東方守護執事   作:結城勇気

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 最近PSO2をちょこちょこやってるから執筆が止まる……。いや、こっちもちゃんてやってるからね?

 そしてぶっちゃけ予定よりちょっと早く過去編へ。編ってほど長くはならない……かどうかは分からないけど、とりあえず行ってみます。

 では、相変わらずニワカ知識でお送りします。


第五話「気が付けばそこにいた、って普通は誰も信じないと思う」 Side Not

 『九重宗次朗』はこの世界の人間ではない。

 

 この世界と言っても幻想郷の事ではなく、平行世界論的な意味の“この世界”だ。

 

 宗次朗がまだ『九重宗次朗』という名ではなかった頃。宗次朗は気が付けばこの世界にいた。

 

 またうちの副首領が面白半分に何かやってくれたのか、とも思ったが、そんな力の波動は感じなかったはずだ。彼と宗次朗はほとんど同レベル。副首領の力を感じ取れない訳がない。

 

 目の前に広がるのは木の群体。視界に広がる緑、緑、緑。さっきまでベッドで昼寝していたはずなのに、なぜ森になど居るのだろうか。

 

 幻術の類を疑った。だから一度『創造』を発動した。しかし視界に広がる光景は何の変化も起こさない。

 

 体に違和感を感じた。何故か、ロリババァなんて言われる同僚の魔女よりも少し小さいくらいの子供サイズになっていた。

 

 今どこにいるのか考えた。木のてっぺんに上ってみれば、絶滅したはずの巨大な恐竜がいた。

 

「……どこ、ここ」

 

 どうやら世界を超えてしまったらしい、という結論に至ったのはすぐの事だった。

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 それから一体どれだけの時間が経っただろうか。

 

 元の世界に帰る方法を探そうとは思っていてもさっぱり分からない。『創造』を使ったとしても、無数に存在する平行世界の中から同じものを探し出す、なんてのは現実的ではないので却下した。

 

 あーでもないこーでもない、と考えながら、ただぼーっとここにいても仕方ない、と旅行気分で長年あちこち旅してまわった。

 

 その中で起きたことを一言でいうなら、月並みな言い方だが『いろいろあった』としか言いようがないだろう。

 

 たとえば、今や月の頭脳とまで言われている女性に出会ったり、月に行けずにほとんど人のいない(妖怪はいた)生活を送ってみたり、神様の戦争に巻き込まれてみたり、おとぎ話だったはずの月のお姫様に出会ってみたり、彼女を迎えに来た月の使者をぶちのめしたりと。とにかくいろいろあった。その中でも宗次朗は子供のままだった。

 

 (おそらく)日本から外に出て外国にも行ってみた。さすがに月の住人ほどの文明は存在しなかったがそれでもちょこちょこ人はいた。

 

 徐々に発達していく人の世界を見ながら、様々な事件やら面倒事やらに巻き込まれる度を続けているうちに、更に時は流れ、正直元の世界に戻る方法もどうでもよくなってきたころだ(どうせその内誰かしら迎えに来てくれるだろう、水銀の副首領とか。なんて考え始めた頃ともいう)。

 

 

 

 宗次朗は――それを見つけた。

 

 

 

「な、何アレ……」

 

 いつも通り適当な旅を続けていた中、視線の先にあったのは――森の中にそびえ立つ真っ赤な(やかた)だ。

 

 真っ赤も真っ赤、とにかく赤い。白や黒はもちろん、青も黄色も緑も、レンガの色すらない。とにかく赤、赤、赤。いや、ここまで来ると紅と言うべきか。とにかく紅かった。

 

 異様だった。今まで(おそらく)日本や外国を旅し続けてきた。花の妖怪の家にお邪魔してお茶を飲んだりもした。鬼の住んでいる山に行ったこともある。だがここまで個性的な――悪く言えば変な――家は見たことが無い。

 

 興味が湧くのは必然的なことだった。

 

 近くまで行ってみてまず目についたのは、館を囲む赤いレンガで出来た外壁……に寄りかかって寝ている赤髪の女性だった。

 

 チャイナ服と洋服が合体したような緑を主とした服を着て、頭には「龍」という文字の書かれた星が付いている緑の帽子。腰あたりまで伸ばした赤髪。ついでに美人。

 

(……なんでこんなところで寝てるんだろ)

 

 このまま館に入ってしまおうか、とも思ったが、面倒事に発展するのは目に見えた。

 

