

 まぁもう婚約者はいるらしいんだけどね。政略じゃなくて純粋な婚約だから、みんなに祝福されて幸せ真っ最中。先日僕も祝いの言葉を送らせてもらったしね。

 

「お土産、いつも買ってるので」

「包みます?」

「お願いするよ」

 

 そこそこ行きつけっぽくなっているここは、数少ない(らしい)お持ち帰り可能な場所だ。プレゼントやらお土産やらなら、包んでもらう事も出来る。味だってもちろんいい。

 

「お土産……?」

 

 隣で鈴仙が首を傾げた。

 

「そういえば持って行ってなかったなって思ってさ」

「そ、そんな……お気になさらずとも――」

「ただの自己満足だよ。だから……あれだ、買い物に付き合わされた報酬とかって思ってくれればいいよ」

 

 何やら鈴仙はいろいろと思い悩んでたみたいだけど、数秒して、仕方ないですね、と苦笑気味に言った。これ以上やってても無限ループだろう、と思って納得はしてくれたみたいだ。

 

 視線を正面に戻すと、娘さんが(きびす)を返して店内に入っていくところだった。

 

 と、ひょっこり顔を出すと、

 

「そうだ、お友達来てますよ。中ですけど」

 

 友達? 誰だろ。

 

 再び中に入っていく娘さんについていくように、店内に入る。鈴仙も続いた。

 

 ――あぁ、あれか。

 

 なるほど分かりやすい。あんな格好してるのは何人もいないし。

 

 見た先、奥の隅に座っていたのは二人の女の子。

 

 一人は、まさしく典型的な魔法使いの格好をした子。白の大きなリボンのついた、フリル付の大きな魔法使いの帽子をかぶり、白黒の魔法使いファッション。帽子の中から零れる、ウェーブのかかった滑らかな金髪。

 

 もう片方は……簡単に言って肩出し巫女。少なくとも外では見たことのない肩を露出した巫女服を着た巫女さんだ。自称楽園の素敵な巫女、通称は……(わき)巫女やら紅白やらとまぁ、いろいろある。あぁ、貧乏巫女ってのもあったか。

 

 霧雨魔理沙と博麗霊夢。先日図書館を襲撃(どろぼう)しに来た普通の魔法使いと、昨日紫ちゃんとフランたちを喧嘩両成敗にした博麗の巫女だ。

 

 二人は団子と饅頭(まんじゅう)食べながらお茶を飲んでいる。

 お金のない霊夢は普段ならここで何か食べれるほどの経済的余裕などないはずだ。まぁそれは基本的にはって話。多分、昨日僕がお詫びにあげたお金を使ってるんだろう。無駄遣いしなければ二か月くらい普通に生活できる分はあったし。

 

 僕に気づいたのは、僕が視界に入る方に座った霊夢だった。

 

「んむ? ほうひろうひゃない」

「あ? 何言ってるかわかんないぜ。飲み込んでから喋れよ」

「うるふぁいわねぇ……」

 

 むぐむぐ、ごくん。口内にあった団子か饅頭を飲み込み、お茶を一口。

 

「ほら、宗次朗よ」

 

 え? と振り返る魔理沙は、僕達を視界に捉えると笑顔で立ち上がる。

 

「あ、ホントだ。おーいっ、こっち来いよーっ」

 

 わざわざ立ち上がって笑顔で手を振る。当然、周りに座っているカップルやら友人の集まりやらの注意を引く。が、僕らの事を認識すると、あぁなんだ、と再び自分たちの世界に戻っていく。

 

 苦笑しながら二人の席に近寄ると、霊夢が魔理沙の肩を掴んで座らせた。

 

「アンタねぇ……無意味に周りの目引いてんじゃないわよ」

「なんだ霊夢。お前周りの目とか気にする奴だっけ?」

「確かに、気にはしないわ。鬱陶(うっとう)しがりはするけど」

 

 言ってお茶を一口。目線は僕らの方へ向け、隣の空いている席を顎で指す。座れば? という事なんだろう。それを持ち帰りだから、と断る。

 

 あっそう、と素っ気なく言う霊夢は、今度は僕と鈴仙に交互に視線をやり、どういう勘をしているのか想像力を持っているのか、事情を察したらしく、律義ねぇ、と呟いた。

 

