東方守護執事   作:結城勇気

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第十六話「幼女キャラが大きくなるのは、喜ぶべきか悲しむべきか」 Side 宗次朗

 『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』は、威力は一片の文句もない代物だけど、他の性質に置いて問題だらけの能力だ。

 

 一つは、制御がアホみたいに困難なこと。発現してすぐのころは――聞くところによると生まれて十年後の話らしい――、意識的、無意識的関係なく、周囲の物を無差別に破壊し尽くしていたとか。

 

 更には「きゅっとしてドカーン」の時に握りつぶす、万物にあると言う“目”。(いわ)く物の最も緊張した部分(おそらく万物に内包された死、もしくはそれに類するものだと僕は考えているけれど)が常時見えていて、一時期発狂寸前だったとか。

 

 どんな光景だったかは知らないし、今も知らないけど、かなりアレだっただろうことは容易に想像できる。ちなみに、今ではON・OFFが出来るようになっているみたいだ。安心安心。

 

 さて。二つ目として、『能力保持者に半永久的な狂気・破壊衝動』を生み出させる、という何とも面倒で厄介な性質も持ち合わせている。

 

 能力の制御はともかく、“目”の発動、非発動が可能となっても、それだけは防ぐことも抑制することも出来なかった。故にエイヴィヒカイトの第一位階、つまり活動初期のころと同じような状態だった。無理矢理抑えようとすれば頭がおかしくなるほどの苦痛が待ち構え、耐えなければ待ち受けるのは万物の破壊のみ。一種の暴走状態へと陥ってしまう。そうなれば制御も何もあった物じゃない。

 

 適度に破壊させつつ、我慢させる。これがスカーレット家が唯一とれた対策法。

 

 ドランの能力を使って、彼女自身を丸ごと停滞させたりもしていたらしいけど、長くて一年、短ければ半年で“破壊”されてしまうみたいだ。故にただの時間稼ぎにしか使えない。

 

 無差別に破壊させるわけにもいかない。しかし、定期的に能力を行使しなければ制御できるものも出来ない。だがそれにはあまりにもリスクが大きすぎた。厄介なことに、能力によって生み出される“狂気”と“破壊衝動”は蓄積していく(・・・・・・)からだ。

 

 だから一瞬の油断も許されない。能力を行使させようにも、たったの一回が暴走を招きかねない。

 

 ――そして、ちょうど僕は、そんなときにスカーレット家にやってきた。

 

 あの決闘はかなりのリスクを(はら)んだことだろう。その上で彼は全力を以て相手してきた。

 

 つまり僕は全力全開の彼とは戦えなかったわけだけど……それでもあれだけの力。やっぱりこの世界における至高の吸血鬼は、彼だったのだろう、と僕は確信している。レミリアお嬢様も相当なものだとは思うけれど、まだ彼には届かないだろう。『運命を操る程度の能力』。これを完全に行使できてこそ、同等の域に至れるだろう。

 

 ……話を戻そう。

 

 ドランとビビりさんが戦っていた時、彼女が眠っていたのは奇跡的だった。

 

 狂気と狂気はお互いを引き合う。それは、奥底に眠っていようと無理やり引きずり出し、表に出させるほどに強力な引力だ。

 

 ドランの能力が効いていたのか、その存在に気づかず、無意識に僕の能力を行使していたのかは分からない。どっちにしろかなり強力な力だ。ドランですらその引力から完全に守ることは不可能だと言わせるのだから。

 

 故に、あれだけの吸血鬼が出そろい、ビビりさんほどの吸血鬼まで出てきたあの戦場で、ちりも積もれば山となった狂気の戦場で引きずり出されなかったのは奇跡的だ。

 

 話は一旦変わるけど……前にフランは、永琳に成長する薬を作ってくれ、と頼んだことがあった。僕を一日貸すから作ってくれ、と(ちなみに永遠亭に貸されての一日は、かなり大変だった、と言っておく)。

 

 永琳は二つ返事で引き受けた。数日でその薬も完成した。

 

 ところで、吸血鬼は不老不死、なんて言われているけど、容姿的に子供から大人まで完全

不老、という訳じゃない。現にドランは大人と言える容姿になっていたし、レミリアお嬢様もフランも、今よりもっと身長も体つきも幼かった。

 

