一応、第一話よりは長いけど。
では、どうぞ。
私、レミリア・スカーレットは夜の王、吸血鬼である。
スカーレットという家名を聞けば、かつては誰しも恐れたものだ。ヴァンパイアハンターも懲りずによく来ていたよ。まぁその度にお父様が、宗次朗が来てお父様がお亡くなりになってからは宗次朗が楽々倒していたわけだけど。
……私は宗次朗が好きだ。当然一人の男性として。
いつの間にやらフランの恋人になっていた時は、ビックリを通り越して情けなく倒れてしまった。その時は宗次朗が介抱してくれたので役得だったわね。
宗次朗は天然の女たらしだ。
大袈裟だと思うかもしれないが、可能性はあるのだ。前に宗次朗が“外”から持ってきた『マンガ』なるものの一つに、『かみじょー体質』やら『れんあいげんしかく』やら、いろいろと出ていた。
つまり何が言いたいかというと、宗次朗もあれらの一つだという事だ! 顔は良いし優しいし強いし! どうせ人里に出るたびに誰かしらオトしてきているはずよ!
正直、フランだけで、というよりフランだからこそ宗次朗を守り切れるとは思えない。だって幼女だし。あー、いや、幼女じゃない時もたまにあるにはあるが、あれは特別だし。
まぁそれは置いといてだ。
フランと宗次朗なら、まだ私は許せる。諦めることは出来ないが。しかし! 妖怪の賢者やらフラワーマスターやらその他諸々の有象無象なんぞとくっつくのだけは許せない! それだったら私が奪い取ってやるわよ! ってくらいに。いや、奪い取るのは
しかしどうしたものか……。幻想郷には超絶美人(フランや私たちも負けてはいないが)や、おっぱい星人だってかなりいる(美鈴含めて)。身体だけなら、悔しいが負けを認めざるを得ない。かなり不利だと言える。
しかし宗次朗はそれだけで女を決めるような男じゃ――、
コンコン、とノックがされた。続いて咲夜です、と一言。
「入りなさい」
「失礼いたします」
ドアを開け、静かに入って来たのは、完全で
「どうかしたの?」
「いえ、朝食のお時間でございます」
「あら、もうそんな時間?」
私はほとんど時間を気にしないため、部屋に時計はなかったりする。が、咲夜はいつも時間通りに朝食を作り終えたり掃除や洗濯などを終わらせたりしている。もはや咲夜が時計代わりになってしまうほどに。
しかしいつの間にやらそんな時間か……。珍しく早起きしたから、宗次朗を奪い来るであろう女たちの対策を考えていたけど、案外時間も早いものね。
「分かったわ。行きましょう。宗次朗とフランは?」
「これからです」
「そう。まぁ、宗次朗のことだし、フランともども準備は終えているでしょう」
でしょうね、と咲夜は微笑む。
咲夜は私を食堂まで送り届けると、ふっと消えてしまった。時間を止めて宗次朗たちのもとへ向かったのだろう。
テーブルの上に並べられた料理を
さて、朝食が逃げるわけでもないし、私は静かに待っているとしましょうか。
* * *
少しして。フランと宗次朗、咲夜が食堂へと入ってきた。
金糸を揺らしながらこちらに歩いてくる少女の隣にいる、栗色の髪をし、吸血鬼ではないが赤い瞳をした長身の男が、ここ、紅魔館が執事長、九重宗次朗だ。
「おはようございます、レミリアお嬢様」
と、宗次朗が一礼する。その隣にいるフランも「おはよう、お姉さま」と同じように一礼。
「おはよう、宗次朗、フラン」
三人はそのまま各々の席に着く。
前までは、宗次朗と咲夜は座らず、私たちが食べ終えるまで紅茶を注いだり口元を拭いてくれたりと、自分の仕事をこなしていた。でもフランが「宗次朗と一緒に食べたい!」なんて言い出したのよね。最初は私も宗次朗も渋っていたのだけれど、結局私が折れた。咲夜は、執事長だけ食事中に座らせるわけにもいかないので、断っていた咲夜に主命令で座らせ、共に食事をさせている。
フランたちは楽しそうだし、実際私も楽しいので、現状文句はない。
「全員そろったわね」
では、と私は手と手を合わせる。フランたち三人もそれに続く。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
――あぁ、いつも通り美味しかったわ。
箸をかたりと箸置きに置いて私は言う。さすがは咲夜、和食も完璧ね。まぁ、前にも何度か食べたことがあるから知ってたけど、改めて、という感じかしら。紅鮭も漬物も味噌汁もご飯も、全部美味しかったわ。
そんな私を見ると、少し前に食べ終えていた咲夜が私の皿や茶碗を下げる。フランのは宗次朗の担当なので、咲夜は下げない。というかまだ食べてるし。
「宗次朗、あーんして!」
「しょうがないなぁ」
二人きりではないことを忘れて、自分たちの結界を作り出す二人。
……いいなぁ。宗次朗に食べさせてもらえるなんて羨ましい……。私も主命令でもすればしてもらえるのだろうが、それでは意味がない。フランのように恋人としてしてもらいたい。……まあ、それはかなり難しい事なのだけれど。
咲夜も宗次朗とフランを一瞥し、羨ましそうな顔をしながらキッチンへと向かった。当然時間は止めての事だから消えたように見える。
あ、どうやら食べ終えたようだ。
「ごちそうさま!」
「作ってない僕が言うのも変だけど、お粗末様」
と、宗次朗がフランの皿を下げ始める。いわゆるサービスワゴンにそれらを乗せ、終えるとそれを押してキッチンに向かう。
「そういえばお姉さま、なんで和食のリクエストなんてしたの?」
「嫌だったかしら」
だとしたら悪いことをした、と若干不安になったけど、フランの笑顔を見て安心した。
「ううん、そういう訳じゃないよ。ただいつもはそんなことしないから珍しいなー、って」
あぁなるほど。そういえばそうかもしれない。元々食事のリクエストを自体珍しい事だしね。珍しいと思われても仕方がないかもしれないわ。
「大した理由はないの。ただ……」
「ただ?」
……ただ、思い出しただけ。
宗次朗と出会った時のことを。それから派生して、お父様の事を。
* * *
Side change 宗次朗
ワゴンを押してキッチンに入ると、ちょうどレミリアお嬢様の使用した皿を洗い終えた咲夜がいた。
咲夜はこちらを見ると、ちょうどよかった、と一言。
「どうしたの?」
「パチュリー様に朝食を届けに行ってほしいのよ」
「それって、小悪魔の仕事じゃなかったっけ? もしかして忘れてるとか」
まぁ無いとは言いきれない、かな。
すると咲夜は呆れた表情をして、
「みたいね。小悪魔を待ってたらお料理も美味しくなくなるし、届けに行ってもらえないかしら。妹様のお皿は私が洗っておくから」
ぶっちゃけ咲夜が行った方が早いんじゃないか、とは思うんだけどね。だって時間止められるし。
彼女がそれを忘れてるとは思えない。何かしら理由があるんだろうな。やっぱ完全で瀟洒なメイドは忙しいってことか。
「分かった。急いで持っていくよ」
「急ぐのは良いけど落としたりしないでよね」
「僕の
「冗談で言っただけよ。じゃあお願い」
言って彼女はフランの使った皿を洗い始めた。
さて、じゃあ僕もパチュリーの朝ごはんを届けにいこうかな。
朝食の乗ったトレーを持ち、僕は足早に地下の図書館へと向かった。