「あっちにこっちに気配りして。よく疲れないわね」

「そんなに浮気性かなぁ」

「そうね。アンタほどの愛しきモノ(身内)びいきも見ないわ。やっぱ頭のどっかおかしいのね」

「はは、酷いなぁ」

 

 霊夢の言葉にムッとする鈴仙を僕達はあえて無視した。

 

「でも……そうだね。自分が異常だって自覚はあるよ」

 

 第一、エイヴィヒカイトの第三位階である創造に至っている時点で大抵は異常な奴だろう。あれは常識、つまるところ『こんなことあり得ない』なんて思ってたら至れないわけだし。

 

 ていうかまず黒円卓に正常な人間が数人しかいないしね。リザやシュピーネ、あとはテレジアくらいか。そういえば元気にやってるのかな、あの子は。時間の流れがこっちと一緒だったら、場合によってはいないかもしれないけど。

 

 一見正常っぽく見えるルサルカだって、結構アレだし。

 

「まあそんなことはどうでもいいわね」

 

 自分から振っておいてサラッと切って捨てる辺り霊夢らしいのかな。

 

「あ、そうそう」

 

 唐突に魔理沙が何か思い出したように口を挟んだ。

 

「宗次朗、お前紫に誘拐されたんだって?」

 

 え、なんで知ってるの、なんて言わない。八百屋のおじさん達が知ってるんだからそりゃ知ってるだろう。ていうか前も言ったけど新聞になってるわけだし。

 

「そういえば……大丈夫だったんですか――って、聞くまでもないですよね」

 

 鈴仙、レーザー銃も効かないような人だし……って言うけどね。僕は味方とか身内には勝率半分以下だからね? 特に人外相手だと。

 

「結局何されたんだよ。(あや)の新聞には『とうとう(性的に)食べられてしまったのでしょうかっ!?』なーんて、当てにもならない事しか書いてなかったぜ」

 

 さすがに紫ちゃんもそこまでしないだろう、と思っていたらしい。けど……、実際食べられかけていた僕としては笑えない。

 

 まさか彼女の新聞にそんなことが書かれていたとは……。

 

 未遂だったとはいえあながち間違いじゃないが故に、一瞬答えに詰まってしまったのが悪かった。魔理沙の頬がほんのり赤くなった。

 

「え、ま、まさか……ホントに喰われたのか? ほ、ほんとに……エ、エエ……チ……したのか?」

 

 年頃故か、かなり興味津々らしいけど正直勘弁してほしい。周りの目とかそういうんじゃなくって、純粋に恥ずかしいから。

 

 と、本人にその気があるのかないのか読みづらいけど、助け船を出してくれたのは霊夢だった。

 

「……魔理沙、そういうのは聞いてあげないのが大人よ。第一、そこまで行ってたならこいつは全裸だったはずよ。まぁ、若干はだけてたけど……」

「な、なんだ未遂かぁ。つまら、ゴホン、危なかったなぁ宗次朗」

 

 とりあえず本音が出かけた辺りはスルーしてあげよう。ほら、大人だからね。

 

「宗次朗さん、お待たせしましたー」

 

 会話の一区切りを見計らったかのようにいいタイミングで、娘さんが紙袋を持ってカウンター前に立っていた。

 

「じゃあ、二人とも。またね」

「おう」

「次はお賽銭を持ってきなさい」

 

 昨日あげた分じゃ足りんと申すか。

 

 苦笑いする僕の隣で鈴仙は一礼し、僕に続く。

 

 勝ったお土産、『究極“ド饅頭”』を手にぶら下げ、僕たちは甘味処を後にした。

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

 門の前で鈴仙を見送り、なんだかんだでもう四時ごろ。

 

 さすがに遊ぶ子供たちの姿も少なく、いや、もはやいなくなり帰り始めている。買い物を終えたのか、奥様方もせいぜい奥様同士で世間話している程度。

 

 そろそろ帰ろうか。僕もそろそろ夕飯の準備をするべきだろう。さすがに知り合いや友人全部に会うなんて出来なかったけど、まぁまた機会はあるだろうし。

 

 紅魔館へ続く森方面の門をくぐる。まだ霧の湖も越えてないあたりだ。時間的余裕はあるし、焦る必要もないけれど、時間に間に合うかと思うと心の隅に焦燥感が生まれる。夕飯の準備も仕事だ、と言われて怒られる可能性もあるけど、その辺はまぁ、あまり心配してない。むしろ咲夜が無理して料理して倒れる方が心配だ。