 つまり、成長はする。止まった時からが完全に不老になるんだ。

 

 永琳はそれを知っていた。だから永琳が作ったのは、正確には身体を成長させる薬ではなく、体の時間を数年(・・・・・・・・)どころか数百年(・・・・・・・)以上進める薬(・・・・・・)。吸血鬼が大人の姿にまで成長している頃まで、フランの時間を進める、という訳だ。

 

 聞いた話だと、ただ単に成長する薬を作って飲ませたところで、完全ではなくても存在する不老性が邪魔をするんだとか。それでもまったく成長しないことはないとはいえ、薬だから副作用も当然存在する。多量に使用するのは危険だ。なら、一発で済む薬の方が良いだろう、とのこと。さすがは永琳、ちゃんとそこまで考えてくれる。薬剤師なのに医者だなんて言われるのも仕方がないかもしれない。

 

 ――さて、どうしてこんな話をしているのかと言うと。

 

 永琳の薬は確かに効果を見せ、フランは大人の姿になった。完全に不老と化すレベル、すなわち人間でいう成長の止まったところまで時間は進められた。正直超美人で美少女で可憐だった、とだけ言っておく。

 

 

 

 

 

 

 

 でも、ここで思い出してほしいんだ。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』の事を。

 

 

 

 

 

 

 

 ……『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』は、『能力保持者に半永久的な狂気・破壊衝動』を生み出させる。そしてそれらは蓄積する(・・・・)

 

 永琳は身体の時間を進める薬を作った。そしてそれは効果を発揮し、フランの身体の時間を進めた。それに伴って、蓄積された狂気と(・・・・・・・・)破壊衝動の強さは(・・・・・・・・)変動した(・・・・)。より深く、より強いものへと。

 

 あの時は本当に大変だったよ。もともとその二つから、僕の能力で“守って”いたのに、能力を突き破って表に出てきたんだから。

 

 そして待ち受けていたのは――暴走。

 

 幸い、大きな被害はなかったし、一番懸念されていた博麗大結界にも影響は全くなかった。素早く現れた紫ちゃんと、フランに付き添って来ていた僕。そして永遠亭と妹紅の協力で、最小限(竹林の一部の消失と永遠亭の大破)に留まった。

 

 ……その後。当然ではあるけれど、フランの処遇を早急に決めなければならなかった。

 

 処分――なんて、一部のバカ(閻魔)が出した案は僕が一蹴した。ていうかまずあり得ないし。

 

 隔離、は意味がない。大人となったフランの能力は、かなりパワーアップしていた。どうも精神以外の時間が進められていたらしく、大人になったころの能力が反映されていた。後に聞いた話だけど、“目”を潰さずに“破壊”出来るようになっていたとか。強力性も強くなっていて、紫ちゃんの封印した牢屋すら軽々と“破壊”してみせた。

 

 残されたのは……封印。

 

 フラン自身を封印するんじゃなくて、フランの力を封印する、ってこと。フランをまるごと封印したところで、“破壊”されてしまう。なら力を制御できるところまで封印してしまえばいい。力の封印も“破壊”されてしまう可能性も無きにしも非ずだけど、制御できている分、可能性は低いと考えたんだ。

 

 ただ、力を封印したところで、狂気と破壊衝動があれば意味がない。大人バージョンのフランは、今のフランよりも圧倒的に強いから。

 

 だからその二つからは僕が“守る“ことになった。地力の問題でかなりキツかったけど、紫ちゃんたちの協力もあって何とか可能となった。その上でそれらの狂気を制する事の出来るよう、訓練する。数百年以上分の狂気と破壊衝動だ、かなり時間もかかる。――と思われてたんだけど、結構な早さで制御できるようになっていった。

 

 力の封印は狂気と破壊衝動の制御ほど時間がかかることはなくて、幻想郷最強レベルにまで高まった力は、紫ちゃんと数人の協力者(パチュリーとアリス、前代の博麗の巫女など)の力もあって、当時のフランと同レベルにまで封印することが出来た。早くて数年、基本的に十数年ごとの封印の点検は必要になったけど、現状何も起きていない。