 とりあえずこの人と話してみようか、と思い、起こそうと背伸びしてツンツン、と女性の頬をつついてみる。……反応がない。何度か頬をつついてみるが、幸せそうに唸るだけで起きる気配はない。

 

 さすがに面倒になってきた宗次朗は、思い切って頬を叩い(ビンタし)てみた。

 

 バッチィン!! と清々しいほどイイ音が森に響いた。

 

「痛ったぁああああああああああああああああああああああああ!!?」

 

 起きたかと思えばゴロゴロゴロゴロと地面を転げまわる。

 

 ――あぁ、そういえば常人より何倍も身体能力高いんだった。

 

 そりゃ適当に打ったビンタも痛いに決まってるか、はっはっは、と呑気にそれを見ながら笑う。

 

 その笑い声に反応したのか、ぴたり、と女性は転げまわるのを止めた。クルリと視線をこちらに向ける。

 

「……誰ですか、君は」

「名前を聞くときは自分から名乗るのが武人の作法なんじゃないの?」

「む、言いますね」

 

 起き上がり土で汚れた服を(はた)くと、

 

(ほん)美鈴(めいりん)。ここ、紅魔館が門番です」

「……門番?」

「疑ってるんですか?」

 

 不満そうな顔をする美鈴。宗次朗はだって、ねぇ……? 苦笑する。

 

「職務放棄して寝てる門番なんて聞いたことないし」

「ね、寝てませんよっ! さ、さっきまでは、その……そう! 瞑想していたんです!」

「瞑想なんてしながら門番なんて出来ないからね? ていうか寝てるのと同じレベルで職務放棄だから」

「じゃ、じゃあ目を(つむ)っていたんですッ」

「じゃあって言ったよね。じゃあって」

「目を瞑っていたんですッ!」

「……目を瞑っていただけならなんでつついた時何の反応もしなかったのさ」

「えッ!? そ、その……考え事を、です、ね……」

「何を考えてたの?」

「そ、その、えっと、あの……」

 

 美鈴は頭を抱えてぐぬぬぬ、と唸りながら、必死に考えていたことを考えているらしい。しかし何も思いつかないようで目を回していた。しかも何やら頭から煙を噴かしている。

 

 諦めて寝てたこと認めればいいのに、とそれを苦笑しながらじっと見ていると、突然バッ、と顔を上げた。混乱に混乱を重ねた結果か、目がイッちゃっていた。

 

 

 

 

「た、たまにはエッチしたいなぁ、ってずっとエッチなこと妄想してましたっ!!」

 

 

 

 

 ………………………………………………。

 

 思わず沈黙した宗次朗を見て、目を回した末に自分が苦し紛れに身を任せて発した言葉を認識したらしい美鈴が、顔を爆発させた。

 

「え、あ、ちょ、ち、ちがっ、ま、間違え――」

 

 顔を真っ赤にして何やら言い訳しようとしている美鈴に、宗次朗はポン、と彼女の肩――は届かないので、肘のあたりに手を置いた。その目は何やら生暖かい色を帯びていた。

 

「ごめん、聞かないほうがよかったみたいだね。そっかぁ、欲求不満だったのかぁ……だからあんなに幸せそうに唸ってたんだね。ごめん。お詫びに相手を紹介してあげようか? 大丈夫、顔が良くて上手な人選んであげるから」

 

 

「ち、違うんですぅううううううううううううううううううううううう!!」

 

 

 ……数分後。

 

 ようやく正気を取り戻した美鈴に話を通し、紅魔館を案内してもらえることになった。

 

 ――門番の仕事は良いのかな、と宗次朗は思ったのだが、黙っておくことにした。

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 ……正直ここまでだとは思わなかった。

 

 確かにこの紅魔館と言う館は真っ赤だった。他の色が存在しないほどに真っ赤だった。

 

 だが、しかしだ。

 

 誰が中まで真っ赤だと予想するだろうか。

 

「……すごいな」

 

 それはある種の驚愕であり、呆れでもあった。しかし美鈴はそれを称賛と受け取ったのか、笑顔で人差し指をぴっと立てる。

 

「そりゃ最強の吸血鬼の一族、スカーレット家が紅魔館ですからねー。凄いのは当たり前ですっ」

 

 美鈴は自慢げに笑う。

 