 

 食材はまだ数日分残っていたから買ってこなかった。だから頭の中でなんとなく覚えている食材から、メニューを構築していく。特に要望もない、っていうか聞いてないから洋食でいいだろう。精をつけるというか、肉を食べてどうとか、っていうのが吸血鬼に通用するかはともかく、精神的には力が付くかもしれない。肉を食べて戦意を保つ、なんて話もどこかで聞いたことがあるし。じゃあステーキがいいかな。

 

 何かマンガ肉とかあったけど、さすがにあれを今出したら食べづらいかもしれないな。ステーキ以外はどうしようか。まぁサラダは確定だろう。ステーキだけじゃ体に悪い。肉に対して若干味の濃いしたサラダ、つまりはマカロニサラダとかだけど、そういうのじゃなくってあっさりした方がいいかな。レタスとかトマトとか定番なものがあったしその辺で――。

 

 適度にバランスを素人目線で考えて、所々適当な辺りプロではないな、とは思いつつもそんなことを考えていた僕は、フッと現れた気配に一瞬の遅れもなく気づいた。が、手を出したりはしない。よく接している魂だ。間違えもしない。

 

 彼女はするりと僕の腰に手を回して抱きついてきた。豊満な胸が押し当てられる。当然僕は歩みを止めていた。

 

「……紫ちゃん」

 

 妖怪の賢者、八雲紫。昨日拉致拘束その他諸々を働いた幻想郷のトップ。

 

 辺りに他の気配はない。聖遺物の使い手はあらゆる身体能力や感覚を強化されているため、その辺は抜かりないだろう。

 

「ねぇ、宗次朗」

 

 挨拶もなく紫ちゃんは唐突に口を開いた。彼女の顔は背後にあって分からないが、どことなく声が震えている感じがした。

 

「分かりきってるけど――答え、聴きに来たわ」

 

 あぁ、それはつまり告白の返答はどうなのよ、ってことだろう。予想は出来ていた。いや、彼女が今僕の目の前に現れる理由はそれ以外にない。

 

 答えたくない――僕の本音はそれだった。

 

 僕が最も嫌悪するのは、愛しきモノが傷つくことだ。矛盾した話、ドランの時は別にそういった感情は抱かなかったけど、あれは彼が納得した上でのものだ。前も言った通りそこに僕の感情を挟むのは道理じゃない。

 

 つまるところ……そういった類以外での事。

 

 唐突に襲撃してきた奴に友人が傷つけられるのは許せない。

 

 くだらない理由で家族を傷つける奴は許せない。

 

 そういった感情はなるほど、大抵みんな持っているものだろう。だけど僕のそれは異常の域にまで達した“狂愛”。

 

 破壊でしか愛することが出来ない僕の友人と同じように、周りよりもイかれた愛情。それが僕の持ち合わせるモノ。

 

「宗次朗……答えて」

 

 あぁ、それなのに君は答えさせようとするのか。

 

 なるほど。きっといわゆるハーレムを知らず築いていて、それに気づいた主人公の気持ちっていのはこういうのなんだろうな。誰も傷づけたくない。だから選べない。そんな在り来たりな主人公。

 

 よく分かるよ主人公。傷つけたくなんてない。愛する人々を傷つけたい奴なんてほとんどいないだろうさ。

 

 でも僕は……。

 

 

 

 

 

「ごめん、君の思いには――答えられない」

 

 

 

 

 

 答えなければならないだろう。

 

 彼女が涙を呑んで、情けない僕のために来てくれたんだ。ならばその思いに応えるのが、僕にできる唯一の事。

 

「――そう。でしょうね」

「二度は謝らないよ。僕にはフランを選んだんだ。だから君を一人の女性として愛することは出来ない」

「えぇ、知ってるわ。でもね、諦めきれないものなのよ」

 

 なるほどそれはそうだろう。簡単に諦められるのならそれは恋じゃない。愛ですらない。ただの一時の気の迷い。勘違いでしかない。

 

「ふふ……あなたは優しいから、私を、私たちを傷つけまいと甘い答えを出してくれるんじゃないかって……心のどこかで期待していたのかしら。思ったより傷が深いわ」

「…………」

「ねぇ……どうして言えたの? あなたは愛する人を傷つけることを狂気的に嫌う人でしょう」

 