 

 そう、何も起きていない――満月の夜以外は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「満月は見た者を狂気に陥れる――それも正しいと言えば正しいよ」

 

 僕と幽香は霧の湖を走っていた。

 

 なんで幽香がいるって? 勝手についてきたからに決まってるじゃないか。

 

「でもね、満月はもう一つ厄介なモノを持ってる」

 

 霧の湖を抜け、残るは紅魔館へ続く森の道のみ。スピードを緩めることもなく走り抜ける。

 

 時間はまだ朝。時計を見る限りでは午前一〇時ごろ。まだギリギリ間に合うと言ったところか。

 

「――狂気を呼び寄せる。満月は見た者を狂気に陥れるだけじゃない、狂気を呼び寄せるんだ」

 

 外の世界では、満月の夜は事故や事件が多いらしい。特に気にしたことはなかったから、実際はどうなのかは知らないけど、事実だとしたらそれらは満月によって狂気を呼び寄せられた人々が原因なんだろう。人間なんて、大なり小なり狂気を持っているのだ。

 

 それと同じで、満月の夜は幻想郷でも何かしら起きることがある。永夜異変がいい例だろうか。まぁあれはある意味、犯人たちのせいじゃなかったみたいだけど。

 

「満月は狂気の魔力を持つ。それは見た者を狂気に陥れ、見なくとも、その光の(もと)にある者たちの狂気を呼び寄せる――もう分かるよね」

「あなたのお嬢様、フランドールの狂気が呼び起されて、力を封印されて子供になっているフランドールが大人になる、ってわけ」

 

 力を封印され、能力も妖力も、大人バージョンの半分以下となった。その影響なのかどうかは不明だけど、フランは子供の状態に戻ることになったんだ。

 

 でも満月の夜は、狂気と破壊衝動が表に出ようと、否、満月に引っ張られて、僕の能力と紫ちゃんたちの封印から()れ出してくる。それに伴って出来た穴から、封印されていた力の一部も漏れ出てしまう――その影響で、子供のフランが大人のフランに戻ってしまう、というわけだ。

 

「まぁ、僕の能力は“破壊”されることなく効いているみたいだから、大人バージョンでも大したことは基本的に無いんだ。でも油断はできないからね、何重かで“守らなくちゃ”いけない」

 

 防御に関してでは、重ねがけすることは出来ない。とはいえあくまでそれは防御に関して。その他に置いてはどういう訳か可能なんだ。でなけりゃフランを狂気と破壊衝動から“守り”つつ、博麗大結界が壊れることから“守って”、咲夜を老化から“守る”なんてこと出来やしない。

 

「あ! 宗次朗さん!」

 

 と、紅魔館の目の前に前来た僕達を、美鈴(めいりん)が出迎えてくれる。

 

「どこ行ってたんですか? みんな大騒ぎで――って、なんであなたがいるんですかっ」

「いちゃ悪いかしら」

「あ、わかりましたよ。宗次朗さんを攫った人ってあなたですねっ。八雲家に続いてあなたまで!」

「恋は早い者勝ち。寝取りも早い者勝ちよ」

「そっ、宗次朗さんはフランドールお嬢様の恋人さんですっ。ね、寝取りなんて許しません!」

「別にいいわよ。勝手にやるから」

「こ、このぅっ……!」

「えーっと、美鈴?」

 

 なんだか長くなりそうなので、口を挟ませてもらった。悪いけど、今は時間を取られたくない。

 

「あ、すみません……。フランドールお嬢様は、レミリアお嬢様、咲夜さんと一緒に主の間にいらっしゃいます」

「分かった。ありがとう美鈴」

 

 門を開けて中に入る。幽香が僕に続いた。

 

「って、なんであなたまで入るんですか!」

「何よ、文句あるの」

「言いながら門をくぐらないでください! ちょ、ちょっと! ふぎゃッ!!」

 

 あ、幽香を止めようと肩を掴んだ美鈴が裏拳で吹っ飛ばされた。

 

「さぁ、とっとと行くわよ」

 

 幽香は美鈴に一瞥もくれずに、一人勝手に紅魔館の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

「――『殲滅・モルゲンロート=シュッツェ(暁の射手)』」

 