 続けて美鈴は「主様はとっても強くてですねぇ、主様のお嬢様方もとってもかわいいんですっ!」と、自分の主たちの事を長々と自慢してきた。が、宗次朗的にこの屋敷の連中がどうとか、至極どうでもよかったので右から左へと流して赤き廊下を歩いていく。

 

 と、美鈴がそういえば、と突然自慢話を切り上げた。

 

「つい通しちゃいましたけど……ここに何しに来たんです? 見た目は子供のようですけど隙が全くない。年齢詐称のヴァンパイアハンターか何かですか?」

 

 ……こんなところまで入れておいて今更それを聞くのか、と宗次朗は思った。

 

 中に入られても撃退できる自信があるのか、それとも単に抜けているのか(どちらかと言えば後者だろうとは思う。居眠りするような門番だし)。

 

 短い思考の末、正直に答えることにした。

 

「そんな大層なものじゃないよ。僕、あちこち旅しててさ、気分に任せて歩いてたら面白いほど真っ赤な館があった。そんなのがあったら興味が出てもしょうがないだろ?」

「まぁ、確かに異常なほど真っ赤なのは認めますけど……吸血鬼ですし良いんじゃないですか?」

 

 何がいいのかさっぱり分からなかったが、適当に笑っておくことにした。

 

「さて、主様はこの先です」

 

 目の前にそびえ立つ巨大なドア。そのドアノブを捻りながら言う彼女は、ギィ……と音を立てて開いた。大きさゆえに重そうに見えるそれは、意外なほどスムーズに開いた。

 

 

 

 瞬間、烈風が宗次朗を襲った。

 

 

 

 伸びてきた何かを受け止める ドッ――!! と、宗次朗と襲ってきた烈風の周りを爆風のような衝撃が暴れた。それに巻き込まれた美鈴は、吹き飛ばされて廊下に転げまわって動かなくなっ(気絶し)た。

 

「やはり只者ではなかったか、小さきお客人よ」

 

 それは人型をしていた。

 

 水色ではない明るめの青髪をした男性だった。吸血鬼特有の真紅の瞳でこちらを睨みつけ、口元には笑みが見える。身長は高く、宗次朗よりも三十センチは違うだろうか。黒いタキシードを着たその背には漆黒の翼を持ち、キラリと光る歯は鋭く尖っている。

 

 ――吸血鬼。

 

 おとぎ話でしかなかった吸血鬼が目の前にいた。

 

 宗次朗は笑みを浮かべ、その真紅の瞳を睨み返す。

 

「――客にいきなり攻撃とは、吸血鬼のもてなしは過激なもんだ」

「人の身で吸血鬼の館に入ってきたのだ、その血を吸い尽くして殺してくれと言っているのと同義であろう」

常識人(普通の人)ならね」

「そうだな、弱者(普通の人間)ならば、だ」

 

 バッ、と宗次朗から離れ、彼は少し距離を取ったところに着地する。

 

「さて、そんな強者(異常者)には強者(異常者)に相応しいもてなしを受けてもらおう。――私と戦え」

 

 その言葉で理解した。

 

 ――この人、うちの吸血鬼と同類だ。

 

「改めて名乗らせてもらおうか」

 

 男はエレガントに一礼し、

 

「紅魔館が主、ドラン・スカーレットだ。よろしく頼むよ、お客人」

「なるほど……さすがは吸血鬼、戦の作法は知ってるわけだ」

 

 ならば――、と宗次朗、いや、『彼』は告げる。

 

 

 

「聖槍十三騎士団、黒円卓第零位、大隊長。クライスェア・ヴァーンヘリアス=ニーベ(王守りし)ルング(聖なる指輪)

 

 

 

「なるほど、騎士か……」

 

 ドランはにやりと笑う。

 

「フッ……では勝負と行こう。楽しませてくれたまえ、ヴァーンヘリアス卿ッ!!」

「付き合ってあげるよ、吸血鬼」

 

 

 

 

 瞬間、最強の騎士の一員と、最強の吸血鬼が――ぶつかった。

 




 宗次朗をクライス(本名時の愛称)で呼ぶかって迷ってたんですけど……彼の名乗りで名前を明かしたくてあえて宗次朗にしてみました。よくわからなくなっちゃってたらごめんなさい。


 さて、十三騎士団なのに十三人じゃなくなっちゃいましたが……まぁニワカ知識持ちが勝手に作った稚拙な設定でその辺は後々説明するので、ご勘弁を。


 さーて、次は大変な戦闘シーンだ!
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