 それはさっきの通りだ。それ以外に理由なんてない。

 

 いや――もう一つあったか。

 

「教えてほしい?」

「えぇ、ぜひとも知りたいわ」

 

 思わず笑みが零れる。それは苦笑とも微笑とも自分では把握できない物だったけれど、府の感情から来るものではないと理解できていた。

 

「だってさ――」

 

 そうだ。何故ならそれは、自分が言うのも矛盾しててバカバカしい理由(もの)

 

 

 

 

 

 

 

「――たった一人の女の子を選べない(愛せない)男は、死んでいいだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 ハーレム? バカバカしい。そんなものは創作物の中だけで収まっていればいい。現実はマンガやアニメみたいにご都合主義じゃ出来てない。

 

 そりゃ、バカみたいに女の子にモテる男とか、絶世の美少女とか、そういうのは実際にあり得るかもしれない。でもハーレムはダメだ。あり得ない。薄っぺらいだろうそんな“愛”は。みんなをみんな想える恋愛なんて、そんなのは恋じゃない。“愛”だなんて認めない。そんなのが認められるのは友愛や家族愛まで。それ以上はダメだ。

 

 自分を好いてくれる女の子全てを幸せに出来る主人公――ああ確かにすばらしいと思うよ。理想だと思う。それでも僕は否定しよう。そんな“愛”認めないと。

 

 恋は一人の男と一人の女、否、一人の相手と相手で行われるべきだと思うから。

 

 恋愛だけは、ただ一人に向けられるべきものだと思うから。

 

 紫ちゃんはクスリと笑うと、

 

「そうね、確かにその通りだわ。ハーレムなんて夢物語、創作物の中だけでいい。ただ一人に対する愛と独占欲があってこそ成立するのが恋愛。私もそう思うわ」

「何か説得力あるね」

「ハーレムにさせようとしてた私が言う事じゃないけどね」

 

 なんだそりゃ。それじゃまるで藍や橙まで僕の事――あぁ、まさかね。さすがにそんな主人公みたいなことないだろう。ない、よね?

 

「気づいてないのはあなたの落ち度よクライス。認めなさい」

 

 僕の心情を読んだのか、紫ちゃんは僕の肩に自分の顔を預けながら言った。

 

 あぁマジか。マジなんだ。そうか……今度直々に答えを出しに行くべきか。

 

「いいわよ別に。私が代表なんだから」

 

 またも僕の心を読んだみたいなセリフ。

 

「あ、あと封印した能力の一部は戻す気ないから」

「ちょっ」

 

 待て待て。なんで? なんでそういう事になる。僕は紫ちゃんの想いには応えられないって言ったよね?

 

 そういう関係にはなれないって言ったよね? だったら別に戻しても良いんじゃないかなーって思うんだけど。

 

 紫ちゃんは僕の顔の横で悪い笑みを浮かべた。

 

「言ったでしょう、諦めきれないものだって。私は一言も諦めるなんて言ってないわよ?」

 

 フッと肩に感じる紫ちゃんの顔の感覚が消えたかと思うと、いつの間にか僕の目の前に彼女がいて――キスされた。

 

 ディープなものじゃないにしてもかなり深い。触れるだけとかそういうのじゃなくって、思い切り押し付けてくるキスだ。柔らかい唇の感触を否応なく感じさせられる。

 

「諦めないわよ私は。当然藍も橙も。あなたの選ぶ『ただ一人の女の子』の座を奪い取るために全身全霊をかけてやるんだから」

 

 そんなことを言う紫ちゃんは、笑っていた。フラれた女の子のように涙なんて一滴も流さず、妖艶に、美しく、笑みを浮かべていた。一瞬ドキンとしてしまった僕は悪くないと思う。この笑顔は反則だ。

 

「見てなさいよ宗次朗。あなたの恋人の座を、フランドールから奪い取ってやるから」

 

 言ってふわりと、彼女は消えた。

 

 ……なんというか。女の子って怖いなぁ。

 

 恐怖とかそういう怖いんじゃなくって、なんていうか、男なんかよりもずっと強い。強くて強くて強すぎて怖い。僕なんか余裕で踏み潰されてしまいそうだ。

 

 まったく。まったく本当に。

 

「敵わないなぁ」

 

 肌に触れる風を受けながら、僕は再び帰路についた。

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

「いろんな女の子の匂いがする」

 