 主の間に足を踏み入れた瞬間、聴きなれた声がそんな言葉を僕の耳に放り込んできた。

 

 同時に視界に映ったのは、視界を埋め尽くすほどの弾幕。一発一発は矢の形をしていて、それらを囲むように、矢の周りには数個の魔法陣が浮かんでいる。魔法陣含め、視界に映るそれら全てにはバカげたレベルの妖力が込められている。一発一発はさっきの幽香ほどじゃないけれど、総合すればそれすらも上回るかもしれない。

 

 僕も幽香も瞬時に理解した。これはスペルカードだ。

 

 瞬間、それらが全て放たれた。

 

 千とか二千とか軽々と超える数放たれる矢と共に、魔法陣からマスタースパークを連想させる極太レーザ

ーが一斉掃射される。

 

「あらあら、歓迎が壮大ね」

 

 呑気なことを言いながら僕の横をすり抜けて、弾幕の中に突貫していく幽香。クルクルと回るように飛びながら、数多の弾幕の隙間をすり抜け、砲手の下へと急速接近していく。

 

 そんな幽香を撃ち落とさんと、無限弾とでも言わんばかりに矢と極太レーザーが、更に掃射される。隙間なんてもはや黙視できない。避けることが可能なのか、と疑うレベルだ。数途切れることなく放たれるそれらは、キラキラと輝き光って舞い散ってゆく。

 

「ちょっちょっ」

 

 で、当然ながら射線にいる僕にも、それらは降り注いでくるわけで……。

 

 あまりに多すぎて避けることも出来ず、能力で“守る”しかなかった。

 

 展開される障壁の向こうでは、幽香が未だ突貫していた。が、さすがに数が多すぎるのか、前進する速度が急激に低下している。避けても弾いても、目の前の光に穴を空けることすら敵わない。すでに数発かすっているらしく、スカートやらブラウスの袖やらが裂けている。

 

 しびれを切らしたのか、幽香は日傘の先端を前面へと向ける。瞬間的に妖力が収束、圧縮され……放たれる。

 

「マスタースパーク!」

 

 日傘の先端から放たれる虹の砲撃が、光の矢の群体を打ち貫く。一点突破するべく膨大な妖力を圧縮して解放したそれは、矢をことごとく飲み込んでいく。それどころかそれらを吸収しているのか、虹はどんどん巨大化していく。

 

 

 

 

 

 

 それを突き破った何かが、幽香の首を鷲掴みにした。

 

 

 

 

 

 

 

「あ……ッ、ガァッ!!?」

 

 そのまま無理矢理急降下させられ、多少の抵抗も意に介さず床に叩きつけられた。

 

 床が砕けるとともに土煙が舞い上がり、爆風と爆音が主の間を揺るがす。

 

「……これは宗次朗を誘拐した罰だよ。おーけー?」

 

 舞い上がっていた煙が晴れた先には、気絶した幽香と――無傷で中学生くらいの大きさになったフランがいた。

 

 

 

 




 展開が速かったようなそうでもなかったような。


 中学生くらいの大きさなフラン……ってどんな感じなんでしょーね。自分で書いといてなんですが。

 身長は低いのか、ふつうか、それとも案外大きいのか。
 発育はいいのか悪いのか。
 エトセトラエトセトラ……。

 まぁ思うことは多いですけど、とりあえずかわいいんでしょうねー。



 大人フランに関しては……ちゃんと書けたのかな? まぁとりあえずこんな感じですわ。

 狂気は狂気を呼び寄せる……でも普段は何も影響受けてません。というより、封印と宗次朗の能力に匹敵するほど、もしくは打ち破るほど大きな狂気(つまり狂気を呼ぶ引力の強さ)でなければ大人フラン召喚は無理なわけですね。

 まぁ、本編に書いた通り、今のフランは大人フラン状態でも暴走しないくらいには狂気と破壊衝動の制御には成功していますから、ちょっとやそっとの狂気じゃ、どっちにしろほぼ不可能ですね。

 
 最後の煙に関してですけど……土煙以外言葉が出てこなかった。
 爆煙……って程じゃないし。

 もうちょい語彙を増やすべきですねー。

 では、また次回!
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