 月がボウっと輝く深夜。

 

 夕飯を食べ、風呂に入って歯を磨いて――布団に入ってのフランの第一声はそれだった。

 

「えーっと……?」

 

 僕の腕の中にいるフランは明らかに不機嫌そうだった。

 

 一日休んで調子も大分戻ったらしいフランは、若干妖力を漏らしながら僕にその真紅の目を向けた。

 

 その瞳は――どういう訳か光が消えていた。

 

「三人、いや、五人以上の女の子の匂い……ついでに妖怪の賢者の匂いまで。宗次朗、今日は何してきたの?」

「いや、あの……フラン、なんか怒ってる?」

「な に し て き た の ?」

「ひ、人里に行ってきました!」

 

 な、なんだ? なんかすっごい怒ってるぞ! こ、恐いっ!

 

「で?」

「で、って……?」

「誰とどうしてどうしてきたの?」

「えと、チルノと大ちゃん、あとルーミアとお昼食べたり……」

 

 ギリッ、と僕の背に回された手が爪を立てて掴んできた。フラン相手故にほとんど霊的装甲が意味を成してないためか、若干痛い。

 

「あと、永遠亭に行って永琳たちに会いに行ったり……」

 

 ガリガリッ、とフランの爪が僕の背中に食い込んでいった。痛い痛い痛い。若干血出てるから。いや、マジで痛いから!

 

「あ、ああ、あと、永遠亭にお土産買う時、霊夢と魔理沙にも会った、かな……?」

 

 痛い痛い痛い痛い!! え、抉れてる! 抉れてるから!!

 

「か、かか、帰り道、紫ちゃんに会って……」

「会って?」

「こ、告白の返事を聞かれました……」

 

 唐突にすっ、と背中を掴んでた手から力が抜けた。

 

「……なんて答えたの?」

「え、そりゃあもちろんごめん、って」

「断ったの?」

「当然だよ。さすがの紫ちゃんでも、恋してるって好きには応えられないよ。僕の恋人はフランだけだからね」

 

 我ながらくさい、いや、ベタっていうか王道っていうか、陳腐に言ってしまえばつまらないセリフだと思う。でもカールも言ってた通り、究極になればなるほど言葉は陳腐になるものだろう。これくらいしか言えない、ってのもあるけど。

 

 フランは背に回した手を今度は肩に置き、小さくキスしてきた。

 

「そっか。そうだよね……」

「心配でもした?」

「心配はしてないよ。嫉妬はしたけど」

「独占欲の強いお姫様だ」

「そうだよ? 私は独占欲の塊だもん。だから――」

 

 僕の左肩を押して、横になっていた僕の身体を仰向けに倒す。その上にフランが(またが)るような形で乗っかってきた。

 

「宗次朗は私の恋人(もの)だって、刻み込み続けちゃうんだから」

 

 ――あぁ、そういえば明日で。正確に言えば今日で新しい月の初めだったか。

 

 ならレミリアお嬢様の決めた事の回数はリセットされるわけだ。

 

「それは怖い。これ以上があるのかい?」

「まだ足りないくらいだよ。だからもっと刻み込むの。私の身体も、匂いも、感触も、心も、何もかも」

 

 ぼんやり光る彼女の瞳は、僕の目にはとてつもなく妖しく、扇情的に映った。

 

「ふふ……今回はどうしようかな。口がいい? それとも指? あぁ、新しい方向でも邂逅していこうか」

 

 悪巧みを考えるような顔をしながら笑う。

 

 今夜はまた大変そうだな、呑気にそんなことを想いながら、とりあえず彼女の背に手を回してキスしておいた。

 

 

 

 




 ヤバいなー。最近マジでマンネリ化しそうだ。

 どうにかせねば。

 てかクリスマスの話もお正月の話もしてないね。今更する気もないけど。だって何も思いつかないもの。

 まぁそれはともかく。急に外伝、とかしたってあれでしょ。そういうのは物語が一段落してからするものだと思うし。故、私のは全くひと段落してないからできないのである。


 次はいつになるのかな……予告したところで守れるとは限らんし。

 まぁいいや。多分そこまで遅くはならないようにすると思われます。一か月はかからんはず。長くて二、三週間? いや、さすがにそこまでかけたくないな……。

 とりあえず一月中には一回は投稿するであろう、ってことで。

 では、また次回!
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